179-参-法務委員会-5号 2011-11-29


2011年11月29日

○委員長(西田実仁君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、徳永エリ君及び溝手顕正君が委員を辞任され、その補欠として江田五月君及び渡辺猛之君が選任されました。
─────────────

○委員長(西田実仁君) 刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の両案を一括して議題といたします。
本日は、両案の審査のため、お手元に配付の名簿のとおり、六名の参考人から御意見を伺います。
午前に御出席いただいております参考人は、明治大学法科大学院専任教授・法学部兼担教授川端博君、保護司・長野県保護司会連合会会長小林聖仁君及び独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究室長松本俊彦君でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にしたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方について申し上げます。
まず、川端参考人、小林参考人、松本参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。
それでは、川端参考人からお願いいたします。川端参考人。

○参考人(川端博君) おはようございます。
ただいま御紹介にあずかりました明治大学の川端でございます。本日はこのような場でお話しさせていただく機会を賜りまして、誠に光栄に存じます。
私は、刑法と刑事訴訟法の研究をしておりまして、今回の刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律案については、法制審議会の部会長を務めました。本日は、本法案に賛成の立場から刑の一部の執行猶予制度に関して意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、刑の一部執行猶予制度の趣旨について申し上げます。
刑の一部の執行猶予制度は、一つの刑として実刑期間と執行猶予とされた部分の期間とを一緒に言い渡すことができる制度であります。これはこれまでにない新しい制度です。この制度導入の目的は、刑事施設における施設内処遇と施設を出た後の社会内処遇とを連携させることによって、その者の再犯防止、改善更生を図ることにあると解されます。
このような刑の一部の執行猶予制度は、そもそも法制審議会部会において、今回の法案の中に盛り込まれております社会貢献活動の導入と同時に審議がなされたものです。この制度は、出所後の社会内処遇を必ずしも十分に実施できるとは限らない仮釈放制度の問題を克服して、施設内処遇を受けた者に対して適切な社会内処遇を可能とする制度であること、再犯を防ぐことによって刑事施設の被収容者人員を少なくすることにつながることなどから、弁護士の委員を始めとする委員全員の賛同を得られたものであります。
次に、諮問との関係について申し上げます。
法制審議会に対する諮問は、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から、社会奉仕を義務付ける制度や社会内処遇などの刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方について御意見を承りたいという趣旨のものであり、調査審議のために設置された部会も被収容人員適正化方策に関する部会というものでございました。
本法案の内容と諮問との関係が分かりにくいとお考えの向きもあるかもしれません。そこで、この点について、部会長を務めさせていただいた者として御説明させていただきたいと思います。
本諮問がなされた当時、過剰収容が大きな問題となっており、また部会の名称が被収容人員適正化方策に関する部会というものであったこともありまして、被収容者人員適正化という点が契機となっていたことは否定できません。しかしながら、部会では一貫して、被収容者人員の適正化の方策といっても、刑事司法全体、社会全体として見ますと、これは単純な問題ではなく実質的で複合的な問題であり、これに対応する法制度の在り方について幅広く検討しようという意味でこの諮問を受け止めたのであります。
つまり、過剰収容対策ということであれば、単純に受刑者を釈放する法制度の検討とかあるいは施設を増設したり矯正職員等を増強したりするという予算問題のような話になるところでしょうが、少なくともそういう形式的な問題としてのみこれをとらえるべきではないと、このように考えたわけであります。
諮問そのものも、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から、刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方等について議論をしてほしいという趣旨のものであって、被収容人員を減らす方策だけを内容とするものではなかったわけです。
我々も諮問の趣旨をそのように受け止め、社会復帰を促進し、再犯を防止して過剰収容の要因を的確に減少させるための法制度とはどういうものなのかという実質的、複合的な問題としてとらえて、その観点から一貫して議論を行い、議論が進むうち、処遇の充実強化を図る法制度がその中心となっていったわけであります。
現時点では過剰収容状態は以前ほど危機的な状況にないと聞いておりますが、なお高収容率であることには変わりはございませんで、また再犯防止は現在の重要課題でありますので、これに対処する立法として今回の措置は重要な意義を持つものであると考えております。
次に、刑の一部の執行猶予を採用するべきであるとの結論に至った議論の経過について申し上げます。
社会内処遇の在り方というテーマの下では、施設内処遇と社会内処遇を適切に組み合わせる制度が再犯防止に有効に機能するのではないかとの考えの下、一部執行猶予制度のほかにも議論された制度が幾つかございました。御参考までにそれらの内容について御紹介させていただきたいと思います。
議論の対象となった制度として、まず第一に、必要的保釈制度があります。これは、言い渡された刑の一定の割合を執行した後に必ず仮釈放をし、その仮釈放の期間、保護観察に付すという制度です。第二に、仮釈放の期間についてのいわゆる考試期間主義があります。これは、仮釈放の期間を残刑期間に限定せず、仮釈放の時点における再犯の危険性を基準として仮釈放期間を定め、その間、保護観察に付すという制度です。それから第三に、いわゆる分割刑制度があります。これは、判決において懲役又は禁錮とその後の保護観察の両方を言い渡すことを可能とする制度であります。
第一の必要的保釈制度につきましては、施設内処遇のみを実施して満期で釈放するような場合と比較しますと、社会内処遇の期間を必ず確保することができますので、再犯防止や改善更生を図ることができ、その点では望ましい制度であるという意見もありました。しかし、この制度によったとしましても、特に全体の刑期が短い場合には仮釈放期間もごく短期間となって、やはり保護観察期間が短くなってしまうのは変わらないこと、社会内処遇としての保護観察がどれくらいの期間必要なのかを決めるには対象者の個別の事情を考慮することができるのが望ましいので、その点において一定の割合で一律に仮釈放としてしまう必要的仮釈放制度は適当でないこと、裁判所が判決で言い渡した刑期のうち服役する期間を一律に短くしてしまうことには違和感がある、こういったことの意見も出され、意見の一致を見ませんでした。
第二の考試期間主義につきましては、施設内処遇を実施した状況を踏まえて必要な社会内処遇の期間を決めるという制度内容から見て、検討に値するという意見も見られました。しかし、仮に残刑期間を超えて社会内処遇の期間を決めることができるとすれば、実質的には刑の事後的な変更に当たることとなるので導入は難しいと、そういう意見の方が多かったわけであります。
第三の分割刑制度ですが、これについては、自由刑の後に課される保護観察の法的性格をどのようにとらえるべきかという問題点、また、保護観察中の義務違反があった場合に執行猶予の取消しのような不良措置をとることができないことから、その実効性をどのように担保するかといった問題点などが指摘されました。
以上に対して、刑の一部執行猶予制度は、他の制度と比較いたしますと、我が国の現行制度や実務の運用に最もなじみやすいと考えられました。議論の中では、裁判所が判決時に実刑期間終了後の社会内処遇についてまで考えて判断するようなことが本当にできるのかといった指摘はありましたが、罪名や刑期など刑の一部執行猶予を言い渡すことができる場合を限定した上でこれを導入すべきであるということになり、三年以下の懲役又は禁錮を言い渡された初入者と薬物使用等の罪を犯した者をそれぞれ対象とする刑の一部の執行猶予制度が要綱案としてまとめられたわけであります。
次に、寛刑化、厳罰化するものではないのかという御懸念があろうかと思われますので、この点について申し上げます。
つまり、刑の一部の執行猶予制度に対しては、これまで全部実刑とされた事案とそれから刑の全部を執行猶予とされた事案との中間領域に適用されるものでありますから、本来であれば全部実刑であったものをその一部についての執行猶予とするもので、従来よりも刑を軽くするものではないのか、あるいは逆に、これまで全部執行猶予となっていたものについてその一部を実刑とするもので、刑を重くするものではないか、こういった意見があると伺っております。
この点につきましては、刑の一部の執行猶予制度は、これまでと同様に刑事責任に見合った量刑を行うことを当然の前提として新たな刑の選択肢を設けるものであって、従来と比較して量刑を軽くしたり重くするといった変更を意図するものではないという内容の答弁が大臣や法務当局からもなされたものと聞いております。このことは法制審における議論でも明確に意識されておりまして、当然のこととされておりました。
この点に関して部会の議論を若干紹介することにいたします。次のような御意見がありました。
短期間の施設内処遇に効果があるのか、意義があるのかという点についてですが、先ほど紹介のあったショック療法という形で意義のある場合ももちろんあると思います。しかし、部会の議論では、どちらかというと、短期間の施設内処遇に意義があるから従来施設内になっていなかったものを施設内処遇にしようという意見よりは、実刑にせざるを得ない場合に、従来であれば丸々施設内で処遇する、仮釈放の可能性はありますけれども、全部実刑になっていたものを一部執行猶予制度を設けることでできるだけ早く社会内の処遇につなげていこうという、そちらの方の議論の方が強かったのではないかと私は理解しておりますという御意見や、この部会でこの問題を議論しておりますと、揺曳したといいますか、それにあった疑問は、この制度改革によって一体刑罰が重くなるのか軽くなるのか、どちらの方向へ動かそうとしているのかということでありました。しかし、先ほど委員が短い期間でも新たに実刑にしようという趣旨は部会では主張されなかったと言われましたが、それは少なくとも明らかに重くしようという方向に対しては部会は消極的であったということの表明であったろうと思いますといった御意見が表明されていたのであります。
この点は、改正案の条文上も明らかであると思われます。すなわち、改正される刑法第二十七条の二第一項では、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときに刑の一部執行猶予を言い渡すことが可能であることになっております。そして、この意味は、再犯防止、改善更生という特別予防のために必要であり、そのような特別予防の観点と刑事責任の軽重に応じてこれに見合った刑を科すという観点から相当と言えるかどうかが判断要素となると理解されているところであります。
さらに、裁判官の量刑感覚という観点から申しますと、これまで全部執行猶予となっていたものに一部執行猶予を適用されるのではないかといった御懸念についても当たらないと言うことができると考えられます。
すなわち、一部執行猶予は、刑の一部を執行猶予とする反面、一部であっても実刑とするものですから、従来であれば全部執行猶予となっていたような事案に対して、実刑部分を伴う一部執行猶予を言い渡すことが刑事責任の相当性を考えてもなお許容されるという事態はほとんど生じないと思われます。また、服役することによる様々な不利益も念頭に置いて裁判官が実刑か執行猶予かを決めていたこれまでの運用からしますと、ごく短い実刑期間を定めた一部執行猶予を安易に言い渡すこともまずあり得ないだろうと思われます。
以上、刑の一部執行猶予制度について私の意見を述べさせていただきました。
本法案は、再犯防止、改善更生という観点から、裁判所が判決において言い渡すことができるものとして、従来にはない、刑の一部の執行猶予という制度を導入するとともに、社会内処遇としての保護観察について充実強化を図ろうとするものであり、再犯防止が課題となっている我が国の現状に鑑みますと非常に有意義なものであると考えます。
平成十八年の法制審から本法案にかかわった私といたしましては、先生方の御賛同を得まして本法案が今国会において成立することを希望いたしまして、意見陳述を終わらせていただきます。
御清聴ありがとうございました。

○委員長(西田実仁君) ありがとうございました。
次に、小林参考人にお願いいたします。小林参考人。

○参考人(小林聖仁君) 私は、保護司を拝命しております小林聖仁と申します。
保護区は、長野県のほぼ中央に位置します岡谷保護区でございます。また、長野県保護司会連合会の会長も務めさせていただいております。本日は、私ども保護司の現場の声をお聞き取りいただける機会をつくっていただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、早速でございますが、保護司から見た更生保護の現状等について述べてみたいと思います。
私は、保護司を拝命しまして今年で満三十二年務めさせていただいております。保護司を引き受けた動機でございますが、前任者が、この方は小学校の教員でございましたが、高齢の理由で退任されまして、前任者とはPTA活動等を通じまして親交がありました。そんなところから推薦をいただいたわけでございます。また、私は寺院の僧侶でございますが、住職をしておりました父親が保護司であったというふうなこと、また父親の保護司活動を思い出しながら僧侶として地域社会の役に立てるものと考えて引き受けたわけでございます。
私は、今長野県におりますが、福島県の白河に生まれまして、その白河の方の寺の住職をしていたのが父でございましたが、その当時、当時といいますのは戦後間もないころ、二十年の後半から三十年代にかけてでございますが、農村部を、幻灯機といいますか、今のスライドですけど、そういうものを自転車の荷台に付けながら、青少年の健全育成、紙芝居、幻灯、そういったものを通じて、戦後の厳しい時代に子供たちの励ましの意味でそういう活動をしていた父が保護司をしていたわけでございます。そういうことを思い浮かべまして、推薦されましたので受けたところでございます。
最近、私は、組織活動の方に専念しておりまして対象者をここ一、二年は持ってはいないわけですけれども、最近の対象者あるいは保護司になったころの対象者とはまた大きく変わってきております。といいますのも、これは社会状況が大きく変わっているからだと思うわけでございます。多くの識者が指摘されますように、特に青少年の場合、自己中心の価値観、あるいは地域力とか家庭教育力が低下している、人間関係の希薄化、皆さんが指摘するようにそういったものが、対象者を持ちながら保護観察を続けていますとそういうことを感じさせていただいております。
実際に、保護観察期間中に更生していくというのは非常に難しいものがあります。といいますのは、期間がやはり短いわけでございますから、その中で私どもが指導し、そしてすぐに、よし分かったといって改善更生するものでもないわけであります。むしろ裏切られたり再犯をされたりして自分の非力を感じたり、もうこれは保護司は務まらないなと、そんなような経験も何度も感じました。
しかし、保護観察期間中ではなくても、保護観察期間が終わって五年、十年たったころに、結婚したとかあるいは子供ができたとか言って訪ねてきてくれたり、あるいは町の中で行き合ったときに気軽に声を掛けてくれたり、そういうことが大変また励みになって保護司を続けてきたわけであります。
たまたま私の寺の檀家の方でございましたけれども、対象者でございましたが、ついせんだってですけれども、三回忌の法事がありました。そのときに、自分の犯した非行や家族に掛けた迷惑のことを思い出して、母親の三回忌の場でございましたが、終わった後に涙を流して、母親に申し訳ないことをしたという涙を流しておりました。そういうふうに気付いたことがまた大きな、お母さんへまたその気持ちは届くよと慰めながら、また更に頑張るように話したところでございます。
最近はなかなか、先ほど申しましたように、保護観察期間中に更生していくというふうなことは本当に難しい時代になってきております。まさに規範意識の低下や、あるいは家族の無理解、家族のきずなの希薄化、そういったものを保護司として活動している中で肌で感じているところでございます。
さて、御存じのように、平成二十年六月一日に新更生保護法が施行されました。これは、先ほどから川端参考人からもお話がありましたように、再犯防止あるいは対象者への特別遵守事項の強化、少年の保護者への指導、犯罪被害者への配慮などが盛り込まれていたところでございます。よく加害者も被害者だと、そういう言い方がありますが、同感でございます。保護司は、やはり対象者に対して慈愛の心を持って、優しさと厳しさの両面から処遇を心掛けているわけでございます。先ほど申しました私の父親からも、保護観察対象者に寄り添う者は、絶えず慈愛の心を持って、そしてさらに自己を高める、人格を高められる努力をしなさいとさんざん言われたものでございます。
それから、私は、配属している、先ほど申し上げました岡谷保護区、長野県の岡谷市でございますが、岡谷地区に設置の更生保護サポートセンターについて述べてみたいと思います。
岡谷市の諏訪湖畔に諏訪湖ハイツがあります。この諏訪湖ハイツは、市の社会福祉総合センターとして岡谷市社会福祉協議会あるいは岡谷市障害者支援センター等が入っております。温泉施設や大会議室、研修室、大小様々な部屋のある施設であります。この施設に更生保護サポートセンターがスムーズに入居できたのは、社会を明るくする運動や犯罪・非行予防活動、青少年健全育成活動など、平素より保護司会活動を市当局や市民が評価してくれたことと自負しているところでございます。
この更生保護サポートセンターを保護司会を始め関係団体が更生保護活動の拠点として活用しているわけでございますが、具体的には、保護司や観察官が対象者との面接の場、実際、都市部の保護司さんはアパートやあるいはマンションにお住まいの方があります。そういう中での面接といいますと、なかなか家の造りが人を招き入れるようなそういう形になっておりませんのでやりにくい面がありますし、また、町村部の保護司さんの自宅では、やはりその保護司が、小さな地区でございますと、もう誰が保護司だというのが分かるような小さなところでございますと、その家に出入りするということ自体が対象者にとりましても非常につらいことでございます。
そういう意味では、このサポートセンターの面接室を使うということが非常に保護司にとりましても対象者にとりましても有り難いことかなというふうに思います。この施設は不特定多数の者が出入りしておりますので、そこに対象者が出入りしても対象者と気付かれない、そういうところがあると思います。
また、保護司会の各種研修会、あるいは関係団体等の会合、研修会、市民等の非行問題や引きこもり等の相談窓口、さらには、これは最近のことでございますが、中学生保護観察対象者の学習支援、こういったものが、BBSあるいは更生保護女性会の皆さん方のお力もお借りしながらそういう活動もしております。このサポートセンター、非常に幅広く活用されているところでございます。
岡谷地区保護司会は、岡谷市社会福祉課に置く事務局と、この更生保護サポートセンターに常勤する企画調整保護司という者がおりますが、これらが運営の事務全般を担って活動をしていただいております。
更生保護サポートセンターが設置されましてから県内外から視察に来られる方が増えてまいりました。岡谷地区保護司会は一市で一保護司会という大変恵まれたところにありまして、そういう小規模の保護区のサポートセンターということできっと視察に来られる方が増えてきたのだなというふうに思うところでございます。
県内の保護区からも早く設置してもらいたいというような声も出ております。たまたま、今申したように、岡谷地区の場合、一市一保護区という恵まれた環境にありまして、市内のほぼ中央にこの諏訪湖ハイツが所在するところから距離的にも非常に使い勝手が良く、隣接の保護区の一部の保護司さんにも利用していただいております。
全国の保護区に増設していただきたいところでございますが、限度もありましょうが、効果や使い勝手の点からしても保護区単位に一か所は欲しいところでございます。どうぞまた増設をできれば本当に有り難いなというふうに思うところでございます。
まさにこの更生保護サポートセンターは、私ども保護司が保護司活動の拠点として大変有効なものだと岡谷の場合は実感しております。
今回の法改正である刑の一部執行猶予制度について述べさせていただきます。
仮釈放・三号観察の保護観察期間は残刑期間であり、比較的短期間のものが多かったのでありますが、一部猶予者につきましては、刑務所出所後に相当期間、一年あるいは五年くらいの中でしょうか、保護観察を実施することになります。短期間では十分な指導や援助ができず、再犯につながる心配がありましたが、十分な保護観察期間を確保できることは有り難いと思っております。
私も、長い保護司活動の中で薬物使用の対象者を受け持ったことがございます。たまたまその対象者は私のすぐ近くの者でございましたが、暴力団の準構成員という立場でおりまして、その父親の子供、息子でございますが、これも同じように薬物に手を染めたんでありますが、この子供の方は東京で検挙されまして、帰住地がたまたま岡谷というようなことで親子を担当したことがございますが、やはり、薬物使用者ということは常習性がありますし、短期間でというのは非常に、その短期間の中で保護観察で更生するということは、一般の対象者と同じように、それ以上に容易でないところがあるわけでございます。
それから、規制薬物等に対する依存症のある保護観察対象者に、この処遇プログラム実施については主に観察官の担当ですが、私たち保護司は、関係機関あるいは病院、保健所、精神保健福祉センターとか、そういった方々の担当者を、地元にいる保護司として接点が多いわけでございますので、観察官のパイプ役といいますか、そういう役目もあるのかなと、地域に詳しい保護司が観察官と一緒にそれらの関係機関との連携を図っていく、そういう役目もあるのかなというふうに思っております。
時間が押してきましたので、多少早めに、早口で申し上げたいと思います。
社会貢献活動の導入についてでございます。
保護観察対象者が社会に役に立っていると実感すれば、社会の一員として認められる喜びも体感できて、規範意識の向上や改善更生、再犯防止に大変有効なものと考えます。その場合の場面として考えられることは、公民館とか市役所とか公園とか、そういったところの環境美化活動とか、あるいは福祉施設等の介護補助活動など、こんなことが考えられるわけでございます。
最後に、刑の一部の執行猶予制度及び社会貢献活動の導入によりまして、先ほど川端参考人からもお話がありましたが、控室の方で話があったわけでございますが、保護司の負担が増えそうですねというお話がございました。恐らく増えてくるのかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、保護観察期間が長くなっていくということでは、保護司としてはその点だけでも大分気持ちの上で有り難いかなと。先ほど申しましたように保護観察官が主に進めるわけでございますので、私どもは、薬物依存の高い対象者の処遇には、保護司としては限界がありますけれども、観察官と協働して務めてまいりたい、このように思っているところでございます。
ちょっと時間が来てしまいました。
私ども、全国五万人近く保護司がおるわけでございますが、先生方の地元にも身近に保護司さんがおいでかと思います。どうか行き合いしたときには励ましの言葉をいただけたら有り難いなと、そんなふうに思うところでございます。
少し時間が過ぎまして失礼をいたしました。
ありがとうございました。

