財政金融委員会・第12号 2005-05-12


2005年5月12日

【質疑事項】
1.「人民元」通貨政策についての所見如何
2.アジア諸国の通貨政策と日本の為替差損発生の懸念について
3.日本の「口先介入」対する批判について
4.アジアの中の日本としての通貨政策の課題について<>○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。
本日は、日本の為替政策につきましてお聞きしたいと思います。
この連休中に開かれましたトルコのイスタンブールでのアジア開発銀行年次総会におきまして、谷垣大臣御出席され、また演説もされたわけでございますけれども、このイスタンブールでの年次総会におきまして、アメリカを筆頭といたしまして、欧州政府もかなり中国の通貨政策に対しまして激しい批判ないしは要求が展開をされておったというふうに報じられております。すなわち、人民元の早期切上げあるいは変動幅の拡大といったことに具体的にはなろうかと思います。
こうした中でも、しかしながら谷垣大臣は、昨日も記者会見も報じられておりましたけれども、基本的には中国の決定にゆだねていくべきではないかという非常に紳士的な態度を取られたわけでございますけれども、その真意についてまずお聞きしたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) 私は、中国の為替制度についてはもう少し柔軟性というものがあるべきであると、私自身そう思っております。また、そのことが、日本からしていいというだけじゃなしに、長期的に見て中国の安定的発展ということを考えますと、やはりそういう柔軟性というものをもう少し持たせていくことが必要であると、私自身の、おまえはどう考えているかといえば、そういうふうにお答えをいたします。
他方、実はこの問題に関しましては、今までG7の場であるとか、今度はASEANプラス3あるいは日中韓の財務大臣会合をイスタンブールではやりましたけれども、もう度々こういう、この議論は中国のカウンターパートともやらせていただいているわけであります。
中国経済はもう非常に大きくなりまして、日本の景気回復も中国の躍進に引っ張られてきたという面もかなりございますし、中国がやはり安定的に発展していってくれなければ、日本だけじゃなしに世界経済も困ると。
ですから、そこは、そこから考えると、我々のような、もう少しの柔軟性が欲しいということになりますが、しかし中国の内部にもやはりいろいろ問題があって、彼ら自身も相当問題点を煮詰めつつ悩んでいることも事実だろうと思います。それは、彼らの金融セクターの問題であるとか、あるいは地域地域による、あそこでの、あそこの国の格差の問題というようなことをどう解決していくかということは彼ら自身も非常に悩んでいるのではないかと私は思っております。
そういうことを前提として、中国が、国際社会の影響力、そういうことも、自国の影響力も考えに入れながら、責任あるそして的確な判断をしていただくべきことだと考えているわけでございます。

○西田まこと君 この人民元の切上げ論争につきましては、もうよく知られているとおり、最初に火を付けたのは現在のアジア銀行総裁である黒田東彦氏でございまして、また当時の塩川財務大臣も同様な、黒田さん、当時の財務官に次いで話をされています。すなわち、その端緒は2002年の12月2日付けのイギリスのフィナンシャル・タイムズ紙におきまして黒田氏が、中国はデフレを輸出している、元は切り上げるべきであると、こういう発言をされました。そして、当時の塩川大臣も、中国は貿易を開放するなら為替も国際的に符合するべきだと、このような発言をされたわけでございます。
これによりまして、こうした財務省の要人の方々によります相次ぐ発言によって、その後円高を招来したと。結果として、膨大なドル買い・円売り介入、2003年には20兆円、日本円に換算させまして2004年前半3か月で15兆円と、こういうふうに結果としてなったわけでございますけれども。
今、谷垣大臣から御答弁いただきましたけれども、日本の財務省といたしましては、この黒田前財務官ですね、当時の財務官、そして塩川大臣、そして今の谷垣大臣の人民元に対する御発言、日本の財務省は、円に対する人民元に絡んだ政策を変更したんでしょうか。それとも、変更したとすれば、それはいつから、どういう根拠で変更をされたんでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 人民元に対して財務省のスタンスを変更したということはないと思っております。
それで、そのときそのときで、その場にいる者がどういう表現をするかということは、若干その人の持ち味によりましてニュアンスの違いがあるいはあるかもしれません。ただ、ずっと言えますことは、私も、より一段のフレキシビリティーが必要だということは、現在やや固くなり過ぎていて、何というんでしょうか、ファンダメンタルズを十分に反映する形になっていないんではないかという感じを持っていることは事実でございます。それで、それは今までの、何というんですか、歴代のその場にいた者が言っておりますこととそんなに意味が違ったことを申し上げているわけではないわけであります。
じゃ、それをどうやるかということになると、これは結局は、我々ももちろん我々の意見を申し上げますし、我々も過去、為替の変動でいろいろ苦労した経験がございますので、我々の経験で彼らの役立つことがあれば、それはお伝えするのにやぶさかではありませんけれども、結局のところ、当該国の当局者が決断をするしかなかなかいかない。今までもそれを超えた発言というのは、我が役所としてはしてこなかったんではないかというふうに考えております。

