180-参-社会保障と税の一体改革に関する特別委員会-009号 2012年07月27日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
今日は、消費税そのものにつきまして御質問させていただきたいと思います。
将来的にはこの消費税が基幹税となっていくことは自明ではないかと思っておりまして、また、今回、民主党の中からも大量の離党者が出るほどの大論争の末に十七年ぶりに消費税を引き上げるということでありますから、この際、懸案事項を一気に解決すべきであって、問題を先送りすべきではないというふうに思っております。すなわち、あるべき消費税制度というものをしっかりと確立をしていかなければならないと。
私自身が考える懸案事項といたしましては、消費税の持つ逆進性の克服ということであり、また公平な税負担、さらには転嫁問題と、この三つについて特に懸案事項で、これをきちんと解決すべきであるという考え方でございます。
そこでまず、私の方からは、この逆進性対策ということで、軽減税率の問題を取り上げさせていただきたいと思います。
公明党は、この三党協議で、新たに低所得の方々に対する対策として軽減税率というものを検討すべきであると主張させていただきました。三党の合意によりまして、八%に引き上げる段階でこの軽減税率若しくは簡素な給付措置ということが検討の対象になることになりました。
ヨーロッパでは、もう言うまでもなく、食料品などの生活必需品に加えまして、新聞や書籍あるいは雑誌などにも軽減税率を適用するのが標準的となっております。
そこで、私ども、なぜ八%の段階から軽減税率を必要とするのかということについて、三点、パネルを使いながら申し上げさせていただきたいと思います。(資料提示)
まず初めに、何といっても、この委員会でも何度も指摘されましたけれども、軽減税率というのは非常に分かりやすいということでございます。分かりやすいがゆえに、三党合意の後のいろんな新聞の世論調査を見ましても、例えばこの七月十六日付けの読売新聞、あるいは六月二十八日付けの東京新聞、いずれも軽減税率を導入すべきかどうかとの問いに対しまして、七割以上の方々が導入すべきであると、こういうふうに言っておられる。これはまさに、毎回毎回の食品等を買う際に、軽減税率になれば分かりやすいという、そういう象徴ではないかというふうに思うわけであります。
一方、もう一つの選択肢であります簡素な給付措置というものがなかなかイメージしにくいというのがありまして、軽減税率は分かりやすいんだけれども、簡素な給付措置は分かりにくいというか、イメージがつかめないという、こういう問題点もあるんではないかというふうに思います。まず一点目は分かりやすさということであります。
しかし、重要なのはこの二点目の逆進性の緩和ということでございまして、私は今日ここを強調させていただきたいと思っておりますが、エンゲル係数というのはもうよく国民の皆さんも御存じのとおりであります。消費支出に占める食料品の比率でありまして、経済的なゆとりを示す指標として定着しております。
全体の年間収入を五等分いたしました五分位別のエンゲル係数を比較してみましたところ、まあエンゲル係数は所得が少ない方々ほど高くなるというのはよく知られている事実であります。実際に、ここには二〇〇八年と二〇一一年、比較をさせていただいている、二〇〇八年が水色、二〇一一年が赤のエンゲル係数をそれぞれ、下の方に、一番左は全体の平均でありますけれども、その後、一、二、三、四、五というふうに書かせていただいているのは、五分位別のエンゲル係数ということでございまして、低い順から所得の高い順に、年間収入の高い順に並んでいるわけであります。
ここで、是非注目していただきたいのは、二〇〇八年と二〇一一年を比べたという理由でありまして、リーマン・ショックが起こった後、実は所得の少ない方々ほど急激にエンゲル係数が伸びているという、上がっているという事実でございます。第一分位の方々はプラス〇・九九%、そして第二分位の方は〇・六八、その後順次、一番所得の多い第五分位というところについては〇・一一の上昇でございまして、これは、所得が全体的に下がる、一方で食料品価格は、国際市況がこの十年で三倍になっていることに表れているように非常に上がっている。これによってエンゲル係数は所得の少ない方々ほど急激に今上昇しているということでありまして、その意味で、生活の格差というものは、このリーマン・ショック以降非常にこのエンゲル係数に端的に表れているように大きくなってきているということでございます。そこに今後消費税が掛けられていくことになりますと、それだけ物価は上昇していくということになりますので、この低所得の方々と高所得の方々の生活格差というものは更に広がっていくんではないか、このように懸念されるわけでございます。
逆に申し上げますと、食料品等に軽減税率を掛けますと、低所得の方々ほど消費税による負担軽減率が大きくなるということになる、これが三枚目のパネルでございます。
ここで、二〇一一年の家計調査に基づきまして、まあ家計調査はいろいろな費目がございますけれども、ここでは一番広く、食料という支出がございますけれども、この家計調査の二〇一一年のデータから、食料支出に五%、据置きですね、その他の消費に八%課税した場合に、低所得の方々、つまり食料に軽減税率を掛けるという前提になっているわけでありますけれども、その負担軽減率は、一番所得の少ない第一分位、二〇一一年では年間収入が三百三十七万円までの方々でありますけれども、この方々の、本来は三%、五から八%ですから三%全体としては負担増になるわけでありますけれども、食料に軽減税率を掛けた場合には〇・八四%負担軽減というものが行われるという、結果的に、本来三%全体でアップするところが二・一六%であるという、所得の少ない方々ほど負担軽減率というのが大きくなっているということでありますので、先ほど申し上げました、ここ数年、大変にエンゲル係数が急上昇、所得の少ない方々ほど伸びているものを、その負担を軽減するという意味でも、食料品等に軽減税率を掛けることが、いかにその逆進性を緩和し、また生活格差が広がるばかりのところを抑えることになるのかということを示しているのではないかというふうに思うわけでございます。逆に言えば、五から八%に上げる段階から全部軽減税率をやらずに行いますと、そもそもこの低所得の方々のエンゲル係数がここ数年急上昇しているところに更にその負担増がもっと襲いかかってくると、こういうふうになってしまうわけでございます。
この二つ目が逆進性の緩和ということでありまして、三つ目は世界標準ということをあえて言わせていただきたいと思います。
一部には消費税が一〇%を超えてから軽減税率導入をというような声もあるようでありますけれども、国際的に見ても、食料品に一〇%を掛けているところというのはないんですよ。OECDの加盟諸国で標準税率が二〇%未満、軽減税率を導入している国は十か国ございますけれども、そこに、食料品に一〇%の消費税を掛けているところは皆無であります。それらの国々の食料品の軽減税率の単純平均を示したところ、四%です。つまり、今世界にある軽減税率を掛けているところに関しては、特に食料品に関しては平均で四%、まあ五%程度のものというのが世界標準でありまして、一〇%を超えてから食品に軽減税率を掛けるとなると、据置きというふうに考えられますと一〇%ということになってしまうわけでありますので、我々は、公明党としては、八%へ上げる段階からこの軽減税率をきちんと導入することを検討すべきと、このように申し上げさせていただいているわけであります。
そこで、今私、三点にわたりまして、分かりやすさと、そして逆進性の緩和、さらには世界標準、この三つの点を挙げさせていただきましたけれども、逆進性対策としての軽減税率についてどのように認識をされているのか、じゃ、岡田副総理にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(岡田克也君) 貴重な御指摘をいただきました。
まず、基本的には、これは三党間でも御議論をいただき、軽減税率か給付付き税額控除かということについてはよく協議をすることになっておりますので、そういった前提の上で現時点における政府の考え方をお話し申し上げたいと思います。
まず第一の分かりやすさ。これは、確かに給付付き税額控除というのは今までまだ日本にもありませんので、どういうものかよく分からない。基本的には消費税収の一部を所得の少ない方にきちんとお返しする仕組みということですが、実感がどうも分からないと。それよりは、複数税率、軽減税率の方が分かりやすいというのはそのとおりですし、一つのメリットでもあると思います。
ただ、実際にやっているEUの国々を見たときに、食料品全体に軽減税率を適用しているのか、それともそのうちの一部なのか。一部ではまたいろいろ難しい問題もあると。持ち帰り用のドーナツと店内で食べるものの税率が違うとか、我々も聞いていて頭が痛くなるような、そういう複雑さもあるということで、一見分かりやすいですが、実際の運用になると必ずしもそうではないという面もあるのではないかというふうに思っております。何に軽減税率を適用するかしないかということで、言わばそれは政治が最終的に決めるということになるわけですが、そういったことが果たしていいのかどうかという問題も考えなければいけないというふうに思っております。
それから、逆進性の緩和ということは、もちろん食料品に全部掛けるという前提で考えたときにそういう面は確かにあります。ただ、率でいえばそうですが、額でいうと、これ所得の多い方は、食料品の割合は少ないですけれども、金額でいうと多いですから、それだけ戻ってくるお金というか、軽減されるお金は多いわけであります。ここをどう考えるかということだと思います。
そして、ある意味では、これ全部食料品に掛けて五%のままだというふうに仮定いたしますと、それだけで恐らく消費税一%分ぐらいの二・五兆から三兆円ぐらいのお金が掛かります。その分をじゃどうするのかと。将来的には更に消費税引き上げざるを得ないんじゃないかと、こういう議論もあるわけで、よりピンポイントで困っているところに手当てするとしたら給付付き税額控除の方がいいんじゃないかという、そういう考え方は当然あり得ると思います。
それから、世界標準、全部に対してそんなに一〇%も掛けている国はないというのはそれは御指摘のとおりかもしれません。しかし、国によっては、食料品以外にも軽減税率適用している国もございます。既にこの日本でも、新聞や一部の出版物についてはこれも軽減税率適用すべきだという声もあるわけで、食料品についてはそうかもしれませんが、ほかのものも広がっていく可能性もあるということで、割とややこしい問題も残るというふうに思っております。
他方で、給付付き税額控除は、消費税に関してこれを使っている国というのは非常に少ないと思いますが、将来の日本の社会保障制度を考えたときに、所得の少ない方に対して有効に対策をやっていくという意味では、この給付付き税額控除というのは非常にある意味魅力的な、既に導入している国も幾つかございますが、非常に魅力的なツールであることは間違いないので、ここについてももう少し検討させていただいて、最終的にどちらがいいか、どういう形がいいかということについて結論を出していく必要があるのではないかというふうに思っております。