○委員長(西田実仁君) ありがとうございました。
次に、松本参考人にお願いいたします。松本参考人。

○参考人(松本俊彦君) おはようございます。松本と申します。私は、薬物依存症を専門とする精神科医です。これは、精神科医の中では絶滅危惧種に近い非常にマイナーなものです。
本日は、精神科医療の立場から、薬物依存者の治療と回復という観点で話をさせていただければと思います。
話は、お手元にありますこのカラーのパワーポイントを打ち出したものに沿っていきます。適宜資料を御関心がある方は、細かく資料も一応付けてありますけれども、話の中では余り触れることはないかと思います。
まず、薬物関連事犯の再犯率がなぜ高いのか。これは、私どもはかねてより主張しているのは、そもそも薬物依存症なんだと、依存症という病気があるから、その治療がなされなければやはりなかなか、何度も捕まっても同じ人が何度も何度も繰り返すという事態があるのではないかというふうに言ってきました。実際、この薬物依存症という病気は、世界保健機構、WHOの精神障害の診断分類の中でも明記されているものですし、我が国の精神保健福祉法の中でも精神障害として明記されています。
私自身は、実は十年ほど前から少年鑑別所や少年院あるいは刑務所の中で受刑者に対するプログラムあるいは治療にかかわってきました。例えば、ある成人の刑務所の中で薬物、覚せい剤取締法の累犯者を集めた依存症のプログラムをやっているときに、あなたはこれまで覚せい剤が理由で親や兄弟あるいは友人や親分に焼きを入れられたことがありますかという、ちょっと品のない質問をすることがあります。そうすると、全員があるというふうに言っています。焼きを入れられてどんな気持ちになりましたかというふうに聞くと、みんな余計にやりたくなったというふうに言っています。実はこれが依存症なんですね。一旦依存が成立すると、実は罰が罰として有効に作用しない、下手をするとそれが逆に破れかぶれな気持ちを起こさせて、かえって薬にのめり込んでしまうという事態をもたらす、このことはやっぱり我々はまず前提として理解しておかなきゃいけない。
そして、例えば、私がかかわっている、さほど犯罪性が進んでいない人たちが入っている成人の刑事施設の中にいる薬物乱用者を調べてみると、その三五%は専門医療機関にいてもおかしくないぐらい重篤な人たちです。それから少年鑑別所、未成年ですよ、未成年のその施設にいるそこの薬物乱用者を調べてみても、約一三%はかなり重症な薬物依存症です。これに対して我々は何をしたらいいのかということを考えていかなければいけないと思います。
次、おめくりください。
薬物乱用防止のために必要な施策というのは、一つに供給の低減だと思います。それからもう一つは需要の低下です、減少ですね。まず一つ、前者の供給の低下というのは何かというと、それは取締りです。じゃ、需要の低減というのは何かというと、要するに依存症に対する治療なんですね。
それが不足しているよということを明記したのが、この平成二十年の八月に出された第三次薬物乱用防止五か年戦略の中で、このアフターケアが、治療が目標の二番目に、従来よりも順番が上がって二番目に来ているということ。その中で、医療体制が非常に不十分であって、これをもっと充実させなければいけない。それから、治療法というものが我が国にはなかなかない。これまで薬物依存に関しての支援でずっと尽力してきたのはダルクという民間団体です。逆に言うと、専門家までが何もかもがダルクに丸投げをしている状態があって、ダルクも本当に疲れています。中でおかしくなっても、なかなかすんなりと診てくれる精神科医療機関がない状態。
実際、我々も、ほかに打つ手がないので、とにかくあなたはダルクに行きなさいというふうに言います。でも、行ってくれる人は実は僅かなんですね。あそこにつながっている人は相当なエリートだというふうに言ってもいいくらいなんですよ。でも、本人が嫌だと言った場合我々はどうしてきたかというと、あっ、こいつはまだ自分の問題の深刻さが分かってない、もっと痛い思いをしないと駄目だなというふうになっちゃうんです。でも、痛い思いをするうちにもっと深刻なことになったり、中には命を失うような結果になっている人たちもいるんだということ。
そういう意味では、この目標二というのは非常に重要なことが書いてあるんですが、少なくとも、私が見ている限り、これに関しては今もって私自身が実感できるような進歩がなされていないというふうに感じています。
次、お願いします。
次にお示ししたものは、精神科医療の現状です。これは、精神科医療機関に入院している患者さんたちをこの六月三十日という定点観測で経年的に追っているデータなんですね。そうすると、覚せい剤に関連した精神障害者は全国で七百六十二名いるんですけれども、このうちこういう患者さんを診てくれる施設はどのくらいあるのかというと、全国で入院ベッドのある精神科医療機関が千六百数十ある中で実はほんの僅かなんですね。大体、ちょっとでも診てくれているのは一割前後です。
実は、この千六百四十幾つのうちの〇・二%にしか当たらない四つの病院で覚せい剤関連患者さんの一二・七%を診ている。だから、実は本当に国内の少数な病院が一手に引き受けてやっている状況がある。ほとんどほかのところで診てくれないんですね。
これは何を意味しているかというと、覚せい剤のことで精神医学的な問題が生じたときには、遠くにある病院に行かなきゃいけない。そして、入院中はプログラムを受けれるけれども、実は依存症の治療というのはその後の通いが中心なんですよ。通うに通えない距離、アクセスできるプログラムが非常に少ないということが問題なんです。
さらに、次、おめくりください。
全国の病院の中で、少数とはいえ、この薬物関連の精神障害を診てくれる病院はそれでも少数ながらあります。あるけれども、そこでなされている医療の大半が、例えば覚せい剤であれば、覚せい剤によってもたらされた幻覚や妄想の治療なんです。でも、それが消えた後に、一見何も病気はなくなったように見えますが、実はそこに依存症という一番根本の問題があるんです。幻覚、妄想を治すことはさほど難しくありません。しかし、依存症を治さないと、また使ってしまって同じことになってしまうということ。
ここに示してあるのは、薬物依存症に特化したプログラムがありますかというと、診てくれている僅かな病院の中でも実は五・一%しかプログラムがない。ほかの病院で少しアルコール依存症のプログラムを利用しているところもありますけれども、なかなか代用という限界を免れることはないんだということも強調しておきたいと思います。
さらに、次、おめくりください。
実は、この覚せい剤依存あるいは依存症というのは、メンタルヘルスの問題としてとても深刻な問題をいろいろはらんでいるんだということをまず御理解いただきたいと思います。
アルコール依存症と比較した場合、アルコール依存症というのは、典型的には、学校を卒業し仕事をして適応的な社会生活をする中で、四十代の後半あるいは五十代の前半で病院に来ることがほとんどです。しかし、薬物依存症を見てみると、十代の半ばから社会逸脱行動、不適応行動の一環として発症しているんですよ。多くの方が三十代前半ぐらいで病院にたどり着きますが、そこで薬をやめても、その後の生きづらさみたいなものがなかなか解決するのが大変です。
リハビリテーションというのはリ・ハビット、かつての習慣を取り戻すという意味です。しかし、薬物依存者はそもそも取り戻すべき習慣がないんだということ、そのためには濃厚なサポートが必要だということ、そしてそもそも十代の前半から薬を使わなければいけなかった背景には何があったのか、過酷な養育背景、虐待とかネグレクト、あるいは学校における深刻ないじめ、自分のことが好きになれない、こういう問題を持っているんです。
ですから、薬物依存症の治療をするようになって三十代前半に来ても、ほかに合併する精神障害が非常に多いです。幻覚や妄想が続いていたり、あるいはうつがあったり、あるいはちっちゃいときの虐待のトラウマが今でもフラッシュバックをして、フラッシュバックを消すために薬が必要になっている人もいる。だから、いきなり薬をやめると逆に死にたくなっちゃう人もいるんですね。
ここにお示ししたのは、アルコール依存症の人と覚せい剤依存症の人を比べて、うつや自殺傾向がどのくらい違うのかということです。
一番上にあるのはK10といううつの尺度です。二十五点以上だと押しも押されぬうつ病の疑いがあるということを示すものですが、見てみると、アルコール依存症に比べると覚せい剤依存の患者さんの方がはるかにうつが深刻です。それから、下にあるのは自殺の尺度です、M・I・N・I・というものです。十点を超えるとかなり切迫した自殺の危険があるんですけれども、覚せい剤依存の患者さんたちはもう平均値においてこの十点を超えているんだということ。そういう意味では、非常にメンタルヘルスの問題を多くはらんでいるということです。
次におめくりください。
皆様も御承知のように、平成十年以降、我が国の自殺者の総数は三万人を超えて、それが十三年間今日まで高止まりしているわけなんですが、その自殺対策の中でも、やはりうつ病に並ぶ疾患の一つとしてこの薬物依存症は明記されているんですね。しかしながら、実はこれに関しても、私としてもきちんとした対策が取られているというふうには思えないでおります。
その次、おめくりください。
このような覚せい剤を始めとする薬物依存症に対してどのような治療をしたらいいのか。海外では様々な実証的な研究がございます。その実証的な研究を全てまとめたものとして、アメリカにあります国立薬物乱用研究所がホームページに掲げているものがあります、薬物依存治療の原則としてですね。
その中で、幾つか抜粋させていただいております。まず一番最初に、薬物依存症というのは脳の病気なんだということ、しかし適切な治療や援助があれば回復できるんだということ。それから次が一番大事ですね、この薬物依存症の治療で一番大事なのは治療期間を十分に取ることです。施設の中ではなく、地域の中で長くやればやるほどその治療転帰はいいということが明らかにされています。そしてほかにも、様々な本人のニーズを考えて様々な治療オプションを考えるべきであるとか、合併する精神障害に対するケアも大切であるとか、強制的な治療であったとしても実は結構効果が出るんだということも言われています。
アメリカにおけるドラッグコートという仕組みがあります。刑務所に入れる代わりに裁判所の命令によって地域の治療施設に通うんですね。これは成果を出しています。地域の治療施設の中には、裁判所から言われて嫌々来ている人と自分の意思から来ている人がいます。この両群を追跡し、どちらの方が回復率が高いかを調べてみると両者が変わりありません。だから、最初のきっかけが、ある縛りであったとしても、やがてそこから自発的な治療に向かう人が結構います。
全国でダルクが今六十数か所あります。施設長がそれぞれいます。でも、その施設長たちが、かつて喜び勇んでダルクに行った人たちかというと、そうではありません。嫌々ほかに行くところがなくて行っている人たちです。でも、まあ渋々やっているうちに、あっ、これっていいかもしれないと思って薬を使わない生活を選択しているんですね。今回のその制度の中でそういった最初のきっかけを与えることができれば、これは非常にすばらしいというふうに思っています。
次、おめくりください。
次は、これはアメリカのデータなんですけれども、何を意味しているかというと、一番上の矢印が付いた高いグラフ、これは何かというと、刑務所の中でもプログラムをやりました、刑務所を出てからも地域内でもプログラムを送りました、そういった人たちの再犯率を調べたものなんです。
その下の方に低いところに行っているグラフがたくさんあると思います。これは、全くプログラムをやらなかった場合、あるいは刑務所の中だけでプログラムをやった場合、刑務所の中でやって地域でもちょこっとやったけれども途中でやめちゃった場合。これ見てみると、実は刑務所でどんないいプログラムをやっても地域でプログラムをやらなければ何もやらないのと余り効果が違わないんですよ。逆に言うと、地域でも出た後きっちりアフターケアをやると相当に再犯率が下がるよということなんですね。
だから、日本の状況に合わせれば、矯正でかかわり、保護でかかわり、そして可能であればその後の地域でも支援がなされなければならないというふうに思っています。
その次、おめくりください。
そういったことを踏まえて私なりの提言なんですけれども、実は私自身の臨床経験の中で感じていることなんですが、薬物依存症の患者さんがしばらくやめていた薬物をまた使い始めやすい一番危ない状況はいつかというと、刑務所を出所した直後、それから保護観察が終わった直後、そして病院を退院した直後なんですよ。だから、実は地域に出たときこそが一番大事なんですね。だから、今刑務所の中でもプログラムをやっています。保護観察所でも、不十分ではありますけど、ぼちぼちやっております。
これだけやって、もしも再犯率が下がらなかったとするならば、それは実は地域の問題です。これは実は管轄する省庁は厚生労働省になるわけなんですが、そこをしっかりやらなければ、幾ら法制度の中でしっかりやってもうまく地域に移行していかないだろうと。そういうふうな地域の支援資源ときちんとうまく結び付いてやれるのであれば、この地域内処遇というのは非常にうまくいくだろうと。
是非、僕はこの地域内処遇をやるに当たってお願いしたいなと思っていることがあります。できれば、例えば司法機関から一気に民間機関に行くんではなくて、そこに少しマネジメントという形で地域の公的な保健福祉機関、例えば精神保健福祉センターや保健所というところがやっぱり一枚かんでほしいと思うんですね。そうしなければ総合的、包括的な支援ができませんし、きめ細やかなその患者さんの状況に応じた対応ができないと思います。中には医療が必要な人もいるでしょうし、医療は要らないけれども少し福祉的なサービスが濃厚に必要な人もいるかもしれない、あるいは民間的なサービスで十分な人もいるでしょう。そこのところをトリアージする場所が必要だろうと。
ダルクはこれまでも非常に重要な役割をしてきましたし、これからも重要な役割をすると思います。しかし、それに加えてほかの選択肢も用意していかなきゃいけない。そのためには、やはり精神科医療機関の人たち、薬物依存の患者さんをみんな嫌がっています、招かざる客です、でも、それがもう少し診やすい体制を整える必要があるだろうと。実は、アルコール依存症の入院治療に対しては昨年度から診療報酬の加算がなされています。しかし、より治療が大変である薬物依存症に対しては加算が付いていません。こういうふうな、実は地域の側の受け止め体制をもう少し整えることも並行して行っていくということがこの地域内処遇を成功させる上での一つの秘訣だろうと思います。
次、おめくりください。
私は先ほど、医療の中には薬物依存症に対して打つ手がないというふうに言ってきました、専門家も絶滅危惧種のように少ないというふうに言ってきました。しかし、五年ほど前から私どもは、アメリカで広く行われているマトリックスモデルと言われる覚せい剤依存に対する外来治療プログラム、これを参考にして、日本でもこういう外来治療プログラムを開発し、それをあちこちに普及させる活動をしております。SMARPPという名前なんですが、この名前の由来は、そもそも私が勤めていた神奈川県立せりがや病院のそのせりがやという名前をちょっと中に取り込ませていただいているわけなんですが、このプログラム、認知行動療法を軸とした包括的な外来治療プログラムです。
ワークブックとセラピスト用のマニュアルがあります。これをやることによって、研修会をすることで、実は専門家が少ない我が国でも速成である程度の専門家を養成し、いろんなサービスを提供することができるようになります。実はこれ、全国の保健・医療機関、約三十か所ぐらいまで今広がっています。ダルクの中でも、ダルクのプログラムに加える形でこれをやりたいというところが出ていて、現在は五か所でそういったプログラムをやっています。いろんな形で、当事者のプログラム、専門家のプログラムがくさび状に絡み合う中でサービスを提供できればというふうに思っています。
次、おめくりください。
かつて専門家の中で、覚せい剤依存症の治療は司法機関がやるべきか医療機関がやるべきかなんというふうな議論をなされた時代もあります。でも、これは非常に甚だ不毛な議論だったと思います。医療機関であれ司法機関であれ、その人が覚せい剤依存であるということを見付けた場合には直ちに援助や介入を始めるべきであって、その方が司法から医療、医療から司法に行ったときにも継続してサービスがなされなければいけません。
なぜならば、薬物依存症というのは再発と寛解を繰り返す慢性疾患です。糖尿病や高血圧と同じです。しかし、失敗を繰り返しながらも、サービス、援助を受け続けていると、それでも受けていないよりも薬をやめる率が高いです。中にはやめられない人もいますけれども、やめられない人たちを調べてみても、治療を受けていた人の方が逮捕される回数あるいは職業的な状況あるいはメンタルヘルスの状況がいいということが分かっています。そういう意味では、やはりサービスをつなげる必要がある。
確かに、一援助機関で薬物依存者と向き合っていると、まるでざるで水をすくっているような不毛感にとらわれることもあります。これは多くの機関の専門家がそう言っています。だとするならば、ざるを多重構造にすればいいと思います。そうすれば目の上に残る水も少しでも多くなるでしょう。
いろんなところでつながるような、医療、司法、地域の中でつながる。そして、薬物依存者を最終的に見るのは、司法でもなければ医療でもありません、地域です。地域の中で一市民として生きていて良かったと思える人生を送れるようにサポートするのが最終的なゴールだと思っています。
私の話は以上です。

○委員長(西田実仁君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

○中村哲治君 民主党の中村哲治です。
先生方、本当に今日はどうもありがとうございます。
まず、川端参考人に伺います。
先ほど松本参考人のお話にもありましたように、薬物依存症というのは病気であると。先ほど松本先生のお話にもありましたように、この依存症が発見された場合には早期に介入をした方がいいというのは、医療的な観点からは指摘をされております。
一方で、普通の薬物犯が発見された場合には逮捕されて普通の刑事手続にのっていくわけですけれども、しかし、やはり依存症が病気であるということであれば、通常の刑事司法と並行して治療を行っていくというようなことが必要と考えられると思うんですが、その辺りのところは部会の中で議論はあったんでしょうか。

○参考人(川端博君) ただいまの中村先生の御質問は非常に鋭い指摘を含まれたものでございまして、病気であるという点については我々も共通認識を持っておりまして、それをどう治していくか、治療していくかということを前提にした上で、しかしながら、薬物使用の罪ということでこれはれっきとした犯罪でございますので、これは犯罪行為としての、司法機関がそれを正しく認定した上で量刑でその点を考慮すると。我が国のシステムとしてはそれが正しい在り方であり限界だろうというように考えております。
もしドラッグコートみたいな形で、司法からほぼ切り離した形で専ら治療だということであればそういうことも可能でしょうが、現行法上はそれはかなり難しいということで今回のような結論に至った次第でございます。

○中村哲治君 そのお話を伺って、やはり刑事司法の在り方全体を見直していくプロセスに今入っているのかなと感じております。今、刑事司法の在り方については特別部会が法制審の下に置かれておりますけれども、このように裁判手続にかかる前に治療をどのような形で組み合わせていくのかというようなことが必要だというふうに私印象を受けたんですけれども、川端参考人はどのようにお考えでしょうか。

○参考人(川端博君) ただいまの御指摘は非常に大事な点だろうと思いますが、しかし、これは司法制度全体の中で考えなきゃいけないことでございます。従来から、犯罪として、それから抑止効を持っている刑罰というものでこの薬事犯に関して一定の対応をしてきております。それはそれで成果を上げているわけでございます。そういった観点からしますと、今直ちにこれを全面的に改めて対応できるかというと、かなり難しい面があるのではないかというように考えております。

○中村哲治君 今の参考人のお話を伺いますと、やはり社会的リソースをいかに増やしていくのかということは先の課題だということが分かります。
それでは次に、小林参考人に伺います。
私も、奈良地区で更生保護サポートセンターに行ってまいりました。そこで保護司さんの皆様からいろいろ御意見をいただきました。その中で、やはり更生保護サポートセンター、年間十万円ぐらいの実費弁償の費用ではなかなか運営ができないという切実なお話を伺いました。
現在、パイロットプロジェクトも含めて五十五か所の更生保護サポートセンターが設置をされているということでございますけれども、先ほどお話のありましたように全ての保護区にサポートセンターを置くとなると、保護司さんの負担も大変でしょうし、予算もある程度必要になってくると。様々な課題があると思うんですけれども、パイロットケースを経験されて今後何がこの更生保護サポートセンターを増やしていくために必要なのか、お考えでしょうか。

○参考人(小林聖仁君) 確かに十万円ほどの運営予算では本当に年間のこととして不足でございますけれども、地方自治体、市役所とか、それらの方の理解がかなりありまして、例えば、電気、ガス、水道代、あるいは事務機器を貸与していただくとか、そういうものがあって辛うじてやっているところですが、まだまだ足りないのは事実でございます。
全国にということになると保護司の負担が多くなるのではないかということでございますが、やはり保護司会で事務局を担当するような者は、小さな保護区ですとほとんど、会長、副会長あるいは会計担当の者は組織活動の仕事を全部自分の自宅に持ち込むわけです。そういう意味からして、やはりこのサポートセンターがあることによってそこにそれらの機能が集約できるということで、大変そういう意味で有り難いというふうに申し上げたわけですが、やはり地方自治体に何らか保護司活動についてもっと支援するようにというようなお声がいただければ本当に有り難いなと。私のところはうまくいっている方の例なんですけれども、なかなか思うようにいかないところもきっとモデル地区の中にはあるのではないかなというふうに思っております。

○中村哲治君 今、小林参考人がおっしゃったように、岡谷市の場合には、おかや総合福祉センター諏訪湖ハイツ三階の一室をお借りすることができたというお話がありました。
例えば奈良市の場合は、奈良県では唯一、奈良地区の更生保護サポートセンターがあるわけですけれども、子育て施設が移転した後の空きスペースができたのでそこに入れさせてもらったと。こういうふうな奈良市のケースでも全国的に見たらかなり優遇された条件なのじゃないかと聞かせてもいただきました。しかし、結局要らなくはなったんですけれども、保護司会が借りるときに奈良市から保証人を求められたりとか、そういうふうなケースもあったと聞いております。
そういった意味では、岡谷市のケースであれば、小林参考人も非常に優遇されたという条件があったと思うんですけれども、必ずしも市町村が全て岡谷市のように理解がある団体とは限らないというふうに思います。今五十五か所ですけれども、全国、保護区というのは八百八十二あります。そういったときにはどのようなことを法務省ないしは保護局にお望みになっているんでしょうか、お答えいただけませんでしょうか。

○参考人(小林聖仁君) 先ほども申し上げましたように、やはり市町村、行政から、金銭的な面ばかりじゃなくて、その場所の確保とかそういうものでのやはり支援が欲しいなというふうに思っております。
もちろん、物理的に金銭的に全国八百以上の保護区に今すぐに設置というのは確かに難しいことかもしれません。それで、今、私の長野県の十九の保護区の皆さん方には、そういったサポートセンターが設置進められたときに、すぐに可能なように、今お話のありましたように市、行政の施設ですね、空き施設、学校の空き教室とかそういうことも含めて、そういったことを今から準備をしておいてくださいというようなお話をしているところです。
まあ全国に設置というのは限界があるかと思いますが、一か所でも増えていけば本当に有り難いことかなというふうに思っているところです。

