213-参-予算委員会-004号 2024年03月05日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。おはようございます。
 自民党のいわゆる派閥によるパーティーにおきまして、政治資金収支、政治資金規正法違反のこの収支の不記載というこの問題。自分たちでルールを作りながらそれを守らないと、これはもう大変にルーズであり、またゆゆしき問題であるとともに、傲慢のそしりを免れることはできません。
 折しも、今、確定申告が始まっておりますけれども、そういう中で、国民の皆様に大変な御苦労をお掛けしている中でのあってはならない問題であるというふうに思います。国民の怒りというのは山をも動かす。政治を変えてくるその力の源泉は常に民衆にあることを我々はゆめゆめ忘れてはなりません。
 その信頼を取り戻すには、まず疑惑を持たれている議員がしっかりときちんと説明をする。この参議院におきましても、近々政治倫理審査会においてしかるべき説明がなされなければなりません。加えて、やはり党としてのけじめをしっかり付ける。さらに、再発防止をするための法改正、政治資金規正法等の法改正を行うと。この三点セットをきちんとやり抜かなければ、とても信頼を取り戻すことはできません。その腹を据えて総理がそれをやり切る決意があるか、まずそれをお聞きしたいと思います。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、委員おっしゃるように、今回、自民党の政治資金をめぐる問題で国民の皆様に政治に対するこの大きな不信を招いてしまったこと、このことを深刻に受け止め、改めて自民党総裁としておわびを申し上げなければならないと考えております。
 その上で、今御指摘がありました、三点セットとおっしゃいましたが、まずは、この国民の皆様の信頼回復のためには、この事実がどうであったのか、この説明責任を果たすとともに、このあるべき政治責任について明確化する、そしてあわせて再発防止に努めなければならない、この三つを徹底的に行うことが求められていると認識をしております。
 説明ということについても、今、参議院においても政倫審のこの手続等が今進められているわけでありますが、関係者においては、明確な説明責任を、それぞれの置かれた立場をよく省みてこの責任を果たす、丁寧に説明しなければならないと思っておりますし、また、政治責任、道義責任ということにつきましても、実態を把握した上で、また本人の説明責任の尽くし方もしっかり踏まえた上で党としてこの判断をしなければならない、処分等の政治責任についても判断していく所存であります。
 そしてあわせて、法改正を通じて再発防止に努めなければならないという点につきましても、政治資金規正法の改正等を通じて、まずは、今回のこの件を振り返る中で、会計責任者のみならず政治家本人の責任の厳格化を明らかにする。また、外部の目を入れるということで外部監査の導入等を考える。さらには、資金の透明化ということで、デジタル化を進める中でこの透明化の向上を図っていく。これらを法改正という形で、この今国会において法改正を実現する。こういった方針については、自民党としても今党内のワーキンググループに指示を行い、検討作業を進めている、こういったことであります。
 御指摘の三点セット、自民党としても重く受け止め、取組を進めてまいります。

○西田実仁君 公明党の政治改革ビジョン、既に一月十八日に出させていただきましたが、政治資金規正法の改正として、透明性の強化と罰則の強化、今幾つか具体的な御指摘もありました、そうした改正案を出しておりますが、これに加えまして、政治資金を監督する第三者機関の設置を提言をしております。
 これは、政治資金規正法の改正をこれまでも幾度か繰り返してきたわけですが、結局は今回のような問題が起きております。法改正とこの抜け穴のイタチごっこ、これを脱し、その場しのぎではない抜本的な再発防止の最終解決策として、この議院、ハウスから独立した第三者機関による政治資金の監査が必要ではないかという問題意識による提言であります。
 政治改革というのは政治家が自らの手を縛るような改革であり、自浄作用が働きにくいと言われている。そこでアメリカでは、ウォーターゲート事件等を契機に、アメリカ連邦選挙委員会、FECというそうですが、これを設置し、議会から独立した行政機関として政治資金収支報告の公開や法令遵守の確保等を担っております。その背景にある考え方は、このFECを通して政治資金の公開を徹底するとともに、故意犯、悪質な場合は刑事事件として立件し司法省に付託、しかし、政治資金の規制違反は原則民事罰による処分を行っております。その目的は、懲罰というよりも法令遵守に重きを置いているのが特徴であります。
 深刻な政治不信をもたらしたこの度の政治資金問題を契機に、当面の政治資金規正法の改正はきちんと成案を得た上で、最終的な再発防止策として、単なる外部監査を超えて、議会から独立した第三者による政治資金の監督機関、例えば日本版FECのようなものを設置することを真剣に検討するときではないでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 委員の御指摘は、先ほど私からも申し上げました再発防止策の中で、外部の目を入れることが重要だという問題意識に基づいてのその御提案であったと理解をいたします。先ほど申し上げましたように、外部の目を入れるということ、これは今回の案件を振り返りましても重要な点であると考え、法改正を伴う形で行うということを考えるべきだと思います。
 問題は、その外部の目の入れ方であります。委員はアメリカの例を挙げられまして、このFEC、アメリカ連邦選挙委員会、この例を挙げられました。FECについては、この実質的な調査権を有する組織であるということであります。それだけ権限が強いということになるのかと思いますが、その一方で、日本の体制は、総務省及び都道府県の選挙管理委員会においてこの実態を把握するという形になっている。要はこの形式審査という形であり、実質的な調査権はないということになっています。
 この違いでありますが、要は、その民主主義の政治の中で重要な役割を担う政党が、その国家、行政とどの程度の距離感を置くべきなのか、こういった議論の結果であると認識をしています。要は、この政党活動に行政すなわち国家権力がどれだけ介入すること、この内容を把握すること、これが民主主義にとってふさわしいのか、こういった議論の積み重ねの結果、今日の状況に至っている、こういったことであると思います。
 ですから、この外部の目を入れる、このことは重要だと思いますが、その際にどんな仕掛けにするのかということについては、今言った点も踏まえて、どのような権限を、新しい組織をつくるんであったならばどのような権限を与えるのか、どのようなその組織にするのか、こういった点を議論していくことも必要になってくるのではないかと思います。
 いずれにせよ、外部の目を入れるという点において議論を深めていきたいと考えます。

