179-参-予算委員会-2号 2011-11-11


2011年11月11日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
本日は、午前午後とこのTPPに関しまして集中審議が展開されております。様々な重なりはなるべく避けまして、あえてここで申し上げたいのは、この一国の通商政策というのは、TPPを始めとした貿易のルールを決めるということが一つの柱であることは間違いありません。もう一つの通商政策の柱は、通貨、通貨外交あるいは通貨戦略というもののこの両輪があって初めて通商政策というのは成り立っているわけであります。しかし、この通商政策のもう一つの柱である為替についての議論がいま一つ掘り下げられていないということから、私はそこを是非お聞きしたいと思います。
いまだかつて、まだ政府からこのTPPに関連して、どのようなもう一つの柱である通貨戦略を取るのかということについてはしっかりとした提示がなされていない、そういう中でTPP交渉に参加するのは私は拙速であると、このように申し上げたいわけであります。
最近の円高、ここ数年でございますけれども、これは単なる円高ではなく、超円高というふうに言われているわけであります。それは理由は二つあります。一つは、例えばOECDの購買力平価でいえば百十一・四円というところに対しまして、現在の水準はもう四割割高になっているということ。そしてもう一つは、このリーマン・ショック後の三年間見ただけでも、日本は主要各国に対しまして最も円が切り上がっております。この三年間で、円は三六%上昇、スイス・フランは三〇%、人民元は一・四%、ドルは二・五%逆に下落をしている、ユーロも三・五%下落し、韓国ウォンも六%下落していると、こういう状況であります。
野田総理は、さきのカンヌ・サミットにおきましては、こうした超円高となっている為替につきまして、為替介入について説明するとともに、為替レートはファンダメンタルズを反映すべきであって、過度な動きや無秩序な動きを引き起こさないよう通貨安定のための協力の強化が重要と言われております。
そこで、最初にまずお聞きしますのが、野田総理に、カンヌ・サミットではこの通貨安定のための協力の強化についてどのような進展があったのか、手短にお話をいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) さきのカンヌ・サミットで改めて確認されたことでありますけれども、これ主に新興国を念頭に置いておりますが、根底にある経済のファンダメンタルズを反映するため、より市場で決定される為替レートシステムにより迅速に移行し、為替レートの柔軟性を向上させるとともに、為替レートの継続したファンダメンタルズからの乖離を避け、通貨の競争的な切下げを回避することへのコミットメントというのを確認をいたしました。こうした合意によって、世界経済の安定的な成長促進をしつつ通貨の安定を図ることについて、一定の合意、成果があったと思います。
なお、先般の我が国の介入については、これは過度な動き、無秩序な動きがあったということの判断の下で、日本経済の下振れリスクにも対応するためという意味で介入をしたという説明を併せて行ってまいりました。

○西田実仁君 そうはいっても、余り効果はなかったということであります。
今晩から向かわれるAPECにおきまして、米国のオバマ大統領ほか各首脳との個別の会談もあろうかと思いますけれども、例えば総理はオバマ大統領との個別会談において、通貨安定のための協力の強化についてどのようなメッセージをお伝えするつもりでありましょうか、お聞きします。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) APECでは、アジア太平洋地域の貿易・投資、こういう課題に対する議論が中心になると思います。その中でも、域内経済の安定的な成長促進に資するという意味で通貨についての議論もしていかなければいけないと思いますが、これはG7でもG20でもお互いに確認をしてきたことがあります。その辺の確認事項を改めて議論するということがベースになるのかなというふうに思います。