○中村哲治君 全国四万八千人の保護司の方々がいらっしゃいます。全てボランティアでされております。その中でこのような環境をつくっていくことは、国会としてやっていかなくてはならないことだと改めて感じさせていただきました。本当に保護司さんの皆さんに、この場を借りて改めて全国の保護司さんの皆さんに感謝を申し上げます。ありがとうございます。
それでは次に、松本参考人に伺います。
薬物依存の治療に当たっている精神科の先生方というのは絶滅危惧種であるというようなお話を冒頭にいただきました。非常に残念なことだと思っております。私も連れ合いを亡くしたものですから、精神医療に対しては、これは国会議員として、また一人の国民として取り組んでいかないといけないということで、この間取り組んでまいりました。
しかし、精神医療の問題というのは差別や偏見が非常に強くて、そして治療に当たられる精神科の先生方の心理的な負担も大きいということで、なかなか十分な医療体制を構築できないという構造的な問題があろうかと存じます。
心神喪失者等医療観察法という法律が作られて、重大な他害行為を起こした人たちに対してもう非常に激しいレッテルが張られる、スティグマが張られるような状態の法律があるわけですけれども、この法律、私、成立当時民主党の、野党として反対もしてきたわけですけれども、なかなかこの法律をなくせるのかというと、医療レベルが全体に上がらない限りなかなかなくせないなという問題にも直面しておりました。
そこで、先生のように本当に身を捨てて薬物治療に当たられているといいますか、依存症に当たられているような印象を持つような、まあ絶滅危惧種でやっていただいているんだから、御謙遜もされておるんですけれども、そういう方々が少しでも増えてくるようなことをするためには国にどのようなことを求められているのでしょうか。

○参考人(松本俊彦君) 御質問どうもありがとうございます。
精神科医の中で薬物依存症患者さんをたくさん診ていると、やはり雇主の病院からは嫌がられます。商売になりません。非常に手が掛かります、疲れ切ります。スタッフもいろいろクレームを出してきます。そうするとやはり、世知辛い話ですけれども、これは診療報酬という格好で、そういう難しい方を診ると診た分のことは病院にあるよということ、仮にもうからないにしても、少なくとも一生懸命頑張って診ている人が病院の中で孤立しないような体制をつくっていただけることがとても大事かなと思っています。
また、今私どもが広めている外来のこの治療プログラムがあります。でも、実はこれも、どの、やってくださっている病院は手弁当でやっています。かなりスタッフの数も要るので、そういう意味でも、そういったことがやりやすい環境を国の方に用意していただけると有り難いなと思います。

○中村哲治君 たくさん質問したいんですけれども、時間の都合もありますので次に移ります。
松本先生がNHKの番組に出られたときのコラムがあります。二〇一〇年六月二十五日付けのコラムであります。そこにこのように書かれております。「今回VTRで紹介された刑務所での「薬物依存離脱指導プログラム」も刑務所だけで終わるのではなく、刑務所のがんばりを地域で受け止めて、その先もずっとずっと支援が続いていくような体制をぜひ作ってほしいと願います。」と。
一年余りたっているわけですけれども、この点について今どのような印象をお持ちでしょうか。

○参考人(松本俊彦君) 今でも気持ちは変わっておりません。私自身、刑務所あるいは保護観察、それから地域で様々な形で薬物依存者の支援にかかわってきました。しかし、やはり一番最後に大事なのは地域でどうやって受け止めるかだと思います。それも法律で縛られていない格好で彼らが自発的に治療につながるようになる。その機会を与えるのが、例えば執行猶予期間中にどのようなプログラムを提供されたかによるかな、そして地域の中にどのようなものがあるかなということによるのかと思います。

○中村哲治君 コラムの中には、ダルクへの寄附などのお金の面は厳しい、こういう状況を変えていかなくてはなりません、ダルクをもっと支援していく必要があるしと書かれております。
今お話がありましたように、地域の連携を含めていくと、そのダルクと医療機関それから保護観察所、どのような連携を今後取っていくべきなのか、最後に伺います。

○参考人(松本俊彦君) ダルクの中で、様々な精神医学的なトラブルがあります。そのときに迅速に連携できる医療機関がもっともっと多ければダルクの運営も相当楽だと思います。
そしてまた、保健福祉サービスをどういうふうに利用したら一番いいのかということを統括する場所として、例えば精神保健福祉センターに専属の人がいて、それをダルク、医療機関あるいは保護観察所の間に立ってマネジメントする、そういうような仕組みがあったらなおいいというふうに思っています。

○中村哲治君 ありがとうございました。

○渡辺猛之君 自由民主党の渡辺猛之でございます。
三人の参考人の先生方には、お忙しい中お出かけをいただき、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
限られた時間ですので、それぞれの先生方に質問をさせていただきたいと思うんですが、今日、三人の先生方のお話を聞いておりまして、今回、再犯率低下をという観点から新しい制度が設けられることになりましたけれども、先生方のお話で共通して感じることは、これらが有効に機能するかどうかというのは多分、社会内処遇がいかに社会の理解を得ながら社会でのつながりを回復するかに掛かってくるんではないかなということを思いながらお話を聞かせていただきました。
社会での包摂が必要だという意見がある一方で、一般の地域社会には不安視する声もあるのも事実であります。運用面でのバランスとかあるいは恣意性の排除等が大切になってくるんじゃないかなということを思いますけれども、そこで、まず川端先生にお尋ねをしたいんですけれども、社会内処遇を取り入れたことによる再犯率の低下、これの直接的な効果というのは、有効性というのは判断できるんでしょうか。できるとしたら、いつ、誰が、どのような基準でこの制度の有効性を判断をすべきか、先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(川端博君) 非常に難しい御質問でございまして、法律家が答えていいのかどうか、ちょっと分かりにくいんですが。
先ほど松本参考人がお話しくださいましたように、医学的な、科学的な治療によって確実に再犯率が下がっているということはもう実証されているわけでございます。そういったことで、この一部執行猶予を現実に実施し、そして数多くのものでそれが社会内に受け入れられて、そこで施設内の処遇で受けているプログラミングがそのまま継続してまた社会内でそれを受けられるということであれば非常に効果が高いということはもう明らかである、科学的にも実証されているということで理解しております。ですけれども、それを具体的に統計的にどういう具合にどこのどの機関がやるかというのは、これはまた別の考え方の下で検討すべき事項ではないかと、このように考えております。
と申しますのは、これは司法機関だけの問題ではございませんで、明らかに治ったと、それは地域が、それによって良くなってきたんだというような部分の評価も、いろんな多様性がございますので、一面的な面からだけ判定できるような問題ではないと思いますので、これは将来、もう少し総合的な機関できちんと調査の上、認定していただければというように考えております。

○渡辺猛之君 ありがとうございました。
実は、この法務委員会の質疑の中でも我が党の松下先生たしか質問いただいたと思うんですけれども、今回の法案が刑の一部執行猶予を適用する要件の条文が抽象的でありまして、そのような要件と個々の刑事裁判に出てくる情状証拠のみでは、判決の時点で裁判官がその先まで見越した保護観察やあるいは執行猶予の期間まで判断するのは難しいんじゃないかという御意見が当法務委員会でも議論されました。
これについて川端先生のちょっと御見解をお聞かせいただきたいと思うんですけれども。

○参考人(川端博君) お答えさせていただきます。
この問題につきましては、法制審の部会でももう徹底的に議論をしてきたところでございます。これはどういう具合に理解をしていただくかということにもかかわってくるわけですが、現行法の条文に比べますとかなり要件が明確化されたと、要綱案の提案の段階ではそういう理解の下で提案をさせていただきました。
そこで、現在の、執行猶予に付するかどうかという場合に情状によりということで、もっと抽象的な表現が用いられているわけですが、そういう状況の中で裁判実務が、いろんな行為責任の側面、それから社会に対する影響だとか、それからその行為者自身の社会復帰の可能性、あるいは再犯の可能性の程度とか、そういったのを考慮して判断してきているわけでございます。
今回のこの法案ではその部分はかなり明確に再犯予防とか必要性と相当性という形で絞り込んでいると、こういうことがありますので、それほど抽象的に過ぎるというような理解はいたしておりません。もっと個別的に、ある程度従来の量刑事情というのがもう確立されてきておりますから、その下で必要性と相当性をより明確に示していくと、こういうことは可能であると考えております。

○渡辺猛之君 ありがとうございました。
次に、小林参考人に幾つかお尋ねをしたいんですけれども、私の知り合いにも保護司やっておられる方何人かいらっしゃいまして、本当に一生懸命御活動をいただいていることに改めて敬意を申し上げたいと思っております。
そこで、現在の保護観察でも行われております社会参加活動、主に保護観察処分少年を対象に実施されておられますけれども、改正案で義務付けられるようになります社会貢献活動は、具体的にどのような対象者、例えば性格であるとか犯罪傾向であるとか年齢等も含めてどういう対象者に課すことが妥当とお考えになられるでしょうか。
また、社会貢献活動の活動内容として法務省は清掃活動や介護補助活動を想定しているようでありますけれども、実際の現場を経験されておられる小林参考人はどのような活動を行わせることが妥当とお考えになるか、御意見をお聞かせいただきたいと思います。

○参考人(小林聖仁君) やはり万引き等の窃盗あるいは道交法違反、こういったところの対象者、薬物事犯対象者もそうでございますが、そういった者に有効かなと。そういう特定なことばかりじゃなく、保護観察対象者全般にわたってやはりこの社会貢献活動というのは有効な処遇活動かなというふうに思います。
といいますのは、先ほどもちょっと触れましたけれども、社会にやはり認められていると。対象者がやはり何か悪いことをして白い目で見られている、そんな中で、俺も役に立っているんだと、そして褒められたり、いや、ありがとうよと、そんな簡単なことで気持ちが和んできたり、今までよく話もしてくれなかった対象者がそんなことですっかり保護司と打ち解けてきたというようなことも、私自身も経験がありますけれども、そういう意味でこの社会貢献活動というのは大事なものかなと。
今も社会参加活動というのをやっているところですが、例えば諏訪湖の花火大会の後にそのごみの収集をしたり、そういうのを更生保護女性会あるいは保護司、BBSの会員、それらと一緒になって対象者が参加していただいているわけですが、そういうときに、作業終わった後、缶ジュースなどを飲みながら、おかげさまできれいになったね、ありがとうね、そんな言葉が対象者には大変、俺も社会の一員だという、認められているということでありますから、そういう面で有効かなというふうに思っております。

○渡辺猛之君 ありがとうございました。
今のお答えに関連して松本参考人にちょっとお尋ねをしたいんですけれども、社会貢献活動を今回特別遵守事項に組み込んだ背景、これは、達成感を得ることで更生の意欲を増す、社会的活動、達成感、更生意欲ということが今、小林参考人からお話しいただきました。これ、精神科医という専門的な御見地から、今の小林参考人のお話というのは、やっぱり有効性というもの、裏付けがあるのかどうか等々、お聞かせいただきたいと思います。

○参考人(松本俊彦君) 多くの治療プログラムの中でそういうボランティア的な活動を取り入れているプログラムは非常に多いです。ですから、その有効性に関して私は疑っておりませんが、単独で有効かどうかということに関しては、重症な薬物依存症の方の場合には、それに当然加える形で薬物依存症の治療プログラムが必要だと思います。

○渡辺猛之君 ありがとうございます。
もう一点、小林参考人にちょっとお尋ねをしたいんですけれども、先ほどお話の中にもありましたけれども、今回の改正で保護司の重要性ますます高まっていくんじゃないかなと考えられますが、今、保護司さんの平均年齢が六十三・八歳、数も、先ほど来お話がありますように、二十三年の一月一日現在ですけれども四万八千六百六十四人、決して十分とは言えない数なんですね。加えて、最近はやっぱり保護司さんの確保というのも非常に難しくなってきている。小林参考人のお話の中でありました、自分さえ良ければみたいな若い人が増えているという話でありますが、もうこれは決して若い人だけの話ではなくて、社会全体の中でどうもそういうふうな風潮が大きくなっていると考えざるを得ないんですが、今回改正されて実際の運用段階に入ったときに、保護司に期待される役割の人的あるいは専門技能的な対応力はどのように確保されるべきか。そしてまた、国として、先ほどサポートセンターの充実というお話ありましたけれども、それ以外に国としてどのような手当てが必要と考えられ得るのか。率直な御意見をお聞かせいただければと思います。

○参考人(小林聖仁君) 確かに、保護司に欠員が出ますと、その補充に大変どこの保護区でも苦労しております。
今現在、保護司候補者検討協議会というのを、全保護区ではありませんけれども、設置しております。私の岡谷保護区にも設置してあります。これは、市の副市長、あるいは教育委員会の委員長、あるいは社会福祉協議会の会長、そういうような方々に委員になっていただきまして保護司候補者の検討をしているところでございます。この中では、具体的に人選していただいて候補者を挙げていくというよりも、むしろその委員の皆さん方に更生保護の理解をいただくいい機会でもあるところでございます。
私の岡谷のところは小さな町でございますから、候補者が挙がりますと、大体その協議会の委員さんほとんど知っている方でございますので、大体候補者が、この方はどうだろうというときに賛同いただいて今進めているわけですが、大きな何市何町何村という保護区の場合はこの候補者検討協議会も、具体的に名前が挙がってきても知らない人もいたり大変かなと。そういう意味で、今あちこちで保護司候補者検討協議会の再検討をしているところでございます。
今、やはりこの重要な保護司の確保ということで、保護司の重要な任務でございます。そういう意味では、社会福祉あるいは教育、地方公務員等、そういった方のOBといいますか、なかなか現役では時間的な余裕ということもありませんので、退職、退任されたような方、そういう方に早速に保護司になっていただくように働きかけたり、そんな努力をしているところでございます。
それと、ほかに、国の方に何かというお話がありましたけれども、先ほど時間がなくてそこのところにちょっと触れることができなかったんですが、川端、松本両参考人からもお話が出たところですが、やはり更生保護、私ども保護司は再犯防止というところに今、最近では力を入れておりまして、その再犯防止という観点からしますと、更生保護の就労支援、今モデル事業として東京、福岡、宇都宮にモデル事業としてやっておりますけれども、大変効果を上げているというお話をお聞きしております。
私のところにも更生保護協力雇用主会というのを十年ほど前に立ち上げたわけですが、それをきっかけに事業主の方々が大変賛同していただきまして、我々が安心、安全のやはり事業を進めていくには、保護司さん方のように地道にそうやって御苦労いただいている、それに何か協力することができないかということで、この経済不況の中にもかかわらず、協力雇用主さん方が非常に積極的に私ども保護司活動を支援していただいております。このことは、NPO法人の就労支援事業者機構という形でまたどんどんこの支援の輪が広がってきております。
ですから、このモデル事業を更に、今全国で三か所ということでございますので、もう少し増やしていただいて、都県に一つぐらいできればそういう、増やしていただければ更にそれらの方々との連携が、再犯防止の中では、やはり仕事に就かない、就けない、そういうことが、再犯防止につながっていくということでございますからこの就労支援のことは大変重要なことかなと思いますので、そういったことにお力添えをいただければ有り難いかなと。まさに先ほどから先生方のお話ありますように、地域での支援という観点からもこの就労支援、大事なことかなと思います。よろしくお願いいたします。

○渡辺猛之君 時間が来たのでもう終わりにさせていただきます。松本先生にもいろいろお話を伺いたかったんですが、私自身も何か目からうろこの、大変勉強になりました。これからも専門的な立場でどんどん声を出していっていただきたいと思います。
ありがとうございました。

○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。今日、三人の参考人の先生方、本当に貴重な意見、ありがとうございます。
早速、質問をさせていただきたいと思います。
まず、川端先生、本当に先ほどの御意見の中でも多く語られたところでございますが、例の法務大臣の諮問が、人員の適正化ということと再犯防止という両観点から方策をという、そういう諮問であったわけでございますが、今回の法案の提案理由がこの収容人員の適正化という文言が落ちているわけですね。もちろん、答申の中でもそういう、方策としてあの答申が出されているわけでございますけれども、どうもこの入口が予算的な嫌らしさが付きまとうといいますか、純粋に刑事政策的に再犯防止をどうするのかという、本当にそういうことが何かまみれてしまったなという印象が拭えないんですよ。施行も三年後という猶予期間あるようでございますけれども、喫緊の課題なのかという、そんな思いもするわけでございます。
結論としてこの一部執行猶予という形になるわけでありますが、そうすると、刑務所の中で処遇をする代わりに社会内処遇をという形になりますよね、保護観察付けたりしまして。要は、予算的に言えば、本来施設内処遇ですべき費用を社会で持ってもらうといいますか、そういうことを意味するんだろうというふうに思うわけでございますけれども、結局、その受皿として、今保護司制度であるとか病院とかいろいろありますけれども、どの程度法制審の部会の中で議論が、要するにそっちに振っても大丈夫なのかという、その議論はどの程度あったのでしょうか。
というのは、答申の中でいろんな制度について書かれていますけれども、この保護観察とか保護司の制度であるとか、こういう部分についての明言が余りないんですね。社会貢献活動を特別遵守事項とする制度と、ここまでは入っておるんですけれども。だから余り議論されなかったのかというような、あるいは社会内処遇の各制度についての検証がなされたのか、こういう観点から御答弁いただければと思います。

○参考人(川端博君) ただいまの魚住先生の御質問にお答えいたします。
まず第一点。最初、入口が過剰収容問題の解決という面が出ておりまして、それは先ほど申し上げましたように、それだけではなくて、やっぱり再犯防止を前提として、そして社会内処遇のための制度にどういうのが望ましいかということが諮問内容としてございましたので、当初、先ほども出てまいりましたけれども、社会奉仕命令、これの扱いも考慮してもらいたいということでございましたので、それにもかなり時間を割きました。そして、それが刑罰としてなじみにくいという面がございまして、これはむしろ遵守事項に入れた方がいいだろうということで、今回の御提案の中でも、遵守事項の一つとしてこの社会奉仕命令に似た内容のものを取り込むと、こういう形で結論を得たわけです。
それから、結局コストの問題として、施設内処遇でやるべきものを今後社会へ回して、しかもそれを保護観察官に依存するあるいは保護司さんにお願いするということで、社会にコストを持っていって施設からそれを免れさせるんじゃないかというような御懸念もあろうかと思いますが、決してそういうことではなくて、施設内処遇の中で、先ほど松本参考人がお話しされていたように、医学的な観点での薬物犯罪者に対する治療、それからそうでないほかの者についてはいろいろなプログラミングがかなり実施されてきておりまして成果を上げておりますが、それを更に社会内で引き続き継続して改善強化すると、こういう趣旨で一部執行猶予というのを設けようとしているわけでございます。
受皿として確かに保護観察官にかなり多く依存しなきゃならないという面は出てくるかと思います。この部分につきましては、現実に一部執行猶予を受ける者の数だとかそれから地域とか、そういったものが現実化した時点でどの程度の人員が必要か、そういった点の議論をしなきゃならないわけですが、制度設計の段階で、これくらい必要だろうとか、そういった数の問題は具体的には議論しにくいという面がございまして、かなりの負担が行くだろうけれども、それについてはまたその時点できちんと対応して効果的な適応ができるように、そしてその担保をすると、そういうような発想の下で予算関係は考えていくべきだろうと、このように思っております。

○魚住裕一郎君 先ほど松本参考人からもダルクに丸投げという表現があったものですから、結局、法制審の中でも保護観察や保護司さんに丸投げみたいな、そんな感覚だったらちょっと困るなと思ったものですから質問をさせていただいたところでございます。
続きまして、その受皿といいますか、小林参考人にお聞きしたいんですが、端的に言って数が増えると思うんですよね、この保護観察対象者が。今でも人数が減っているという状況であるわけでございますが、今の保護観察官又は保護司の数だけでは対応が難しいというそういう指摘もあるんですが、いかがでしょうか。

○参考人(小林聖仁君) 保護司の数が増えるにはこしたことはございませんけれども、これもいろいろ限界があるんでしょうけれども。
確かに、私が保護司になりました三十年前からしますと保護観察件数はむしろ減っている方なんですね。保護司になりたてのころは一人で三件も四件も持ったことがありました。三、四件対象者を持ちますと、もうほとんど自分の仕事ができないほどのことになります。しかし、今、実際に保護観察対象者、それから施設内におります生活環境調整、これらのことを合わせて、私の今、岡谷地区の保護司会でございますが、保護司一人に大体対象者が一人というようなことでございます。ですから、極端にこの薬物の対象者が増えていけば別でございますけれども、そんなにたくさん極端に増えていくというふうには、確かに増えていくのは間違いないんですけれども、気持ちの上では観察官の方がずっと増えていくんではないかな、そのまた観察官と協働して頑張ってやっていきたいというふうに、私の周りの保護司さん方はそんなような気持ちでおります。

○魚住裕一郎君 保護司の皆さん、本当に献身的にやっておいでになってそういう意見になるんだろうとは思うんですけれども、実際数が増え、また社会貢献活動も、環境の美化運動とかありますよね。そうすると、保護観察官なりあるいは保護司さんなり複数でやっぱりやっていかないと余計手間が掛かるということで、そういう意味じゃ数がちょっと足りないのかなと思っております。
また、数とも関連をしますけれども、具体的に難しい人も出てくるといいますか、対象者になってくると、やっぱり負担が大きくなっていくんではないのか。だから、実費弁償額も増額すべきではないのという意見もありますし、また保護司さんの研修の充実ということもやっぱり考えていかなきゃいけないと思いますが、この点に関して御意見ございましたらお願いいたします。

○参考人(小林聖仁君) 確かに仕事量が増えてきております。そういうところを私のところでは、更生保護女性会とかBBSとか更生保護関係団体、この皆さん方が非常によく協力していただいております。そういう意味で、気持ちの上でも大分助けていただいているところがございます。
また、実費弁償金のことでございますが、恐らく私の周り、あるいは県内、保護司さん方にその話が出ますと、実費弁償金をもっと上げろとか、そういう保護司さんは割合少ないですが、むしろ保護司会の活動費とか運営費、こういったものの支援を是非してもらいたいと、会長、法務省保護局の方にそういった申入れをしてほしいというような声も結構ございます。個人的に、保護司が実費弁償金を増やせとか、そういう声は余り聞かないかなというのが感想です。