○西田実仁君 次に、能登半島地震への対応についてお聞きしたいと思います。
 犠牲になられた全ての方々に心からのお悔やみを申し上げます。また、お見舞いを申し上げたいと思います。
 先般、DWAT、災害派遣福祉チームの皆さんが活躍されております金沢市内の一・五次避難所を訪問いたしました。
 この一・五次避難所は、本来は一次避難所である体育館等から二次避難所に移るまでの一時的な滞在場所とされているわけでありますが、二次避難先とのマッチングが思うように進まず、この一・五次避難所に長期滞在する高齢者の方も増えていると伺いました。この滞在期間中、いわゆる生活不活発症等によりまして、介護度が上がったり、新たに介護申請する人も少なくありません。
 この一・五次避難所における要介護認定の取扱いにつきましては、まず、避難してこられた方が要介護認定を受けているかどうかを確認し、応援に入っているケアマネジャーの方が限られた人数の中で一次判定のための調査を行う。その後、一・五次避難所の診療所医師が主治医の意見書を作成し、さらに金沢市内の認定審査会で二次判定を行うという作業フローであります。この一連の流れで時間を要して、さらにそこから一・五次避難所から先の介護サービス利用の調整に手間取るため、一・五次避難所での長期滞留傾向になっていると。
 東日本大震災の際にも似たような状況が多発したため、福島県におきましては、主治医の意見書を省き、一次判定結果で本判定とする運用がなされたと伺います。これによりまして、早ければ、午前中に調査し、翌日から介護サービスを受けられるというスピード感のある支援が可能になったと。
 御高齢の方がとりわけ多く、避難生活が長引く中、一・五次避難所が介護施設化しつつあります。厚労省では、要介護認定事務を簡略化し、暫定ケアプランによるサービス提供を可能とする通知を発出いただいておりますが、現地では浸透しておりません。東日本大震災の際に福島方式のように、主治医意見書を省き、一次判定で本判定とする暫定ケアプランによるサービス提供を強く促してもらいたいと思いますが、厚労大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(武見敬三君) この令和六年能登半島地震の被災者の方々に対して必要な介護保険サービスが提供されるように、迅速な要介護認定やサービスの決定が行われることはもう極めて重要だと認識をしております。
 このために、通常の要介護認定を行えない場合も暫定ケアプランを用いたサービス提供が可能であることや、暫定ケアプランに基づくサービスも保険給付の対象となることなどについて周知を行うとともに、居宅介護支援事業者が暫定ケアプランを作成する際の参考となるよう、避難先の自治体の協力を得ながら速やかな認定調査や一次判定の実施等に取り組んでおりまして、厚生労働省としては、現地に職員を派遣するなど、自治体伴走支援を行いながら対応をしてまいりたいと考えております。

○西田実仁君 一・五次避難所には全国から多くの介護福祉専門職が応援派遣されておられます。当初は毎日約九十名の介護職員が活動しておりましたが、二月末の時点では半数以下の確保にとどまっており、三月はより一層人員体制が厳しくなる見込みと聞いております。
 各団体等を経由して応援派遣の協力を要請しておりますが、一・五次避難所の仮眠スペースで寝泊まりしながら日々十二時間勤務をこなす現状は改善されておらず、食事や移動手段も自己完結で支援はなく、負荷が大きいこともあり、個々のモチベーションに専ら頼る現状を続けていくことに不安を感じている方もおられます。介護現場はいずれの事業所でも常にぎりぎりの体制で運営しており、その中から被災地への応援派遣職員を捻出していることから、職員の長期派遣は派遣元への負担も大きい。
 一・五次避難所において引き続きの支援を必要とするのであれば、現行の仕組みに加えて、抜本的な人材投入のためのバックアップ等、何らかのてこ入れにより専門職の応援派遣を確保していくべきではないでしょうか。総理にお伺いいたします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 一・五次避難所等における介護ニーズに対応してその運営体制を支援していくために、関係団体や社会福祉施設の皆様と連携して介護職員等の応援派遣を進めているところですが、その際に、この介護職員等の応援派遣を行う派遣元施設に対しては、この被災地に職員を派遣したことで人員基準を満たすことができなくなった場合、こうした際には柔軟な取扱いを認めるなどの措置を講じております。また、福祉避難所へのこの派遣職員の人件費、旅費、宿泊費等については、災害救助費の対象として費用を支出する、このようにしております。
 そして、引き続き介護職員等の応援派遣を継続して実施していくこと、これは必要であると考えております。ですから、この関係者や県とも連携しながら、必要な、今申し上げましたこの経済的な支援等も含めて、必要な対応、これを行ってまいりたいと考えております。