○西田実仁君 そういう曖昧なことでは困るんですよ。今パネルを出させていただきますけれども、TPPということが議論になっている今、この通商政策のもう一つの柱である通貨戦略についてきちんとした戦略を立てていただかなければ、日本の国益を大きく失うことにもう既になっている。(資料提示)
この上を見ていただきますと、TPPのGDP押し上げ効果、今日もいろいろ議論がありました。内閣府の調べでは、十年間で関税が撤廃されるという場合には二・七兆円のGDP押し上げ効果があるということであります。下の方を御覧いただきますと、この三年間、いわゆる超円高と言われる中にあって、日本が失った輸出市場、これは私の試算では七・八兆円あるんです。
それはなぜこういうふうに調べたかといいますと、その一番下のところに過去三年の日本の輸出シェアというのがあります。二〇〇八年、年間平均の対アジア、アメリカ、EUそれぞれに対する輸出シェア、それぞれの地域、国からしましたら日本の、対日輸入シェアということになりますが、それがこの直近の本年一月から八月までの八か月間でシェアがどのぐらい下がっているのか。例えば、対アジアに対しましては一一・四%が一〇%に下がっている、対米国に対しては六・六が五・四%、EUに対しては四・八から四・三%に下がっているわけであります。このシェアの差額分を直近一年間の輸入額を掛け合わせて数字をはじき出して足し合わせていくと、七・八兆円というこの失った輸出市場の額というのがあるわけであります。
もちろん、TPPのGDP押し上げ効果はGDPの押し上げ効果でありますし、下の方は輸出の失った額であります。しかも、円高だけで当然のことながら全てこれを失ったとは言いません。しかしながら、もうよく御存じのとおり、この三年間で円高が進めば進むほど、それぞれの地域、国の対日輸入シェア、日本からすれば輸出シェアというのが下がっているというパラレルな関係があることもこれまた事実であります。
総理、私は、このTPPで二・七兆円GDPを押し上げるという効果、これはいろいろ議論ありますけれども、しかし一方で、通商政策のもう一つの柱である通貨戦略を取ってこなかったがゆえに既にこの三年で七・八兆円も輸出市場を削ってしまっている、なくしてしまっているという、これは大変に重い。
私は、このTPP交渉をどうされるのか存じ上げませんけれども、これ以上の円高を防ぐための通貨協議というものを直ちに日本は行わなければならないというふうに思っております。アメリカも明確に通貨戦略は持っている、金融の大幅緩和によってドル安を放置する戦略。中国もそうです。中国は、対ドルに対しましては米中戦略対話の中で毎年五%ずつぐらい引き上げている。しかし、日本円に対しては逆に人民元は切り下げてきているわけでありまして、アメリカも中国も明確な通貨戦略は持っている中で、日本だけが何も通貨戦略がないものですから、なすがままに円無策の中でこういう失った市場があるわけであります。仮に日米間で円・ドルレートを安定させられれば、当然人民元は、ドルに対して今申し上げましたように切り上がっておりますので、人民元は対円に対しても自動的に切り上げられていくことになるわけであります。
〔委員長退席、理事川上義博君着席〕
そこで、野田総理にお聞きします。あしたからのAPECでの個別会談等において、仮にTPP交渉入りを宣言していくのであれば、同時にまず日米間で円・ドルレートの安定協議を開始するよう米国に迫るべきだと思いますけれども、いかがでありましょうか。総理に聞いております。

○国務大臣(安住淳君) 確かに、今のレートは超円高であるという認識は私も同じであります。ただ、戦後の、先生、歴史を考えれば、三百六十円からスタートして、すさまじい円高の中で我が国経済は危機的な状況を何度も迎えました。しかし、それはその時々の外的要因も非常に多うございました。ニクソン・ショックもそうでございますし、またプラザ合意もそうでした。現在、私どもは無為無策という御指摘もあるかもしれませんけれども、これまでこの十年間、自民党政権下から含めて六度の為替介入も行ってきたことは事実であります。
しかし、世界の大きな潮流は、先ほど御紹介いただきましたが、スイスのフランを見ていただければ分かるんではないでしょうか。スイスが健全な経済を維持しているというよりは、緊急避難的にどうしても、EUが悪くなればフランはそういう形で、スイスのフランの方に価値が高くなってくると。しかし、スイスは経済規模が余り大きくないですから、今ああいう政策を取っておるわけですね。
しかし、日本のような言わば世界の三大通貨と言われるものの一つになっている今、中で、アメリカにはアメリカの厳しい雇用状況や経済指標があります、またヨーロッパもヨーロッパで厳しい状況です、御存じのとおりです。野田総理が財務大臣時代、大震災の後に協調介入ということで、これはヨーロッパもアメリカも理解をしていただいて共に為替介入をさせていただきました。その後は、しかし、残念ながら同じような認識になかなか立てなかったんですが、私は、私の国益を守らなければならないという立場でこの過度な円高に対しては介入をこの間行ったわけでございます。

