187-参-財政金融委員会-003号 2014年10月28日


2014年10月28日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
まず初めに、日本経済の見通しについて総裁にお聞きしたいと思います。
日銀は、四月の展望レポートにおきましては、この二〇一四年度の実質GDP成長率、政策委員の見通しの中央値でありますが、一月時点の一・四から一・一へと下方修正されておられます。しかしながら、この一%を達成していくためには、この七—九をどう見るかによりますけれども、民間の予測の平均値、四%程度というふうに見ますと、下期全体として五・五%ぐらいの年率成長が必要になってくるわけでございまして、果たして現実的なのかどうかという視点でお聞きしたいと思います。
ちなみに、IMFの予想でありますけれども、一四年の日本経済につきましては〇・九%成長ということで、七月の段階からはマイナス〇・七%、先進国の中では最大の下方修正をされておられます。そのIMFの予想は、本年の下期につきまして上期とほぼ横ばいという数値になっておりまして、日銀の当初の見通しとはかなりこのIMFの下期に関する見通しも異なっていると言わざるを得ません。
そこで、総裁にお聞きしたいと思いますが、今週、展望レポートありますので、数値のことはともかくとして、経済の見方としてお聞きしたいと思いますが、仮に四月発表の展望のように、下期に力強い回復というものを見込むのであれば、IMFの見立てとどこがどう違うのか。また、今週末に発表する展望について様々な記事も既に報道もされているようでありますけれども、仮に下に向く場合には当初の見立てとどこがどう予測の誤差があるのかということについて、消費税増税の影響も含めてお聞きしたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) まず、IMFの世界経済見通しにおきまして、日本経済の成長見通しが下方修正されたことは御指摘のとおりであります。IMFは、一般的に消費税の税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減がやや予想よりも長引いていると、あるいは天候不順などもあって消費の回復が遅れているという点を非常に重視して、委員御指摘のようなかなり大幅な下方修正を行ったようでございます。足下、先ほど申し上げたとおり、確かに駆け込み需要の反動減の影響から生産面を中心に弱めの動きが出ているということは、まさにそのとおりでございます。
ただ一方で、家計部門、企業部門共に所得から支出への前向きな循環メカニズムはしっかりと維持されているということも事実でありまして、言わば、足下の弱さと底堅い家計、企業部門の所得から支出への循環メカニズムというところをどのように見るかということでありますけれども、いずれにせよ、私どもとしては、前向きな循環メカニズムがしっかり維持されている以上、我が国経済は基調的には緩やかな回復を続けておるということで、先行きも緩やかな回復基調を続けるというふうに判断をしております。
なお、委員も触れられましたとおり、具体的な実質GDPの成長率の見通しにつきましては、今週末の決定会合で取りまとめる展望レポートにおいて、政策委員会で十分に議論してお示しすることになると思います。