○西田実仁君 是非ともお願いをいたします。
 次に、大規模災害におきます要救助者、安否不明者の捜索救助活動についてお伺いしたいと思います。
 今回の能登半島地震でも、安否不明者の氏名や住所が公表されるたびに、多くの国民が祈る思いで、警察や消防、自衛隊の皆様の懸命な救助捜索活動を見守っておられました。
 そんな中、図で御覧いただくように、(資料提示)NTTドコモにおきましては、発災直後、総務省に安否不明者の位置情報検索を提案し、その後、消防庁から、この救助機関に当たりますが、消防庁から位置情報検索の要請が携帯電話事業者、NTTドコモにあり、石川県が一月三日夜に公表した安否不明者の氏名や住所を手掛かりに携帯電話番号を確認し、ドコモネットワーク上の位置情報を取得し、得られた携帯電話番号と位置情報、②ですけれども、これを③回答をしたということでございます。これによりまして、対象者数六百九十件のうち携帯電話二百十五件を提供し、位置情報は六十八件提供、被災者の迅速な安否確認や人命救助活動に貢献しておられます。
 今後、こうした大規模災害が起きないことを願うばかりですが、万が一同様の災害が起きたときに要救助者や安否不明者をできるだけ早期に発見するために、位置情報の検索については検討すべき課題も明らかになりました。電気通信事業法第四条には、通信の秘密は侵してはならないと、秘密の保護が厳格に定められており、その取扱いには一定の法的整理が欠かせません。
 電気通信事業における個人情報等の保護に関するガイドラインによりますと、位置情報検索を要請できるのは、この救助機関、すなわち警察、海上保安庁、また消防その他これに準ずる機関のみとなっております。だから、今回の能登半島地震でも明らかになりましたように、石川県からの安否不明者の氏名、住所の公表により携帯電話番号の確認や位置情報の検索が可能になったことから、自治体と救助機関が連携すれば、これまで以上に被災者の迅速な安否確認や人命救助活動に貢献できます。
 ガイドラインのこれに準ずる機関に自治体の危機管理部署などを含めて、自治体との情報連携がより円滑に進むよう、ガイドラインの見直し等も含めて検討すべきではないでしょうか。

○国務大臣(松本剛明君) 委員御指摘のとおり、総務省では、通信の秘密、個人情報保護に配慮しつつ、一人でも多くの人命救助ができるよう御指摘のガイドラインをお示し申し上げてきたところでございまして、今回の能登半島地震でも、消防庁から、今もお話ございましたが、携帯電話事業者に向けて石川県が公開した安否不明者のリストを示し、該当者の位置情報の提供を要請し、得られた回答を石川県災害対策本部と共有をいたしました。これによりまして、リストに掲載されていた安否不明者の方が金沢市内の病院にいることが分かるなど、要救助者の絞り込みに役立つことがございました。
 総務省としては、今回の地震対応、通信に関しても振り返りをすべく、事業者の皆さんとお話をさせていただいているところですが、今お話をいただいた件につきましては、救助機関の要請に基づく位置情報の取得に係る実務者の検討会を始めたところでございまして、ガイドラインのこれに準ずる機関に自治体の災害対策本部を含めることなども含め、位置情報を人命救助に更に活用する観点からしっかり議論し、現場がちゅうちょしないようにしっかり見直しを行いたいと考えております。

○西田実仁君 安否不明者の位置情報を検索する際、端末が圏外にある場合、また水とかに入ってしまって電源が切れてしまった場合には、技術的に位置情報の検索はできません。ただ、こうした場合でも、最後にどこで通信を行ったかという過去取得済基地局情報が活用できれば、どの辺りにおいて安否不明になったのかの大きな手掛かりとなります。
 しかし、通信の秘密を侵してはならないという電気通信事業法があり、この情報の活用には事業者も二の足を踏みます。活用に向けて、制度、技術的課題の検討が必要ではないでしょうか。

○国務大臣(松本剛明君) 言わば生きている携帯端末の位置情報の活用については先ほど申し上げたとおりでございますが、端末に電波が届かなかったり電源が入っていない場合については、御指摘のとおり、過去に取得した基地局の情報の活用が課題となります。要請を受けた時点での位置情報の取扱いとは異なるところがございますので、そういった観点から技術的に、制度的に検討が必要でございます。
 現在のガイドラインでは、通信の秘密、個人情報保護に配慮しつつ人命救助が最優先という基本的考え方を取っておりますので、過去に取得した基地局情報の提供についても、先ほど申し上げました実務者協議の場で検討を進めて、現場が対応にちゅうちょすることがないよう、必要な整理、見直しを行ってまいります。