○西田実仁君 今、御丁寧に御説明いただきましたけれども、まず確認ですけれども、八%上げるときには給付付き税額控除じゃないんですよ。それは一〇%の話でして、私が今言っているのは、五から八に上げるときに、選択肢としては、軽減税率か簡素な給付措置しかないんですよ。無理ですから、給付付き税額控除は。ですから、その比較を今しているということを申し上げたいと思います。
そして、確かに率では低所得の方々の方が負担軽減率が多いんですけれども、額では高所得の人も利益を得るではないかという御指摘は民主党さんの中でもずっとあったと聞いております。ですから、最初から軽減税率は外れていたというふうに思います。しかし、ここは生活の実感がどうかということが一番大事なことでありまして、額ではないんですよ、やっぱり率なんですよ。生活格差ということを感じるのはやはり率です。ですから、ここは生活実感というのはどうとらえるかというところの価値観の違いかもしれませんけれども、その問題は指摘したいと思います。
今、その後、課題として、線引きの問題あるいは税収の確保の問題、していただきました。後ほどこれは課題として私も、メリットだけを述べるつもりありませんので、ここは今取りあえずここでとどめさせていただきたいと思いますが。
ちょっと気になるのは、実は総理が、七月の二十二日でしょうか、母校の早稲田大学で講演をされた際に、報道ベースですのでそのとおりしゃべられたのかどうかは分かりません。食料品などを含めて複数税率にし、場合によっては何かをゼロにしたり軽くしたりする方がいいのかどうかという議論がある、メリット、デメリット、そういう議論を今していると発言されたと報道されました。
ここで総理は何かをゼロにしたり軽くしたりする方がいいのかどうかと言われていることから、今後、三党の間で協議をする、検討をされる軽減税率は必ずしも五から八に上げるときに五%に据え置くということのみならず、四%あるいは三%、はたまた総理がここでゼロとわざわざ言っておられますので、ゼロ税率という軽減税率も検討される、五%未満の軽減税率も検討の対象から排除しないということでよろしいんでしょうか、総理。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 学生の皆さん、若い人たちにこの社会保障と税の一体改革の意義を御説明をするためにお話をした中で、どうしてもこの逆進性の対策というのが大事であると。そういう中で、三党間で合意したことについては、給付付き税額控除、そして軽減税率、簡素な給付措置、こういうお話をさせていただく中で、特に軽減税率については具体的にこういうイメージがあって、メリット、デメリットはあるんですよと、それぞれ総合的な検討しますけれどもという例えで申し上げました。
ただ、中身をこれ予断を持って言っているわけじゃなくて、ゼロと使ったのは、逆に、例えば、学校だったものですから、授業料を含めて教育サービス等の一定のものについては非課税ですよね、消費税。そういうことも含めて、非課税の措置もあるのかもしれません。基本的には、従来から導入したものが基本だと思いますが、そういう意味でちょっとゼロとあえて使ったということでございます。