○西田実仁君 そういうような事後的な円高対策のことを言っているんじゃないんですよ、私は。介入をしてどうのこうのという話じゃない、どうせ効果ないんですよ、すぐに時間がたてば。そうじゃなくて、きちんとした通貨戦略を立てていく、安定をさせていくということに対する戦略を立てていく必要があるということを申し上げているわけであります。太平洋通貨の安定なくして太平洋貿易の拡大も太平洋経済の発展もあるわけないじゃないですか。
日本とアメリカとの円・ドルレートを安定化する協議を始めていく。ドルとほぼ一対一である豪ドルとかあるいはカナダ・ドルも入れて、四か国の通貨協定を結んでいく。そして、その後、日中韓の例えば東アジアの通貨会議を行うことによって、いずれ中国の人民元も含めて、これをアジア太平洋地域の通貨協定をつくっていく。例えばこういう通貨戦略をきちんと持っているかどうかということが今問われているわけであります。単なる事後的な円高対策がどうのこうのということじゃないんです。
総理、どうですか。総理にお聞きしています。総理に聞いています。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これはG7やG20、あるいは様々なバイの会談においても、今、世界経済が欧州の危機を中心にちょっと減速しかねないという状況の中で、世界全体が、先進国も新興国も含めて、持続可能で力強くバランスの取れた成長をどうするかと、そのお互いのマクロ経済政策の確認をする中で、通貨の問題についても当然のことながらこれまでも議論をしてまいりました。
その際に、当然、これは例えば日米だけで議論をしていても、ドルと円の関係はもちろんあります、ただ一方で、じゃ、ユーロをどうするのか。ここにも影響を受けるわけで、その関連の中では、欧州危機の問題に我々がどうかかわっていくかという議論にもあると思いますが、いずれにしても、通貨をベースにしながら様々な今の経済についての議論は大いにやっていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 先ほどからずっとルールメーキングがどうだとかリーダーシップがどうだとか日本のことを言っていますよ。しかし、まさにこういう、今一番日本が困っている超円高に対してどうやって為替を安定させるかということについてこそ、まさにルールメーキングのリーダーシップ取るべきじゃないですか。何でそれができないんですか。
総理、今、この国際通貨、新しい秩序をつくろうという動きがいろんなところから出てきています。今年はブレトンウッズの四十周年、ドル基軸の体制が揺らぎ始めていると言われている。ユーロも大変に問題である。
こういう中にあって、例えば二〇〇九年の三月には中国人民銀行の周総裁が国際通貨体制の改革に関する考察を発表して、SDRというのを基軸通貨とした提言を行っている。御存じですか。さらに、同年九月には、国連がドルに代わる新しい国際通貨体制の導入を提案している。さらに、去年十一月にはバーナンキFRB議長が、為替レートの変動を容認している国ほど調整負担が重く、変動を抑制している国は負担が軽い、こうした不均衡は持続可能ではない、新たな国際通貨体制構築が望ましいと。こういう提言が各地で行われているわけであります。日本は何も提言していないじゃないですか、何もリーダーシップ取っていないじゃないですか。
この超円高という大変な問題、この問題に対してどうリーダーシップを取って、世界の中で、円が例えばドルと、例えば先ほど申し上げた四か国の通貨で、あるいはアジア太平洋に、TPPからFTAAPに広げていくんでしょう、貿易で。だとしたら、この通貨の協定についてもリーダーシップを取って今こそ言うべきじゃないんですか、総理。そういう気概はないんですか、総理。総理にお聞きします。