○西田まこと君 結局として、結果としては、人民元切り上げるべきだというのは、じゃ変わらないということですね、基本的には。まあ、切り上げるべきだというよりも柔軟性を持たせるべきだというのは、一貫して財務省としてはそういう立場を取ってきているということでよろしいんですよね。
その上で、実は人民元が切り上げられるかどうかという報道で、一時、昨日も高騰したという、まあ誤訳だったわけでありますけれども、因果関係としては、人民元が切り上げられるかもしれないと。そうすると、アジアの中で真っ先に高騰するのは円であると。実際そうなってきているわけでありまして、そういうことによって円がどんどん上がっては困ると、様々な景気対策等も含めまして。それで、介入をして、積もり積もって今約90兆円近い膨大な外貨準備高の蓄積というものが今、国民資産としてもたらされているわけであります。
しかしながら、そうしますと、人民元がより柔軟な為替制度を取っていく、レートがより柔軟になってくるということによって円高を招来する、招く、そして90兆円近い国民の資産である外貨準備高が非常に為替リスクにさらされる。こういうことが繰り返されてきているわけでございますけれども、そして平成17年度末、2006年春までの為替差損の含み損、繰越し評価損は、予算参照書によりますと約11兆円以上になると、こういうことになっているわけであります。
そして一方、アジア諸国の外貨準備高の運用方針等を見てみますと、例えば韓国、2000億ドル近く外貨準備高がございます。また、ロシア、インド等が余りドルを持ち過ぎていると、そういう非常にリスクが大きくなると。為替差損やあるいは国内経済の、国内の金融政策に対して様々な縛りというか、ことになってくるということで、その悪影響を遮断するために、外貨準備に占めるドルの割合を低める動きに出てきている。顕在的に出て、明示的にそうしているところもあれば、そう報じられて、実際、否定されている韓国の例もございます。
これにつきましては中国政府も同様でありまして、人民元の切上げ若しくは変動幅の拡大を仮に実行するとなると、ドル資産の売却に動く可能性は否定できないし、また昨年末、既に外貨準備高に占めますドルの資産比率を低めている、ユーロの比率を高めていると、こういう実際にそういうことも中国政府として取られているわけであります。
こうしたアジア諸国、特にドルの外貨準備高を持っているアジア諸国の外貨準備高の運用方針の変更等によりまして、それはすなわちドル安を加速させるという方向、ドルの比率を下げるという意味でドルを売っていくということですので、ドル安を加速させるわけでありますけれども、そうなった場合には真っ先に円が高騰し、この90兆円近い日本の国民の資産が為替リスクにさらされると、こういう因果関係になろうかと思うんですけれども、このアジア諸国の外貨準備高の運用方針の変更と、一方で、そうなった場合にドル安が加速して円が真っ先にアジアの中で高騰し、そのことがこの90兆円近い外貨準備高を為替リスクにさらすと、こういうことについて大臣はどう認識されているでしょうか。

