213-参-総務委員会-007号 2024年03月29日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
 私は、NHKのアーカイブの役割についてお聞きしたいと思います。
 NHKは、一九二五年に放送を開始して以来、保存、活用、公開によりまして時代の記録を保存し、文化遺産として未来に伝える役割を果たしてきたと思っております。来年は放送百年の佳節に当たります。
 平成十五年には私の地元埼玉の川口市にNHKアーカイブスを設立し、NHKが制作、放送した番組、ニュース等のコンテンツを資産として保存するとともに、保存したコンテンツを番組公開ライブラリーやNHKオンデマンドで公開をされております。
 そこで、まずお聞きしたいんですが、このNHKのアーカイブというのは使われてこそ価値が出るものであり、公共利用の促進によってNHKの公共性は発揮されると考えております。もっと言えば、そのNHKの公共性に対して受信料が支払われていると認識をしております。
 番組のアーカイブを積極的に開放することによってNHKの公共性は担保されているわけでありまして、このNHKアーカイブは受信料を負担している視聴者みんなのものであり、公共財というべきものであると思います。NHKと研究者、また市民でみんなのアーカイブを作っていくという発想が必要ではないかと思います。
 しかし、全国五十七か所、また川口である、アーカイブスにある視聴端末で見られる番組公開ライブラリーという、これは無料で見れるわけですけれども、約一万本、NHKアーカイブスが保存する番組数からしますと一%もそこそこというのが今現状であります。
 確かに今NHKは事業規模の縮小や経費削減を進めている最中でありますけれども、番組アーカイブを充実させて社会に還元していくということは、公共放送として優先度の高い事業ではないかというふうに考えます。稲葉会長には是非力を入れていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。

○参考人(稲葉延雄君) NHKが保有している貴重な映像資産を広く国民に還元し、有効に活用すること、これは公共放送の大切な役割だというふうに認識してございます。
 番組公開ライブラリーは、全国の放送局やNHKの関連施設五十七か所でNHKが過去に放送してきた代表的な番組を無料で視聴いただけるサービスでございまして、現在約一万一千五百本が視聴できます。ドラマやドキュメンタリー、アニメなど多様な番組を視聴していただけるよう配慮はしていますけれども、公開に当たっては、放送とは別に権利処理が必要となるために公開できる本数に限りがあるというのが現状でございます。
 今後の公開につきましては、番組公開ライブラリーの利用状況などもよく踏まえながら検討してまいりたいというふうに思っております。

○西田実仁君 一問飛ばしまして、学術利用トライアルについてお聞きしたいと思います。
 この学術利用トライアルというのは、NHKアーカイブスで保存している放送番組を大学などの研究者に見ていただき、学術的に利用する方法を検討するプロジェクトであります。公募で採択された研究者は、NHK放送博物館、川口市のNHKアーカイブス、NHK大阪放送局の研究閲覧室で閲覧し、その成果を研究論文や学会発表などにつなげ、放送文化の発展に貢献する事業です。プロジェクトは二〇一〇年から始まり、これまでに二百五十三組の研究者が参加をしております。閲覧可能は約百万本です。
 この学術利用トライアルは、来年度、二〇二四年度からはトライアルを外した事業として継続すると聞いております。原則として現在のトライアルを継承する予定だと聞いておりますが、利用している研究者らからは、以下のような使い勝手の改善を望む声が多く寄せられております。
 第一に、視聴できるのが全国三か所しかないので地方在住の研究者にとって不便であること、第二に、閲覧可能期間が一件の研究につき最長三十日までと短いこと、第三に、閲覧を希望する番組の事前申請が必要かつ最大三十本までが原則と研究できる範囲が狭いこと、第四に、二〇一六年以降、それまで可能であったニュースの閲覧が不可となったこと、第五に、二〇二三年八月から料金体系の全面的な見直しがされたものの、使用料がまだ高額であること、そして最後に、第六に、ラジオは一九九二年以降の放送分、地域ローカル番組は除外など検索の利便性が悪いといった指摘がありますが、これらにどう対応していくのか、お聞きしたいと思います。

○参考人(山名啓雄君) お答えいたします。
 学術利用トライアルにつきましては、NHKアーカイブスで保存している放送番組を大学などの研究者に見ていただき、学術的に利用する方法を検討するプロジェクトでありまして、二〇一〇年に開始し、これまで二百五十三組の研究者が参加いただきました。
 現在、NHK放送博物館、埼玉県川口市のNHKアーカイブス、NHK大阪放送局の三か所の研究閲覧室で無償で閲覧いただいております。閲覧室や対応要員の確保、こういった点から現時点で全国各地に広げることは難しいというふうに考えておりますけれども、研究テーマによりましては、閲覧範囲や本数、閲覧期間などを現在よりも広げることなどを検討しております。