○理事(川上義博君) 安住財務大臣。通貨の問題ですから。

○国務大臣(安住淳君) 済みません。
先生、周総裁とも、また例えば中国の王副総理、これは財政担当の方ですが、私は一週間前にそのお二人ともお会いしています、総理もお会いしています。またさらに、バーナンキさんとも私も三度も会ったし、そういう点では、G7でもうさんざんそういう話はあるんです。しかし、現実に進んでいるかというと、国益がぶつかり合って、なかなかこれ大変でございまして、SDRの問題も、今の枠に、例えば直截な話をすれば、じゃ人民元をどうするかという話はそれぞれ思惑があって、ワシントンでも、実際の公式な会議では出ませんでした。
我が国もそういう手は、通貨の安定に対しては再三再四にわたって実体経済を反映したものにすべきだということで様々なことをやっています。あしたもIMFのラガルド専務理事ともお会いしますので、先生の御意向は私、十分分かっているつもりですが、努力をしているということも分かっていただきたいと思っております。

○西田実仁君 全く言い訳だけなんですよ。貿易を自由化してアジア太平洋へ広げていこうというときだったら、通貨の安定協議についても日本がリーダーシップを取って言い出せばいいじゃないですか。何でそれができないんですか、野田総理。総理のリーダーシップですよ、ここは。世界の中で日本がどうするかという一番皆が困っている為替の安定についてのリーダーシップを是非取るよう。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 通貨の安定に向けた議論はこれまでも積極的にかかわってまいりました。これからも大いにやっていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 アジア太平洋通貨協定を、じゃ、結ぶためのリーダーシップを総理は取られるんですね。総理にお聞きします。総理にお聞きします。

○国務大臣(安住淳君) ですから、EUの状況を見ていただければ本当にそういう、例えば、その究極の話をしていくと単一通貨ということにもなるわけですが、EUは今その痛みにもがき苦しんでいるわけです、先生。
〔理事川上義博君退席、委員長着席〕
ですから、簡単になかなかその通貨を安定させるというのは、変動相場制でこれだけ金融市場が発達した中では極めて難しい中で国益というものをやっぱり求めていかなきゃいけない、私はそう思います。(発言する者あり)ですから、それはどの政権であっても、まあ言い訳するなという話ありますが、前政権下でも大変な苦労をしながらやってきているんではないでしょうか。

○西田実仁君 私は、前政権だとか現政権の話をしているんじゃないんですよ。ですから過去三年間というふうにちゃんと言っているじゃないですか。我々の与党のときも入っているんですよ。
だから、日本国として、今まさにTPPとかこういう貿易ルールを決めるという通商政策の大きな柱を決めようとしているときでしょう。そうしたら、もう一つの柱のこの通貨戦略というものをきちんと打ち立てなきゃいけないんじゃないかと。アメリカも中国もみんなやっているのに、なぜ日本だけがいつもこんな受け身でいなければならないのかということを問題意識として持っているわけであります。
しかし、今お話をお聞きしていても、結局のところ、そういうリーダーシップを発揮しようという、そういう気概も全く見られません。受け身でありますし、言い訳しかしていないという状況でありまして、こういう通貨政策なき通商政策というのは、これじゃもう幕末の不平等条約と同じになります。国益にはかなわない。なぜかくも交渉ポジションが弱いのか、もう不思議でならない。
それをたどってまいりましたところ行き着いたのは、私は、今月二日に、内閣官房主催、経済産業省企画のTPP討論会における枝野経産大臣の発言でございました。その中で、インターネットでも放送されております、枝野大臣はこの討論会において、米国にとって既に日本は魅力的な市場ではないというのが客観的な状況であると言われております。ここで改めてその御発言、確認させてください。

○国務大臣(枝野幸男君) 御承知のとおり、日本は人口が減少にもう既に入っております。それから、残念ながら経済の成長トレンドというのも、例えば高度成長期などと比べると大幅に下がってきております。そうしたことの、国内市場が縮小しているということは間違いない客観的事実でありまして、アメリカの立場から見れば、しかも成熟した市場、マーケットになっています。そうしたことを考えれば、今後新たな展開ができるという意味での魅力という意味では、人口が増えていたり、また発展途上国でこれから成長の伸び幅の大きいと思われる国に比べて相対的に魅力が少ないというふうに私は思っております。