○西田実仁君 次に、防衛装備品の海外移転についてお伺いいたします。
 これまで日本は、武器輸出三原則に代表されるように、武器の輸出については極めて慎重に対処するのを旨としてきました。今回のウクライナへの支援に典型なように、殺傷能力のない防衛装備品や民生品を提供し、避難民を受け入れるなど、日本だからこそできる外交を強みにしてまいりました。この日本のありようは、これまで国民にも広く浸透してきたのではないでしょうか。
 ただ、日本を取り巻く安全保障の環境が厳しくなる中、個別の必要に応じて例外的に防衛装備品の輸出を認めるようになり、それらを包括的に整理して防衛装備移転三原則を定めました。
 そして、昨年末、政府はこの防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、殺傷能力を持った武器についても限定的に輸出できるようになりました。すなわち、地対空ミサイル、パトリオットなど、日本を守るため日本企業が許可を得て生産した武器をライセンス元国に輸出可能としたほか、救助、輸送、警戒、監視、掃海の五類型について、掃海艇の機関砲など一定の殺傷能力を持った武器を搭載しての輸出も認めました。
 今回、次期戦闘機という、言わば最先端の殺傷能力を持つ兵器の完成品を、共同開発をするイギリスやイタリア以外の第三国に輸出することができるようにするかどうかが問われております。
 昨年から今年にかけての世論調査では、次期戦闘機など他国と共同開発した防衛装備品の第三国輸出に反対及び慎重との回答が過半から約八割を占めております。国民の多くは、一たび戦闘機などの防衛装備品の第三国輸出を認めれば歯止めがなくなり、これまで培ってきた平和国家の信頼を損なうのではないかと懸念しております。
 そこで、NHKの中継が入ったこの予算委員会の場をお借りして、なぜ今、次期戦闘機の第三国への輸出が必要だと考えるのか、総理は自らの言葉で国民に説明をする必要があります。そもそも、なぜ次期戦闘機が必要なのか、我が国の地理的環境を踏まえて、その必要性について分かりやすく説明すべきであります。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 今の御質問に対しまして、まず、四面海に囲まれた島国である我が国に対する侵略、これ発生するとしたならば、これは必ず空又は海を経由して行われるものです。そのため、専守防衛を旨とする我が国が安全を確保するためには、この航空機や巡航ミサイルによる空からの攻撃や艦艇による海からの攻撃をできる限り洋上そして遠方で阻止することが必要となります。
 戦闘機は、これらの防衛、防御的任務を遂行するための中核的装備品として整備そして運用されてきました。戦闘機による防衛能力が徐々に失われたこの第二次世界大戦において、国土全域において甚大な被害が発生してしまった。こういったことからも分かるように、戦闘機は我が国の平和と安定に不可欠な装備品であると認識をしています。
 戦闘機同士の戦いの帰趨は技術の進展などにより大きく変化しており、世代が違う戦闘機間では、新世代機、これが圧倒的に優位であると言われています。例えば、相手から見えにくくするためのステルス能力や高精度のセンサーに優れる第五世代機のF22は、旧世代機に対して百八対ゼロの撃墜率を記録したと言われています。
 このように、第五世代機、これは我が国の周辺国でも開発や配備が進められています。我が国は、F35、F15、そしてF2の三機種の戦闘機を保有しており、現在F35の増勢及びF15の能力向上を行っているところですが、F2については、現役あるいは減勢が始まる、失礼、退役、減勢が始まる二〇三五年頃からその後継となる次期戦闘機の導入を開始する必要があります。特に、次期戦闘機は、先ほど述べた攻撃をできる限り洋上、遠方で阻止することができる優れた対空、空対空能力を有している、このことが重要となります。
 周辺国が新世代機の開発や配備を進めている中で、将来にわたって我が国の平和と安定を確保するために我が国自身としてそれらの戦闘機を超える最新鋭の次期戦闘機を開発すること、これが不可欠であると認識をしております。

○西田実仁君 島国である日本を守るために次期戦闘機が必要であるとの御説明でありましたが、それではなぜ国際共同開発を行う必要があるのか。共同開発ではなく純国産であれば、技術を温存するため、進んで戦闘機を輸出するようなことにはならないのではないでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 現在、防衛装備品の高度化あるいは高額化、これが進んでいます。開発のコストやリスクが増大する中にあって、戦闘機を含め優秀な装備品を取得するためには、一国のみならずパートナー国と協力して資金や技術をそれぞれが提供していく、供与して開発していく、こうした方式が今国際的に取られています。
 また、米国も、昨年一月に策定した国家防衛産業戦略において、グローバルサプライチェーンの課題やウクライナ対応の教訓を踏まえ、同志国との共同生産を重視する方針を明らかにしています。
 このように、国際共同開発そして生産が主流化する中で、我が国において次期戦闘機の開発を進めるに当たって、我が国の独自開発や米国との共同開発などの可能性、これについても当然、十分検討は行いました。その結果、要求性能の実現可能性、スケジュール、コスト等の様々な観点から、我が国の独自開発ではなく、英国そしてイタリアとの国際共同開発が最適な選択肢であると判断をし、三か国の技術を結集して、リスク、コストを分担しながら優れた次期戦闘機を開発することを判断した次第であります。

○西田実仁君 一昨年末、安保三文書の閣議決定で国際共同開発を政府・与党で決めたときには、日本の完成品は第三国に輸出しない前提になっていたはずであります。その後、なぜ方針を変える必要があると考えるに至ったのか、国民には伝わっておりません。
 政府の説明では、日本が第三国に完成品を輸出できないと交渉上不利になると言いますが、日本は技術や資金の面で相当の貢献ができるからこそ、完成品の輸出は前提とせず、一昨年末の共同開発が決まったのではないでしょうか。
 なぜ日本の完成品が第三国に輸出できないと共同開発の交渉上不利になるのか、我が国防衛にとってどのような不都合が生じてくるのか、総理にお伺いいたします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 済みません、まず、先ほどの答弁の中で、米国の国家防衛産業戦略、昨年の一月と答弁したようですが、実際は本年一月でありました。訂正をいたします。
 その上で、今の御質問に対してのお答えですが、国際共同開発の協議は、各国が置かれている安全保障環境に応じて必要となる性能について議論を重ねつつ、共通の機体を造り上げていく、こうしたプロセスです。具体的には、機体のサイズやコストに制約があり、各国全ての要求性能が実現できない中、各国が同等の貢献を行うことを前提に自国が優先する性能の搭載を主張し合う、こういったプロセスでもあります。
 先ほど答弁したとおり、我が国は次期戦闘機の開発において空対空能力を重視しています。具体的には、レーダーやカメラ等を通じて脅威の状況を把握するセンシング技術や相手から見えにくくするためのステルス性能、敵味方の位置情報等を通信で共有して組織的な戦闘を行うネットワーク戦闘、こういった面で高い能力に加えて、航続距離等も重視することとなります。
 二〇二二年末に三文書を閣議決定した当時は、我が国は、技術面や資金面で十分な貢献をすることによって我が国の要求を通し、我が国が求める戦闘機を実現することが可能であると考えていました。しかしながら、協議を進める中で、英国、イタリア、英伊は調達価格の低下等に向けて完成品の第三国移転を推進することを貢献の重要な要素と考え、我が国にも同等の、同様の対応を求めている、こういったことが明らかとなりました。
 こうした中で、要求性能を実現するためには、輸出等による価格低減努力を含めて十分な貢献を行う必要があります。逆に、我が国から第三国への直接移転を行う仕組みが存在しなければ、我が国は価格低減の努力を行わないことになり、そのような我が国が優先する性能を実現するために英伊が自ら求める性能を断念することは想定されず、我が国が求める戦闘機の実現、これが困難となります。
 したがって、我が国の安全保障環境にふさわしい戦闘機を実現し、我が国防衛に支障を来さないようにするため、直接移転を行い得る仕組みを持ち、英伊と同等に貢献し得る立場を確保することが我が国の国益であると考えた次第であります。
 また、国際共同開発・生産による完成品である次期戦闘機において、我が国が直接移転を行い得る仕組みを持たないこととなれば、我が国は国際共同開発・生産のパートナー国としてふさわしくないと国際的に認識をされてしまうことにもなります。今後、同盟国、同志国との国際共同開発・生産への参加が困難となれば、我が国が求める性能を有する装備品の取得、維持が困難となり、我が国の防衛に支障を来すことになる、このように考えた次第であります。
 こういったことから、この英伊との共同開発交渉を進める上で、この三国移転の、第三国への移転の重要性を認識した次第であります。

