郵政特・第10号 2005-07-29

【質疑事項】
1.郵政事業の金融のユニバーサルサービスについて
2.郵便ユニバーサルサービス維持のための財政基盤について
3.郵貯肥大論について
4.郵便局ネットワークの維持、発展について
5.郵便局員の立場について
6.郵便局に今後期待することについて<>○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。
本日は、4人の皆様、大変にお忙しいところ、誠にありがとうございました。
私ども、昨日、岩手の盛岡の方に地方公聴会行かせていただきまして、私自身は埼玉の選挙区でございますが、先ほど冒頭立たれた関口先生と戦ったわけでございますけれども、その埼玉の中でおりますけれども、この岩手の盛岡の方、大変人の少ないところで郵便局を一生懸命やっておられる方の、職員の方からも様々お話をお聞きしました。
それで、まず最初に榊原先生に是非お聞きしたいと思っておりますが、先ほどお話ございましたが、いろんな論文で出されておりますので、その中で、例えば郵便事業は公社の形でできる限り効率化していくべきであると。そして、郵貯と簡保については、先ほどもお話ございましたが、次第に縮小していって、最終的には廃止すべきであると。なぜならば歴史的役割はなくなった、こういうふうにいろんなところで言われておられます。
ここで、大変に素人論理で素朴でお聞きして恐縮でございますが、やはり金融のユニバーサルサービスということを大変に、今審議している郵政の民営化法案、郵便の方はそれが義務付けられている中で、金融のユニバーサルサービスは義務付けられていないじゃないかと、実態的に大丈夫だといっても本当に大丈夫なのかという、こういう議論が繰り返しなされているわけで、実際に現地に行くとそのことを大変に心配しておられる方もいらっしゃいます。
そうすると、先生が唱えておられるこの縮小論、そしてやがて廃止をしていくべきだという廃止論とこの金融のユニバーサルサービス、ここはどういうふうに先生はお考えになっていらっしゃるんでしょうか。

○参考人(榊原英資君) おっしゃることは非常に論理的でございまして、郵貯、簡保を次第に縮小して廃止するか民営化するか、そういうことになった場合には、それじゃ過疎地とか離島の金融のユニバーサルサービスどうするんだという御質問だと思います。
私は、私のビジョンを言わせていただければ、郵便局は窓口として金融機関の委託業務をやるということが可能でございますよね。ですから、例えば民間銀行の預金の代理業務をやるということは可能でございますよね。あるいは保険をそこで売るということも可能ですし、投資信託を売るということも可能ですね。ですから、私は、郵貯そのものが金融商品を持たなくても郵便局で金融商品を提供することはできると、あるいは国債を売ることもできますね。国債の、個人向け国債を売ることもできるということでございますから、民間の金融機関と通じて、それで窓口業務をやることによってユニバーサルサービスが確保できると思うんですね。それからまた、雇用の問題、郵便局の雇用の問題についてもそれで確保できると思うんですね。つまり、私の言っているのは、官が固有の形であれだけ巨大の資産を持つ必要はもう国民経済的になくなったということなんですね。これは本当に官から民へお金を流す方が、これはいいわけですね。
今度の民営化法案は官から民へと言っているんですが、これは僕は違うと思うんですけれどもね。本当に流すんであれば、次第に縮小していって民にお金を持っていくと。その代わり、過疎地とか離島では代理業務をやると、窓口あるわけですから。そこで様々な決済業務もできますし、貯金あるいは国債、株、投資信託、そういうものも売ることができると。そういう業務をやっていけばいいんではないかというふうに私は思っております。
いろいろやり方はあるかと思いますけれども、小さくしてそのまま残しておくということももちろんできると思います。できると思いますけれども、私はその形が理想型としては一番いいんではないかというふうに思っております。

○西田まこと君 その場合には代理、そもそも過疎地でありますので、民間の金融機関がそこに窓口として本当に置いて成り立つかという問題はあると思いますけれども……

○参考人(榊原英資君) いや、それは。

○西田まこと君 まあそれは、じゃ、ともかくとして、まあ、これだけやっていてもこれで終わってしまいますので。
実際に、現場ではこういうふうに職員の方がおっしゃっていました。
つまり、基本的にはまず郵便で村民や町民の方々はつながっているわけだと思います。そのときに、例えば年金の給付を受けに来られたり、ほかの郵便貯金また保険のお仕事も一緒に、一体になってもらってくると。郵便だけではとても、その手数料では簡単に言えば飯が食っていけないと。こういうことを実感としてというか、実際にそういう経営状況になっていて、ですから、郵便だけで、金融の方が切り離されて縮小ないし廃止というふうになっていった場合は、そもそもこの事業が成り立たなくなってしまうと。だけれども、やはりそうはいっても、仮にそうした場合に、そうはいっても、この郵便のユニバーサルサービスを維持していこうと思えば、当然何らかの財政的なバックアップというものがそこに生じなければそのネットワークが維持できないと。
こういうふうになると思うんですけれども、ちょっと繰り返しで恐縮ですが、もう1度お聞きしたいと思います。