○国務大臣(谷垣禎一君) 人民元が変動していくと円高になる、まあそういう議論が、あるいはコンセプトが市場にはあるのかもしれません。私、市場がどういうふうに動くかということは私はコメントする立場ではございませんし、それは差し控えたいと思いますが、そういう御議論がよくありますけれども、人民元がどういう水準に行くかということと円がどうなるかということはやや短絡的に結び付けられ過ぎた議論があるのじゃないかなというふうに思います。
人民元の変動が世界経済、世界の貿易や通貨の取引にどういう影響を与えて、じゃ、それが円に跳ね返ってくるかという影響は、それはなしとはしないかもしれませんが、私は一応別個のものと考えるのがまず基本線じゃないかなというふうに思っておりますので、人民元の変動がすぐに円の円高に結び付くというふうにアプリオリに考える立場ではございません。
しかし、一方、これだけの外貨準備をどうしていくのかと、アジア諸国はそのリスクをヘッジするために運用を変えているではないかという御議論、しばしばございます。これは、中国なんかの外貨準備も非常に多うございますから一概に言うことはできませんが、やはり日本は世界一の外貨準備を持っておりますので、やはりその運用がどうかというのは世界のマーケットに極めて大きな影響を与えますので、何というか、我々はなかなかそういう意味では小回りの利く議論をしにくい立場にいるわけでございまして、私の発言も勢い口が重くなるところがございます。
ただ、我が国の外為、外為といいますか、外貨準備というのは結局この介入の原資でございますから、どういう介入をこれからするのかしないのかということを考えたら、おのずからその介入原資の適切な、何というんでしょうか、安全性それから流動性を持ちながら、その介入の原資に適切なものを持っていなきゃいかぬわけでございまして、その範囲でやはり収益性というものを考えるという基本線は私は動かせないのではないかなと思っております。
したがいまして、それは今まで我々が取ってきた立場でございますから、現時点で我々はその外貨準備の運用の仕方を変えていくという考え方は持っていないわけでございます。

○西田まこと君 今大臣から御答弁いただきまして、適切な介入原資としての外貨準備、ドル中心に運用していくという4月4日の財務省の方針が示されましたし、それは通貨安定のために市場介入を行うということを第一義にして、その90兆円近い外貨準備資産、これのドル投資、対ドル投資の収益率を介入によって保っていくということが多分今政策目標としてなっているんだろうなというふうに思われるわけであります。
しかしながら、一方で、基軸通貨国であるアメリカにおきましては、外貨準備高は、2003年、IMFの統計ですと884億ドルでございますけれども、市場介入そのものはまず国民に負担を強いるということで議会などが安易な市場介入を許さないということが言われているわけでありますし、同時に日本政府に対しましても口先介入をやめるべきだという議論が一部の議会人、また産業界からも出てきているわけでございます。
特にGMやフォードといったアメリカを代表する自動車メーカーが一部の格付機関におきましていわゆるジャンク債に引き下げられた、格付が引き下げられたということに象徴されて、かなりその産業界からの力というものは今表に出てきて、それが、アメリカ政府が取るとは私自身も余り思っておりませんけれども、でも少なくとも日本政府による口先介入はそうしたアメリカのいわゆる保護主義者と言われる人たちに絶好の口実を与えているということは、これは事実だというふうに思うわけでございますけれども、現下のこのアメリカから様々来ております口先介入に対する批判につきましては、どう……。