○西田実仁君 野田総理も同様の御認識でしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 枝野大臣のその討論会での御発言というのは、今御本人もお話しになったとおり、日本の国内の人口が減ってきている分、国内市場が縮小傾向にあるという、いわゆる客観的な状況をお話をされたと思うんです。一方では、私、総理という立場では、これはまさに成長戦略を加速させていくこと、そして開かれた復興を通じて日本経済の活力を高めて魅力ある日本にしていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 ということは、総理も同じように今や日本は米国にとってはもう魅力的な市場ではないという認識、しかしそれを何とかしていきたいと、こういうことでよろしいでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 先ほど申し上げたとおり、国内市場が縮んできているという事実を大臣はおっしゃったと思うんです。私は、魅力ある日本をその上でつくっていきたいということであります。

○西田実仁君 要するに同じ認識だということを今総理は認めました。私は、そうした認識を持つこと自体が間違っている、そういう間違った認識を持ってTPPの交渉に臨むべきではないというふうに思います。なぜならば、客観的な事実とまず反するからなんですよ。
一つには、日本市場は依然として中国の九二%、九三%という市場をちゃんと規模としては持っています。人口が減少したからといって急激に日本の市場が縮小するわけではない。産業の空洞化ということも言いますけれども、それは国内市場が縮小したというよりも、結局、先ほど来申し上げた、政府の無策による超円高で日本の輸出競争力が低下したからなんですよ。あくまでも輸出産業の話であって、輸出産業ではない多くの企業、圧倒的多くの企業は、国内の新しい需要を掘り起こしながら懸命に新製品を開発して頑張っているんですよ。農業も同じです。サービス業もまだまだ期待できる。
そもそも、アメリカにとって日本が魅力的な市場でなかったら、なぜ、今年二月、日米の経済調和対話において、情報通信から農業、医薬品その他数多くの関心事項が列記されているんですか。そもそも日本はもうアメリカにとって魅力的な市場ではない、だからアメリカの戦略に乗って早くこのTPPに入らなきゃいけないという、そういうところから交渉ポジションが弱くなってしまって、通貨戦略についてもリーダーシップが取れない、貿易のルールを決めるにしても弱腰でポジションが弱くなってしまう、こういうことになってしまうんじゃないんですか。

ですから、そもそも日本が米国にとって魅力的な市場ではもはやないんだという客観的な事実、これを基にして交渉になんか臨むべきではないと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 済みません、私は人口が減少してきて国内市場が縮んでいく傾向があることは申し上げましたけど、私は魅力ある日本をつくりたいということを申し上げているんです。魅力がなくなったからアメリカにこびを売ってTPPに入るという決断は全く違います。
これは、我が国にとって、アジア太平洋地域においてどういう我々は存在感、プレゼンスを示すのか、役割を果たすのか、あるいは、まさに現状に甘んじるのか、未来を切り開くのかという視点の中での大局的な判断をしていかなければいけないとは思っておりますけれども、今申し上げた理由で、米国にこびを売るためとか、そんなことのために判断をしようとは全く思っていません。