○西田実仁君 次期戦闘機という最も殺傷能力の高い防衛装備品の第三国輸出できるようになれば、それが前例となり、いかなる殺傷能力を持った武器も輸出できるようになるのではないか、にわかな政策変更はこれまで日本が培ってきた平和国家としての信頼を損なうことになるのではないか、そうした懸念の下、次期戦闘機の第三国への完成品輸出を一般的に認めたら、原則として殺傷能力を持たない防衛装備品の輸出を認める救難、輸送、警戒、監視、掃海の五類型による制約などは意味を成さなくなるのではないでしょうか。総理にお聞きします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 先ほども答弁したとおり、次期戦闘機に係る国際共同開発・生産においては、我が国が重視する性能を持った戦闘機を確保するために我が国からの第三国移転が必要であると考えております。
 他方で、我が国の技術や資金のみで開発、生産できる国産装備品を基本とするいわゆる五類型に該当する防衛装備品移転については、このようなパートナー国との要求性能について調整するプロセスが存在せず、これはおのずと性格が異なるものであると認識をいたします。
 その上で、五類型の類型見直しの在り方については、昨年末に取りまとめられた与党ワーキングチームにおける提言においても別途議論を継続することとしており、見直しの必要性について別途確認した上で検討を進めていきたいと考えております。

○西田実仁君 次期戦闘機の輸出先で仮に隣国同士の紛争に用いられることになれば、紛争を助長するとともに、地域の安定を失い、日本を取り巻く安全保障の環境はかえって損なわれるおそれがあるのではないか、その国の政権が替われば適正管理など不可能となるかもしれない等々、疑問や懸念は残ります。
 次期戦闘機の第三国輸出は、これまでの方針を大きく変更することであり、十分な説明と丁寧な議論による国民の理解が欠かせません。引き続き議論が必要だと思います。
 次に、中小企業の賃上げ等についてお伺いいたします。
 岸田政権では、持続的に賃上げが実現し、消費も経済も成長していく日本経済の姿を目指しておられます。問題は、より多くの雇用を支えている中小企業・小規模事業者においても大企業に負けないだけの賃上げを実現することです。
 中小企業、特に小規模事業者からは、円安でもうかった、価格転嫁が進んだという声は乏しく、残念ながら賃上げどころではないが、それでも従業員のために賃上げしてあげたいという切実なお声を聞くことが多いです。そういう経営者の頑張りを支えるためにも、今は国を挙げて、価格転嫁できるよう、そのための価格交渉に皆が踏み出せるように対策を徹底してもらいたいと思います。中小企業の経営者からは、価格交渉はできつつあるという声を聞くものの、もっと価格転嫁を進めてほしいという強い要望もいただいております。
 中小企業の価格転嫁の状況はどこまで改善しているのか、今、今年は特にどのような対策を講じていくのか、総理にお聞きします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 昨年十月から十二月にかけて実施されました中小企業庁の調査においては、価格交渉ができる雰囲気は醸成されつつあるが、コスト上昇分に対する価格転嫁率は五割未満であり、またその状況は業種ごとにばらつきがある、こういった結果であったと承知をしています。
 引き続き、千八百七十三の業界団体を通じた労務費の価格転嫁の方針の周知徹底やフォローアップ、また価格転嫁の状況改善が求められる社名の公表、また指導、助言、こうしたものを通じて、価格転嫁、これしっかり促進していきたいと考えています。

○西田実仁君 この下請法には、親事業者がしてはならない禁止事項の一つとして買いたたきの禁止がございます。しかし、現下のような急激な物価の上昇という経済環境において、買いたたきは論外でありますけれども、価格転嫁に向けた交渉をしない、あるいは価格を据え置くことも禁止とするような下請法の改正も検討すべきではないでしょうか。古谷公取委員長にお聞きします。