○魚住裕一郎君 ありがとうございました。
続きまして、松本参考人にお願いをしたいんですが、今回、薬物法で、一部執行猶予者、必要的保護観察ということでございますし、また保護観察に付された者は原則的に専門的処遇プログラムの受講が義務付けられるということでございます。
法務省では、薬物全体にわたるものですから、法執行を見据えて、薬物処遇研究会ですか、これを開催して新たな薬物事犯処遇プログラムの開発を行っているというふうに承知をするわけでございますが、先ほどもちょっと一端が述べられたかと思っておりますが、この新しいプログラムを開発する必要性、またその主な内容、また効果、どういう議論がなされているのか、現行の処遇プログラムとの違いを踏まえながら、ちょっと教えていただきたいと思いますが。

○参考人(松本俊彦君) 現行のプログラムと何が大きく違うかといいますと、実はちょっと現行のこれまでやったプログラム自体が僕ちょっとよく分からない部分もあるんですけれども、私どもがやっているプログラムは、要するに、経験が乏しい人でもマニュアルとワークブックに沿ってやることができる認知行動療法と言われる治療が中心になっております。
それはどういうことかというと、やはり薬物依存症は脳の病気ですから、例えば薬物のことを思い出させるもの、変な話ですが、例えば覚せい剤依存者の場合には、五百ミリのミネラルウオーターのペットボトルを見ただけでもう薬やりたくなるんですね、ボルヴィックとかのペットボトルを見て。なぜかというと、あれをいつも持ち歩いて、あの水で粉を溶いて注射しているんですよ。ほかにもそうやって結び付いて、もう脳の中にインプットされているものがたくさんあるわけです。それが何なのかということを、その勉強会を通じてみんなで振り返り、同定し、じゃ、目の前に来ちゃったときにはどんなふうにして気持ちをそらしたらいいか、そのことを練習したり勉強したりするんですね。
つまり、単に罰を与えられるだけでは本人たちは気付かないんです、何で急に薬を欲しくなってしまうのか。だから、そういったことを勉強するプログラムというふうに今端的に言えば説明することができると思います。もちろん、ほかにもいろんなコンポーネントがありますけれども、一番の主軸はそこにあるというふうに考えてください。

○魚住裕一郎君 終わります。

○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。
まず、小林参考人に、現在の保護観察の状況について確認の意味で質問させていただきたいと思っております。
今回の法案、目的は再犯防止という点がメーンだと思うんですけれども、これに対して、特に薬物事犯、今日も大変なこうやって話題になっておりますけれども、薬物事犯の再犯率が非常に高いというふうに聞いておりますが、現在の保護司さんの活動、もう本当にボランティアで大変な御苦労をされているのも承知しておるわけですけれども、どこまでこの特に薬物事犯に関して現状として保護司の活動が役立っているのか、あるいはどこが不十分なのか、その現状を教えていただければと思います。

○参考人(小林聖仁君) 薬物事犯につきましては、むしろ観察官の方に、先ほども申し上げましたように大きな負担が行っているのかなというふうに思いますが、私ども、先ほど申し上げましたように、親子の対象者の経験の中で申し上げれば、なかなか本人の実際の生活の中での本当に断ち切れているのかどうかというところを見極めるのが私どもやはり保護司の立場からは非常に難しいところであります。
そういうときに、近くの病院の先生とかそういった方々からいろいろ知識をいただいたり、そういうことの中でやっているわけですが、先ほど松本先生の方からお話がありましたけれども、やはり、多重構造対応というふうなお話が先ほどありましたけれども、保護司は保護司の力だけで薬物事犯の対応というのは非常に難しいわけですから、そういった日ごろからお付き合いのある先生方、病院の先生方とかあるいは保健所の職員とか、そういう方々からいろんなアドバイスをいただいたりしながらやっているところでございます。
実際に薬物の内容、研修で受けてはいるわけですけれども、実際に対象者と向き合った中では医師の指導のような、そういうところはできません。ただ、先ほどからお話にあるように、依存性の高い者、これらを立ち直らせるというのは保護司一人の力ではとてもどうにもならないというところかと思います。そういう意味で、観察官と協働して病院の先生方あるいは保健所の担当者の皆さん方と連携を更に強めていく、そういうところかなというふうに思っております。

○桜内文城君 ありがとうございます。
次に、川端参考人にお尋ねいたします。
今現在の保護観察の状況というものが、今、小林参考人からお話があったとおりでございまして、特に薬物事犯に関してなかなか十分な対応ができる状況にはないということですけれども、元々の法制審の諮問との関係、先生おっしゃいましたけれども、今、過剰収容というものが、元々大きなテーマであったものが大分改善されつつある。そういった中で、今回の刑法改正案なりが再犯防止を主たる目的とするということで、社会内処遇、まあ増やすのは結構なようにも思うんですけれども、目的を達成する上で、この手段として一部執行猶予を増やすのはいいんですけれども、その社会内処遇として実際に大変重要な位置付けとなるであろう保護観察の在り方というものが、今、小林参考人がおっしゃったとおりまだ不十分であると。
特に薬物事犯に関しては大変不十分だという現状の中で、こういった改正法案、特に薬物事犯については累犯であっても一部執行猶予が可能とするというような新たな立法もなされるわけですけれども、その辺について、目的としての再犯防止は大変立派なもので、また、かつ必要なことだと思うんですけれども、これを達成する手段として今回の改正法が十分なものなのかという点で私は疑問を抱いておるんですけれども、法制審の中ではその点についてどういった議論がなされたんでしょうか。

○参考人(川端博君) ただいまの桜内先生の御質問にお答えいたします。
再犯防止の中で、この保護観察官に一部執行猶予された者がかなり依存するという点は御指摘のとおりでございます。そしてまた、その協働関係の下で保護司さんにも御負担をいただくというのは小林参考人がお話しされたとおりでございます。
今、現実の問題として十分かというと、やはり制度的な観点から見て不十分な点は多々あろうかと思います。ですけれども、現在それが不十分だから新たな制度を導入してそれをもっと拡充していくということがかえって阻まれてしまうというのは望ましくないのではないかという点がございます。
法制審でどういう議論がなされたかという御質問なんですが、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、社会内処遇として諸外国でどういうものが行われているか、それを我が国に取り入れることが可能かどうか、取り入れた場合にどういうメリットがあるかと、こういった観点の議論で、諸外国の実態調査を行い、それに基づいてかなり時間を掛けた議論をしてまいりました。そういった中で、現実的に司法制度の枠組みの中で再犯防止をどうするかということを考えた場合、やはりこれは現行制度を前提にした上でそれをより良くしていくと、そういう方向性が必要だろうと、こういうようなことが議論されてきたわけであります。
その場面で予算的な措置が必要になる場合が出てまいります。これはやはり、現実にそういう制度をつくり上げて、そして人数が具体的にどうなるのかという点、それらがはっきりした時点で、より円滑に、しかも効率的に運用するという観点から新たに議論をしていただきたいと、そのように考えております。
その面と、制度として、司法制度の在り方としてどう考えるかというのは、これは理念の問題と現実の予算執行との関連の相克がございますので深く立ち入った議論はできませんでしたが、少なくとも理念の問題として、現在の司法制度の中で、諸外国との比較において我が国はこの社会内処遇に関してはかなり立ち遅れているという認識がございます。執行猶予制度についても必ずしも十分に機能していない部分があるという点も反省の基礎にあります。そういったことで、実際にそれが動き出すという場面では、やはり国として予算の観点から十分な対応をしていただきたいというのが私の個人的な意見でございます。
そういった、かなり、先ほど申し上げましたように保護観察官に負担が行くであろうと、それから保護司さんにも御協力をいただくであろうということは十分念頭に入れてこの制度導入の結論を得ているわけでございます。

○桜内文城君 ありがとうございます。
川端参考人にもう一つお伺いしたいんですけれども、今おっしゃったとおり、現状の保護観察の在り方が再犯防止には不十分だという認識をお持ちの上でこういった法案の答申をされたということですけれども、先般のこの法務委員会での政府側の答弁の中では、例えば、諸外国ですと、性犯罪者ですとか再犯が多いとされる犯罪類型については、保護観察に類する制度の中で例えばGPSを装着させるですとかそういったものが考えられるわけですけれども、今、諸外国の例もお出しになりましたけれども、残念ながら、法制審の中では、そういったGPS云々ですね、こういった新たな制度というものは否定されたというふうに伺っております。
逆に言いますと、先ほど魚住委員からも質問ありましたように、ある種、保護司に丸投げといいますか、手足縛って再犯防止しろと言っているに等しいんじゃないかと思うんですけれども、そういった点は議論にならなかったんでしょうか。

○参考人(川端博君) 今GPSの件が出ましたが、我々はこのGPSに関しましてもかなり時間を掛けて検討いたしました。ただ、我が国の国民意識とか文化、伝統との関連でこのGPSを装着させて監視するというのはどうもなじまないと、国民の反対が強いだろうというような意見で、この点の採用については意見の一致を見ませんでした。
それで、ただいまの桜内先生の御質問の中で、結局、保護観察官あるいは保護司さんに丸投げではないかという趣旨のお尋ねでございますが、我々としてはこれは丸投げというようなとらえ方ではございませんで、施設内処遇が現に医学的な観点、いろんな心理学的な観点でプログラミングがなされていてかなりの成果を上げております。その延長線上で、社会内で自助努力を含めながら、さらに医療機関とかそういった、もちろん中心になるのは保護観察官でございますが、そういったものの協力を得て社会内で立ち直らせていくと、こういうところに主眼があるわけでございます。
そういった意味で、社会内処遇というものが我が国では必ずしも十分に意識されていない部分がございますので、これを新たにこの刑法の中にこういう一部執行猶予制度というのを取り入れて、これ自体が、これは基本法典でございますので、これがまた大きな制度として定着することによって一定の国民意識、法意識の形成にも役に立つだろうと私自身は考えております。
そういった点で、単に丸投げというような趣旨での議論ではございませんでしたので、そのようにお答えさせていただきます。

○桜内文城君 ありがとうございます。
時間がないので次に行かせていただきますが、松本参考人にお尋ねしたいと思います。
冒頭、松本参考人の陳述の中で、薬物依存症というのは病気であって、供給を減らすためには取締りを強化する、一方で需要を減らすという意味で治療なりそういったプログラムをきちんと整備していくということをおっしゃいました。まさにそのとおりだと思います。
今回の改正法といいますか、社会内処遇をちゃんとしていこうという意味でいえば、後者の治療なりをきちんとやりましょうということだと思うんですが、前者の取締りの強化ですとかについて、私、どう考えたらいいのかなというのをずっと疑問に思っておりまして。
といいますのは、是非先生の御意見をお聞かせいただきたいんですが、諸外国では、麻薬事犯、大変厳しい刑罰を科す例もあったりします。単に刑罰を科せばいいというわけじゃないとも思うんですけれども、やはり犯罪の抑止効果ですとかというのを考えたときに、日本のこの麻薬事犯なり薬物事犯の刑罰の重みあるいは軽さというのをどうお考えになっているのかというのをお伺いしたいと思っております。
病気と言ってしまえばかわいそうだということになると思うんですけれども、しかし、やはり薬物を購入するということは暴力団なりそういう反社会的な勢力に相当のお金が行くということでもありまして、やはり社会の秩序を防衛するという意味でいえば重大な犯罪だと私は考えるんですけれども、その兼ね合いで刑罰の軽重というのはどうあるべきなのか、先生のお考えをお聞かせいただければ幸いです。

○参考人(松本俊彦君) 日本が諸外国に比べて刑が軽いというふうに思ったことは実は一回もございません。むしろ欧米に比べて重たいというふうに思っています。
ヨーロッパは昔からかなり刑が軽かったんですけれども、アメリカはそれに比べると比較的厳罰主義ではあったんですが、この二十年ぐらい随分変わっている。むしろ東南アジアの一部の国で、ちょっとこれいささか極刑ではないかというようなので、それはちょっと僕、別の意味で危惧しているところではあります。
一つ皆さんに御理解いただきたいのは、どんなにひどい依存症の人でも絶対に使えない環境だったら自分の病気を意識しません。刑務所の中に入っていると、最初は少し薬のことを思い出したりしますが、絶対に使えない環境ですから、もう絶対に大丈夫、何も考えなくなったってすっかり安心し切って、本人も家族も周囲も安心し切って出てきます。これがとても危ないんですよ。だから、先ほども私の話の中でもありましたが、刑務所から出所した直後が危ない、あるいは保護観察を終わった直後が危ない、つまり縛りを固くすればしただけその後が怖いぞということをまず理解しておかなければいけないと思います。
確かに病気か犯罪かという非常に矛盾した側面を持っている問題ではあろうかと思いますけれども、一番大事なのは再犯を防ぐためには何が必要なのかということだと思います。再犯を防ぐために、やはり薬物依存症がその犯行の原因であれば、そこに対するケアをすることが最終的にはその再犯を防ぐことになるんだろうと思っています。
日本の取締りは諸外国に比べても多分世界一線級、超一流だと思います。ですから、欧米に比べると国民の薬物問題というものは随分少ない国だと思います。また、逆に、その少なさがこの支援、治療体制の不備につながってしまったなと思っています。
これまでの薬物依存に対する考え方は、古い時代の感染症モデルに近いのかなと思っています。つまり、専ら予防が大事、万一感染してしまったら隔離です。しかし、欧米での流れは慢性疾患モデルです。糖尿病や高血圧と同じように再発と寛解を繰り返す、しかしそれでも治療をし続けていればしていないよりもはるかにいい、社会全体としての害は、あるいは個人に対する弊害も明らかに減るというエビデンスの方が重視されている潮流にあるんだということを一応強調しておきたいと思います。

○桜内文城君 ありがとうございました。
終わります。

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。今日はどうもありがとうございます。
まず、川端参考人にお聞きいたします。
先ほど来、我が国では必ずしもこの社会内処遇が位置付けられてこなかったということを言われておりますが、今回、この一部執行猶予という制度を取り入れてこの社会内処遇を強化していこうということになった一番のポイントはどういうことだったのか、まずお願いしたいと思います。

○参考人(川端博君) 井上先生の御質問のポイントとして、なぜ社会内処遇を利用しているかという点にあろうかと思いますが、従来の施設内処遇、これは、ただ刑務所に入れて、そしてその期間が過ぎればもうまた社会に出て、それが元になってまた再犯を繰り返していくと、こういうようなケースもなかったわけではございません。しかし、最近では刑務所内で、先ほど矯正の観点で松本参考人からもお話ございましたが、施設内処遇のモデルが、プログラミングがかなり進んできておりまして成果を上げているということは事実でございます。
しかし、再犯をするという場面で行為者が、まあ犯罪者と言ってもいいわけですが、その行為者がなぜそれを繰り返すのかと、こういった社会的な背景とかそういった問題と、それから個人の人格的な側面、この二つが相まって再犯が繰り返されていくわけですが、その場面で全部施設内で任せてしまうというのではなくて、それぞれのコミュニティーの中で各人が一定の自覚を持って社会生活を営んでいる中で改善更生をしていくと、こういうのが望ましいのではないかと。
これがかつての隔離政策としての刑罰というものから教育、さらには施設内ではなくて社会内で社会人として生活をしながらそういうよき社会人として立ち直っていくと、こういうシステムで社会内処遇という理念が強化されて、これが現在の世界的な潮流でございますので、我が国もできるだけそういった国際社会の中でそういった新しい理念の下でそういう処遇を考える、こういう方向が望ましいと、こういうふうに私自身考えておりますし、またこれは審議会の意見の中にも結構ございました。

○井上哲士君 ありがとうございます。
再犯ということでいいますと薬物犯が非常に多いということなわけですが、家族の方などいろんなお話聞きましても、やはり早い段階できちっと治療にのせていくということを望んでいらっしゃるわけですね。
もう一点川端先生にお聞きいたしますが、今回、薬物の場合も初入の場合は刑法で対応されますから必要的に保護観察は付きません。再犯の場合は必要的保護観察が付くんですが、覚せい剤事犯でいいますと、大体最初は九割が全部執行猶予になっていますので、初入といっても再犯者なんですね。そういうことを考えると、薬物の場合は最初から、初入の場合から保護観察を必要的に付けるという考え方もあってもよかったんではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

○参考人(川端博君) 確かに先生御指摘の点はあろうかと思います。しかしながら、薬物事犯につきましては、犯罪の刑の量定の段階で、行為責任という責任主義の原理というのがございまして、その行為の重さ、それから社会に対する影響という刑事責任の問題があります。そしてさらに再犯の可能性という両枠があって刑罰が現実に行われているわけですから、そういった点で、社会的な影響あるいは社会の法益侵害性という観点から行為者の責任、刑事責任という局面を見ますと、やはりこれも通常の犯罪と同じような面で評価していかなきゃいけないと、こういう面がございます。ですから、そこはやはり最初の、初犯であってもこれは普通の犯罪と同じような扱いをせざるを得ないと、こういう面がございます。これは責任主義という、これ近代刑法の大原則でございますので、これを破るわけにはいかないということがありますから、少なくとも犯罪として取り上げている以上はその面が前面に出てくることになると思います。
ただ、累犯の場合には、先ほど来お話が出ておりまして、医学的に見ても再犯の傾向が非常に強いと、そしてそれを、医学的な治療が必要だということがございますので、累犯者についてこそむしろ施設内でそういうプログラムの下で処遇をして、そして継続的に、社会に出てもなおそれを強化していくという点が大事だろうと思います。
これは先ほども松本参考人がおっしゃったように、そのまま野放しにするというのでなくて、やはり継続性という観点から処遇を続けることによって社会内での処遇の成果を上げると、こういうことが大事だろうと、こういうふうに考えております。

○井上哲士君 刑事司法の考え方でいうと今のようなことになると思うんですね。そうしますと、やっぱり早い段階から、司法だけではなくて、治療とかいろんな公的な支援にどうつなげていくかということが必要になると思うんです。
そこで、松本参考人にお聞きするんですが、そういう初犯で執行猶予になった方などを始めとして、早い段階からそれをチャンスと見ていろんな社会的支援をしていくということにとってどういうことが必要とお考えでしょうか。

○参考人(松本俊彦君) 一つ、ありきたりな言い方になりますけれども、啓発という、地域保健活動の中での啓発をもっともっとやっていくことになろうかと思うんですが、やはり薬物関連のその事犯が逮捕された直後から何らかの形で地域の公的な保健福祉機関にアクセスできるような仕組みが必要だろうと思いますし、それから、仮にこの一部執行猶予が始まった場合にも、保護観察所単独ではなく、そこがメーンの責任を持ちながらも地域の公的な保健福祉機関がかかわる、そこで本人だけではなく家族を支える仕組みをつくる、家族に情報を与える。
とにかく薬物依存者の家族というのは何年間も苦しんでいます。誰にも相談できません。地域の中でも親族の中でも孤立していて、何年間も相談できなかった末に、もうどうにもしようがなくなって来ている状況があるんですね。これを早めるためにも、やはり早くから家族に情報を流す。そのためには、司法機関だけではなく、保健福祉機関がかかわるということがとても大事だと思います。

○井上哲士君 今のに関連して、先生お書きのものなどでも、ダルクにたどり着くのに十年とか二十年掛かるというお話があるんですね。この辺をもっと早い段階からかかわれるようにするという点ではどういうことが必要とお考えでしょうか。

○参考人(松本俊彦君) ダルクにかかわる前に、多分、まず司法機関にかかわり、それから病院にも来ていますね。それでようやくダルクにたどり着いたりしているんです。だから、その段階で適切な情報が提供されているのかということがまず問題になってきます。司法機関に来ても全然そんなことを教えてもらわなかったというふうな患者さんにはたくさん会っています。それから、精神科医療機関に来ても、幻覚や妄想の治療はしてくれたけど、依存症については何の情報もくれなかったというふうな患者さんにもたくさん会っています。
先ほど申し上げたように薬物依存症の領域は絶滅危惧種なので、一般的な精神科医がそのことを詳しく情報を持っているわけではないんですよ。卒前卒後のトレーニングの中でもほとんど情報提供されていない。この状況を改善していかなければいけないと思います。

○井上哲士君 ありがとうございました。
もう一点、松本参考人にお聞きするんですが、治療の途中に依存症の方が再び使用してしまうということがあります。これはなかなか難しい問題でいろいろ意見も分かれるところだと思うんですが、それを治療の途中の失敗として見て引き続き治療を与えていくのか、それとも再犯をしたということで例えば執行猶予の場合は刑務所に戻るのかというようなことがあるわけですね。
こういうこと、やっぱり治療という観点から私は柔軟な対応も必要かなと思うんですが、その辺、御意見あればお願いしたいと思います。

○参考人(松本俊彦君) とても重要な質問だと思います。
我々医療機関で勤めている薬物依存症の専門家の考え方からまず述べさせていただきます。
治療のプロセスで本人が失敗したときには、治療の中で最高のチャンスです。治療を深めるチャンスです。本人は大丈夫だと思っていたのに、どこか油断があったんだと思います。そこを一緒に考えて未来の再使用を減らすための努力をします。ですから、むしろこの再使用は回復のプロセスというふうな考え方です。ただ、この考え方を例えば司法関連機関にいる人たちに押し付けるのならばいささかむちゃな形になります。
理想を言えば、大枠の外側を司法がサポートしてくれているんだけれども、治療の提供は民間とかあるいは医療とかというところに、守秘義務が優先させることができるところにお願いさせておいてもらって、そこのところの、失敗が直ちに再逮捕につながらないような仕組みというものが必要なのかなと。
ただ、一部で本当に使用が止まらなくて本人の安全が逆に危なくなる場合もあります。逆に、そういうときにはしかるべき法的な手続も本人の安全を守る上で役立つ場合もあろうかと思います。
そんなふうに考えています。

