財政金融委員会・第2号 2006-10-31

【質疑事項】
1.新規国債発行額「30兆円以下」の意味について
2.金融政策との協調について
3.法人課税について
4.為替政策について
5.偽造・盗難キャッシュカードへの補償について
6.金融検査マニュアルについて
7.今後の金融構造改革について
8.日中の「戦略的互恵協力」について

○委員長(家西悟君) ただいまから財政金融委員会を開会いたします。
政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、政府参考人として金融庁総務企画局長三國谷勝範君外3名の出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。

○委員長(家西悟君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
財政及び金融等に関する調査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、参考人として株式会社東京証券取引所常務取締役長友英資君及び日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(家西悟君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

○西田まこと君 公明党の西田実仁でございます。今日は、まず最初に財務大臣にお聞きして、その後金融担当大臣にお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
さきの当委員会におきます尾身大臣の発言要旨の中にもございましたけれども、最初にまず新規国債発行額30兆円以下ということの意味について確認をさしていただきたいと思います。
さきの委員会での発言では、新規国債発行額については、「19年度予算においても18年度予算の30兆円より減額し、可能な限り縮減してまいりたい」と、こういうふうにお述べになっておられます。また、大臣御就任の記者会見でも、30兆円というのは少なくともそれより下げる方向で考えていきたいと。こういうお話の趣旨からしますと、いわゆる小泉政権下での30兆円枠というのを想起するわけでございますけれども、私、個人的には、小泉政権下における30兆円という枠と安倍政権下におけるこの30兆円というのは意味が若干異なるんではないかというふうに私自身は思っております。
小泉政権下での30兆円枠というのは、基本式からすれば税収と新規国債の発行額で歳出は決まってくるわけでありますけれども、税収がなかなか伸びにくいというそういう経済環境の下で、歳出全体を膨張させないためにも新規国債発行額を30兆円と、一つの枠を設けて、それによって財政の規律をもたらすということの意味合いがこの30兆円枠というのにあったのではないかというふうに思うわけであります。
一方、今この安倍政権下におきましては、最大の目的は今後のプライマリーバランスをいかに黒字化していくのかということになろうかと思いますので、そこにおける基本式というのは、新規国債発行額は国債費よりも小さくすると、少なくするということをしなければ当然のことながらプライマリーバランスは黒字化しない、こういうことになるわけでございまして。
そこで、じゃ、今後の国債費はどう推移するのかということになろうかと思いますけれども、この利払い費は大体今後の見通しを財務省さんの方の資料で見さしていただきますと、大体利払い費としては10兆円弱から15兆円前後というふうに、平成31年度までの数字が手元にございますけれども、一応想定をされている。一方、この債務償還費、いわゆる現金償還に要する費用でございますけれども、この債務償還費はここ3年ぐらい、平成16年、17年、18年度と大体10兆円と。こういうふうに考えますと、国債費は、単純計算で恐縮でございますけれども、20兆から25兆円というふうになるわけですね。
そうすると、この新規国債発行額を国債費よりも小さくしていくということがプライマリーバランス黒字化の必須条件、同じ意味だとすれば、この30兆円枠というのみならず、さらにこの国債費以下と考えれば、想定されている国債費が20から25ということになればそのぐらいに抑えないといけないと、こういうふうになるのではないかというふうに思うわけですけれども、まずこの新規国債発行額の枠について、この安倍政権下でどのような基本的なお考えを持っているのか、そして私が申し上げた小泉政権下での意味合いとは異なる意味合いをどこに付与しているのかということについてお聞きしたいと思います。

○国務大臣(尾身幸次君) 小泉政権の下におきましても、16年度37兆、17年度34兆、18年度30兆と国債発行額を減額してきたわけでございますが、更に、これについて30兆18年度よりも減額をしていきたいという考え方で、極めて厳しい歳出削減をしていかなければならないというふうに考えております。