○西田実仁君 かなり今おっしゃったような反動減あるいは天候の不順等によるものが影響しているというのは実感としても感じるわけでありますが、それに加えて、やはり消費税の影響というのも、地元に戻りますと、家計は底堅いとおっしゃいますけれども、なかなか実際にはそうではない声の方が多いのも事実でありましょうし、また、中小企業等も大変に厳しいという声もたくさん聞いておりまして、そうした実態に基づいての的確な判断が必要ではないかというふうに思っております。
次に、異次元緩和政策の成果と課題ということについてお聞きしたいと思います。
金融緩和と景気との関係についてお聞きしたいと思います。
日銀がベースマネーを増やして景気拡大ができるかどうかというのは、この信用乗数と、それから通貨回転率の掛け算で決まってくるわけでございます。そこで、この信用乗数についてでありますけれども、実際の数値を見ますと、昨年の四月の異次元緩和以降、二〇一三年の三月の六・二一倍が一四年九月には三・五八倍に低下をしてございます。しかし、限界信用乗数という、まさにマネタリーベースの前年同月比の増加額に対してどのぐらいM2の前年同月比が増えているかという限界信用乗数、これは本年の七月、〇・三五〇でありましたが、九月には〇・四三八と、限界信用乗数自体は僅かながら改善をしているという数値でございます。
日銀による異次元緩和ということによりまして、M2の増加効果というのは、僅かながらでありますけれども出始めているというふうに数字が裏付けております。実際、銀行の貸出しにつきましても、ここに来て、僅かながらでありますが増加に転じているということであります。
一方、通貨回転率の方でございますけれども、これは、一三年三月の〇・五六九が、一四年六月には〇・五五九と低下してしまってございます。リーマン・ショック前は大体〇・七前後でございました。しかし、同じく限界通貨回転率という数値を取ってみますと、数字は、一三年三月のマイナス〇・一五四だったのが、この六月にはプラスの〇・三七一と、これも僅かながら増えていると。つまり、限界信用乗数あるいは限界通貨回転率は、いずれもここに来て日銀による異次元緩和という効果が出始めているというふうに言えるんではないかと思います。
もちろん、異次元緩和で信用乗数が、限界ではなくて信用乗数そのものが物すごく改善、あるいは通貨回転率も大幅に改善していくということになれば景気は一気に良くなるというふうになるわけですが、なかなかそこまでは行きませんで、ようやく、しかしその改善の兆しが出てきたというふうには言えるんだろうというふうに思います。これは数字が物語っているわけであります。
しかし、ここで総裁にお聞きしたいことは、日銀の当初の期待というものに対しまして、今申し上げた信用乗数あるいは通貨回転率の改善のテンポというものが遅れているんではないかというふうに私は見ております。そこで総裁に、この信用乗数あるいは通貨回転率の改善のテンポですね、改善はし始めているということは申し上げましたが、そのテンポがやや遅れているということについてはどう認識なさっておられるのか、お聞きしたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) この量的・質的金融緩和の下で、大量のマネタリーベースを供給して金利の低下などを通じて銀行が貸出しを増加させやすい環境をつくり出すということでありまして、銀行貸出しもプラスに転じ、現在は二%台で推移しているわけであります。このことはマネーストックの増加にももちろん寄与していると思います。
こういったマネーストックの伸びというものは、銀行の貸出し姿勢がある一方で、また個人や企業の資金需要にも影響されますので、先ほども少し議論が出ておりましたけれども、企業は潤沢な手持ち資金を有しておりますので、企業の資金需要という面では、すぐには貸出しにつながりにくい、したがってすぐにはマネーストックの増加につながりにくいという面があったことは事実でありますが、委員御指摘のとおり、貸出しもマイナスからプラスになり、しかも、中小企業も含めて、業種、業態、あるいは地域の広がりを見せつつ貸出しも増加しておりますので、マネーストックも今後ともある程度増加していくのではないかと思っております。
ただ、昨年、量的・質的金融緩和を導入した際に考えていたときと比べてどうかと言われますと、貸出しについては、手元流動性が厚いということでそれほど大きく増加するというふうには考えておりませんでしたので、予想を裏切って非常に伸びが低いということではないと思いますが、マネーストックの伸びが若干低いと、マネーストックの伸びは貸出しだけではなくていろんな要因で左右されますので、そういったことはあるかなと。
一方で、貨幣流通速度というか回転率の方は、マネーストックと名目GDPの関係は比較的安定しているようでありまして、委員御指摘のとおり、足下で限界的に上昇してきているということはプラスであろうというふうに思っております。
ただ、これらはいずれもいろいろな要素によって微妙に変化いたしますので、委員御指摘の点も含めて、経済全体の、実質GDPとか名目GDP、あるいは失業率、物価上昇率といった各種の指標を総合的に注意深く見てまいりたいというふうに思っております。

○西田実仁君 財務省の法人企業統計を見ますと、企業の現預金残高、今総裁からお話がございましたが、アベノミクス前には百四十二兆円余りありましたが、直近では百五十五・六兆円なんですね。そのキャッシュフローに対する設備投資比率というのは大体三五%ぐらいと、設備投資は大体キャッシュフローの範囲内で収まっているというのが現実でございます。これは、企業の投資マインドがまだ、これからにしても今現時点ではまだなかなか改善は実はしていないということ、さらには、GDPギャップに象徴されます需要不足経済というものからまだ脱却し切れていないというふうに思います。
こういう需給ギャップがまだ解消しない状況では、金融緩和効果というのはどうしても湿りがちになってしまうんではないかというふうに思いますけれども、総裁はどう思いますか。

○参考人(黒田東彦君) 一般論として委員御指摘のとおりだと思いますが、足下で、需給ギャップ自体は特に労働市場を中心にかなりタイトになってきておりまして、そうした下で、企業は収益状況は極めて良好ですので、今年度の設備投資計画というのはかなりの伸びになっております。
ということは、一方で、人手不足というか、賃金が上昇し始めていると。他方で、設備投資意欲があるということは、省力化投資、能力増強投資がどこまで行くかはまだはっきりしませんが、更新投資であり、あるいは特に省力化投資というのは今後かなり進んでいくのではないかと、そういった企業の考え方というものがいろいろなアンケート調査等で示されておりますので、その動きを十分注視してまいりたいというふうに思っております。