○政府特別補佐人(古谷一之君) 委員から御指摘がございました買いたたきの禁止でございますけれども、これ、通常支払われる対価に比べて著しい低い額を不当に定めてこれを下請事業者に押し付けるということは、下請事業者の利益を損ない、その経営を圧迫することにもなりますので、これを防止するため下請法で禁止をしているものでございます。
 これに関しまして、公正取引委員会は、コスト上昇分を明示的に協議することなく従来どおりに取引価格を据え置くことは独禁法の優越的地位の濫用や下請法の買いたたきにつながるおそれがあるということを明確にしまして、その周知啓発に努めております。その上で、問題ある事例について注意喚起を行ったり企業名を公表するなど従来にない取組を行いまして、独占禁止法や下請法に違反する行為の未然防止を図っております。
 また、昨年は、原材料価格が上昇する中で単価の引上げを求めた下請事業者に対して製造原価未満の単価を受け入れさせていた親事業者に対しまして、買いたたきであるというふうに認定をして、下請法違反だということで勧告を行わせていただきました。
 昨年十一月に公表しました労務費転嫁の指針では、最低賃金の上昇率や春季労使交渉の妥結額やその上昇率など、公表資料を用いて価格転嫁の交渉を行ってほしいということを求めておりまして、この指針に沿わない行為をすることに、する場合には独占禁止法や下請法上問題になるということを明らかにしております。こうした指針を踏まえますと、コスト上昇局面における価格の据置きにつきましては、買いたたきとか減額といった現行の下請法の禁止行為に該当する事例も少なくないというふうに考えております。
 したがいまして、公正取引委員会としましては、この指針の周知徹底を図りながら現行の枠組みの下で最大限の取組をまずは講じていくことが重要だと考えておりまして、引き続き下請法の積極的な執行を進めてまいりたいと思っております。
 その上ででございますが、価格転嫁円滑化のために更に必要な施策があれば、これ、取引慣行の実態や価格転嫁の状況も検証しながら、御指摘のような下請法の改正の要否を含めまして、公正取引委員会としても幅広く必要な検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

○西田実仁君 ところで、日本金型工業会では、下請という言葉の、言葉を自粛願いたいと表明しておられます。下請という言葉は上と下を意識させる、それが無意識のうちに差別意識を持つものだという御主張であります。
 確かに私自身も、中小企業の経営者からは、発注者とはお互い対等な立場で一緒に物を作り上げる意識を持って汗をかいているのに、下という言葉を聞くたびに嫌な思いをする、胸を張って自分は下請ですと言えるものではないという心の声を聞いております。
 今はまだ、下請法始め幾つかの法律には下請という言葉があるものですので、その使用はやむを得ないのかもしれませんが、下請という言葉を聞くたびにがっかりする声がたくさんあることも是非御認識をいただきたいと思います。
 パートナーシップ構築宣言など、親事業者といわゆる下請事業者の関係についてパートナーとして位置付けている現在、下請法の法律名を変えてもよいのではないかとさえ思いますが、総理はどう感じておられますでしょうか。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 下請法の名称を変えるべきであるという提案については、下請事業者の方々から今の名称のままでは下に見られるという指摘があることですとか、逆に下請事業者をパートナーと呼称する動き、これが現実に広がっている、こういった動きもあるということ、承知をしています。
 まさに、一定のこの資本金区分に基づき定める発注者と受注者の関係を、発注者が優位的、優越的地位にあるものとして外形的、画一的に取り扱い、保護される受注者の側を下請事業者と称してきた下請法の在り方そのものに関わる、こうした提案であると受け止めています。
 現行の枠組みの下で、価格転嫁対策の円滑化等に向けて政府としては最大限取組を続けてまいりますが、その上で、取引慣行の実態や価格転嫁の状況を検証しつつ、下請法改正の要否も含め幅広く検討を行ってまいりたいと考えます。

○西田実仁君 公明党は、昨年十月十三日に中小企業等の賃上げ応援トータルプランをまとめました。その進捗状況はパネルのとおりであります。例えば、労務費の価格転嫁のための指針の作成などは既に達成した施策、二重丸、これは二項目あります。達成が見えてきた項目、一重丸は八つ、進行中の項目、三角は十、おおむね確実に進捗をしております。その一つとして、項目十一では、金型の代金、保管料の支払、金型作成料の前払も含めた下請取引適正化に向けた施策の強化を提言しております。
 金型を使ってねじや針などの部品や素材を製造している小規模事業者からは、使った金型の保管料をいまだに払ってもらえないとか、あるいは検査を終えた検収後にしか代金を払ってもらえない等の苦情を聞きますが、政府はどのように対応しているのか、経産大臣にお聞きをいたします。

○国務大臣(齋藤健君) 御指摘の金型などの型は部品や素材の品質、生産性に影響する重要な役割を有しておりまして、その取引の適正化はサプライチェーン全体の強化にも資するということで重点的に取り組んできた分野であります。
 経済産業省といたしましては、これまで、型の保管費用が受注側の負担となっていること、それから型の製作代金の支払の遅れなどの課題につきまして基本的な考え方を示すとともに、適正な取引ルールを定着させるようその周知に取り組んできたところであります。経済産業省としては、金型工業会と協力しながら、金型取引ガイドラインの周知活動に努めているところであります。
 今後、素形材や自動車部品などの業界間の型管理の適正化に向けた対話ですとか、各業界が掲げる自主行動計画のフォローアップなどを通じて取組状況を確認をして、取引適正化を働きかけていく所存であります。
 また、昨年、公正取引委員会が、金型の無償保管を取引先に強要した事業者に対しまして初めて下請法に基づく勧告を実施し、その後も同様の勧告を行っていると承知をしております。これらを踏まえまして、昨年末には、公正取引委員会と連名で関係業界に対し改めて適正な対応を求める要請文を発出したところでございます。
 今後も、型をめぐる関係業界と協力をしながら、更なる改善、これに向けて取り組んでいく所存であります。