○参考人(榊原英資君) これは、今いろんなところで、金融機関で窓販ということをやっておりますよね。ですから、郵便局が民間金融機関の委託を受けてその商品を売るということはできるわけですね。手数料を取ることはできるわけですね、それで。
つまり、民間は自らの支店を出すことはできないわけですから、自らのコストでそこに人を配置することはできないわけですから。郵便局はそういうネットワークは持っているわけですよね。ですから、ネットワークを持って民間の代理業務をやって、それで手数料を取ればいいわけですね。であれば、当然、収支は成り立っていくと思うんですね。今と同じような手数料は取れるはずですよね。
ですから、窓販をいろんな形でやると。それは広げてっていいと思うんですよ。投資信託まで売ってもいいと思うんですね。当然、今までそういう業務をやっておられるんですから、保険を売っておられる、今まで貯金を売っておられるということですから、当然できるんですね。今と同じ業務をやって、それが、ただ商品としては民間の商品であると。これで手数料を取れば十分私は、きちっとした計算はしておりません、きちっとしたその収支計算を今、私が持っているというわけじゃございませんけど、原理的にはそれで成り立つんではないかというふうに考えております。

○西田まこと君 紺谷先生の方にお聞きしたいと思います。
先ほど最後のところで、郵貯肥大論ということにつきまして、この財投資金、民間の金融機関と比べても意味がないじゃないかと、第二の予算として必要な金額を上回っているかどうかで肥大化しているかどうかを判断すべきであると、こういうお話がございました。
具体的に申し上げた方が分かりやすいので、例えば、今日、新聞に出ておりましたけれども、04年度、2兆円ほどの例えば財投の使い残しがあると、これまでピークのときは10兆円とか超えてたときもあったわけですけども。仮に、先生がおっしゃるような必要な額を上回って使い残してしまった部分が前年度に2兆円あったと。そうすると、先生の理論によりますと、そういう多過ぎる場合は郵便貯金の金利や簡保の予定利率を引き下げるべきであると、そして必要以上に集まらないようにすればいいだけなんだと、こういうふうに論を展開されておられました。
そうすると、具体的には、04年度2兆円余りましたと、それをどういうふうに金利引下げ等に反映させて、調和させていくというか、使い残しが出ないように、必要以上にお金が集まらないようにすべきであるということなんですが、ちょっともしお考えがありましたら、お教え願えればと思います。

○参考人(紺谷典子君) それ以前に、国がやるべき事業はもう十分なのかどうかと、現在の財投機関の行っている仕事で十分なのかどうかと。
例えば、道路公団の民営化の論議が、借金返済が目的になったということが非常に疑問でございます。道路というのは、単に生活の便利とか、あるいは産業誘致のためばかりではなくて、万々が一の災害のときの避難路でもあり、救援路でもあるんですね。だから、例えば東海、東南海、南海と連動して起こると言われております大地震で大津波がやってきたときに、沿岸の方たちが逃げるだけの道路は十分あるんですかということでございます。
そういう観点からいきますと、今こそ公共事業なんですね。日本はほかの先進国に比べて後れて公共事業を始めたと。しかも、高度成長のおかげで世界一、人件費と地価が高くなったと。さらに、地震大国ですから、地震の手当てだけでも公共事業費は高くなると。だから、予算の中でもあるいはGDPの中でも公共事業費の割合が高いというのは当たり前のことなんですね。ただただその公共事業を削ればいい、やめればいいということではなくて、本当に必要な社会資本整備はもう終わったのかどうかという議論こそおやりいただきたいんですね。私は全然終わっていないと。
大地震対策一つ終わっていないわけです。道路を拡幅すれば、それだけで延焼率が下がって犠牲者が減るというにもかかわらず、これだけ金利が低く、これだけ地価が下がり、これだけ失業者が町にあふれているときに逆に公共事業を削減するというのは、真っ向からの大反対ということなんですね。いつか必ずやらなくてはいけない社会資本整備を今前倒ししてやるだけだったらば、将来の財政支出が減るんですから、本当に必要なものかどうかを見極めるということこそが必要なんですよ。それをやってなくて、やたらめったら減らせばよろしい、借金返せばよろしいというのは大間違いではないですか。
だから、まずは、国として行わねばならない公的な事業というのがどれほどあるのかということの洗い出しをしていただきたいんですね。今のいい加減な財投機関が予算が余ったの余らないのなんというのは瑣末な話でございます。仮に余ったって、それは先送りしていけばいいんだし、徐々に金利で調整していくということも可能です。私はそういうふうに思っております。