○西田実仁君 このTPPの交渉をめぐる議論の核心はまさに私はここにあると思っているんですよ。枝野大臣が、先ほども御自身も言われましたけれども、米国にとって既に日本は魅力的な市場ではないという、そういう認識の下から出発をしようとしている交渉、これは大変に危険ですよ。米国にとって日本はいまだもって魅力的な市場なんですよ。
ですから、日米経済調和対話、ここに端的に表れているように、アメリカのシステムやルールを日本にも適用して市場開放を迫って、日米で合意したルールをアジアに広めていくと、それが狙いだというふうに思います。それで国民の皆さんは皆心配している。
例えば、日米経済調和対話における米国側関心事項に対して日本はどのように対応するのか、これをもっともっと情報公開をして開示をしていかなければ不安でしようがない。これでは、今のままではTPP交渉で様々の分野でいろいろな議論が始まったときに日本国政府がどう対応するのか分からない。そこで国民の不信は募るばかりということになるわけであります。
そこで、具体的にお聞きをしたいと思います。たくさん日米経済調和対話の中にはいろんな項目があります。一例として共済の問題を挙げたいと思います。
この対話では、日米経済調和対話ですね、では、共済と民間競合会社の間で規制面での同一の待遇及び執行を含む対等な競争条件を確保すると日米経済調和対話の中には書かれているわけであります。この狙いは、恐らく農協における共済部門の切離しではないかと、これは推測であります、書いてはありません、推測です。
しかし、日本政府はこの日米経済調和対話での日本側の最新状況として何を報告しているのか。それは政府が進めている規制・制度改革の取組を報告しているんです。そこでは、日本が今こういうふうに取り組んでいますよとアメリカに報告した規制改革の中には、農協の農業関係事業部門の自立、すなわち信用・共済部門の農協からの切離しということを報告し、アメリカにもそれを伝えているわけでありますね。日米経済調和対話と、それを受けての規制改革、規制・制度改革分科会ですか、これはもう一体なんですよ。
ということから私はお聞きしたいんですけれども、この共済部門の切離し云々という、その中身そのものよりも、私が強調したいのは、民主党の今の進め方というのは、国民に余り多くを語らない。しかし、アメリカ側の要求にこたえてTPPに受け入れてもらえる環境づくりを、実は国民に知らされないまま着々と進んでいるのではないのかという疑念が湧くことであります。
今一例として挙げました共済につきまして農水大臣にお聞きしたいと思いますけれども、野田政権ではこうした共済に関する米国から示されている関心事項にどのように対応する準備をされているのか、お聞きします。

○国務大臣(鹿野道彦君) 日米経済の調和対話におきまして、アメリカ側から共済と民間競合会社の間で規制面で対等な競争条件を確保することというものが提起されておると、今の先生のお話のとおりであります。
ただ、TPP交渉で共済事業が議論されているか否かは承知いたしておりません。一つの参考といたしまして、米国が過去に締結した米韓のFTAでは、協同組合が実施する保険事業について、同種の民間保険と同一のルールを適用すべき旨を規定したルールはあるということは承知をいたしております。

○西田実仁君 そういう検討は、しかし、TPPでは今なされていないかもしれませんけれども、当然のことながら、アメリカ側の関心事項として具体的に挙げられているわけですね。
そういうことに対して日本はどういうふうに対応するのかということを心配する国民に対して、あるいは、十一月四日に今度は外務省が内閣官房と一緒に主催した討論会で玄葉大臣は言っていましたよ。九十日というアメリカの議会に通知する前のプラスアルファのところは二、三か月だと言っていました。となると、じゃ、この二、三か月の間に、この共済部門を例えば農協から切り離すということについて、何らか国民に示し意見を聞きながら決定をしていくということですか、農水大臣。

○国務大臣(鹿野道彦君) 具体的にTPPの共済事業交渉で共済事業が議論されているかというふうなことはまだ定かでありませんので、そういう中で今後このTPPについてはどうするかということが決められていくわけでありますけれども、そういう中で対処していかなきゃならないものだと思っております。