○西田実仁君 非課税取引とゼロ税率とは違うんですよ。
いずれにしても、法律には複数税率の導入について総合的に検討すると書いてありますから、それを素直に読めば、五%に据え置くとどこにも書いていないわけでありまして、複数税率ということですから、いろんなことが考えられるんだろうなということをもしかしたら総理が深く述べられたのかなというふうに思ったわけですけれども、まあそうでもないようであります。いずれにしても、これからの検討であります。
今、岡田副総理から御指摘いただきました課題については、やはり三つ大きくあるのではないかと思います。一つ目は、税収の確保、財源の問題であります。
どのぐらいの税収減になるのかというのは、これはもういろんな想定を置かないとできません。一つのイメージを持つために、先ほども同じようにやりましたので、家計調査の食料、これを五%に据え置くというふうに前提を置きたいと思います。
最新の家計調査、二〇一一年によりますと、食料というのは一か月平均で六万六千九百一円なんですよ。消費支出全体は二十八万、一か月ですね、二十八万二千九百五十五円なんです。つまり、二四%なんですね。食料が全体の消費に占める比率が二四%。その食料に対する消費税は五%のまま据え置いて、その他は八%に引き上げるという前提で計算をいたしますと、税収減は約一・五兆円ぐらいではないかというふうに思います。
この税収減は、よく財務省から御説明いただく場合には、食料に軽減したらそれ以外のところを上げなければならないというふうに必ず説明をされるんですけれども、ここで私は、一つの問題提起として、この消費税の捕捉率ということについて触れさせていただきたいと思います。
消費税の公平な税負担によりまして捕捉率を高める、そのことによって今申し上げた税収減をカバーするというようなことが考えられないのだろうかと。
ここで財務大臣にお聞きしたいと思いますけれども、消費税の捕捉率、どのぐらいというふうに把握しているでしょうか。