○井上哲士君 ありがとうございました。
社会貢献活動について川端参考人と小林参考人に聞くんですが、当初は社会奉仕命令ということで言われていて、出口は社会貢献活動になったんですが、もう少し経緯を詳しくお願いしたいのと、それから、小林参考人には、今、少年犯の場合は社会参加活動という形で行われていますが、少年犯にもこの社会貢献活動ということが入ってくるわけですね。特にやっぱり少年の場合は非常にこれは自発的にやらせるということが大事で、子供ども勉強しろと言われると、しようと思ったのにやりたくなくなったとか、いろんな話もありますが、そういう点でいうと、少年には私は慎重に、今の社会参加活動をむしろ中心に据えることが必要ではないかと考えているんですが、実践の中で御意見があればお願いをしたいと思います。

○参考人(川端博君) 井上先生の御質問にお答えいたします。
社会奉仕命令というものがアメリカなどで現実に行われておりまして、それも社会内処遇の一環としてかなり注目された時期がございます。アメリカなどの場合には、著名な人が公道を掃除したりするシーンがマスコミ、マスメディアで大いに取り上げられて、それも一つの効果をもたらしているというような面もございますが、逆に、そういった刑罰として、あるいは刑罰に代えて社会奉仕命令を我が国で導入した場合どうなるかという観点からの議論が非常に激しく行われました。
その点で申しますと、これは社会奉仕命令という形で強制的に社会の公然と目の付く場で一定の作業をさせるということがそこでのメーンになるわけですが、これはある意味で一つの社会的なさらしものにするというような側面がございます。そういった意味で、これはその当人の人格、これをかなり卑しめるのではないかと、そういうことによって逆にその人もまた傷つくということで、本来の社会内処遇としては適切ではないんではないかと、こういう意見がありました。それと、これもまたプライバシーの問題にもかかわってまいります。そういうマスメディア、公然とやるということになりますから、そういった意味ではむしろマイナスではないかということで考えたわけです。
ただ、これを刑罰ではなくて執行猶予などの遵守事項の一環として、先ほど小林参考人からお話がございましたように非常に効果を上げている面もございます。自分自身が社会で存在意義があるんだということで、その作業を通してそれを実感して、それが更生につながるという面も非常に強いことがございますので、遵守事項としてやるならこれはかなり成果が上がるだろうと。ただ、刑罰として、あるいは刑罰に代えてそれをやるのはよろしくないのではないかという、こういう議論でございました。

○参考人(小林聖仁君) 今現在やっております社会参加活動、これはまさに自発的にといいますか、本人の同意を得て進めているところでございますけれども、なかなか、実際に社会参加活動に積極的に出るという少年は最近やはり少ないですね。それでも、保護司とその少年の人間関係といいますか、そういう中で保護司に心を許してくれる、そういう少年でありますと社会参加活動に加わっていただけるわけですけれども、どちらかというと社会参加活動に喜んで参加するという対象者は少ないわけであります。
そういうときに、遵守事項として定めていただくということは、いわゆる同意を得られない、そういう対象者に対しては有効かなと思いますけれども、今先生が御指摘のようにやはり自発的に参加するということで立ち直りに結び付くというわけですから、半分強制的にといいますか、貢献しなさいというのはやはりどうかなとは思いますが、ただ、対応の難しい対象者が最近多いわけですから、そういう場合には遵守事項を義務付けるということも保護司の立場からは有り難いかなというふうに思います。

○井上哲士君 ありがとうございました。

○委員長(西田実仁君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
午後一時に再開することとし、休憩いたします。
午後零時十二分休憩
─────・─────
午後一時開会

○委員長(西田実仁君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
委員の異動について御報告いたします。
本日、渡辺猛之君が委員を辞任され、その補欠として熊谷大君が選任されました。
─────────────

○委員長(西田実仁君) 休憩前に引き続き、刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案の両案を一括して議題とし、参考人から御意見を伺います。
午後に御出席いただいております参考人は、中央大学名誉教授・常磐大学大学院被害者学研究科教授藤本哲也君、弁護士・日本弁護士連合会刑事法制委員会事務局長代行山下幸夫君及び日本ダルク本部代表近藤恒夫君でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方について申し上げます。
まず、藤本参考人、山下参考人、近藤参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いをいたします。
それでは、藤本参考人からお願いいたします。藤本参考人。

○参考人(藤本哲也君) 私の意見陳述内容は皆様方に既にお配りしておりますので、それを御覧になっていただければと思います。
中央大学名誉教授で、現在、常磐大学大学院被害者学研究科教授の藤本哲也でございます。私は、これまで主として刑事政策の研究をしてまいりました。本日はこのような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
刑法等の一部を改正する法律案及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案について、法案に賛成する立場から私の意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、刑の一部執行猶予関係です。
刑の一部の執行猶予制度を導入する意義ですが、犯罪者の処遇は最終的には刑務所で完結するという刑務所完結主義の考え方に疑問が持たれ、刑務所等での施設内処遇を実施した者に対して、その後の社会内処遇の期間を十分に確保することが重要であるとする考え方が欧米で台頭してから数十年がたちます。そうした意味では、今回、導入の是非が検討されております刑の一部の執行を猶予する制度は、犯した罪に対する刑事責任を果たしつつ、施設内処遇と社会内処遇の連携により再犯防止と改善更生を図ろうとするもので、刑事政策の基本原理からも歓迎される施策であると思います。
提案理由説明でもこの点が特に意識的に書かれていると思います。つまり、現行制度の下でも施設内処遇の後に社会内処遇を実施する制度としては仮釈放制度があるのですが、しかし、社会内処遇としての保護観察を行うことができる期間は残刑期間、すなわち服役した残りの期間に限られています。そのため、特に比較的軽微な事案である場合、全体としての刑期が短いために保護観察の期間が十分に確保できない場合が多いということは、かねてより指摘されてきたところであります。
数か月しか保護観察に付されない場合、受刑者は、極端な場合には、あと少しやり過ごせば保護観察が取れ完全に自由の身になれると考えて更生の努力をしなかったり、そうでなくても、仮釈放後の社会内処遇が短期であって更生が不十分なまま満期を迎えてしまうことになりますと、悪い仲間が再び接近してくる、再び生活が乱れるなど、いろいろな誘惑に負け、その結果、再犯に及ぶということは想像に難くないのではないでしょうか。
公表されている再犯のデータによっても、一旦刑務所に収容された人が再犯に及ぶ状況がかなり深刻であるということが分かります。つい先日発表されました平成二十三年犯罪白書は、平成十八年に出所した受刑者で再び刑務所に戻ってきた者のうち、どの程度の割合の者がどの程度の期間で再び刑務所に入所しているかを見たデータがあります。
仮釈放を許可されて出所した者を見ても、累積で、二年以内に再入所する者が一一・五%、三年以内の者が二〇・六%、四年以内の者が二六・一%、五年以内が三〇%になっています。満期釈放によって出所した者については、より深刻で、二年以内に再入所した者が三一・三%、三年以内が四二・八%、四年以内が四九・四%、五年以内が五三・四%になっています。
ちなみに、平成十三年に出所した者で十年以内に再入所した者の割合は、累積で、仮釈放許可を受けた者で四二・八%、満期釈放者であった者で六三・三%となっているのに対しまして、五年以内に再び入所した者の割合は、それぞれ三五・一%、四二・八%となっており、出所後五年の間に相当の割合の者が刑務所に再び入っています。
つまり、犯罪者の再犯防止と改善更生のためには、この期間の指導なり援助なりが特に重要であると言ってもいいのではないかと思います。
刑の一部の執行猶予制度がスタートしますと、言わば実刑判決と刑の執行猶予判決を組み合わせることが可能となるわけで、施設内処遇が行われた後、刑の一部の執行が猶予される期間、つまり、最長五年までは社会内処遇の期間が続くことになります。施設内処遇の後の社会内処遇の期間が不十分であるという問題は、これでかなり解消できるのではないかと思います。
なお、この法案のきっかけとなった法制審議会が始まった当時は、過剰収容の問題が喫緊の問題であったのに対し、現在では当時に比べればやや落ち着いていることから、この法案は必要ないのではないかという声もあるようです。
しかしながら、刑務所の収容状況はなお予断を許さない状況にあると聞いておりますし、この問題は、刑事司法制度の入口における対策のみならず、出口対策としての刑務所への再入を防ぐという意味で再犯防止対策を講じなければ、根本的な解決にはならないと思うのです。
また、再犯防止は、施設収容の問題のみならず、大きく社会秩序や国民生活の安全の問題に直結する重大な課題です。この点、先ほど述べましたような制度の趣旨からしますと、この法案の導入によって、従来できなかった犯罪者の改善更生、社会復帰を図るために十分な期間の確保ができ、有効な社会内処遇が可能になるわけですから、その持つ意義は大きいと思います。
改めて当時の法制審議会の諮問内容を見ますと、被収容人員の適正化を図るとともに、犯罪者の再犯防止及び社会復帰を促進するという観点から、社会奉仕を義務付ける制度の導入の当否、中間処遇の在り方及び保釈の在り方など刑事施設に収容しないで行う処遇等の在り方について御意見を賜りたいとされております。つまり、ここでは、被収容人員を減らすとだけ言っていたわけではなくて、今申し上げましたように、犯罪者の再犯防止という、より根本的な問題解決のための方策が求められていたのであって、むしろ、刑の一部の執行猶予制度の導入は諮問の内容にこたえるものであることが分かります。
次は、更生保護法関係です。
刑の一部の執行猶予制度を導入することにより、再犯防止、改善更生の実を上げるために保護観察の充実強化を図ることが不可欠です。この点、更生保護法が平成二十年六月に施行され、現在様々な取組がなされているところですが、今回の法案においては、同法の改正により、特に薬物事犯者に対する保護観察の特則が設けられることとなっております。
その一つは、薬物法の対象者、すなわち服役歴のある累犯者については、原則として規制薬物等の使用を反復する犯罪的傾向を改善するための専門的処遇を受けることを特別遵守事項として義務付けることとするものです。更生保護法の施行とともに覚せい剤事犯者に対する専門的処遇プログラムが実施されてきておりますが、先ほど申し上げました薬物法の趣旨を踏まえますと、その対象者に対してこうした専門的処遇を確実に受けさせることは、保護観察の処遇の実効性を高めるために必要であると思われます。
もう一点。薬物法の対象者に限らず、規制薬物等に対する依存がある対象者については、その改善に資する医療、援助を行う病院、公共の衛生福祉に関する機関等との連携を確保しつつ、医療や専門的援助を受けることについて必要な指示をすることができるようになっております。薬物依存を改善するためには刑事司法機関だけの働きかけでは不十分であり、医療・保健・福祉機関等との緊密な連携が不可欠であることを考えますと、このような処遇の枠組みが整備されることで薬物依存からの回復を図り、再犯に至らせないという効果を期待することができるものと思われます。
さらに、今回の更生保護法の改正において、保護観察の特別遵守事項の類型に社会貢献活動を加えることが盛り込まれております。社会貢献活動の導入に関しては、法制審においては、社会貢献活動の法的性格について独立の刑罰として位置付けることや短期自由刑の代替として位置付けること、保護観察の遵守事項として位置付けることなど様々な議論がなされた上で、我が国の法制度に最もなじみやすいという観点から保護観察の遵守事項として社会貢献活動を位置付けたと承知しております。
保護観察対象者に善良な社会の一員としての意識を涵養し、規範意識を向上させる上で社会貢献活動を義務付けることの意義は大きいと思います。その円滑な実施のためには活動場所の確保を始め体制づくりが重要になりますが、保護観察所では、これまで主として少年の保護観察対象者に対して社会参加活動を実施し一定の効果を上げてきていますので、そうした実績等も踏まえ、制度施行までの間に十分な実施体制がつくられることを期待したいと思っています。
私は、刑事司法制度において、その最終段階に位置する更生保護の保護司制度は、我が国が諸外国に誇り得るものの一つと確信しております。今回の法改正において刑の一部の執行猶予制度や社会貢献活動が導入されることになれば、更生保護の現場、特に保護司に負担が掛かることが予想されます。官民協働による更生保護制度がその効果を十分に発揮するためにも、新たな制度の導入に当たっては適正な予算配分と人材配置を行った上で実施されることが重要であると考えております。この点の配慮を是非お願いしたいと思います。
今更言うまでもありませんが、再犯の防止のための施策は一つではありませんし、本制度は、その実施直後から直ちに目に見えてその効果が実証されるというものではないかもしれません。しかし、むしろ事柄の性質上、長期的に見たときに徐々に結果が見えてくるものであることは当然かと思います。私もこの分野の研究者として、本制度の導入の成果を興味深く見守っていきたいと思っているところです。
私の意見は以上でございます。
御清聴いただきまして、どうもありがとうございます。

○委員長(西田実仁君) ありがとうございました。
次に、山下参考人にお願いいたします。山下参考人。

○参考人(山下幸夫君) 私は、日本弁護士連合会の刑事法制委員会というところの事務局長を代行している者でございます。弁護士の立場から、今回の法案につきまして基本的に賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
なお、今日の私の話はこのレジュメに沿ってお話をさせていただきます。
まず第一に、刑法の一部を改正する法律案についてです。このうち、刑の一部執行猶予制度について意見を述べます。
これは、現行法上は実刑か執行猶予かのいずれしか選択肢がないところ、その中間として、刑期の一部を実刑にするとともに、その残りの刑期について相当の期間の執行猶予にする判決を言い渡すという制度です。実務的に見て、実刑か執行猶予かはよく争われるところであり、そのいずれかしか選択肢がないという現状では必ずしも適切な処遇を選択することができないという現状があることは確かであります。そこで、この中間的な刑を設けるということについては、処遇選択のメニューを増やすものとして意義があると考えております。
実刑を受けた後の執行猶予期間には保護観察を付することが可能となっており、必要に応じて保護観察による社会内処遇がなされることが予定されています。現行法上、実刑を受けた受刑者については仮釈放制度があります。有期懲役の受刑者については刑期の三分の一を経過した日から仮釈放が可能となっていますが、その運用状況は、仮釈放率が平成二十年には五〇・一%であり、仮釈放が認められたときの刑の執行率は八〇%を超えていると言われています。
実刑を受けた受刑者は、仮に仮釈放になっても残りの短い刑期についてしか保護観察を受けることができないため、有効な社会内処遇を受けられていないという問題があります。今回の刑の一部執行猶予制度は、一部実刑を受ける被告人に対し、判決のときからある程度長期間の執行猶予期間を設定して社会内処遇を受けることを予定することができますので、実刑の後の社会内処遇を手厚くすることができるというメリットがあります。もっとも、この点は仮釈放制度の運用上の問題を前提とするところもありますので、いずれは仮釈放制度自体も見直される必要があると考えられます。
この制度の対象となる者として、具体的には、道路交通法違反の罪などの比較的軽い罪を繰り返し、何度か罰金刑を、罰金刑になった後、執行猶予判決を受けましたが、その後再び罪を犯して初めて実刑になる場合などが想定されています。また、執行猶予期間中に比較的軽い罪を犯した場合、現行法上は執行猶予に付された懲役刑と再犯について言い渡された懲役刑を合算して服役することになりますが、執行猶予を言い渡された懲役刑は通常、検察官の求刑どおりの懲役刑が言い渡されることが多いことから、この一部執行猶予制度が利用できれば、合算により相当長期に及ぶことが予想される服役期間を短くすることができると考えられます。この制度が機動的かつ弾力的に運用されることによって、適切な処遇選択を可能にするという点で評価することができます。
この制度の課題としては、判決時に、担当する裁判官がこの制度にのっとった判決を言い渡すことになっていることから、諸外国にある判決前調査のような情状に関する資料を職権で調査する制度がない我が国において、果たして裁判官が適切に実刑の期間を定めることが可能かという問題があります。これについては、特に弁護人の側から情状に関する資料をより多く提出するなどの協力がなければならないと考えられますし、また、刑の執行の開始から受刑中を含めて社会との連携が保たれるように、できる限りあらかじめ環境整備をしておくことなども求められることになると考えられますので、弁護士に対してこの制度の意義などを研修等で広く知らせる必要があると考えられます。
また、この制度により、実刑を終えた受刑者がその後の執行猶予期間中に保護観察を受ける場合に備えて、保護観察官や保護司について、増員を含め充実させていく必要があります。特に、後に述べるように、更生保護法の改正により保護観察の特別遵守事項として社会貢献活動が加えられることが予定されていますから、保護観察行政の充実強化が必要です。これは、施行までの間に整備される必要があります。
この制度に対する懸念として、従来、完全に執行猶予になっていた人が一部実刑になるという意味で重罰化されるのではないかという懸念が表明されています。中間的な刑であって社会内処遇をより充実させるというこの制度の趣旨を踏まえて、重罰化されることがないような運用がなされることが期待されていると考えられます。
また、この制度の適用の要件として、法案では、犯罪の軽重及び犯人の処遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるときという要件が挙げられています。法制審議会の要綱骨子にはなかった犯人の境遇という文言と、再び犯罪をすることを防ぐためにという文言が付加されています。犯人の境遇という文言を入れたことに異論はないとしても、再び犯罪をすることを防ぐために必要という再犯防止の観点を入れることについては異論もあるところです。
今日の私の資料の最後に付いておりますが、京都弁護士会の本年十一月十八日付けの刑の一部執行猶予制度新設についての慎重審議を求める会長声明は、この問題につきまして、行為者の将来の危険性に着目して、刑期を超えて自由を制限するのはまさに保安処分的であるなどと述べて慎重審議を求めています。
この点については、法制審議会の被収容人員適正化方策に関する部会においてかなり突っ込んだ議論がなされているところであり、そこでは、特別予防的な観点を考えるとしても、犯罪の軽重という刑事責任の枠の範囲内にすべきであるとする意見などが出されていたところです。
いずれにしても、この制度の運用に当たっては、再犯防止という観点を強調し過ぎて、この制度の適用を否定したり一部実刑に科する期間を長くするような運用はなされるべきではないと考えられますので、この点は附帯決議等において適切な運用がなされるように求めるべきだと考えます。
第二に、薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部の執行猶予に関する法律案について意見を述べます。
これは、刑法改正による一部執行猶予について、特に薬物使用者について累犯者であっても適用されるという点と、執行猶予期間中は必要的に保護観察が付されるという点が異なっています。これらは、薬物使用者が薬物への親和性が高く常習性を有する者が多いという特殊性に鑑み、施設内処遇ではなく社会内処遇によってその傾向を改善することが一般的に有用であると考えられたことによるものであり、妥当なものと考えられます。
全員に対してではないにせよ、薬物使用者については現行法上も、刑事施設においては刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律に基づき、その特別改善指導の一環として薬物依存離脱指導がなされているところでありますし、仮釈放後の保護観察について保護観察所が薬物離脱のための処遇を行い、平成二十年六月からは覚せい剤事犯者処遇プログラムの受講を特別遵守事項として義務付けて実施されているところであります。
この制度の課題としては、一部執行猶予制度が適用されて実刑を終えた受刑者に対する保護観察中の薬物依存離脱のためには、多くの保護観察官や保護司の配置が必要になるとともに、より専門性を有した保護観察官の養成が必要となると考えられるという点がございます。
これについては、例えば、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律に基づく社会復帰調整官のような特別の保護観察官の創設を検討するとか、日常的に執行猶予を受けた者と接する保護司についても、薬物使用者に対応する専門的知識を身に付けた保護司を養成するというような必要があると考えられます。
薬物使用者に対して刑事施設から保護観察に至るまでの処遇を一貫して有効なものとし、より適切な処遇を行うためには、刑事施設と保護観察所が実施している処遇プログラムを有機的に連携させるとともに、情報交換等を日常的に行うことなどが求められます。
また、第一で述べた刑の一部執行猶予の場合に、執行猶予中に保護観察に付される場合にも共通のこととなりますが、執行猶予中保護観察がずっと続くのかどうかという点と、保護観察に付された者が遵守事項を遵守しなかったときに刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消すことができるものとされていることについても考えておかなければなりません。現在、執行猶予中の保護観察の場合には、保護観察が必要なくなった場合には保護観察の仮解除が認められていますが、刑の一部執行猶予についても認められるべきであろうと考えられます。
保護観察中の遵守事項違反については、一部執行猶予を取り消すことができるとなっています。現在の全部執行猶予の場合には、遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いときに取り消すことができるとされているのに対して、一部執行猶予の場合には情状が重いときとの文言が入っていません。しかし、社会内処遇を充実させるというこの制度の趣旨からすれば、この文言の有無によって著しい差が生じることを是とするものではなく、保護観察対象者に対して、より強く遵守事項の遵守を促すというメッセージを示したものと見るべきであり、あくまでも裁量的な取消し事由なのですから、保護観察中の遵守事項違反による取消しは慎重になされるべきものと考えます。
第三に、更生保護法の改正案について意見を述べます。
これは、保護観察の特別遵守事項として、いわゆる社会貢献活動を加えるというものです。法制審議会の被収容人員適正化方策に関する部会においては、当初は社会奉仕命令の導入が検討されましたが、不起訴の条件とすることや、執行猶予の条件としての社会奉仕命令は導入されず、保護観察の特別遵守事項として社会貢献活動を加えるという改正案が出されるに至ったものです。
既に社会内処遇としての社会奉仕命令が導入されている近隣の韓国や台湾では、不起訴の条件や執行猶予の遵守事項としてこの制度が導入されていることから、被疑者や被告人において社会奉仕活動をしようとするインセンティブが働くのに対して、保護観察の特別遵守事項とするのではその点は期待できず、むしろ保護観察による負担を重くするのではないかと思われる点があることは否定できません。ただ、保護観察の特別遵守事項として、一定の者に対して社会貢献活動を課すことが適当と考えられる場合にそれを認めることは、保護観察処遇の選択肢を広げるものとして評価することができます。
その具体的な実施方法については、社会内処遇措置のための国連最低基準規則、いわゆる東京ルールに従って実施される必要があると考えます。例えば、東京ルールの中には、対象者が遵守すべき条件は、実践的であり、明確であり、かつ可能な限り少なくなければならない、処遇は、適切な訓練を受け、実務的な経験を積んだ専門家によって実施される必要がある、違反が自動的に拘禁処分を課すことになってはならないなどの重要な指摘がなされており、社会貢献活動の運用の在り方として、附帯決議等において指摘されることが望ましいと考えます。
私の資料の中に、東京ルールについては日弁連の仮訳を配付しております。
最後に、今回の改正案は、社会内処遇をより充実させるという方向を志向しているものであると考えられます。この方向は間違っておらず、今後も社会内処遇は更に進められるべきであります。そのために必要なのは、それを支える予算を充実させることと、保護観察官や保護司の在り方を見直し、より充実強化することだと考えられます。この点についても、今後、国会で議論、検討されることを期待して、私の意見とさせていただきます。
以上です。
ありがとうございました。