○西田実仁君 ほかにもたくさん心配なことがあるんですよ。例えば、元々のオリジナルなP4という四か国で議論をしていたときには入ってなく、アメリカが関心を持っている項目が三つありますけれども、そのうちの一つは労働です。
この労働についても、是非今日は小宮山大臣にもお聞きしますけれども、これまでの交渉では、貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきではないというふうに定められている。一見、労働者の権利が守られるという意味で何ら問題はなさそうであります。しかしながら、資料を外務省でも報告をされておられますけれども、米国が今後条文案を提案する段階であり、何が飛び出してくるのか分からないということは認めているんですね。
そこで、手掛かりとして、アメリカが二〇〇六年、日米投資イニシアティブ報告書に記載し、いまだ実現していない労働法制というのがあります。四つほどその二〇〇六年には挙げておりますけれども、今日はそのうち一つ、解雇紛争への金銭的解決の導入についてお聞きしたいと思います。
これは、日本では解雇が不当かどうかということについては裁判で決着するしかないということを改めて、金銭による解決、すなわち裁判外での紛争処理、示談による解決ということを制度的に導入しようというのが狙いですよね。これは、解雇がより容易となりはしないかと心配するのも当然だと思います。
外務省の資料によりますと、この労働法制については、TPP協定交渉参加を検討する際に我が国にとり慎重な検討を要する可能性がある主な点は特になしとなっているんですよ。特になしじゃなくて、アメリカが具体的にもう二〇〇六年の段階で日本に対してそういうことを求めているわけですよ。ですから、アメリカとの交渉が主になるTPPの協定交渉においてこうしたことが提起されたときにどうなるんだろうかということを心配するのは当然でありまして、そういうことをきちんと説明しなきゃいけないと思います。
厚生労働省としては、こうした要求がもしアメリカからあった場合にはどのようにするんでしょうか。

○国務大臣(小宮山洋子君) 今委員がおっしゃいましたように、アメリカがその二国間でやっている日米投資イニシアティブにおける議論の中でそのような主張をしているということは承知をしています。
ただ、これも委員が御紹介いただいたように、現在までのTPP交渉の中で各国の労働法制の緩和を求めるような議論は行われていない、そして、労働について今交渉で扱われている内容は、貿易や投資の促進のために労働基準を緩和すべきでないこと等について定めるとされていると認識をしています。
その上で、仮に交渉に参加をする場合にそのような要求があった場合には、日本での労働条件がしっかり守られるように対応すべきだというふうに考えています。

○西田実仁君 ということは、仮にそういう要求があった場合にはそれは突っぱねていくと、これは絶対に譲らないというふうに考えているんですね、お聞きします。

○国務大臣(小宮山洋子君) これは、TPPは当然のことながら交渉事でございますので、確かにアメリカは強い力を持っているかもしれませんが、多国間で交渉をしていて、労働法制が各国それぞれ違う中でアメリカの主張だけが通るとは思っておりません。その中でしっかりと守るように日本としては主張をすべきだというふうに思っています。

○西田実仁君 つまり、じゃ日本国政府としては、仮にこういうことが出てきてもそれは絶対に譲らないと、こういうことでよろしいんですね。

○国務大臣(小宮山洋子君) これは政府全体として対応していくことですが、厚生労働省としては、ここは譲らないように対応していきたいと思っています。

○西田実仁君 じゃ、総理にお聞きします。
総理は、今の議論をお聞きしていて、これはやはり日本国政府としては譲るべきではないと、そう考えておられますか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 基本的には、対応可能なもの、困難なものをしっかり見極めて個別の交渉をするわけでありますが、今のお話については、日本のしっかりと主張をしていかなければいけないテーマだと思います。

○西田実仁君 じゃ、譲らないということですね。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国益を踏まえて対応していくということであります。

○西田実仁君 国益というよりも、国民の労働法制に関することですよ。
今私が申し上げたこの解雇、日本においては今までは裁判所で決めることになっている、これを裁判紛争への金銭的解決の導入というのをアメリカが言っている、こういうことを認めるんですかどうですかということを聞いているんです。それは国益ですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 国益というか、日本がずっと尊重してきたルールの問題であります。それはしっかり守っていくということであります。