○西田まこと君 ありがとうございました。
中田市長にお聞きしたいと思います。
市長もいろんなところでいろんな御発言をされて、幾つか論文等を読ませていただきました。先ほどのお話もございましたけれども、市長はあるところでこういう雑誌に書かれておりました。私は、何も郵便局の人間が嫌いだからとか彼らの仕事ぶりが旧国鉄の職員のように怠慢だからということで、先ほどお話がございました、民営化が必要だと言っているのではありませんと、存続させることが国として大きな損失になっているからですと、こういうふうにおっしゃっているわけでございます。
先ほど申し上げたとおり、昨日まで地方公聴会に出掛けておりまして、岩手県の山村などでは民間の金融機関もないと、年金給付を受けるのは郵便局だけが頼りと、こういう地域が少なくないわけでございます。こういったところにも全国津々浦々に郵便局のネットワークがあるということは、もう本当に国民の大きな財産であるということを改めて私もまた感じたわけで、帰ってまいりました。
ただ、そうはいっても、こうした掛け替えのない財産を維持して、また発展させていくためには、当然のことながらそれなりのコストというものも掛かってこなければ道理が合わないわけでございまして、この郵便局の持続可能性ということにつきまして、今後もこの郵便局ネットワークを維持していく、また発展をさせていくということにつきまして市長はどのようにお考えになっていらっしゃるのか、御所見を賜りたいと思います。

○参考人(中田宏君) 郵便局の今後の発展性ということでありますけれども、まず、やはり特に、先ほど榊原先生がおっしゃっておられたように、過疎地等についての金融サービスなどに対してやはり多くの方が不安を持たれておられるわけですね。しかし、それに対して、榊原先生もおっしゃっておられたように、簡保や郵貯については縮小して、将来はこれは廃止にしたっていい、でも、その利便性をどう確保するのかといったときには、郵便局を活用してそういうサービスが、これは郵便貯金とか郵便保険とかいうことではなくとも、他の民間も含めてそういうサービスが存在をしていることが重要なんだと、こういうふうに承ったわけであります。私もそのとおりだと思いますね。言わば、今回の法の体系というのは正にそうなっていることなんだと思うんです。
すなわち、簡保にせよ郵貯にせよ、それをサービスとしてあまねく全国で引き続きやっていくためには、民間とイコールフッティングをさせて、民間の銀行あるいは民間の保険会社と相競争しながら今後発展をしてもらうと。しかし、今あるインフラを活用していけば、そうした民間の会社同士の競争というものを過疎の村においても実現をさせていくことができるではないかと。それは、すなわち郵便局というものを活用できるからであると。ですから、貯金と保険については新たに会社とし、これはもう特殊会社ではなく民間法人としていくという具合に今回なっているわけですね。
しかし、一方で、郵便事業、郵便局事業、こちらの方は政府が責任を持つという意味で、持ち株会社の2分の1の株保有というのも将来的にもこれは政府が担保していくという法体系になっているわけですね。ですから、郵便局というものを今後もこのインフラ状態として活用しながら他のサービスもやっていけるようにしようと。
ところが、今御質問いただいたとおり、じゃ郵便局の将来性って何なんだろうというのを考えたときに、保険と貯金を除いて郵便事業だけの将来性を考えると、これはなかなか無理だと思いますね。
すなわち、逆に言うならば、過疎の村でも郵便配達のためだけの郵便局の存在というのはそれこそ非効率になってくるわけです。ユニバーサルサービスだけを義務付けられて、郵便局は何するのと。集配をし、ポスト業務をし、そして切手を販売するということだけでは、それこそ郵便局は今後やっていくことはできない。だから、ある意味では反対論者の方からすると中途半端という御指摘にはなるけれども、しかしそれは特殊会社として公社よりもより自主性を認める。
すなわち、郵便局が他の事業をやってもいいではないか。これまでは、公社の中においてはやれる業務が限られているわけですね、羅列されているわけですね。それに対して、今回、公社から新たな特殊会社という形にして、しかも政府がその特殊会社に対して公共性というものを担保しながら、それで、かつ自由性を高めていく。
ということは、何ができるかといったら、様々なそのほかの販売もしていこうと。南国の郵便局であるならば飲物の販売もしようじゃないかと。あるいは、レターセットとか筆記用具とかといったようなものもいいじゃないかと。もうはっきり言ったら、コンビニエンスストアを一緒に中に入れて、そして町のキーステーションにしていこうじゃないかと。こういうことを郵便局はできるように、自由度を高められるようにして、その上で郵便局が存在をし、そこに簡保と郵貯というものが入れるようにしていくという制度設計になっている。ここのところが私は郵便局のそれこそ発展性というときに重要なポイントだというふうに思いますし、郵便事業と郵便局だけでこれから先成り立つものではないと逆に思います。