○委員長(西田実仁君) ありがとうございました。
次に、近藤参考人にお願いいたします。近藤参考人。

○参考人(近藤恒夫君) 私は、日本ダルクという民間の薬物依存のリハビリテーション施設を二十六年前に東京の荒川というところで始めました。ですから、薬物依存症の人たちの回復、良くなる、悪くなっていく、そういうのを毎日のように見てまいりまして、この法案に反対するか、賛成するかというところでは私は意見を差し控えたい。つまり、私の仕事はそういう仕事でありますので、依存症のことをちょっと皆さんに理解していただきたいなというふうに。
薬物依存は、とても厄介で、怖い、恐ろしい人、モンスターのような人たちが依存、薬を使うとそうなってしまうという従来のことが結構報道とかいろんなメディアの中で騒がれてきております。しかし、私は二十六年間、地域の中で古い一軒家を借りながらやってきました。その中で、そんな人たちはいなかった。もちろん、小指がなくて、入れ墨があったり、そういう人たちはたくさんいましたけれども、その中で人殺しをするような人は一人も、殺人を犯したり他者を傷つけたりするような人たちはいなかった。
つまり、なぜでしょう。依存症と自傷という言葉を皆さんはお聞きになったことがあると思います。依存症は自らを傷つけていくという病であります。その中で、ともすれば、医療や司法やあるいは矯正、そういう人たちとのかかわりはいつも、教える側と教えられる側、指導する側と指導される側、親と子、医者と患者、いつもこの関係でしか私たちは見てこなかったと思います。
そうではなくて、人間として対等なかかわりというのは当事者性であります。当事者が当事者を指導していったり、あるいは当事者が当事者として一緒に歩んでいくということが、この二十六年間、結果、このような施設が、六十か所ぐらいの施設がどんどん増えていったんですね、組織化しなかったから増えていったんですけれども。
そういうことで、もう一つの利点は、当事者が当事者で終わるんじゃなくて、当事者が今度は指導者になり得る。つまり、薬物依存の人たちが次の人たちを手助けするという、そういう役割に回ったときに私たちが気が付くのは、自尊感情が高まったり、そういうことに、自分はいい人間だと思えるようになって再犯を食い止めていけるようになっていくわけです。
つまり、何もなければそれは何も発生しません。巣がなければ何も発生しませんけれども、ダルクという巣の中で自分が役に立つ人間だということを感じられるようになって、そこから次の人たち、苦しんでいる次の人たちに、俺がやめたんだから君もやめられるよと、一緒に歩こうよということを感じられるようになります。
つまり、薬物依存というのは生涯治療だというふうに考えてください。一時的な病じゃなくて生涯治療、つまり長いスパンで、僕は二十六年前にダルクを始めてから今日の今まで、二十六年間ずっと、まあ不法薬物ではないですが、依存症のままずっとかかわっています。二十六年間かかわっている人たちもたくさんいます。
今日来たから今日解決する問題ではなくて、ずっと延々と、つまりゴールのないマラソンを延々と走っているようなものです。とすれば、何が必要でしょう。伴走者が必要なんです、一緒に歩んでくれる人たちが。そういうシステムを社会内で構築していくこと、これが再犯を食い止める唯一の道だというふうに思います。
つまり、自傷の人は人を傷つけません。むしろ、自尊心の高い人たちの方が人を傷つける可能性が高いと思います。自信のない人たちは自分を傷つけていきます。ですから、どうか、怖い、恐ろしいという、そういう発想をやめて、もう少し私たちの二十六年間の活動を信じてほしいと思います。
次に、とすれば、刑務所から出てきて、矯正施設から出てきた人たちが、ある日、ぽんと出されます、社会内に出されます。刑務所の中では結構薬使っているし、薬物を投与されている人たちも多いわけです、夜寝れない、風邪引いた、そういうことで。非常に刑務所も手厚くなってきております。
ところが、出てくるときに禁断症状が出てくることが間々あります。保護観察だけでは足りない、保護司だけでも足りない。では、その受皿としてもう一つアセスメントする部署が、法務省の中に、あるいはその部署の外でもいいですね、法務省の外でもいいです。保護観察の外でもいいですが、そういうところに、余り敷居の高くないところがいいでしょう。霞が関は駄目です。荒川区ぐらいで結構ですので。そういうところにそういうアセスメントをするようなエントリーセンターが必要であります。
エントリーセンターといっても何か選別するわけではなく、よく頑張ってきましたね、あなたは意志が強い人ですよというようなことを言ってくれる場所が必要だと思います。もう一人で闘わないでください、そして、この人も同じように二十数年覚せい剤を使ったけれども、今はやめてダルクのスタッフをやっているんですよという、そういうモデルを見せていく、そのことが必要。そういうアセスメントは私たちはできません、残念ながら。それは資格を持った人たちがやっていただければいいと思います。
つまり、刑務所からダルクに直接来ると、ダルクは混乱します、非常に混乱します。生活保護の問題とか、いろんな問題が出てきますね。その人たちの、私たちの仕事は彼の回復のことのお手伝いなんだけれども、生活保護に連れていったり、住居はどこにするか、そういうふうに振り回されて、ようやく決まったと思ったらもう本人はいなくなっているということが、インテークは三時間して、いなくなるのは五分でいなくなるというのはしょっちゅうです。ですから、それは余り、無駄な時間になります。ですから、ダルクでは余り長期のインテークやアセスメントをしない。その方がいいですね。
それから、ダルクのすばらしいところはもう一つ、自画自賛ですが、過去を問わないということです。不問ですね。過去がどうであるというのは、でも、あなたのその過去がもう一人の依存症の人たちにとても役に立つんだよということを伝える場でもあります。
そのエントリーセンターで一度通って、そこで三か月くらいのアセスメントをやってほしいなというのは保護局にお願いしたいところです。つまり、保護観察のほかに、この人は地域の中でやっていけるかどうか、あるいはこの人たちはダルクのような施設の中でしかできない人たち、あるいはIQがとても低くて自助グループの、自助グループというのはもう一つのダルクを出た後通うミーティング場ですけれども、ここに一冊だけ持ってきましたけれども、これは関東エリアのそういうグループの場所、毎日やっておりますね。こういう場所もあります。これとダルクを一緒につくってきたから、私はとても疲れました。
でも、今、もう一つダルクのほかに、ダルクは六十か所ですけれども、このNAというグループは、百二十グループ、二百グループ、二百五十グループの、全国に北は北海道から南は沖縄まで毎日ミーティングをやっている場所がこのリストで、後で見てください。これは関東エリアだけの自助グループのリストです。
それで、話があちこち飛んで申し訳ありませんが、つまり何を言いたいかというと、自助グループが崩壊します。つまり、刑務所の人たちばかり出てくると、ミーティングも分からない、やり方も分からない、そういう人たちがいきなり自助グループへ行ったり、ダルクに来たりすると、ダルクの中が混乱し、悪化していきます。しかも、ダルクに来る人たちは高齢の人たちが圧倒的に多い。満期出所者の人たちが多いんです。うちがあって、家族がいて、仕事があって、引受人がいる人たちはダルクに来る必要ないです。来ないです、大体。しかし、そういう人たちが刑務所の中では薬物離脱教育に参加できない人たちです。仮釈放をもらえる人たちは、刑期が近くなるとそういうところに参加できますけれども、私が一番言いたいのは、満期出所者の人たちを、今日はその話じゃないですね、満期出所者の再犯をやっぱり下げていくために、この人たちにやっぱりたくさんお金掛けるべきだと思いますね。
そして、私自身のことを言うと、私もちょうど一九八〇年に札幌地裁で覚せい剤取締法違反で出てきて、自信がない、それから私の希望は刑務所ですから、刑務所に入れてくださいと裁判長にお願いしたんですね。そのときに裁判長ははっきりと言ってくれました。こうしなさい、あなたは一週間に一回必ず精神病院に通ってください、あなたは一週間に一回必ず保護観察に行きなさいとか、一か月に一回は保護観察に行きなさい、それと福祉事務所に行って、きちんとミーティング出ていることを報告しなさいと、結構小さく、裁判官も勉強したんですね。だから、はっきりとしてくれました。ところが、私の頭は蛍光灯がうなっているんですね。そんなときに、つまり幻聴が聞こえているような状態で、覚せい剤の影響で、それで、何が言われているのか、何が行われているのか分からない。そういうときに、どうでしょう、国家が全部決めてくれるんですね、こうしなさい、ああしなさい。検事は怒って、どうだこうだと文句を言っていますね。でも、具体的に何も、そういう状態のときにはっきりとした何か明確な指示が出ていません。全部国家が決めてくれるから、当事者の本人たちは、国が決めてくれる、失敗したら国の責任だというふうに思っています。
だから、当事者に責任を返すようなどうか裁判とかそういうことをやってほしいなと。つまり、あなたが何をしたいのかというのを本人から引き出すような裁判でないと、ただ単に、うそ偽りのない証書を読まされて、国が全部決めてくれて、刑期まで決めてくれて、それで何か終わっていくという裁判ではなくて、もう少し裁判の在り方ももうちょっと考えてほしいなと。
それから、弁護士さんの先生方に是非お願いしたいのは、弁護士さんがかかわる、裁判にかかわる時間だけではなくて、その予後もどうかボランティアとして薬物依存の人たちに、判決が出た、終わった後でもずっと継続していけるようなシステムもあったらいいなというふうに私は思うのであります。
ありがとうございました。

○委員長(西田実仁君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

○有田芳生君 民主党の有田芳生です。よろしくお願いします。
法制審議会の刑事法関連部門で珍しく全会一致で今度の法律改正案、そういう方向で今進んで議論があるわけですけれども、やはり社会的な処遇を行うことによって結果的に再犯を減らしていくと、そういう積極的な評価がなされたからだろうというふうに思いますけれども、先ほどの山下参考人のお話にありましたように、若干の危惧を呈する弁護士さんたちもいらっしゃいます。京都弁護士会の会長声明の中では、これは改正案の二十七条の二ですけれども、「「再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、かつ、相当であると認められるとき」に、刑の一部の執行を猶予できるとしている。」と。
これを藤本参考人にお聞きしたいんですけれども、過去の行為についての刑罰を定める行為責任主義、それを超えて行為者の将来の危険性に着目をしているからこれはちょっと保安処分的じゃないのかという、そういう御意見のようですけれども、その意見についてはどのようにお考えでしょうか。

○参考人(藤本哲也君) 今の有田議員さんの質問ですけれども、確かに見かけで見た場合には、保護観察期間、一部執行猶予制度が、例えば三年の懲役の場合、二年が実刑で、一年を執行猶予して、更に三年を保護観察にすると。こういう事例を見ますと、これは既に刑期を超えた部分は保安処分に当たるのではないかと、そういう言い方ができるということも理論上は言えると思うんですね。そうしますと、現行の我が国の仮釈放制度そのものは残刑期間に限られていますから、そういう意味では、判決を言い渡した範囲内で保護観察をしているんだから問題ないだろうという意見だと思うんですね。
それはそのとおりなんですが、保安処分というのはそこに矯正が、もちろん治療をするという形でのかなり矯正が加わってくるんですが、今回の法案で見ますと、いわゆる犯罪の軽重というところで本人の刑事責任を問うていますし、それに、しかも犯人の境遇というところで、ここで個別的な事情を加味していますので、必ずしも行為責任とか行為者責任ではなくて、いわゆる施設内処遇と社会内処遇を一体化して、これで犯罪者の処遇に充てようという施策なものですから、これは日本ではそういう議論がありますが、欧米ではそういう議論はありませんで、アメリカなんかではこれは混合刑と呼んでいるんですが、法制審議会では分割刑と呼んでいたようですけれども、分割するのではなくて、実は施設内処遇と社会内処遇を併せて犯罪者の改善更生を図るという概念なんですね。
だから、決して特別な者に対して治療をするとかいう保安処分ではなくて、全ての犯罪者に対して犯罪者の改善更生、社会復帰を考えるということが前提になっていますので、保安処分とは中身が違うということになりますし、そういう意味では我が国の現行制度の中でも十分これはやっていけるだろうと考えています。

○有田芳生君 次に、山下参考人と、もう一度藤本参考人にお聞きをしたいんですが、今度の法律改正案の方向性が日本版ドラッグコート、つまり薬物専門の法廷を、初めてと言っていいんでしょうけれども、実現していく方向ではないかと。
御承知のように、アメリカの歴史を見ると薬物大国ですよね。ケネディ大統領それからジョンソン大統領のときには社会的復帰をすることによって薬物を克服すると言っていたんだけれども、それがうまくいかなかった。それで、レーガン政権のときに厳罰化になるんですが、この二十年間、アメリカは厳罰化から更に転換をして、ドラッグコートという新しいシステムを全米に広げていっていて、そしてオバマ大統領で薬物との戦争の終結宣言を行って、これからは公共政策として薬物に対処していかなければならないと。
そういう方向を、日本よりかなり深刻なアメリカでそういう方向に今進んでいるわけですけれども、そこに日本も追い付こうとしている。そういう意味で、今度の法律改正が日本版のドラッグコートになる可能性があるし、そうしなければいけないという、私はそう思っているんですが、その点で、何がこの法律に更に必要になってくるのかということをお二人にお聞きをしたいと思います。

○参考人(山下幸夫君) ドラッグコートの制度は私も傍聴したこともあるんですけれども、アメリカで、やっぱり大変優れたというか、私は制度だと思っています。ただ、日本においてはまだそこまで行っていないというか、今回の制度もドラッグコート、つまり薬物専門の法廷を開くというわけではなく、従来どおりの枠組みの中で、今回、薬物使用者に対して一歩、従来と違って施設内処遇よりも社会内処遇を重視していこうという一歩を踏み出すものであると思うんですね。
ただ、やっぱりこれは、私は将来的には、もちろんアメリカは物すごく薬物天国というか、そういうところもあって、ああいうドラッグコートというのが非常に発達したと思うんですが、そういうものに学んで、やっぱり薬物については、薬物使用者についての特別な処遇というか、刑務所における、単なる刑務所の中の施設内処遇では十分できない部分を社会内で処遇していくという形で、薬物使用者に特化したプログラムをもっと社会内処遇でやっていくというアメリカのそのドラッグコートのやり方をもう少し今後少しずつ広げていく必要がある、今回はその第一歩であるというふうに思っています。

○参考人(藤本哲也君) 今の有田議員さんの質問に対して最初に考えていただきたいのは、薬物犯罪者に対してアメリカは、薬物犯罪者はこれは病人であるという前提に立っています。病人であるという前提に立てば治療可能性ということが出てきますので、そういう場合にはあらゆる刑事司法段階において、言い換えれば、警察でも検察でも裁判でも矯正でも保護でも、この刑事司法の五段階において薬物に対応したという現実があるわけですね。その中でたまたま裁判が対応したのがこのドラッグコートというシステムなんですが、言い換えますと、これは裁判官による保護観察だと見ていいと思います。
そうすると、問題がありますのは、もし今の裁判によって、あと二か月後にこの裁判の法廷へいらっしゃいと、まあなかなかよく治療しているじゃないか、あと半年後にいらっしゃいと、こういうふうにやるんですが、そもそも考えていただきたいのは、今の我が国のように薬物犯罪者は犯罪者であるというモデルからすると、これはなかなか難しい面があるということです。
といいますのは、治療を前提としてドラッグコートをつくった場合、実は治療、目的が達成した場合にはもう起訴をしませんので、当然これは裁判をしないことになります。ある意味ではこれは非常にコストベネフィット的なんだと思いますけれども、しかし、そのためには裁判官が絶えず同じ場所に常駐しなくちゃいけません。アメリカの裁判官の場合は、私が裁判官でこの部屋が私の裁判所だとしますと、私は終身ここにいるわけです。そうしますと、対象者が来ればいつでも面会できますが、我が国の場合は二年ごとに転勤しますので、ここにいて、半年後にいらっしゃいと言って北海道に行ったとき、またその対象者は北海道に行かなくちゃいけない。
こういうことを考えますと、法システムあるいは覚せい剤中毒者を例えば病人とみなす考え方、そういう前提条件が違いますし、基本構造が違いますので、なかなかそれを取り入れることが難しいだろうと思うんですね。それならば、既に我が国は即決裁判制度がありますので、この即決裁判制度で、本人が初犯でしかも犯罪事実を認めていれば、即決裁判をして執行猶予を前提にするのがありますから、これを使うならこれはドラッグコートになると思うんですが、そのためにはもちろんいろんな工夫が必要ですけれども。
そういう意味で、直ちに我が国の今の刑事訴訟法の構造そのものをそのままにし、我が国の裁判体系をそのままにした上でドラッグコートを導入するというのはかなり難しい側面がありますので、是非それは議員の先生方にもう少し、どうなるかということを整合性を考えていただかないと無理かもしれないと私は思っています。

○有田芳生君 今のお話の中で、アメリカでは薬物依存者を病人であるという規定をしているというお話でしたけれども、その依存者と常に協力し合いながら克服の道をたどっていらっしゃる近藤参考人にお話を伺いたいんですが、先ほどのお話の中でも終わりのないマラソンであるという表現なさっておりますし、あるいはほかに書かれたものの中では、薬物依存をやめることよりもそれを続けることが大変なんだということをおっしゃっておりますよね。そのときに、先ほど伴走者がとても大事だという認識を語られました。
伴走者というのはとても大事だと思うんですが、しかし現実の再犯ケースなどを見ますと、この間もある有名歌手の奥様が薬物犯罪で逮捕される、あるいは三回逮捕された元タレントにしても、結果的には手を出してしまったのは同居をしている女性の影響が多かった。あるいは、これまた有名な女性歌手にしても、夫が薬物を使用していたことによって巻き込まれていってしまったということになると、やはり出所をしてきても自分を助けてくれる人のところに戻ってしまうと、仮にその人が薬物依存者あるいはその近くにいる者であった場合、再び巻き込まれる可能性が高いというのを現実示していると思うんですよね。
ですから、先ほどのお話の伴走者という意味合いをもう少しお聞きをしたいのと、あるいは妻であったり夫であったりする者がそういう可能性がある人物ならば、どうダルクあるいはその関係者として対処をされていくのかということをお聞きしたいと思います。

○参考人(近藤恒夫君) 大変ですね、これは。離婚ということになるでしょうね。つまり、その人と一緒に、依存を持った人たちが一緒に住んだり生活しながら薬だけやめていくということはまず奇跡に近いと思います。私は分離させた方がいいと思いますね。しかし、それは期限がありますね。治療がちゃんと、自分である程度プログラムがきちんと入れば、自然とそういうふうに変わってきます。その間は約五年間ですね、元に戻るのは。私がその依存症からの回復で信用できるなというのは、やめて五年ぐらいで、しかも、それで五年たっても毎日自助グループに通い続けている人たちは信じられます。ダルクはやめるところですから、やめるところで薬は止まるでしょう。その後こういう自助グループに通っていく根気強さというか、それを三十何年やってきましたから。私自身も三十何年このグループに通った。そうすると、第一に何が問題なのか。薬物が問題なんだったら、その再発、誘発するようなこと、危険なことは取りあえず第一に考える。当然離婚でしょう。
もう一つは、伴走者というのは、家族とかはなり得ないですね。家族とか自分の身内とか夫婦とかというのはまず伴走者になり得ない。その人たちはまた違うグループがありますね。つまり、薬物依存を夫に持つ会とか、ナラノンとかアラノンとかというグループがありますから。
つまり、プログラムは一緒じゃ駄目ですね。分けていかないと駄目ということで、それができない人は延々とやっぱり同じパターンを繰り返しております。まあそういうところです。
終わります。

○有田芳生君 最後に、藤本参考人に経済問題をお聞きしたいんですけれども、刑務所再入所者の七割が再犯時に無職であるという現実がある。一方で、協力雇用主というのは全国で約九千三百事業者があるわけですけれども、仕事を与えようとする努力をしつつ、だけど刑務所に入るときには無職であるという、その落差というのはどこから生まれてくるんでしょうか。あるいは、それを埋めるには何が必要なんでしょうか。