○国務大臣(安住淳君) まず今のお話の前段を申し上げますと、やはり私どもの調査でもおおむね、もし食料品に対して軽減税率を導入した場合、範囲にもよりますけど、やっぱり二兆円台半ばから三兆円ぐらいまでもしかしたら行くのかもしれないなと。
というのは、食料品がおおむね、先生御指摘のように、大体消費税収の、十二・七兆なんですね、その五分の一から四分の一ぐらいがどうもそれぐらいではないかという推計でございますので、それぐらいかなというふうには思っております。ですから、品目や、何を本当にターゲットにして、どの範囲かということは十分御議論をいただかないといけないというふうに思っています。
それから、いわゆる滞納ということでよろしゅうございますか。
消費税の、ある意味で、まず滞納だけ申し上げますと、二十二年度で、実は全部の税の滞納が六千八百億円なんですが、そのうちの消費税の滞納がやっぱり三千三百億円ほどあります。ですから、そういう意味では、滞納額というのがあって、パーセンテージでいうとやっぱり三・四%程度ありますので、これは一年督促をさせていただくと大体九九・四%になりますので、こうしたことはやっていかないといけません。
それから、制度でいいますと、例えば簡易課税制度等でみなし仕入れ率を今何段階かに分けております。しかし、この仕入れ率と実体の仕入れの中に乖離があれば、どうしてもそこに益税等が発生をするので、こうしたことのゆがみを正さなければならないという意見があります。
私どもも実は四月以降調査をしておりまして、概要が大体出てきたら、法案が成立後、こうしたゆがみを正すことで、やはり正確な税収というものを益税が発生しないような形でやるための制度設計等々をやっていきたいというふうに思います。

○西田実仁君 なかなか消費税がどのぐらい捕捉しているのか、非捕捉率がどのぐらいなのかというのはいわく言い難いんだと思いますので、あくまで便宜上、私の方から問題提起をさせていただきたいと思いますが、もちろんいろんな批判はあると思いますけれども、便宜上ですのであえて申し上げさせていただきます。
GDPベースで、民間の最終消費支出、ここから非課税取引の教育とか医療とかを取り除くと約二百五十兆なんですね、民間最終消費支出、非課税取引を除いたものですよ。それに対する消費税収は決算で十兆一千九百五十億円です。ですから、その比率は約四%なんですよ。普通は、ですから民間最終消費支出に、非課税取引を除いた民間最終消費に、税率は五%ですから、五%にならなきゃいけないんですよ、消費税収割る消費は。消費税というのは消費に掛かっているわけですから。ところが、現実には四%なんですよ。マクロの数字ですよ、あくまでも。ということは、本来五%にならなきゃいけないはずの消費税が四%にとどまっているということは、四割る五ですから八〇%なんですよ。つまり、捕捉率は八〇%、二〇%は非捕捉率だと言えないこともないんですよ、マクロの数字では。
つまり、私は、先ほど税収の問題を言われました、財源をどうするんだ、軽減税率にする場合に。しかし、こういう、例えば消費税の捕捉率をマクロで計算するとこういうふうになるので、もしかしたらここからまだ何とかできるのかもしれないという可能性を私はやはりここに見るわけでございまして、特に、先ほど、食料全般に掛けたときの減収は二四%と申し上げました。私が今申し上げた非捕捉率は二〇%と申し上げましたので、じゃ足りないじゃないかというふうになりますので、例えば食料から外食を抜くとかあるいは酒類を抜くとかするとちょうど二〇%ぐらいずつになるんですよ。
つまり、この軽減税率について考えるときの財源の問題は、公平な税負担による消費税の捕捉率の向上ということも検討しなければならないんではないかということで、要するに、お金がない、あるいはもう財源が減るんだからほかのものを上げなきゃいけないんだといってこの軽減税率の議論を門前払いするのはいかがなものかというふうに思いますけれども、副総理、どうでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 門前払いしているわけではございません。これは非常に重要な話なので、どちらがいいかということをしっかり議論しなければいけないと、そういうことの一環として申し上げております。
捕捉率の話は、委員の御指摘のことが事実だとすれば、これは複数税率を適用するしないにかかわらずきちっと納めてもらわなきゃいけないわけで、どちらにしてもこれはしっかりやらなきゃいけない話だというふうに思っております。
外食だけ別にするというお話もされましたが、この辺がだから非常に難しくてだんだん制度が複雑になってくるということであります。先ほども申し上げましたが、ドイツでは、例えばハンバーガーが店で食べると一九%、持ち帰ると七%。それなら当然持ち帰りにして店出てから公園か何かで食べた方がいいということになりますよね。こういう非常に複雑な仕組みになってしまうことが果たしていいのかどうかという点もやっぱり併せ考えていかなくてはいけないのではないかと思っております。