○国務大臣(谷垣禎一君) アメリカの議会なりアメリカの中での動きというのは私もコメントするほど十分承知しているわけではありませんが、やっぱり基軸通貨を持っている国というのは強いなと思うことがございます。やっぱり強いドルが必要な場合には強いドルを主張し、そういう貿易等々でいろんな問題が生じているときは安めの誘導というようなことも御議論が元気に起きてくるというのは、やっぱり基軸通貨を持った強みだなとうらやましく思うこともしばしばでございます。
ただ、我々としては、口先介入と言ってしかられますけれども、G7のコミュニケにもありますように、為替というのはやっぱりファンダメンタルズを安定的に反映すべきもので、それは急激な、何というんでしょうか、思惑的な動きが出てくるということは、これは好ましくないことでございますから、それに対して、そういう思惑的な動きに対して牽制をするということが、さあ、それほど、格好の批判というふうに委員はおっしゃいましたけれども、さあ、そうなのかなというふうに思ったりもするわけでございまして、私としてはG7等と、累次のコミュニケで各国の立場というものが、共通項ができておりますので、それにのっとって対応していきたいということであります。

○西田まこと君 ありがとうございました。
いみじくも今大臣おっしゃったように、この基軸通貨国に対してうらやましいという言葉を言われましたけれども、財務省といたしましてはこれまでもアジアの例えば通貨基金をつくりたいとか、あるいはIMFにおきましてアジア諸国がもっと発言力を強めるべきではないかと、こういうようなことも御指摘されておりました。正しいかどうか分かりませんけれども、中長期的にはややドル離れを加速、加速というか、ドル離れの方向に行かせるかのような動きだというふうに私自身は見ております。まあ間違っているかもしれません。
特に、このアジア通貨につきましては、この間のイスタンブールにおきましても、柔軟な、先ほど、冒頭申し上げましたけれども、必ずしも中国だけではないと思いますけれども、柔軟な為替・通貨政策を採用するべく求めておられますね、この演説におきまして。
こうした中長期の財務省としての方向性、円に対する考え方と当面の為替政策、それは、すなわち四月四日に発表されたものに端的に表れているように、ドルの安定、ドル安は回避していく、これが必ずしもベクトルとして同じではないんじゃないかというふうに思われるわけでありますけれども、最後にそのことを大臣からコメントいただきたいと思います。

○国務大臣(谷垣禎一君) 正式なコメントということになりますと、G7のコミュニケに書いてあるとおり、ファンダメンタルズを反映すべきものだというような棒をのんだような御答弁を申し上げることになるわけですけれども、我々としては、やはり一番基本にございますのは、今おっしゃったような通貨の安定、ファンダメンタルズを反映した安定ということがやはり基本的に大事だと思います。
それと、もう一つ、この間のイスタンブールで盛んに議論が行われましたことは、やっぱりアジア諸国の中で、あのアジア通貨危機というのはもう二度と起こしちゃいけないと、そのためにはアジアの各国がお互いに意思を要するに統一、意思を統一といいますか、共同の意思を持って、やっぱりマーケットに対してもう起こさせないということをはっきりと表明していこうじゃないかという考えが問わず語りに各国にあったと思います。
そのための手段として、第一は、いわゆるチェンマイ・イニシアチブという、ASEANプラス3の間で、流動性がおかしくなったときに、本来これは一国の中であれば中央銀行の役割でしょうけれども、アジアの中でそういうものをつくってお互いに融通し合っていく、それをもっと強化しようじゃないかということで議論が、見直しをしようということで議論が進んでまいりましたし、もう一つ、アジア地域の中にある豊富な貯蓄をそのアジアの中でやはり投資していく方向に振り向けようじゃないかということで、アジア債券市場育成イニシアチブというようなものをやっているわけでございまして、この間の中で新たにまた大きな進展がございましたものは、その現地通貨建てでボンド、債券を出していこうということを今まで工夫してきたわけですが、それに加えて更にこのバスケットの中に入れたような形で債券を出していくということはどうなんだろうと、それを研究していこうということになってまいりますと、アジアの金融的な協力というのは更に進んでいくというふうに考えております。そういう工夫を通じて全体の安定を図っていきたいと考えているわけでございます。

○西田まこと君 終わります。

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