○西田実仁君 次に、円安につきましてもお聞きしたいと思います。
総裁は、先ほど御答弁でもありました、円安については全体としてプラスであるというふうに評価されておられます。その根拠についてお聞きしたいと思うんですけれども、私なりに国際収支へのこの円安の影響というものを試算をしておりますが、時間もありませんのでそれをネグりますけれども、基本的に為替益、為替損それぞれ輸出入に関してありますけれども、加えて、輸出に対する数量効果というのもございます。この輸出の数量効果については、いわゆるJカーブ効果というものによりまして上向きつつあるわけであります。九月の貿易統計が先日発表ありました。輸出数量は順調に伸びているわけでありまして、三か月移動平均で見ますと、二〇一三年の二月を底にいたしまして今一〇%ぐらい増えているわけであります。
時間の関係でまとめて質問しますが、総裁は円安のJカーブ効果についてどう認識されているのかというのが一点。さらに、日本経済全体ではプラスであったとしても、当然、この円安のプラスを享受できるセクターと、それからマイナスを被るセクターというのが当然異なってくるわけでありまして、円安の影響に極端な偏在が見られることに対して、総裁はどう対処すべきとお考えになっているのかというのが二点目。
済みません、まとめて、もう時間ないのでお聞きしますけれども、三点目でありますけれども、購買力平価は、いろんな計算の仕方がありますけれども、OECDでは百三円、まあ百三円程度であります。それを超えた円安というのは逆に経済のひずみを拡大してしまうんではないか、更なる追加緩和は控えるべきではないかという意見がございます。と申しますのも、総裁はこの今の円安、円の水準は経済のファンダメンタルズを反映しているものであるという認識も示されておりますけれども、むしろそのファンダメンタルズで数字を見ますと、例えば貿易赤字、日米間では逆の方向を向いているわけでありますし、また、日米の実質短期金利差ということを見ても、日本が米国よりも高くなっているのは事実でございまして、むしろファンダメンタルズを反映するのであれば、円安に向かうというよりも円高の方に向かっていくべきではないかというふうにも思ってございます。
以上、三つまとめてお聞きします。一つは、円安のJカーブ効果について。そして、円安のマイナスを被るセクターについての、偏在する場合のその対処の仕方。さらには、本当にファンダメンタルズを反映したものと言えるのかどうかという、為替に関することでありますけれども、以上まとめて総裁の所見をお聞きしたいと思います。

○参考人(黒田東彦君) まず第一点でございますが、円安、あるいは行き過ぎた円高の是正ということにもかかわらず貿易収支が改善していないということがあるわけですが、その背景としては、まず輸入が燃料輸入が大幅に増加したということもあって高水準になっている一方で、輸出がこれまでやや弱めの動きとなってきたわけでございます。足下で若干の動意が見られますけれども、やや輸出が期待外れであったということは、一方で、新興国などの海外経済のもたつき、特にアジアは日本の輸出の半分以上が出ているわけですが、そこのもたつきの影響と、それから自動車を中心に製造業において海外生産を相当拡大したわけでございまして、まだこれは続いているわけですが、そういった構造的な要因もあったと思いますけれども、円安にもかかわらず貿易収支がなかなか改善していっていないというわけでございます。
ただ、委員も御指摘のとおりでありまして、海外経済の成長率が高まっていく下で輸出は緩やかな増加に向かっていくと考えられますし、やや長い目で見ますと、過度な円高の修正によって海外生産比率の上昇のペースも、出た工場が戻ってくるというのはなかなか難しいと思いますけれども、どんどん出ていくというか、そのペースはややペースダウンするのではないかと。そうした下で、Jカーブ効果と言うかどうかは分かりませんが、遅れていた貿易収支の改善が起こってくるのではないかと思っております。
二番目の円安のマイナスの影響を受けるセクターの問題でございますが、確かに円安は、他の事情にして一定であれば、輸入コストの上昇、それからその価格転嫁を通じまして非製造業の収益あるいは家計の実質所得に対する押し下げ圧力となることは事実でありまして、マイナスの影響を受けるセクターがあるということは御指摘のとおりであります。他方で、円安は、輸出の増加とか、グローバルに展開している企業の収益の改善、あるいは株価の上昇といったプラスの効果も持っております。
そこで、全体としてプラスかどうかという判断でございますが、これまでの円安の影響というのは経済主体によっていろいろでございますけれども、基本的に経済、金融のファンダメンタルズを反映して円高が是正されてきたというふうに見られますので、全体としてはプラスではないかと思っております。
三点目の経済の……

○委員長(古川俊治君) 時間ですので、申し訳ありません、答弁は簡潔にお願いします。

○参考人(黒田東彦君) はい。
経済のファンダメンタルズですが、これは、御指摘のような金利とか国際収支、物価上昇率、経済成長、様々な要因があるわけですが、それらを、基礎的な条件を反映しているかどうかということの判断でございますが、私どもとしては、これまでの円安というのはそういうものを反映して動いてきたというふうに思っております。

○西田実仁君 終わります。

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