○西田実仁君 ちょうどそのことを次に質問しようと思っていまして、大変いいコメントをいただきました。まさにこの線引きの難しさですね、対象範囲をどうするのか。
しかし、今比較しようとしている五から八に上げるときの軽減税率とそれから簡素な給付措置。簡素な給付措置も実は線引きって難しいんですよ、どこに線を引いてそれ以下の所得の方に給付するのかという判断。この線引きというのは、軽減税率だけが難しいんじゃなくて、簡素な給付措置も非常に難しいです。
私はこれを、簡素な給付措置のイメージを聞きたいんですけど、時間に限りもありますので私の方から説明して、説明というか推測をしますけれども、この政府がおまとめになりました五大臣会合、四月十七日では、簡素な給付措置の対象者の範囲として、実務上の対応可能性に配慮する、あるいは社会保障各制度における低所得者の範囲との整合性に留意する、こういうふうにあります。
一部報道もされましたけれども、いわゆる住民税が非課税世帯、夫二百七十万、妻パート収入百万というふうなモデルで約三千百万人、この方々に簡素な給付として年間一人一万円を給付すると。まあ、そういうことを考えているかどうか分かりません、分かりません、これからでしょうけれども、仮にそれを、報道もされましたので、想定をします。そこで線を引いたとします。すると、先ほどグラフで見ていただいた第一分位、年収が三百三十七万円の方々とほぼ重なるんですよ。ですから、一番所得の低い低所得の方々については、今私が想定した簡素な給付措置で救われます。ところが、全体の平均は大体六百万なんですよ、収入。そうすると、先ほどのグラフで第二分位の人あるいは第三分位の人たち、この人たちは、年間の食料に、本来は軽減税率にすれば救われたであろう二万数千円程度がそのまま簡素な給付措置ももらえることなく負担として掛かってくるんですよ。
つまり、平均以下の方々で一番少ない方々は確かに救われるかもしれないけれども、線の引き方によっては二番目に少ない方、三番目に少ない、要するに半分以下の方の過半数以上は救われないという可能性すらあるんですよ、住民税非課税世帯ですと。
というふうに、このエンゲル係数が急上昇するという、所得が少なくなり、国際商品市況がまだまだ上がる、さらには消費税も、物価上昇がする、こういう中にあって平均所得以下の方々により生活を圧迫することに線引きによってはなりはしないかというふうに思うわけでありますけれども、その線引きの難しさということだけでこの軽減税率を排除することにはならないんではないかと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(岡田克也君) いずれも線引きは難しいというところはございます。
ただ、簡素な給付措置は、これずっとやるのではなくて、そういう選択もあるかもしれませんが、基本的には、これは将来的にはよりコンクリートな制度に変えていくという暫定的なものとして取りあえずは考えているわけです。あとはどのぐらいの財源を用意できるかという問題だと思います。ですから、先ほどおっしゃった八のときに五のままという、三%分で一兆数千億ってたしかおっしゃったと思いますが、それだけ用意できればかなりのことが実はできるわけであります。
問題は、それだけのことが果たして可能かどうかですね。この社会保障に充てるというときに、その部分をどこか削らなければいけないということにもなりかねないわけで、それは全体で幾ら充てるかということを決めた上で制度設計をする話で、必ずしも範囲が狭いということではない、それはもう財源の大きさによって決まってくる問題ではないかというふうに思います。
ただ、逆に言いますと、三%分、所得のすごく多い人にもこの恩典は行くわけですから、複数税制にするとですね。そういうことは恐らくこの簡素な給付措置ではないわけで、そういうところはより効率的な税金の使い方ということになるのではないかなというふうにも思っております。