○西田実仁君 総務省にお聞きしますが、こうした公共文化施設や教育機関、研究者などが求めるNHKアーカイブスの非営利の公共利用の現状及び課題について今指摘したわけでありますけれども、総務省としてはどのように考えるか、認識をお聞きします。

○大臣政務官(西田昭二君) お答えをいたします。
 NHKがNHKアーカイブスを通じて行う収集、保存、公開の業務については、放送法第十五条に定める公共放送としてのNHKの目的を達成するために実施されるものと承知をしているところでございます。
 公共文化施設や教育機関、研究者などが求めておられるNHKアーカイブスの非営利の利用については、議員が御指摘のとおり、閲覧方法や条件に制約があることから、利用者の利便性の向上が課題と認識をしているところでございます。
 NHKの保有する放送番組等については、受信料を負担する国民・視聴者にとっての貴重な資産であることを踏まえ、その積極的な利活用を図ることが必要であると考えており、その旨、令和六年度収支予算等に付する総務大臣の意見でも述べているところでございます。
 総務省といたしましても、NHKのコンテンツをより広く利活用していただくことができるよう、利用者の利便性を向上していただくことを期待をしております。
 以上でございます。

○西田実仁君 次に、大規模災害時におけるNHKの役割ということで、災害報道についてお聞きをしたいと思います。
 先ほども、午前中も指摘がございましたが、放送法あるいは災害対策基本法におきまして、NHKの災害時における役割ということが明確に定められているわけであります。私が取り上げたいのは、この取材ヘリの体制についてであります。
 NHKの取材ヘリは、全国十二基地の航空取材体制で運用されると聞きました。二〇二二年度は、新型機体一機に放送設備を搭載する工事を実施したということも報道されていました。
 今回の能登半島地震におきまして、発災当日にヘリコプターがトラブルで飛べず、撮影ができなかったというふうにお伺いしました。一月九日のNHK経営委員会におきましては、今後、ヘリコプターの整備のローテーションの組み方や運航の在り方について検討していくと、NHKにとって災害報道は一丁目一番地であり、ヘリも含めた映像が、NHKの視聴者のみならず、救助活動などのトリガーになるものであることは認識しているので、今回の反省を踏まえて対応策をきちんと対応していきたいという議事録が残っております。
 確かに、私もよくこの災害対応をつかさどる省庁の皆さんからお聞きするんですけれども、大規模であればあるほど、その災害の発災直後に最初に見るのはやっぱりNHKのヘリコプターによる災害報道だと。どのぐらいの規模でというのは、自分たちの省庁はすぐには行けないときに、まずはNHKをつけて、そしてそれを見てまず判断をするという話をよく聞きます。それだけまさにこのトリガーになっているわけでありまして、重要な役割を果たしておられると思いますが、今回は残念ながらそういうことでした。
 この今日配られている予算を見て、これがそれに当たるのか事前に聞いておりませんが、航空機の、これ雇上費と読むんでしょうか、この費用を見ますと、令和五年が五十一・三億円で、令和六年度が四十五・五億円と、マイナス五・八億円になっている数字もちょっと気になります、この中身はよく説明を受けておりませんけれども。
 いずれにいたしましても、まず、今回の能登半島地震で、一番発災直後にトラブルでヘリコプターが飛べなかったということ自体が問題であるという御認識だと思いますので、どう反省し、どう対応を取っていくのか、御説明願いたいと思います。

○参考人(稲葉延雄君) 発災当日の状況でございますが、津波警報が日本海側に発表されたことを受けまして、沿岸部を取材すべく複数のヘリコプターを現地に向かわせたわけでございますが、このうち、航続距離の短いヘリコプターについては途中で燃料を補給する必要があり、しかし、周辺の空港事務所からは着陸許可が得られなかったために臨時で燃料を補給することができなかったという事情があります。この結果、能登半島まで飛行できなかったということでございます。また、別のエリアから呼び寄せた、より航続距離が長いヘリコプターの機体トラブルなども重なりまして、結果的に発災当日は能登半島の映像取材はできなかったということで、大変残念なことだと、遺憾だと思っております。
 NHKとしては、報道、災害報道は最も重要な役割でございまして、その中で、ヘリコプターの映像は現地の様子を適当、的確に伝えるものだというふうに認識してございます。今回の教訓を踏まえまして、緊急時に燃料が補給できる各地の離着陸場を増やすというようなことを含め、対策を進めてございます。
 また、整備点検中、期間中のものも含めて、今十四機のヘリコプターを十二の基地で広域的に運用してございますが、こういう今の取材体制を検証しまして、全国での災害対応力の強化、あるいは民間各社との連携などもできないか検討を行っているということでございます。

○西田実仁君 終わります。