○西田まこと君 市長は、またあわせて、公共サービスイコール行政サービスではないと、先ほど地下鉄の例を引かれながらもお話しされました。
民の力なしに公共サービスはあり得ないという持論をお持ちになっていらっしゃると承知しておりますが、今郵便局は、先ほど来からお話あるように、情報、公共サービスの地域の拠点として大変重要な役割を果たしておりますし、また、そこで働いている方の職員の皆様もその信頼にこたえるべく大変に密度の濃いサービスを提供してくださっておられるわけでございます。
しかし、この公共サービス、郵便局における公共サービス、これはいわゆる郵政事業も公務員としての立場でやっぱりやるべきことなのか、あるいはできないのか、あるいはほかにできることもあるのか、この辺、郵政事業が公務員でなければできないかどうかということにつきましてお話をお聞きしたいと思います。

○参考人(中田宏君) これはもうはっきり結論を申し上げれば、公務員でなくてもできると思います。
ただし、公務員であることの重要性を語る方々は、公務員である、そして公的な組織であるからあまねくサービスが全国に行き届くというところを重視しているわけですよね。逆を言うならば、サービスをどう確保するかということが重要なんであって、そのサービスについては公務員でなくてもできます。
ですから、そこは、多くの方々が中途半端な会社だというような言い方をしますけれども、これは、これから迎えていく日本の社会の中で、そうした組織形態というのもほかの分野でも考える必要があるかもしれない大変重要な問題だと思います。
というのは、人口がもう間もなく本当に減っていく社会になっている。そして、横浜市などは、人口はまだしばらくの間増えますけれども、生産人口は減っちゃうんですね。生産人口が減って、しかも人口だけ増えていくということは、より大変な社会だということです。
そういう中で公共サービスを引き続き維持していくということは、もう新しいことをやる以前に維持していくこと自体が非常に難しい状態になっているわけです。毎年毎年、税収は下がり続けてきた。税収はひと息ついたかもしれないけれども、これから先、地方に来る交付税といったものも更に削減が中期的には予想されるだろうと。こういう中で地方の運営をしていって公共財を提供していくということになれば、そのやり方を変えざるを得ないわけです。
例えば、公園の手入れというのを考えたときに、今までだったら公務員が現場から、土木事務所から出ていって植木を切るということをやるけれども、しかしそれに対して民間に委託をするという方法もあるし、もっと進めるならば、それは地域の皆さんで公園の手入れをやってくださいということを、地域の皆さんと一緒になって公共を生み出すというやり方をしていくということなどを駆使しながら今後組み合わせていかないと、公共財の維持というものについてすらが危うい社会だということですから、決して郵政の問題に限らず、サービスをどう提供するのかということを考えて、重要なのは人員の確保ではない、郵便局の確保ではない、サービスの確保である。このためにはどういう組織でもできるんだろうかということについては柔軟な考え方が必要になるというふうに思います。

○西田まこと君 済みません、岡村参考人に最後、郵便局に今後期待することとして、地域社会でいろいろ御活躍されておられます。それを最後お伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

○参考人(岡村精二君) 郵便局というのはあれだけのネットワークを持っておるわけですよね。これ、民営化されたときには、僕だったら、経営者だったらわくわくしますね。あれもやりたい、これもやりたい。これだけのネットワークがあれば民営化したって、だれだって経営者になればわくわくするような気にならないですかね。民営化すればもっとサービスの提供とか、そういった形の質の向上がもっともっと可能だと思うので、私は、郵便局というのは、これからの社会においては非常にこれから有効な社会資産として活躍できる場になっていくと思います。
確かに、田舎に行きますと、村そのものがなくなってしまうとか、そんなところで廃止というのは確かにあり得るかもしれないです。だけれども、あくまでもそれは住民合意の上で成り立てばいいことであって、あのネットワークを生かすということをみんなで議論することが大事なんじゃないかと思います。

○西田まこと君 ありがとうございました。