財政金融委員会・第8号


2004年11月25日

【質疑事項】
議題 「信託業の改正案」参考人意見についての質疑
1.中小企業が利用しやすい信託について
2.信託銀行の国際的な展開について
3.福祉信託についての考えについて<>○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。両参考人、お忙しいところ、大変にありがとうございます。
まず、古沢参考人にお伺いしたいと思いますけれども、今回のこの業法の改正の大きなねらいとして、信託というこの仕組みを日本の金融システムの中にいかに 根付かせて普及させていくかということが問われているわけでございますけれども、その際に、特にそうした信託という仕組みを広めていく上で、先ほど新井参 考人からもお話いただきましたけれども、中小零細企業がこの信託という仕組みを使って様々な資金調達やあるいは知的財産の保全等を図っていくということが 非常に重要であるというふうに私は認識しております。
その上でお聞きいたしますけれども、先ほど来から古沢参考人からもお話ありました、信託銀 行の場合はなかなか店舗数が普通の銀行に比べて少ないということがあって、そういうことであればなおさら、そもそも中小企業との接点というものは普通の銀 行に比べると少ないであろうと想像が付くわけでありますけれども、今般、この業法の改正に当たりまして、信託協会として、中小企業が利用しやすい信託とい う仕組みにするためにどのような施策あるいはビジネスの在り方を御検討されているのか、もしございましたらお願いいたします。

○参考人 (古沢熙一郎君) 当然のことでありますけれども、銀行として中小企業に対する資金供給に係る使命というものは常に認識して経営に当たっていかなければい けないというふうに認識をしておりますが、信託という制度を用いるといたしますと、例えば中小企業向けの貸出し専用の信託を設定をいたしまして投資家から 資金を募るとか、あるいは中小企業に対して行った貸出しを信託財産として信託を設定して、その受益権を投資家に販売をするといった手法が考えられるところ であります。また、中小企業が保有する資産を信託財産として設定をして、その受益権を投資家に対し販売するということで資金調達を図るという方法も考えら れるところであります。
先生御指摘のように、私ども店舗数が非常に少ないので、そういう意味では、信託契約の代理店制度あるいは受益権の販売業者の制度、そういうものも活用しながら中小企業金融の一層の円滑化に努めてまいりたいというふうに思います。

○ 西田まこと君 今回のこの業法改正に先立って金融審議会でもいろいろと議論がございました。その報告書の中にはこういう1項目ございまして、「我が国にお ける信託会社の事業展開が、今後、国際的な広がりを持つ可能性があることにも十分留意して制度を構築すべきである。」と、そういう意見書が報告書の中に盛 り込まれておりました。
今般のこの業法改正におきまして、特に信託銀行の国際的な展開ということにどういうプラスのインパクトが考えられるのか、もしございましたらお願いいたします。古沢参考人にお願いいたします。

○ 参考人(古沢熙一郎君) これは、それぞれの会社が国際的な金融業務をどういうふうに展開をしていくかということといろんな意味で係っていくんだろうとい うふうに思いますが、私どもの銀行の場合で申し上げますと、かつて私どもも海外に拠点を持ち国際業務を展開したという時期はございましたけれども、これは 主として信託というよりはバンキングの方の業務でありました。ただ、これらの業務については、私どもの規模でやっていくといたしますとそれなりの制約もあ り、業務としての収益性というものについては問題があるということから、これは思い切って撤退をいたしました。
ただ、信託ということに関連いた しましては、現在でも、例えば年金の資金の運用というのは非常にグローバルな運用をしておりますので、そのフォローのための現地法人というのは、ロンドン であるとかあるいはニューヨークであるとか、そういうところには拠点を設けておりますし、こういう業務はますます今後も拡大をしていくだろうと。
ただ、今回、業法の改正に伴って新たな国際業務の展開というのはまだ残念ながら検討しておりません。そういうことでございます。