○西田実仁君 いずれにしても、その範囲をどうするかによって、簡素な給付措置ということをお考えになる場合には当然財源が必要になります。その財源の範囲で軽減税率をやるということだって十分にあり得るわけでありまして、そこはどう考えるのかということになると思います。
三つ目の課題は、やはり中小事業者の負担増ということでございまして、これはしかしながら一般的に市販されている請求書にも、今、請求書等保存方式というふうになっていて、請求書にも、今は普通の請求書には税率とか税額とか書くところはあるわけでして、何かインボイスという特別な書式をもってやらなければならないということにはならないんだろうとは思いますけれども、この税額や税率を書かねばならないという義務付けをすることによる様々な負担増ということが出てくる可能性はあると思います。
簡潔で結構ですが、財務大臣に、軽減税率を採用した場合の中小企業の事業者に負担増になる部分、どういうことが考えられるのか。

○国務大臣(安住淳君) 仮に複数税率になった場合は、やはり、今のようなやり方でできるかというのはやっぱりなかなか難しい可能性があります。その場合は、例えば諸外国においてはインボイス方式を取っているわけですね。そうした制度設計をやはり考えなければならないときが来るんではないかなと思っております。
ただ、単一税率でいくとなった場合はこれまでと同じような保存方式でというふうに私ども思っておりますけれども、ここは実際の実務を行う中小企業者の皆さんに今よくよくお話聞かせていただいておりますので、そうした利便性等やこれまでやってきたことを踏まえて、単一税率の場合は現行のものでいきますが、複数税率に仮になった場合は私としてもそれはインボイス等の検討というものは考えなければならないと思っております。

○西田実仁君 インボイスというのは特別に複雑な難しいものを想定しがちですけれども、普通の請求書なんですよ。請求書に税率と税額をきちんと書くという、今普通に売られているこういう請求書もちゃんと書く欄があるわけですからね。そんなに難しいことを、何か幻想を抱かせるような、インボイスみたいな言葉を使わなくても、請求書なんですよ、要するに。
いずれにいたしましても、こういう中小事業者の負担増ということが、今後、複数税率にする場合は当然ですけれども、そうじゃなくてもいろいろと出てくるわけですから、予算措置で対応していかなきゃならない面が出てくるんだろうと思います。
平成二十一年度の事業仕分で国庫返納になりましたけれども、かつて消費税を導入した際に、商工会等の記帳機械化等オンライン化推進事業基金というのがあって、六十億あったそうでありますけれども、途中から取崩し型になって、仕分によって、まあお金が余っているということだったのかもしれませんが、国庫納付されたということでありますけれども、今回そういう意味ではこういうものを復活をして中小事業のいろんな負担増に対応していくということもお考えになった方がいいんじゃないでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) 事前に御通告いただいておりませんでしたので制度の詳細承知しておりませんけれども、記帳を適正化していくために指導をしっかりする、相談に乗るということは非常に重要なことなので、そのための予算措置が必要であるということであれば、そういったことも今回消費税を引上げするに当たって検討しなければいけない項目の一つであるというふうに思っております。

○西田実仁君 この軽減税率の話はこれで最後ですけれども、この軽減税率は三党で合意されて検討するということになったわけですね。元々軽減税率は対象ではありませんでした。したがって、政府内にも簡素な給付措置、また給付付き税額控除、これの検討チームというのは、岡田副総理の下に関係五大臣会合というのがあって、そこでそれぞれ検討されてきたんだろうと思います。
しかし、ここで三党合意があって、軽減税率ももう、すぐ八%の段階でどうするかを検討しなきゃいけないわけでありますので、是非政府内にもこうした軽減税率そのものを検討する、有識者なり、議員も入るのかもしれませんが、そのチームをつくって、早急に、そしてこの三党合意による法案修正に対する誠実な対応をお願いしたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岡田克也君) まず、今日はいろいろな御指摘いただき、ありがとうございました。
まず、政府の中で、今まで議論してきた経緯もありますので、まず私の下で、関係各省集まってその軽減税率の問題も含めてしっかりと議論をしたいというふうに思います。三党での議論も踏まえつつ、最終的にこれ急がなければなりませんので、しっかり議論を進めていきたい、そのための組織をしっかりと、今ありますけれども、更に強化して立ち上げたいというふうに考えております。