○西田実仁君 中小企業が大企業であることが多い発注者に対して自分だけで価格交渉を申し入れようとしても、よそに仕事を回されてしまうという心配が頭から離れず、なかなか言い出しにくい、あるいは本当に望む値段を言いにくいというのが実態であります。それでも、中小企業がまとまることができれば光が見えてきます。中小企業がまとまって一つの中小企業組合をつくり、発注者との間で受注価格も含めて団体協約を結べる制度が用意されております。しかし、この団体協約制度については余り知られておりません。
 この制度は現状でどのぐらい利用されているのか。また、この団体協約の制度について、例えば地方版政労使の場を活用するなどしてもっと周知をすべきではないでしょうか。総理にお伺いいたします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の団体協約ですが、中小企業等協同組合法に基づき組合が取引先の事業者と締結するものであり、独占禁止法の適用除外となることで、本来はカルテルとして認められない最低製品価格の設定など、これが可能となります。中小企業の価格交渉力の向上につながる、こうしたことが期待されます。
 昨年六月に全国約三万の組合のうち二千四百四十八組合を対象に行った調査では、回答のあった千五百八十四組合のうち団体協約を締結している組合は百八十六にとどまるなど、更なる周知が重要であると認識をいたします。
 現在、経産省において全国中小企業団体中央会と連携をし、各地域の組合への普及啓発、そして御指摘の地方版政労使会議での説明、こうしたことを進めております。引き続き周知にしっかり取り組んでまいりたいと考えます。

○西田実仁君 この団体協約制度を活用して損保会社との間で双方が納得できる工賃単価等の修理代金を取り決めようとしているのが、自動車の板金塗装の団体であります。
 昨年もこの自動車整備工場と損保会社との工賃単価等をめぐる価格交渉について取り上げましたが、その後、損保会社を所管する金融庁は、自動車整備工場に対して損保会社との間の修理代金の在り方について調査を行っておられます。この調査は初めてでありまして、高く評価したいと思います。それによりますと、保険会社との取引内容に納得していない工場が多いという結果が改めて浮き彫りとなりました。
 今回の画期的な調査結果を生かし、損保会社と車体工場との取引内容をお互い納得いくものにするためにも、金融庁においては、損保業界に対して、取引適正化ガイドラインの作成若しくは自主行動計画の作成を促すべきではないでしょうか。今回の調査結果に対する認識と今後の方針について、金融担当大臣にお聞きします。

○国務大臣(鈴木俊一君) 先生御指摘のとおりに、金融庁で実施をいたしましたアンケート調査におきまして、二〇二三年度に工賃単価の引上げが行われたものの、約七割の自動車整備工場からその金額に納得していないとの回答があったところです。
 金融庁では、今回の実態調査の結果を踏まえまして、各損害保険会社に対して、工賃単価の水準を決める際には自動車整備工場の納得感が得られるよう丁寧な説明、対応を徹底すること、工賃単価の改定に当たっては消費者物価指数のみならず人件費その他の変動等も考慮に入れるなど実態に合ったものとすることなどを要請したところであります。
 委員からは損保業界に対する働きかけの提案がございましたが、こうした工賃単価等の内容は民間事業者間の交渉により双方が納得できる適正な内容となることが重要であると考えております。金融庁としても、引き続き、各損害保険会社において重要なステークホルダーの一つである自動車整備工場との適切な連携、共存共栄を図る観点から実効的な取組が行われるよう、今後しっかりとこのフォローアップをして、それを踏まえて対応したいと思います。

○西田実仁君 しっかりとフォローアップをお願いしたいと思います。
 この中小企業への支援策というのは大変に網羅的で数多く用意されておりますが、逆に非常に把握しづらいという問題もあります。AIを活用した、例えばチャットボットのように、経営者のニーズに合わせた回答がすぐ出てくる、そういうような分かりやすい広報の仕組みを是非とも実現していただきたいと思いますが、経産大臣にお伺いをいたします。

○国務大臣(齋藤健君) 私どもも、中小企業の皆様に対して分かりやすく迅速に情報提供を行っていくにはどうしたらいいか、極めて重要な課題だと考えております。生成AIを含む新たな技術はそのための重要なツールではないかと考えておりまして、その積極的な活用を進めたいと考えています。
 具体的には、事業者の皆様からの質問に対し迅速に回答するため、生成AIによって回答の原案作成をできないか検討を行っているところであります。ただし、事業者の方々への回答が適切な内容であるか、実際に回答を発出する前に職員による再チェックをどこまで求めるかなどの課題も正直あるところであります。
 先生御指摘のAIチャットボットについても同様の課題があると思いますので、いつでも気軽に問合せができるといったメリットが大きいことから、どのような形であれば活用が可能か、しっかり検討していきたいと考えています。

○西田実仁君 実質無利子無担保の融資、いわゆるゼロゼロ融資の返済が本格化をしております。この四月にも民間ゼロゼロ融資の返済開始時期の次のピークが来ます。業績が思うように回復しない場合、休廃業、解散に追い込まれる中小企業も少なくありません。
 実際、ある地域において二十六店舗の飲食店を経営する社長さんから、営業を休んでくれたらお金は何とかするからと国からの強い要請に応えたが、そのコロナ融資の返済期限が来ている中、もうそれは忘れたふりをするのかという厳しい声も私の手元に届いております。
 昨年十一月には総合経済対策で、年度内に再生支援の総合的対策を関係省庁が連携して取りまとめるとしておりますが、まだ道半ばであります。コロナ借換え保証やセーフティーネット保証四号、さらには資本性劣後ローンのお申込期限とされる三月末は当然延長されるものと考えておりますが、総理のお考えをお聞きします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 御指摘の民間ゼロゼロ融資ですが、返済が本格化しており、運営改善、事業再生のニーズ、これが高まっています。民間ゼロゼロ融資の次の返済開始ピークである本年四月の資金繰りに万全を期す必要があること、また、日本公庫等のコロナ資本性劣後ローンは民間金融機関からの新規融資を受けやすくする効果が期待されることを踏まえた対応、これが重要であると認識をしています。
 こういった観点を踏まえて、再生支援のこの総合対策、これを年度内にまとめていく中で結論を出していきたいと考えています。