○西田実仁君 しっかりルールは守っていくということを言われました。
こういう、私は今、共済の話と労働法制の話をたまたまというか例として挙げさせていただきました。しかし、例えば、このTPPでは交渉だから何が出てくるのか分からない、今の段階で慎重に検討すべき項目は特になしというようなことを、二十一の分野についても随分ありますよ。ありますけれども、確かに交渉だから何が出てくるのか分からない、だからといって、私たちはそれを全て白紙委任するわけにいかないじゃないですか。
ですから、それぞれの分野ごとにもう出ているわけですから、二十一の分野もそうかもしれないし、しかも日米の経済調和対話から具体的に、アメリカの関心事項として出てきていることも具体的にもうあるわけですから、それぞれについて日本国政府としてどのように対応するのかということについて、具体的なこの対応策を国民の前にしっかりと示すことが必要なんじゃないですか。そうしたら、このTPPについても安心して、じゃ任せようということになるんじゃないんですか。どうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これまでも関係国から得た情報については、その提供とそして説明をしてきたつもりでございます。ただ、中断があったりしましたし、十分ではないという御指摘もあります。加えて、民主党からの御提起の中でも、きちっと情報を提供をして国民的な議論をするように、説明をするようにという、そういう御提起もありました。
これまではやってきたつもりですが、そういう厳しい評価もありますので、一層努めていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 具体的に、じゃどういうふうに改善するのかを言ってください。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) これからも、入ってくる情報については今まで以上に一生懸命提供をしながら説明をしていくということであります。

○西田実仁君 この国民が抱えている不安を解決しようという積極的な姿勢が見られないのは残念です。
先ほど申し上げた四日の日の外務省によるTPP討論会において玄葉大臣は、アジア太平洋の成長を取り込むために日本に適合するルール作りをすることが必要であり、中国とともに高いレベルの経済連携をつくる契機にしていくことが求められると発言をしておられます。
その限りではもっともかもしれませんが、では、野田政権では二十一世紀最大の市場であるアジアのルール作りについていかなるビジョンを持っているのかをお聞きしたいと思います。
今申し上げた日米経済調和対話においては、例えば米国側から食品添加物についての早期審査を求められております。すなわち、FAO・WHO合同食品添加物専門会議によって安全と認められており、かつ世界各国で使用されている四十六種類の食品添加物の審査を完了することにより貿易を促進すると要望されているわけであります。
これに対しまして日本国政府は、先ほど申し上げました規制・制度改革に係る指針、四月八日の段階で、食品添加物の承認手続の簡素化、迅速化を推進しようとしておられます。そこでは、たとえ国内企業からの申請がなくても、欧米で広く使用が認められており国際的必要性が高いものについては指定手続の簡素化、迅速化をすると、こうしているんですね。国内の要望がなくても国際的必要性が高ければそれを承認を早くするという、日本国政府は一体誰のための政府なのかというふうに思うわけでありますけれども。
しかし、こうした日米経済調和対話で米国政府が要求するルールになし崩し的に対応するのではなくて、例えば、将来アジアに適合できるルールとして、そのルール作りに日本としてビジョンを持つ必要があるんではないかと。例えば、この食品添加物でいえば、欧州にはそうした規制機関があります。FAO・WHO合同食品添加物の例えばアジア版をつくろうと、こういうビジョンを日本が持って、それをリーダーシップ持ってやるのが当然じゃないですか。総理、どうですか。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 現段階でTPPにおいて、協定交渉で食品の添加物とか個別の食品安全基準の緩和は議論されておりませんが、もしそういう議論があった場合には、これは、例えば今SPSの協定、WTOの中で認められています。この基準をしっかり守っていくということは我が国はやっぱりずっと主張すべきであるし、それは例えば食品の安全の問題、ニュージーランドでもオーストラリアでも、ほとんど日本と同じような意識を持っている国もあります。そういうところと連携をしながらルール作りをする中で、今御提起のあったような問題も提起できればいいというふうに思います。

○西田実仁君 要するに、TPPで今交渉のテーマになっていないということではなくて、なっていなくても日米経済調和対話の中でも出ているわけでありますから、それに対して日本がどう対応するのかというときに、日本の対応だけではなくてアジア太平洋の地域、日本がTPPに入ることでアジアの利益も代表すると言っているんですよ。そうしたら、そういう例えばアジアの基準作りをするリーダーシップを日本がきちんと取るということがなければ駄目だということなんですよ。
そういう意味で、私は今日、通貨戦略の問題と、そしてこの日米の経済調和対話を中心としまして、どう対応するのかという問題、今、アジアにおけるルール作りの話もしました。どれ見ても、正直言って、残念ながら戦略を立て直さなければ、とてもじゃないけれども今は参加できない、拙速であると、こう申し上げて、質問を終わりたいと思います。

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