○西田実仁君 ありがとうございます。
残った時間は中小企業のこの転嫁問題についてお聞きしたいと思います。
今日、委員会でも幾つか御指摘がございました。私のところにも、とにかく消費税の一番の問題は立場の弱い中小零細企業が増税分を上乗せできないことだと。そんなことはない、ちゃんと乗せて請求すればいいじゃないかと思うでしょうけれども、現実は違うんですと、増税分の値引きを要求されることが多いというメール、あるいは、デフレ下で売上単価が下がっていく中で値引きを要求されるんだと、請求書上では消費税は転嫁できていても、その分も含めて単価が引き下げられていると、こんな声も数多く寄せられているわけで、ここで総理に是非、この中小事業者が消費税の引上げ分を自らかぶらないように、政府の一部の行政組織だけではなくて、政府挙げてこの転嫁ということがきちんとできるように取り組むという宣言をしていただきたいと思いますけれども。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) やっぱり中小零細企業の皆様がこの転嫁の問題に大変高い関心を持っていらっしゃること、これは重く受け止めなければいけないというふうに思いますし、あの三党合意をする際にも、やっぱりこの議論はしっかり行われたというふうに思います。消費税を引き上げたとき、あるいは前回の引上げ時以上にしっかりとした転嫁対策をやらなければいけないと思います。
今、政府を挙げてやれということでございましたが、政府を挙げて取り組んでいきたいと思います。

○西田実仁君 是非よろしくお願いしたいと思います。
しかし、転嫁がなかなかできない消費税の構造的な問題が私は法的にもあるんではないかというふうに懸念を持っております。
消費税法というのがもちろんあるわけですけれども、消費税法によれば、納税義務者というのは事業者であるということが第五条第一項で定めてあるんですけれども、最終的に消費者が負担する税制であるということは消費税法にはどこにも書かれていないんですね。かつて税制改革法、まあ消費税を導入する際にございまして、今もありますけれども、この消費税を導入する前にプログラム法として成立した税制改革法、この第十一条には「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁するものとする。」というふうには書いてありますけれども、消費税法そのものには納税義務者たる事業者ということは書かれているんですが、消費者が負担を最終的にはするんだということがどこにも書かれていない。
かつて東京地裁の消費税をめぐる裁判でも、事業者の徴収義務あるいは消費者の納税義務の法的曖昧さが指摘されているんです。それゆえ、財務省は消費税について常に預り金的な性格という言い方しかしないんですよ。預り金と言わないんですよ。預り金的な性格というふうに言っていて、実際、裁判では、消費税は預り金ではなく物価の一部であるとして、転嫁できようができまいが事業者には納税義務があるんだ、こういう立場を主張されておったわけでございます。
ここで、じゃ消費税法を変えるというのはなかなかもう難しいわけでありまして、是非総理に国会答弁として明確化していただきたいんですけれども、消費税というのは一体誰が負担する税制なのか。法的な曖昧さによって中小事業者へのしわ寄せを起こさないように、消費税はあくまで消費者が負担するものである、最終的に、そういうふうに総理からきちんと明確に答弁をいただきたいと思います。

○内閣総理大臣(野田佳彦君) 消費税は最終的には消費者が負担をすると、そういう位置付けでございます。

○西田実仁君 ありがとうございます。
また、今回の一体改革によりまして地元の中小事業者から幾つかの声が寄せられている、ちょっと細かい話で恐縮ですけれども。例えば消費税額が六十万円以下でも任意で中間申告ができるというふうになるわけですけれども、今後、要するに、どうしても、預り金的性格、まあ預り金なんですけどね、本当は。しかし、資金繰りとかがあってなかなか納税するまでにお金がなくなってしまうというような実務的な問題をよく指摘されます。
そこで、今後、毎月納税をする、まあ任意ですけどね、もちろん。今四千八百万円超の消費税納税者にはそういう制度がございますけれども、消費税額を納める額が少ない方も、自らの資金繰りをうまくやっていくために、こういう、任意で、希望すれば毎月納税ができるような仕組みも今後検討すべきではないかと思いますけれども、財務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(安住淳君) 御指摘のように、中小事業者の皆さんの中間申告の回数なんですが、私どもとしましても、八%に上がるときの状況、そこまでの間にいろいろ調べさせていただいて、お話も聞かせていただいて、中間申告が義務付けられている事業者の皆さんの申告納税の、今先生御指摘がありましたが、回数、どういうふうに考えるか。それから、これ、事業者の皆さんにとってどれぐらいの本当に利便性があるのか。まあ月一回という御指摘もありましたけれども、私どもとしては、今の先生のお話も踏まえて真剣に検討して、二十六年の四月の段階までにしっかりとした対策を取りたいと思います。