○ 西田まこと君 次に、新井参考人、先生にお聞きしたいと思いますけれども、今回のこの業法に足りない部分を随分御指摘いただきました。その中で、特に福祉 信託という点について、もっとこの信託という仕組みを生活支援あるいは後見制度との結合ということを御指摘されたんだろうというふうに認識しておりますけ れども。
そこで、先ほど来から出ておりますとおり、ビジネスとしてあるいは福祉信託をやろうとしたときに、同時にその受益者をどう保護していく のかという観点も必要になってくると思います。その中でそれをどう考えたらいいのかということ。そして、収益を度外視した信託というような御指摘も先ほど 御発言でございましたけれども、ということは、ありていに言えば、税金なりで、収益が度外視されても続けていかなければならないわけですから、その収益を 補うようなシステムを税金投入なりなんなりしていくというお考えと理解すればよろしいんでしょうか。

○参考人(新井誠君) まず、受益者 保護という点は非常に重要なことです。どうして信託を使うと受益者保護ができるか。それは、先ほど申し上げましたように、信託法というのは、受託者を規制 し、受益者を保護する法律なんです。受託者には民法よりも厳しいいろんな義務が課されています。例えば中立義務であるとか、もろもろの義務ですね。した がって、その反射的な効果として受益者は保護されるわけです。ですから、高齢者、障害者が能力がなくなったり、いわゆる弱者になっても信託を用いれば保護 されるというのはそういう仕組みから来ているわけです。
そこで問題となるのは今般の信託法の改正でして、先ほど申し上げましたように、その受託 者の義務を緩和しようとしているわけですよ。任意法規化しようとしている。そうではなくて、やはり福祉型信託ということを考えると、受託者の義務というの はやっぱりきっちり一定のレベル以上のものにしておかなければいけないということがまず一点申し上げたい点です。
それから、収益のことですけれ ども、これはやはり信託を用いるというのは、これはやはり御本人の自己決定の世界だと思うんですね。ですから、御本人の財産を使って、それでこういう財産 管理制度を使うと。ですから、財産のない方についてはその公的な支援システムが必要かもしれませんけれども、私が基本的に考えておるのは、財産をお持ちの 方、それも、先ほど議論ありましたようなプライベートバンキングを使うような層ではなくて、日本にたくさんいる、ほとんどの日本人がそうである中堅の、中 間層の方々が使えるような信託、そういうもので私は十分収益が取れるモデルというのは可能だというふうに考えております。
それすらも使えない高 齢者、障害者の方で信託を使いたいという方がいらっしゃるかどうかというのは分かりませんけれども、もしいらっしゃるとしたら、そういう方についてはその 公的な支援があってもいいだろうと。そこで、私は公益法人がその受託者になってもいいのではないかということを申し上げた次第です。

○西 田まこと君 今現実にある、信託銀行がやっておられる特定贈与信託という仕組みがありますけれども、これは、数字を見ると、過去五年ぐらいでどんどん受益 者数は減っておりますし、また受託件数も漸減していると、こういうことなんですけれども、これは古沢参考人にお聞きしますけれども、やはりこれはニーズが ないのか、あるいは商売として成り立たないので信託銀行さんが余りやらないのか、消極的なのか。この受託件数、受益者数の漸減につきましてはどのように見 ておられますか。

○参考人(古沢熙一郎君) 高齢者の財産管理を行う信託を営業として引き受ける場合に、我々受託者の側からとって支障に なる幾つかのことを申し上げたいと思いますけれども、高齢者の方の財産を保全し、次世代に承継させるために信託を用いるということは十分に考えられるとこ ろでありますし、先生御指摘のとおり、現に営業信託でも特定贈与信託のほか、まあいろんな取組を行っているところであります。
ただ、このような 信託におきましては、委託者が意思能力を喪失した後の信託財産の給付の適切性をいかに確保するかとか、あるいは信託財産が不動産の場合にその管理をいかに 行うかといったようなところにいろんな問題があるように思います。このような問題につきましては、確かに、任意後見制度や成年後見制度を活用したり、ある いは第三者に不動産の管理を委託するというようなことによりまして解決が可能な場合もあるというふうに思っておりますが、今のところ、先生御指摘のよう に、件数そのものについては余り伸びていないというのが実情であります。
ただ、我々としては、今後の高齢化社会を展望した場合にはより一層こういった信託の普及を心掛けていきたいと、努力していきたいというふうに考えております。

○西田まこと君 質問を終わります。どうもありがとうございました。

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