○参考人(藤本哲也君) もちろん、今、有田議員さんがおっしゃいましたように、刑務所に収容される、そのこと自体で既に職を失うことになりますよね。しかも、我が国の社会は、刑務所に入った段階で既にあらゆる地域社会において排除される、いわゆるソーシャルエクスクルージョンというシステムを持っていますので、社会的に排除するという一般の国民の傾向がございます。これはイギリスなんかでは、これをもう一度、犯罪者も含めて、我々がもう一度犯罪を犯させれば、これって結局国が全部財政負担をしなくちゃいけないわけですね。
有田議員さんも御存じのように、これはまだ正確なものではありませんけれども、例えば刑務所へ入れますと大体一人二百七十万掛かっている、保護に持っていくと二百三十万掛かる、合わせて五百万掛かるわけですね。これを警察、検察、裁判と、言わば一人の犯罪者をプロセスするのに税金が一千万掛かっているんですよ。こんな無駄遣いはないということになりますよね。どこかで対応しなくちゃいけないと思うんですが。
そういう点を考えますと、もちろん再犯防止のためには、就職をした人としない人では五倍違いますので、そういう意味では就職をさせるべきなんですけれども、今実際にそうした協力雇用主は九千超えていますし、実は法務省と厚生労働省がタイアップしてトライアル雇用制度を設けて、企業に是非雇ってください、三か月でも結構です、その代わり四万ずつこちらでお支払いしますと、もしも駄目な場合はいつ首にしても結構ですというようなトライアル雇用制度もやっているんですけれども、なかなかこれに企業は乗ってこない。それは何よりも、今、日本が不景気であると。それに、犯罪者じゃなくても、ほかの人を雇おうと思えばどんどん雇えますので、そうした社会情勢一般が大きく影響していますので、単に今の現在の刑務所へ収容されている受刑者を出所後どうするかという問題ではなくて、今の我が国の経済がどちらを向いているかと、それから我が国の国民がそこはすなわち前科者、いわゆる刑余者に対して排除していないかどうかと、そういう問題が絡んできますので、非常に難しい問題だと思います。
何が原因かと言われれば、そうした大きなマクロ的な経済的な問題と、あるいは国民のレベルで犯罪者を排除する、これはどうしてもそういう動きがありますので、この辺りのことを解決しない限り根本的な解決にはならないだろうと思います。

○有田芳生君 ありがとうございました。

○熊谷大君 自民党の熊谷大でございます。参考人の皆様には大変お忙しい中、興味深い御意見の数々をお聞かせいただきまして誠にありがとうございます。
時間も少ないので、早速質疑をさせていただきます。
今回の法改正に伴って、ハード面とソフト面、両面同時に並行して充実させていくことが望ましいだろうというふうに考えております。特に、刑罰主義から、先ほどもありましたが、治療や教育といった立ち直り、更生に視点を傾注するならば、なお一層のことその両面の充実が必要であるというふうに考えております。
そこで、社会貢献活動について藤本哲也参考人にお聞きしたいというふうに思っております。
今回の改正案の中で、社会貢献活動を保護観察期間に設けるということでありますが、保護観察対象者ごとの特別遵守事項、まあ社会貢献活動でございますが、その頻度はどの程度が必要なのか、またどの程度になるのか。月単位で結構でございますので、望ましいその頻度のようなことを研究者の立場から教えていただければと思います。

○参考人(藤本哲也君) 今の熊谷議員さんの質問はまさに的確に問題をとらえていると思うんですが、その問題点としまして、最初に一九七〇年代にイギリスでこの制度を導入しましたときには、最低四十時間から二百八十時間、今は三百時間になっています。しかも、今のような社会貢献活動というよりも社会奉仕命令と言ったんですが、ただ、ソーシャル・サービス・オーダーという形にしますと、社会貢献という、あるいはボランティア活動であるものを刑罰にするのはおかしいじゃないかというので、イギリスでもこのサービス取りましてコミュニティーオーダーに変わっています。
そういう意味で、我が国の今回の新法が社会貢献活動という言葉を使ったのは適切だと思いますし、実際に少年の場合には社会参加活動というのが既に実施されておりますので、それとペアにしますとかなり分かりやすい制度になっているのではないかと思います。
そこで、御質問の点ですが、例えばテキサス州においては一千時間。御存じだと思いますが、ピート・ローズが脱税で捕まったときに、ピート・ローズに対して社会奉仕命令が言い渡されまして、あのときの最高限度、すなわち一千時間の社会奉仕命令が言い渡されました。結果として、大リーガーのピート・ローズはピッチャーでしたから、全米を回って少年野球活動のコーチをする、教えるという千時間の社会奉仕命令を実際にやったことがございます。
したがって、イギリスのように例えば三百時間以内で収めるのか一千時間にするのかは別ですけれども、大体、社会貢献活動は一年間で全部やるようにと規定されているのが実情です。まだこれから三年間の余裕がありますのでどのような形に持っていくか分かりませんが、典型的な事例としては、例えば公共施設の清掃活動であるとか、あるいは社会福祉施設の介護等にかかわることになると思うんですけれども、今全世界で四十か国がこの社会奉仕命令を実現しておりまして、うまくいっている国もあればうまくいっていない国もありますので、その辺り、我が国の場合はかなり保護局がきちっとしたシステムを持っています。例えば、保護司さんが四万九千いますし、それから更生保護女性会が十九万いますし、それからBBS会員が五千いますし、今言いました協力雇用主が九千二百いるわけですね。合わせますと二十六万二千人のボランティアが保護にはいますから、この人たちのタイアップによって社会参加活動が他の国とは違った形で実現できる可能性が高いと私は思っております。

○熊谷大君 次、続きなんですけれども、藤本参考人と、あと近藤参考人にもちょっとお尋ねしたいんですけれども、こうした事案を犯す人々には社会貢献活動に参加して、午前中にも議論があったと思うんですけれども、様々な意識を涵養していくというふうなこともあって、先ほど藤本参考人もおっしゃったように、清掃活動又はごみ拾いで期待されるような自己有用感又は自己肯定感が満たされるだろうというような期待があるんですけれども、果たして本当にそれがそうした活動で満たされるのかなということが疑問としてあります。そういったものの科学的なデータがあれば教えてほしいというのと、また、介護活動、福祉施設で介助作業を手伝うというふうにもあるんですけれども、これも、介護福祉士というのはもう御案内のとおりに国家資格でございますので、大変専門性も高い分野であることから、ちょっと安易にとらえられ過ぎているんではないかなという懸念も抱いております。
というのは、私も中学校の教育現場で子供たちを教えていた経験があるんですけれども、職場体験、社会体験の指導を何度も務めさせていただきました。子供たちはやっぱり専門性が高い職業であればあるほど脇で見ているしかない。主体性を持って何かにかかわる、参画するというのはなかなか容易ではないという記憶がございます。むしろ、こうした経験をすることによって、有用感ではなく再び無力感を抱かせてしまう効果があるんではないかなというふうな心配をしております。
その見解をお二方にお聞きしたいなというふうに思っております。

○参考人(藤本哲也君) それでは、私の方からお答えしたいと思います。
熊谷議員さんの今おっしゃっていることは、確かにそういう疑念が出てくるだろうと思います。ただ、この社会貢献活動の持っている意味は、本人が社会貢献活動をすることによって他の人と接触するわけですよね。言い換えますと、少年の社会参加活動を基にしますと、二人の、少年に対応して保護観察官が付き、それから更生保護女性会のメンバーが付き、BBSの会が付いている。十七名の人がこれに関与しているわけですね。今だったら、秋で落ち葉拾いをして、その後で焼き芋を炊いて食べるということをやるでしょうけれども。
その社会との接点を見出す、社会とのきずなを強くするという意味で本来の意味の社会的活動があるのであって、清掃すること自体に意味はないんですよ。清掃すること自体をさせるのは何という意味もありませんけれども、清掃をすることによってその町の様子を見、自分たちが今まで汚してきた町が、これをきれいにすることによって、もう汚してはいけないという意識を持つ。きれいになった後でそこに得られる達成感、満足感というものを経験する。そのことが再犯防止につながっていくということなんですね。
もう一つお話をしますと、今おっしゃいました少年の場合、特老、特別養護老人ホームに参加しています。少年たちの作文を読んでみたんですけれども、少年はこう言うんですね。初めは御飯をおじいちゃん、おばあちゃんに食べさせるのも嫌だったと、ましておしめを替えろと言われて、もうこんな嫌なことはなかったと。ところが、おじいちゃん、おばあちゃんが、自分たちが少年院から来ていることは知らないものですから、ボランティアとして来ていると思ったものですから、悪いね、私の孫みたいな子にこんなことさせて悪いね、ありがとうと一言言われた。そのありがとうという言葉で彼は立ち直ったと言うんですね。それから二度と犯罪を犯すまいと決意した、これだけ我が国のために苦労して、人が年を取って、まさに死んでいこうとしている、自分はこうして自由気ままに暴れ回っている、これでいいんだろうかと反省したと言うんですよ。
だから、結果的に、その社会奉仕活動そのものが問題なのではなくて、社会奉仕活動にかかわることによって世間の一般の人とのきずなを見出していく、そして達成感と自己充足感を味わっていく。ここに実は更生する意欲というものが出てくるわけですから、それは学校現場にいらっしゃった先生、御存じだと思いますが、そこに意義があると思っていただければと思います。

○熊谷大君 近藤参考人にもお願いします。

○参考人(近藤恒夫君) 間もなく、山梨ダルクの話ですが、山梨ダルクはこの三年間ずっと山梨県警とソフトボール大会をやっております。警察の方はボランティアなのかも分かりませんね。いろんなユニフォームとか貸していただいて、いろんな人たちがそこで刑務所から出てくるような人たちと一緒にソフトボールをやっていて、とても警察の人から見ると異質な人たちですね。頼むから今度は長い長袖着てきてくれよとか、いろいろな注文があります。でも、これってすごいなと思うんですよ。つまり、捕まる方と捕まえる方が一緒に、何かこういうことが日本の中でもっともっと行われたら僕はすばらしいなと思います。
というのは、つまりその薬を、自己使用の人たちには必ず後ろにディーラーがいるわけですから、そのディーラーが大体やくざの組だったりするわけですよね。そうすることで、私たちは、ソフトボールをすることでその人たちを守ってもらっているというのも一つあります。また、そういう人たちが今度は薬を売りづらくなってしまいますね。
だから、こういうことが、奉仕活動とはちょっと異なりますけれども、地域の中で有効な資源というのは、もう取締り、矯正も含めて、こういうことをどんどんボランティアとしてやって評価してあげてほしいなというふうに思いますね。こんなことはちょっとおかしいじゃないかと、取り締まる方と取り締まられる側が一緒にソフトボールを仲よくやっているというのはおかしいじゃないかということもありますけれども、これはしかしすばらしいことだというふうには僕個人では思います。犯罪を抑止するという意味ですね。
それから、藤本先生もおっしゃっていましたけれども、孤立化が大きな原因です。孤立が大きな犯罪に移行していくわけです。薬物依存は寂しさの痛みの病でもありますから、したがって、どうやってこの人たちにたくさんの人たちを、ところが普通の人たちは嫌がりますね。でも、当事者が、当事者のグループの人たちがやるということをもっと活性していくと孤立しないで済む。つまり、白骨死体で見付かるケースがダルクの場合は余りないんです。よくアルコール依存症の人たちの、三か月以後に見付かったとかと言いますけれども、薬物依存の、ダルクのかかわる、ダルクの何か地域の中のあれはもうちょっと密接なんでしょうね。孤立して居宅で死んで白骨で見付かったというのはいまだありません。誰かが見守っていくということが。
それから、そのボランティアのことに対して、それほど余裕があるかなというか、つまり、ダルクのプログラムでいうと一日三回のミーティングがあるわけですね。朝十時からと午後一時半からと、夜は七時のNAミーティング、地域にあるこういうNAミーティングに参加するというのが一日のスケジュールです。これを外すと退寮になっちゃいます。薬を使っているかどうかが問題じゃないです。このプログラムにきちんと参加しているかどうかが一番の重要なことです。多分、薬使っちゃったらこれの、時間感覚がおかしくなりますから出れなくなりますね。だから、薬使っている人を、あなたが駄目な人じゃなくて、ミーティングに出ない、ちゃんとスケジュールを守らなかったあなたが悪いと、こういうことでやっております。
ボランティアまで手が回るかどうか。このスケジュール、つまり施設に入った場合、そのボランティアができにくいというふうに思いますので、全てが施設に入所するということではないと思いますけれども、だからその辺りがちょっと、やめるだけで多分精いっぱいのような気がします。

○熊谷大君 最後に、社会と人とのかかわり合いという点で、その取っかかりとなる保護司さんについて、山下参考人、藤本参考人も保護司の負担も多くなるだろうということで言及されていたのでちょっと質問したかったんですけれども、時間がもう来てしまったので、私の質疑はこれで終了させていただきます。
ありがとうございました。

○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。今日は、お三方の参考人の先生方、本当に貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。
早速、まず藤本参考人からお願いをしたいと思います。
先ほど、参考意見の中で二十三年版犯罪白書等を引用しての再犯状況等を認識を伺った上でお話があったわけでありますが、今回、再犯防止の必要性、相当性というようなことが重要な要素になってくるわけでございますけれども、刑の一部執行猶予そして社会貢献活動を導入することが再犯防止にどう有効に機能し得るのか、それからまた、再犯防止、改善更生にとってどの程度役に立つというふうに、何となくイメージとしては分かるんですが、もうちょっと詳しくといいますか、御説明いただければ有り難いと思います。

○参考人(藤本哲也君) 今、魚住議員さんの質問ですけれども、確かに分かりにくい点があると思いますね。
といいますのも、今我が国の刑事司法の段階で刑務所に入れないという方策、入口対策を考えますと、警察段階では微罪処分で処理していますし、検察段階では起訴猶予の制度を持っていますし、裁判段階では執行猶予の制度を持っていますから、これをフル回転して今は刑務所へ入れない方策というものをこれまで展開してきたわけですよね。
といいますのも、バブルの崩壊から、大体平成四年にバブルが崩壊して、これがタイムラグです、これが犯罪となって現れるのが四年から五年と言われていますけれども、平成八年、九年、十年、十一、十二、十三、十四と七年連続で戦後最高を達してきた。当然、これは刑務所に入ってくるのは当たり前のことですから、なるべく入口で止めよう。言い換えますと、今実際に刑法犯の警察段階で検挙された人たちの百人のうちの一・七人しか刑務所に入っていないんですね。言い換えれば、一・七人しか入っていないということは、非常にコアな犯罪者だけが刑務所に入っているということになるだろうと思います。
そうしますと、データの解釈として確かに四三%の人が再犯を犯しているというんですが、あとの五七%は再犯を犯していないということは、これだけ選ばれて百人のうちから一・七人しか刑務所に入れていない、そのうちの半数が少なくとも再犯を犯していないというのは、これは制度としては効果があったと見るのかどうかという点がデータの見方によって違ってくると思うんですよ。もちろん先生と私と同じだと思うんですが、ここに一升瓶があって五合しかないときに、酒の好きな人はこれはもう五合しかないと思うでしょうが、酒を飲まない人はまだ五合あると思いますので、どう解釈するかは非常にデータは難しいところなんですが。
そして、今の刑務所の中でもしも過剰収容を減らそうと思えば、例えばイギリスのレミッションのように刑を切ればいいんですね、もうあとは三か月しかないと、今一二〇%達したと、一二〇%達したら暴動が起こりますから、ここで切るわけですね。そうしますと、裁判所が命令して釈放しろと、減刑という形で出していくという方法があります。
アメリカの場合には善時制、これはグッドタイムシステムといいまして、善悪の善に、それから時間の時ですか、制度の制と書いて善時制という制度があるんですが、これは十か月勤めたら十二か月いたことにしてあげよう、二十か月いれば二十四か月いたことにしてあげようという、二〇%増しに刑務所にいたことを認めようというシステムなんです。これも対応できますよね。
そういうことできるんですが、残念ながら、そういうことをやってもまた犯罪はどんどん増えていきますから、最終的にはどこかで再犯防止対策を打たなくちゃいけない。これは、一回刑務所から出た人、これは成功したかどうかは別にしましても四三%が再犯を犯していますので、これに対応すれば、我々はもう一度、全ての刑事司法を通すという無駄遣いをまず防ぐことができますね。
そのほかに、今の制度に立ち返って考えてみますと、今までは全部執行猶予か全部実刑かしかなかった。ところが、裁判官としては第三の選択肢を得たわけですね。言い換えれば、今まで全部執行猶予にした方がいいかなと迷うとき、あるいは全部実刑にしたらいいかと迷うときに、どちらに迷っても、今度は刑の一部執行猶予制度がありますので、これで対応できますと。量刑として犯罪を犯した者に対する刑事責任を問うという意味ではきちっと実刑部分で評価をしていますし、それから、どのようにして再犯を防止するかというのは後の執行猶予の部分と保護観察の部分で対応していますから、少なくとも今のこの制度が実現できれば、刑事責任は問いながら、同時に犯罪者の社会復帰、再犯防止が達成できるという新しい方策というものを裁判官あるいは弁護士、検事さんに提示できますから、これによってもう一つの再犯防止の枠組みを付け加えた。一つによって再犯防止はできないと思うんですが、少なくとも今回の刑の一部執行猶予制度そのものは、再犯防止のためのもう一つのチョイスを司法の現場に与えるという意味で効果があると私は考えているというわけでございます。

○魚住裕一郎君 今先生のお話の最初の方にバブル崩壊後のタイムラグの話がありましたけれども、リーマン・ショック、それからまた超円高不況、そこからタイムラグがあるとちょうどあと三年ぐらいかなみたいな、そうするとやっぱり適正収容人員の話になってくるのかなみたいなそんな気持ちがありますけれども、そういう理解もあっていいと思いますか。

○参考人(藤本哲也君) はい、先生のおっしゃるとおりです。必ずこういう不景気が起きますと失業率が高まりますから、そうしますと、それが犯罪という現象に現れて、四年から五年のインターバルで次には法廷に現れてくる、それが最終的には刑務所に来るというのは世界的に認められておりますので、今対策を打つということが一番大切ですから、この刑の一部執行猶予制度はまさにそのタイミングとしてはいいタイミングであると私は考えています。

○魚住裕一郎君 次に、山下参考人にお願いをしたいと思いますが、これは初入者を対象にしておりますよね、累犯者は対象としていない。
ただ、いろんな人がいて、高齢者あるいは障害者、身寄りや仕事のない人。やっぱり短期間のうちに犯罪と受刑を繰り返すような人は対象外になってしまう。刑務所出てからまた無銭飲食するみたいな、そういうことになると思いますけれども、やはり再犯防止をより充実させるという意味では累犯者も対象とすべきであるというふうにも言えると思いますけれども、この対象者が初入者に限定されているということについての御見解、弁護士としての御見解をいただきたいと思います。

○参考人(山下幸夫君) この点は法制審議会のときにも議論があったようですけれども、確かに、それはもう選択肢は広い方がいいという意味ではそういう累犯者も含むという考え方もあると思うんですが、今回はやはり新しい制度ということもあり、まず初入者に限ってこれを始めようと。また、恐らくその運用を見て将来的にどうしていくのかというのは、また広げていくとか今のままでいくとか、そこはやっぱり、恐らく今回初めてこの制度を導入するということでやはり初入者に限ってスタートしようということでこういう限定になっているのではないかと理解しておりまして、取りあえずそのスタートとしてはそういうことでよいのではないかと思っております。

○魚住裕一郎君 また、日弁連という弁護士としての御意見をちょうだいしたいんですけれども、これは多分、刑事裁判の中でほとんど自白事件ですよね。その弁護の依頼としては、是非執行猶予を勝ち取ってもらいたいという依頼が多いだろうと思います。
今回、一部執行猶予判決をもらうことをまた目的とするような弁護活動もあるのかもしれません。先ほど判決前調査制度がないということもおっしゃっておりましたけれども、これ裁判実務でやっぱり有利な情状はどんどん出すということになると思いますが、環境整備要旨でそれを法廷に出すということもあるでしょうけれども、立証活動変わってきますか、ちょっと予想をお願いします。

○参考人(山下幸夫君) これはやっぱり変わらざるを得ないと思うんですね。これまでは、何といいますか、実刑か執行猶予かということでやっていたわけですが、今回その中間的なものということもありますので、やっぱりより多角的なといいますか、もっとより積極的にいろんな資料を、情状資料を出さないといけない。裁判官が今回、一部実刑にして残りを執行猶予にするという、どのぐらいの刑を、じゃ一部実刑にするかという期間は非常に裁判官としてはなかなか難しいと思うんですね。だから、裁判官が判断できるような資料を出さないといけない。
ただ、弁護活動として難しいのは、やっぱり普通、被告人から見れば、自分は執行猶予になりたいんであって、一部実刑になるというのは必ずしも望まないかもしれない。でも、弁護士から見れば、これはもうどう見ても実刑事案であるかもしれない、だけど、ひょっとしたら一部執行猶予が使えるかもしれないという、やっぱりどうしても被告人のニーズと弁護人のプロとしての感覚が少しずれることがあり得ると思うので、この場合どういうふうにするか、また被告人をどう説得するか、その辺は非常に悩ましいところではあるし、全く新しい制度ですので、最初のころ、弁護士としてはかなりその弁護の在り方についていろいろ悩ましい部分があろうかと思います。
ただ、やっぱり基本的にはもう多くの言わば情状資料を、今まで以上にいろんな情状資料を出して、少しでも被告人に有利な判断が出るように裁判官に多くの情報を与えるということをしていくことが必要になるのではないかと思っております。

○魚住裕一郎君 お話を伺うと、何か判決主文で和解するような、そんなイメージですね。ありがとうございました。
次に、近藤参考人にお願いをしたいと思いますが、先ほどお話の中で、弁護士さんも事件の終わった後も継続してかかわってもらいたいという御意見もございました。また、いろんな論文の中でも、区切りのある制度、ここからここまで面倒見るけれどもあとは知らないよと、こういうような制度では実際に役立たないと。午前中の参考人の先生にも、例えば出所直後とか保護観察直後は一番危ないんだというようなお話がありましたけれども、本当にそうだなとは思いますが、先生のお立場からして、この薬物事犯者に対する保護観察の在り方について御意見があったらお伺いをしたいと思います。