○西田実仁君 最後に、年収の壁・支援強化パッケージについてお聞きをいたします。
 パートで働く方が年収百六万円を超えると社会保険に新たに加入する必要があり、手取りの収入はかえって減ってしまう、いわゆる年収の壁について、それを乗り越えるための年収の壁・支援強化パッケージが昨年十月から始まりました。
 しかし残念ながら、その利用について必ずしも積極的でない事業所も目立ちます。後ろ向きの理由は、既に社会保険に加入しているパートさんとの不公平感であります。ただ、様々な工夫を凝らしてこの不公平感を克服する活用事例も出てきております。賃上げが本格化する中で、他社の動きを具体的に知り、制度の利用が得だと分かれば、検討していく企業はもっと増えるのではないでしょうか。
 そこで、厚労大臣に、年収の壁・支援強化パッケージに基づくキャリアアップ助成金の計画届受理件数及び取組予定労働者数の推移についてお伺いをいたします。

○国務大臣(武見敬三君) 年収の壁・支援強化パッケージの対応策の一つでございますキャリアアップ助成金、一月末時点で事業主から計画届の受理件数は三千七百四十九件、対前月比約二・二倍、それから、その対象となる労働者数は令和五年度から令和七年度の合計で十四万四千七百十四人、対前月比約五・三倍となっておりまして、対象となる労働者数などは、これは大幅に増加をしております。
 令和五年十月の制度創設からおおむね三か月弱経過して、この助成金の活用、私の方は着実に進んでいるというふうに理解をしております。

○西田実仁君 十二月末から比べると本当に大きく利用者が増えているということであります。
 しかし、この導入の最大の障害というふうに思っている事業者にとってのこの不公平感、これを少しでも解消するため、企業によっては、今回の助成金を活用し、新たに社会保険に加入するパートさんには手当を支給する一方、既に加入をされているパートさんにも企業が独自の手当を支給するようなケースもございます。その際、この企業独自の手当には賃上げ促進税制が活用できますので、あるシンクタンクの試算によれば、この助成金と税額控除とで、増えた人件費の四割相当負担軽減が可能になるという試算も出ております。
 今回のパッケージと賃上げ税制を併用することで企業の負担は一定程度減ることになることが見込まれます。こうした企業の負担軽減策を周知徹底することで同パッケージの導入を促してはどうでしょうか。総理の肝煎りで始まったこの年収の壁・支援強化パッケージの利用促進に向けた政府の取組を総理にお聞きします。

○内閣総理大臣(岸田文雄君) 年収の壁・支援強化パッケージにおいては、短時間労働者が新たに被用者保険の適用となる際に、手当の支給等により労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対して助成を行う、このようにしており、労働者が年収の壁を意識せずに働ける環境づくりを支援しております。
 一方で、同一企業内で既に被用者保険に加入している労働者とのバランスを考慮し、企業独自で、既に加入している労働者に対しても手当を支給するケースがあると承知をしています。こうしたケースにおいて、御指摘のように、賃上げ促進税制を活用することで、同一企業内での労働者間の公平性を確保しつつ、企業の負担軽減にもつながることが可能であると考えます。
 そして、先ほど厚生労働大臣からもありましたように、今合計で十四万人を超える労働者への活用が予定されているなど、制度創設からおおむね三か月経過した時点ではありますが、パッケージの活用は着実に進んでいると認識をしています。
 御指摘のとおり、このような企業負担の軽減策を含めた周知、広報の取組が重要であり、その徹底を通じてパッケージの活用の更なる拡大、これを政府としても図ってまいりたいと考えております。

○西田実仁君 最後に、このパッケージについて厚労大臣にお聞きしたいと思います。
 従業員間の不公平感を解消するため、全従業員、パートさん、全従業員に対してその賃金を五%引き上げ、社会保険に既に加入しているパートさんには賃金規定等改定コースと、こういうコースがありますけれども、これで対応し、新たに社会保険に加入するパートさんには労働時間延長メニューで助成金を活用すると、こういう事例が厚労省のチラシでも紹介されております。
 こうした制度の併用自体は問題はないというふうに認識しておりますが、問題なのは、この労働時間延長メニューには、私ども公明党も提言をいたしましたけれども、適用事業者ごとの人数制限の上限は撤廃をされました。しかし、今申し上げた併用するこの賃金規定等改定コースには人数制限が今もあります。人数の上限が決められています。したがって、なかなか、これを併用しようと思って、せっかく不公平感を解消しようと思って併用を考えている事業所の方が断念をする、そういうケースが私のところにも届いております。
 こうした制度併用の妨げとなっているこの人数上限というのはこの際撤廃する、こうした改善をしっかりと取ってもらいたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○委員長(櫻井充君) 時間が来ております。武見厚労大臣、簡潔に御答弁お願いします。

○国務大臣(武見敬三君) 適用事業所の適用人数の上限につきましては、年収の壁・支援強化パッケージにおいて新たに実施することとした労働時間延長メニューを含む社会保険適用時処遇改善コースについては、年収の壁への一体的な対策を講じるに当たり、壁を越えようとする労働者全てをカバーできるように、適用人数の上限を設けることなく取組を講じることとしたものでございます。
 他方で、既存の施策であります賃金規定等改定コースについては、効果的、重点的に支援を講ずる観点から、従来から一事業所当たりの適用人数の上限を設定をしております。
 この御指摘、年収の壁への対応策を進めるに当たって、より効果的な取組を講じるべきというものと受けておりますけれども、今後、具体的な活用事例を集めつつ、更なる活用促進に向けてどのようにその改善策進められるか検討していきたいと思います。

○西田実仁君 終わります。