○西田実仁君 この消費税の予定納税を支払えないときにも延滞金という名の利子が発生をしまして、四か月もたつと一四・六%というふうになるわけであります。以前はもっと高利でありました。昭和三十七年にこの延滞利子税の、一四・六%まで引き下げられたわけでありますけど、それから五十年がたちました。私自身も平成二十一年三月の本会議で質問をさせていただきましたけれども、これから年末の税制改正に向けてこの延滞税の、余りにも高過ぎるんじゃないかという指摘が昔からありますよね。昭和三十七年に下げたときも、その理由は金利水準の低下という、全般的な金利が当時下がったからということなんですね。
ですから、今の状況からいたしますと、やっぱりこれは高過ぎるんじゃないかという声はたくさん事業者からも寄せられています。慎重に検討しなきゃいけないことかもしれません。還付のときには同じように出ているのもよく分かりますけれども、これから年末の税制改正でこの引下げを議論すべきではないかと思いますけれども、財務大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(安住淳君) 御指摘のとおり、一四・六%とされる一方で、納期限から二か月以内、また納税猶予等緩和措置が適用された場合には四・三%の軽減された利率が適用されており、また、災害、病気等については延滞税は免除をされているということもあります。
しかし、今先生御指摘のような御主張もありますので、実は三月三十日の閣議決定におきましては、この延滞税の利率を含めた負担の見直しについては、税の確実な収納を勘案しつつ、低金利下における、つまり今の現状ですね、の利率の在り方について、事業者の負担等を考慮し、二十五年度税制改正時に成案を得るとしておりますので、二五改正において具体的に現状を改めて成案を得られるよう検討してまいる所存であります。

○西田実仁君 最後に、税から離れまして、財政の話ですが、今アメリカでは、バーナンキFRB議長が財政の崖という話をよくされております。つまり、来年になるとアメリカは、増税がまた戻る、減税が終わる、ブッシュ減税が終わるとか、あるいは、財政も削減法というのが働き始めまして、財政を削減しなきゃいけないという、これを財政の崖という言い方をしますけれども、日本にも財政の崖があるんじゃないかというふうに私は思っております。
それは、その当初予算が昨年の決算から比べますと十六兆ぐらい、補正がなければですけれども、少なくなる。また、当然消費税というのがこれから出てくるという、この日本の財政の崖ということについてもよく認識しなきゃいけないんじゃないかというように思っておるわけであります。
こうしたアメリカでも意識されている財政の崖、日本の財政の崖ということも認識をして、目先の補正とかいうことだけではなくて、例えば防災・減災ニューディールのように、長期的なプロジェクトを実施することも検討すべきではないかというふうに思いますけれども、安住大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(安住淳君) アメリカは、私も直接、財政の壁の問題については、ガイトナー長官からロスカボスでもお話をお聞きしました。実質的に、そのまま法改正等が、議会がねじれで改正ができなければ、例えば減税措置等が終わってしまうと。それから、予算管理法に基づく自動的な歳出削減措置の開始等に伴って、これが大変、二〇一三年までに簡単にはいかなくなってしまうと、スタートが。非常に深刻な事態になりかねないということでございました。
今、大統領選挙が終わってからアメリカもいろんな知恵を出してこれは克服してくれるものだと信じておりますけれども、私どもの国においても、先生の御趣旨は、やはり景気を下振れさせて不景気になった段階で増税をした場合は国民生活への影響が非常に大きいのではないかと、ですからやはり全ての指標を上向きにするような状況で環境をしっかり整えていくべきだという御主張だと思いますので、財政、金融、様々な面で私たちとしてはそうした措置をしっかりとって対応していきたいと思っております。

○西田実仁君 最後に今の円高についてもお聞きしたかったんですが、時間ですので私の意見だけ言って終わりたいと思いますけれども、既に財務大臣は、アジアで、日中韓の財務大臣の会合で、それぞれの国債を購入するということを約束し合っていると思うんです。今、明らかにウォンに対しても人民元に対しても円は割高になっているわけでありまして、これをやっぱり解決するには国債を購入するということが大事だと思います。

○委員長(高橋千秋君) おまとめください。

○西田実仁君 はい、まとめます。
そのためには、購入をするということを決めたわけですけれども、実際、統計を見ると増えていないんですよ。ですから、是非そこをこれから増やしていただきたいということを要望して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。