○参考人(近藤恒夫君) 六百人とか六百五十人とか言われる全国の保護観察の現場に携わっている人たちは、恐らく数百件というか、一人が何件も持っている、懸案を持っている人たちとかかわっているわけで、大変なお仕事だというふうに思います。
したがって、保護観察という観察するということと、もう一つは社会にどうつなげていくかという、つまり次に手渡していく、そういう役割もこれから保護観察官は必要になって、どういう資源と、この人はどういうところにつなげていけばいいのかということもこれからやっていかなければならないとしたら、やっぱり保護観察の人たちは大変な思いをすると思います。
したがって、僕は是非、保護観察だけではなくて、ほかのいろんな、民間のいろんな医療とか、それとか福祉とか、ダルクのような施設でもいいですね、そういういろんな資源を統括して、その中にちょっと、精神保健福祉センターとかというのは各都道府県に必ずありますから、何かあそこが少し暇そうだなと思いますので、ああいうようなところをもうちょっと有効に使ってやったらいいと思います。
それで、先生の御質問ですけれども、僕はフォローアップ、フォローアップ委員会じゃないですけれども、何か地域にそういうフォローアップするようなコミティーをつくって、僕は巣をつくることが大事だと思いますね。孤立させないで巣をつくる。巣はどんな巣でもいいんですよ。そこに集まると、その巣に集まると必要な人は必ず出てくる。それはある意味では刑務所友の会でもいいですね。
そういうような、何かそういう人たちが集まって、つまり共感できて、そこには良くなる人もいて、悪くなる人もいて、全員が助かるとは思いませんから、その中でまた何%か救われる。また違うコミティーで、コミュニティーでまた何人か救われる。そういうものがもうちょっと社会資源としてあったらいいなというふうに思っています。

○魚住裕一郎君 もう時間なので終わります。ありがとうございました。

○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。
まず、藤本参考人とそれから山下参考人、お二人にお伺いしたいと思うんですけれども、特に薬物事犯についてお尋ねいたします。
通常の犯罪以上に再犯率といいますか累犯が多い犯罪類型と言われておるところですけれども、今回、新法をもって、累犯であったとしても一部執行猶予を判決として出すことができるという立て付けになっております。
先ほど藤本参考人が御答弁の中で裁判官にとって判決の幅が広がると、選択の幅が広がってそこを評価するという御発言がありました。そのとおりとも思うんですけれども、今回の法案、両方とも再犯防止という目的がありまして、午前中、保護司の方からのお話もありましたけれども、今の保護観察の在り方ではなかなか、特に薬物事犯の再犯を防ぐのは難しいという現状認識も示されております。
そういった中で、特に薬物事犯につきまして、今回こういった新法なり、あるいは一部執行猶予制度というものを導入することがどこまで目的を達成する上で十分な手段と言えるのか否かという点についてお二人にお尋ねしたいと思います。

○参考人(藤本哲也君) 今の桜内議員さんの質問ですけれども、確かに今回の場合、一度考えなくちゃいけませんのは、上限が三年になっておりますので、全ての累犯者を入れるかどうかというのは問題が出てくると思うんですね。言い換えますと、累犯者の場合には刑が長期の二倍になりますから、なかなかこの三年の枠組みに入ってこないということがありますので、やはり一般には難しいだろうから今回は特則を作って薬物事犯者に対しての対応ということを考えたんだろうと、それが立法の趣旨だと思うんですが。
そういうことを考えて、今のようにどこまで効果があるかという点なんですが、どうしても、今一万五千人覚せい剤中毒者が刑務所に入っていますけれども、この一万五千人の人たちをそのまま出すときにはほとんどが満期釈放で出てしまう、仮釈放は難しい。そうなりますと、仮釈をもらってもその仮釈放の期間が短いんですね。今まで平均して八〇%といっていますが、こうした覚せい剤事犯者の場合にはほとんど満期までいるということになりますので、そうしますと実際的に保護局の方で更生保護体制、言い換えれば保護観察にして処遇するという手段がなかったと。
今回のこのいわゆる一部執行猶予制度において薬物等の中にこうした刑法の特例を設けますと累犯者の場合にも対応できますので、もちろん三年という上限がありますが、三年以上ならばかなり裁判所で重いと判断してしまうでしょうからなかなか難しいでしょうけれども、いわゆる早い段階で治療をするというのが何よりも効果があることは間違いありませんので、そのために十分な保護観察期間を確保するという意味では、これは再犯防止につながるのは間違いないと私は思っています。

○参考人(山下幸夫君) 確かに、先ほど御質問にもありましたが、保護司が実際は現場では対応するわけですし、あと保護観察官が対応するわけですが、やはりまだまだ非常に数が少ないといいますか、今後、恐らくこの新しい制度によって出てくる出所者といいますか受刑者に対応するだけの人数といいますか、人員が必要ですし、やはり薬物使用者に対応した、専門的な知識を持った人が保護司とかにいないといけないという問題があります。
それで、例えば読売新聞の社説なんかにもありますが、結局、一定期間尿検査だけしてあとは何もしないというんなら逆に野放しになるんではないかという、そういう指摘もあるところで、やはり保護司制度ですね、これの拡充、そしてまた薬物に対応した専門的な保護観察官とか専門的な保護司さんという、そういう方もやっぱり必要である。そういう意味では、今回、施行までの期間が三年ぐらい予定されていますけれども、かなりこれはそういう保護司制度又は保護観察官制度、これをきちっと拡充、充実していくというようなことがなければ形を作って魂入れずということになってしまうおそれがあります。
そういう意味で、この制度は一歩踏み出そうとしたわけですが、私としては、やはり薬物使用者に対しては刑罰ではなくて、本来はやっぱり治療といいますか、そういうのが本来あるべきではないかと思っているんですが、今回は一歩踏み出して社会内処遇でこれを何とか更生していけるようにしていこうという、一歩踏み出そうとしているんですが、そのためにはやっぱりどうしても保護司、保護観察官制度、これの充実、そしてきちっとここに予算を付けて手厚くやっていかないと本当に形だけのものになってしまうおそれがあると思います。そういう意味で、この数年間の間にきちっとその整備をしていくということがあって初めてこれが効果を発揮するのではないかと思っております。

○桜内文城君 ありがとうございます。
もう一つ、藤本参考人に刑事政策という意味でお尋ねしたいと思います。
再犯防止といいますと、例えば外国の事例で、性犯罪ですとか、こういった薬事犯もあると思うんですけれども、保護観察に類する制度の下で、GPSを装着させるですとか、そういったちゃんと見張っていられるというか、再犯しないように見ていますよということも外国ではなされていると聞きますけれども、今回、法制審の中では議論もされたそうなんですけれども、いろんな理由で採用されなかったとお聞きしますけれども。
やはり再犯防止という観点からすれば、今ほど山下参考人からもありましたように、保護観察をきちっとやっていくということも非常に重要だと思うんですけれども、こういったGPSなり、そういった諸外国で取られている方策というものを今後立法論としてどうとらえていけばいいのか、御意見をお聞かせいただければ幸いです。

○参考人(藤本哲也君) 今、桜内議員さんのおっしゃいましたGPSの話なんですけれども、実は世界では二十九か国が既に採用しております。そして、実際に性犯罪者については四か国ぐらいが実現していますし、お隣の韓国あるいは台湾等でも実現しておりますので、それなりの成果があるという報告を受けておりますけれども。
一番難しいところは、なぜ性犯罪者だけなのか。あるいは、その辺りのことが明確になればよろしいですが、今回は覚せい剤でしたが、なぜ覚せい剤犯罪者だけにGPSを付けるのかと、そういうことが理論的に証明できないとかなり難しいと。言い換えれば、憲法上の法の下の平等に反するのではないかというのが一つの意見です。
もう一つは、今、一度刑罰を言い渡されて、既にその刑罰が終わったのに、その後にGPSを付けられますと、理由はどうあろうが監視体制に入りますので、それは二重の処罰に当たるのではないか。なぜ性犯罪者、なぜ覚せい剤犯罪者だけがGPSを付けられて二重の処罰に当たるような行為を受忍しなくちゃいけないか。と同時に、プライバシーの侵害という問題があります。
もちろんそのためには、もう一つはハード面で考えますと、GPSを利用する場合、まさか今の既存の電話会社は回線を貸してくれないでしょうから、無線でない限りは新しくそのハード面を整備しなくちゃいけません。これに億単位の金が掛かると思うんですが、その億単位の金を掛けて僅か数十人の対象者を監視するシステムが今我が国に必要なのかと。今の我が国の国会のこの予算状況の中で果たしてそういうことが可能なのかどうかということを考えなくちゃいけませんので、先生のおっしゃるとおり、再犯防止という側面では効果があると言われていますし、アメリカでは一万五千人の前科者に付けていますし、保釈を含めますと十五万人の人たちに電子監視を付けていますが、この場合、多くの州では対象者からお金を徴収しているんですね、使用料を。
果たしてそこまで我が国が踏み切れるかどうかということが問題になりますので、やはり国家刑罰権というのは国家が持っているわけですから、その中でどう対応するかということを考えた場合に、GPSは再犯防止の一つの方策ではありますが、これをもって全ての犯罪者にGPSを付けるというなら話は別ですけれども、特別に今回の議論になっている性犯罪者やあるいは覚せい剤犯罪者、薬物犯罪者に対してGPSを付けるというのは、やはり立法論として先生方に考えていただかないといけない憲法上の問題が出てくるだろうと思います。

○桜内文城君 ありがとうございます。
時間もありませんので、最後に是非近藤参考人にお聞きしたいんですけれども、日ごろ薬物に依存する方々と向き合っていらっしゃって大変な御苦労もあるかと思うんですけれども、やはりこういった薬物依存症ですとか薬物事犯というものが犯罪なのか、あるいは病気なのかというところでその対応ももちろん変わってくると思うんですけれども、その辺について実際に御覧になっていてどんなふうにお感じになっているのか、お聞かせください。

○参考人(近藤恒夫君) 大変難しい問題ですけれども、一つは、刑務所に何回も、十回とか行っている人たちがダルクに来ているのを見ていると、どうも学習障害、今で言う発達障害ですね。つまり、薬使っておかしくなったんではなくて、薬使う前からもう既に何らかの障害がある人たちが多分刑務所の再犯者の中でも圧倒的に多いと思いますよ。
傷害で入っている人たちは、アルコール依存症で傷害というのはよくありますね。しかし、傷害ということで、その原因がアルコール飲んで隣の人をビールの瓶で殴ったとかということで傷害という罪名は付くんですが、元々はアルコール依存症ですよね、その人たちは。
そういうふうに隠れてしまっている部分というのはたくさんあると思いますけれども、こういう人たちをきちんとアセスメントする人が、やっぱり人材が足りないのではないかなというふうに思います。
それから、この人たちを、じゃ最初から、元がおかしいという人たちですね、この人たちをどうしたらいいのかというと、やっぱりこの人たちは仕事が続かないですね。それからもう一つ、グループに来ても、普通はグループは聞きっ放しの言いっ放しなんですけれども、言いっ放しの言いっ放しですね。もう自分のことだけだだだだだっと話して、もう人の話は全然聞かないという、こういうような人たちが結構おりますから、こういう人たちはむしろ違うプログラムが多分必要な人たちだろうなという、現にそういう人たちを専門に受け入れている施設もようやく出てきました。
それから、私はもう一つは、最近、薬物依存症のHIVの人たちが結構増えてきました。各施設にも、私たちの施設の中にも結構HIVの人たちが増えていって、決まって高学歴の依存症の人たちがHIV感染をしているという、薬物依存でHIVの感染と、こういう人たちも増えてきています。もう多様化になってきていますね。つまり、知的あるいは高齢あるいはHIVの感染、それから女性の人たちの問題、シングルマザーの薬物依存の人たち。この問題はもう何か急激に多様化をしております。もう一つは、セクシュアルマイノリティーの問題の人たちの薬物依存の人たち。
これをダルクが一手に引き受けるわけにはいかないので、何か、よく学校なんか廃校になっているところがあるじゃないですか。せめてもう、ダルクにお金を下さいとは言いませんけれども、せめて場の提供を考えていただければ、私は何かもうちょっと、御褒美としてですよ。私は二十六年間薬物とかかわって、その前には誰もかかわる人たちは、医療もどこもかかわってくれなかった。だったら、潰れた学校の一つぐらいは御褒美に、七十歳になったんだからプレゼントしていただいても惜しくないと思います。
現に僕は、回復するためには何億という金がアメリカから流れてきているわけですね。日本のお金じゃないですね。ダルクがつくるのは、僕がつくったわけじゃなくて、アメリカのお金でつくっているんですね、アメリカの。
もうそろそろ日本の薬物問題は、日本の、国家がやると駄目ですよ。国家がやると刑務所造るだけですから、結局は。規則、いろんな問題が、あるいは国家がやると必ず地域が反対しますから。近藤恒夫にお任せください。

○桜内文城君 ありがとうございます。

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は参考人の皆さん、ありがとうございます。
まず、藤本参考人にお伺いいたします。
先ほど、ドラッグコートの関係で即決裁判についての言及があったと思うんですけれども、即決裁判、必ず執行猶予になるということで、起訴から公判期日が十四日以内、実際上言いますと、ですから一か月ぐらいで逮捕をされても自由の身になるわけですね。実際は、そこさえ我慢すればということで、必ずしも薬物犯の方が治療などにつながっていっていないという現実があろうかと思うんですね。
地裁裁判でいいますと、四〇%が薬物事犯、即決裁判だということを考えますと、こういう皆さんがやっぱり初期、早い段階から治療のプログラムなんかに参加できるようにすることが必要だと思うんですが、司法、刑事司法としてどうしていくかという問題と、それからもっと幅広く支援をどうしていくかという点でお考えを聞かせていただきたいと思います。

○参考人(藤本哲也君) 井上議員さんのおっしゃるとおりだと思います。
実際に検察庁の方でもそれを認識されていらっしゃるようですね。といいますのは、実際、公判で一日で済むといっても、大体自白をしていて認めていれば、初犯者であれば一日で済みますので、今更即決裁判を利用する必要もないと検事さんは考えているようです。
そうなりますと、せっかくつくった即決裁判制度が実は今形骸化していると私は思うんですが、本来ならば、あの制度をそのまま利用しながら、例えばダルクなんかのような自助グループに直接関与をさせるという方策を取っていけばかなり効果の上がる方法、言い換えれば日本版のドラッグコートの可能性はそこに生まれたと思うんですけれども。
それで、今の即決裁判制度よりも今回の刑の一部執行猶予制度の方がはるかに保護観察の部分でかなりの時間が取れますから、こちらで今の専門的な処遇のほかに、更にこれをNPO法人なり一般の医療組織につなげていくという構造を持っていますから、この方がはるかに効果が上がると思います。
そういう意味では、先生のおっしゃるとおりと同じ認識を持っていますけれども、今回のこの法律によって今の欠点の部分はカバーできるのではないかと考えます。

○井上哲士君 この即決裁判の執行猶予者対象に警察庁が薬物再乱用防止モデル事業というのを任意でやっておられて、これ、アパリが受託をしていると思うんですが、実際のこの事業の運用とか効果というのはどれぐらい上がっているのか。いかがでしょうか、近藤参考人。

○参考人(近藤恒夫君) 多分、去年、おととし、モデル事業として警察庁からアパリが受託したんですが、どういうわけか、新宿とか渋谷等の警察から送られてくるケースが一つもなくて、送られてくるケースは愛宕警察だけでした。十人ぐらい、一人の熱心な刑事さんがいて、その人が捕まえた人は一部執行猶予になって、即決裁判で出てきた人たち、全て家庭があったり仕事があったりするような元気な若い人たちでした。
どうでしょう、効果あったかどうかというのは、一年間でモデル事業は打切りになりました。なぜああいうことを続けてやらないのかよく分からないんですが、聞いてみたら予算がないということだけでした。あれを続けたらもっともっとデータが取れるはずですけど、一年じゃ分からないですね、どうなっていっているのか。そういうことで、継続してほしいなあというのは私のもう一つのNPOのアパリの考え方です。

○井上哲士君 もう一点、近藤参考人にお聞きしますけれども、ジュリストに書かれたのを読みますと、このダルクというのは逮捕される心配がない場所で、そこに一緒に問題を持った人たちが集まってきて、そしてお互いにやっているということが強調されておりました。いろんな、行政の薬務課だって結局警察とつながっているんじゃないかとか、そういうやっぱり懸念を持つんだということを書かれておるんですけど、ダルクは、この一部猶予者について委託を受けるということになりますと、今朝もちょっと医療関係者にお聞きしたんですが、仮に治療の過程の中で再使用をしてしまうといった場合に、通報するということになると、せっかくそういう条件の中で依存者の皆さんが集まってきてお互いの治療をしているときに、言わば告発することになってしまうとやっぱり施設自身の性格が変わってきてしまうんじゃないかという懸念を持たれる方が、何人かのダルクの関係者に聞きますとあるんですが、この辺をどうお考えになるか、いかがでしょうか。

○参考人(近藤恒夫君) 私は二十六年間、警察に通報しなかった、一回も。それは、再発は病気の再発というふうに見ました、考えました。もう一つは、治療中、やめたいからダルクに来るんですね。その人たちが再発したから一々警察に報告したり保護観察に報告するということはあり得ないですよ。つまり、私たちは少なくとも、専門家ではないけれども、守秘義務を持っています。カウンセラーとしての守秘義務はやっぱり大切ですよね、それは大事にしなきゃならない。
もしダルクが、二十六年間の間で一回でも通報したことがあるダルクがあるとすれば、それは聞いたことないですね。自分で捕まるのは、それは、しかしダルク内でとどまっている人を通報する、そういうことは今までやったことはありません。これからもやるつもりもありません。もしそういうのであれば、あっという間に刑務所の中でその話は広まっていくでしょう。そうすると、刑務所の人たちは、ダルク行ったらみんな通報されるみたいなところになったら、ダルクはもう崩壊ですね。お客様が来なくなります。ダルクはそういうところではありません。
しかし、もし国家の金が入る、税金が入る、あるいは税金を使うような仕事になったとき、じゃ私たちはどうすればいいのかというと、さっき言った、名前はどうでもいいんですが、ダルクは通報しないけどその上は通報しますよというような組織が必要になってくると思いますね。それは、僕が先ほど申し上げたエントリーセンターがあって、その人たちが、つまりダルクはあくまでもファシリテーターの役割でとどまっていくということが大事だと思います。コーディネーターはまた別の人たちがやっていただければいいんじゃないかと。そういう二重構造にしておかないと、本当に困った人たちが来れなくなります。
それからもう一つは、今の現行の法律の中では、一度刑務所へ行った人たちは延々と刑務所です。それから、精神病院に流れていく、医療に流れていく人たちは医療にばっかり流れていく。あるいは、言葉を換えると医療に逃げる。そうすると、もうちょっとジグザグにした方がいいんです。その医療の優しさと司法の厳しさをジグザグにしていくという、そういうことを是非考えていただきたいなというふうに思います。余りにも偏り過ぎています。幸いに私は医療の優しさと司法の厳しさを両方味わっていますから、両方とも大事だと思います。どちらかが欠けても駄目だと思いますが、そんな感じがしております。

○井上哲士君 山下参考人にお聞きしますが、先ほどからGPSのことが話題になっておるんですけれども、藤本参考人から刑事政策の面からいろんなお話がありましたけど、日弁連としてはどのようにお考えか、お願いしたいと思います。

○参考人(山下幸夫君) 基本的に日弁連としては、これはやはりプライバシーの問題などから反対する立場を取っております。
ただ、私も実はこれ台湾で実際GPS制度を見てきたんですが、台湾では、通常であれば性犯罪者、受刑者はなかなか、十年とか二十年とか出れないと、ただし、GPSを付けることを条件に仮釈放を受けることができる、そういう制度だという説明を受けました。これはひょっとしたら日本でもそれはあり得るか、つまり、そういうことを仮釈放の条件としてGPSを付けて、もう出たい人は出ると、嫌な人はそれは使わない、それは一つの選択肢を広げるという意味でそれはあり得るかなと個人的には思いました。
ただ、現状ではそうではなくて、むしろ、先ほど藤本参考人も言っておりましたけど、もう刑を受け終わった後付けるとか、それは一種の保安処分的なものになりますし、いわゆるプライバシーという観点から、その人の全行動を把握できるようなGPS制度というのはちょっと制度としては問題ある。あと、先ほど藤本参考人も言われていましたが、コスト・ベネフィットの関係からも、お金が掛かる割にそれほど、何といいますか、コストの割にその効果が、何人使うかというのはありますけれども、コスト高過ぎるのではないかという問題などもありますから、これについてはやっぱり慎重に議論していく必要があると思っております。

○井上哲士君 午前中、精神医療の方のお話聞きますと、なかなか絶滅危惧種だと言われておりました。病院の中でも、薬物犯の患者を扱うと手間が掛かって、周りの人も大変で、もう白い目で見られるんだということを言われておられました。
これは、多分弁護の点でも同じようなことがあるのではないかなと思うんですね。薬物犯の方への弁護というのは非常に手間も掛かり、いろんな問題があると思うんですが、多分、個々の弁護士ではなかなか対応、そこはやり切れないところがあると思うんですが、日弁連としてはその薬物犯などへの弁護という点で何か組織的支援などやられているのか、また今後お考えがあるか、その点いかがでしょうか。

○参考人(山下幸夫君) まだこの点については必ずしも十分弁護士会の中でも、その支援体制というんですか、それは十分できていないと思うんです。
ただ、最近、近藤さんも今日いらっしゃっていますけど、ダルクを弁護士の方がうまく連携を取ってやっていくというような試みはもう全国各地で行われておりますので、今後、より、先ほど近藤さんも言われましたが、判決が出て終わりではなくてその後も支援していくような在り方、これは、やっぱり一つは、例えば法テラスかどこかお金を出すとか、何かそういうことがないと弁護士としては動きづらい点があるんですけれども、弁護士としては、もしそういうことができるのであればその後もかかわっていくということは大いにあり得るところだと思いますし、弁護士会としても、今回のこういう法律改正も踏まえて、薬物犯罪者に対する弁護の在り方、またその判決出た後のその後の支援の在り方とか、そういうことについても弁護士会の中で議論していきたいというふうに考えております。

○井上哲士君 ありがとうございました。
終わります。

○委員長(西田実仁君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、大変お忙しいところ貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。本委員会を代表して厚く御礼申し上げます。(拍手)
本日はこれにて散会いたします。
午後三時散会

TOP