○西田まこと君 そうしますと、このプライマリーバランスを黒字化していくという基本方針があろうと思いますけれども、その場合には、私が申し上げたように国債費以下に新規国債発行額を抑えなきゃならないと、この点についてはそのように考えればよろしいんでしょうか。

○国務大臣(尾身幸次君) この19年度予算については、先ほど申しましたような厳しい歳出削減を実行していきますが、18年度の決算の状況が来年の夏くらいには明らかになる、それから、19年度にどのくらいの歳出削減ができるかということも明らかになる、そして同時に、医療制度改革に伴います実際の支出の実績がどのくらいになるかということも明らかになる。そういうことを踏まえまして、来年秋以降、税も含めました歳入歳出の抜本的な改革、具体的な改革を詰めていきたいというふうに考えている次第でございまして、来年度、19年度については非常に厳しい縮減をやらしていただかなければなりませんが、それでもなおかつ、社会保障とかあるいは少子化対策等で予算増額が必要なことも予想されますので、そういうことに対する対応については、先ほど申しましたような全体の歳入歳出を総合的に考える中でどう対応していくかということを具体的に考えていきたいと考えているわけでございます。

○西田まこと君 そういう意味では厳しくやっていかなきゃいけないということでございますが、ちょっと観点を変えまして、国債費というのは利払い費と債務償還費から成っているわけでありますけれども、この利払い費に関しまして、金融政策との協調ということにつきましてお聞きしたいと思います。
4、5日前だったと思いますけれども、ウォール・ストリート・ジャーナル紙との単独会見が載っておりまして、そこにおきまして大臣は日本銀行に対して政府への協力を要請しておられました。文脈からして真意はちょっと測りかねますけれども、一般的には、国債利払い費の増大を抑制するために低金利政策を続けるということを求めているのかなというふうにもお見受けしたわけでございます。一方、大臣が就任会見におきまして、既に状況は基本的にはデフレはもう脱却しつつあるというふうに認識をしておりますと、こういうふうにも言っておられます。そういう意味では、自然な、景気回復によるデフレ脱却による自然な金利上昇ということを容認をされているのかなというふうにも思われるわけであります。
大臣の御認識としては、どちらの方により真意があるんでしょうか。

○国務大臣(尾身幸次君) 金融政策につきましては日銀の所管でございますが、インフレの懸念が見られないような現在の状況の下におきましては、景気回復を持続的なものにするために経済を金融面から引き続きしっかりと支えていただくことが重要であるというふうに考えております。
ただ、この金融政策の具体的な内容について、政府からあれこれ申し上げるのは適当ではないというのが私どもの考えでございます。

○西田まこと君 確かに大臣の御就任の会見でも、日銀の金融政策の個々についてあれこれ言うことは必ずしも良くないというふうに考えておられるというような御発言もございました。
ただ、成長を阻害しない金融政策を求めるというのは必ずしも日銀の独立性を侵犯するものではないというふうに私自身は思いますけれども、一方で、成長に伴う自然な物価上昇に中央銀行が対処することをこれまた阻害することもできないんではないかというふうに思われますけれども、いかがでございましょう。

○委員長(家西悟君) どなたが。

○西田まこと君 今日銀の独立性の話をされました。成長を阻害しない金融政策を求めていくこと自体は、必ずしも日銀の独立性を侵すものではないと私も思っております。
しかしながら、一方で、成長をすれば当然自然に物価も上昇していくわけでありまして、その物価上昇に中央銀行が対処することは、これまた邪魔もできないと、こういうふうに思われますけれども、いかがでございましょうか。

○国務大臣(尾身幸次君) 具体的な金融政策の内容について申し上げるのは適当でないと考えておりますが、この今の持続的な景気回復を維持するということのために金融面から経済を支えていただきたいという私どもの考え方は今までどおりであります。

○西田まこと君 そうしますと、大臣がおっしゃって、これまでのことも含めて、今の御発言も含めて私なりに理解しますと、大臣はこの金融政策の独立性確保ということと同時に、政府、日銀間の政策協調フレームワークの策定という、ある意味でこの二兎を追って二兎を得るという御方針をお持ちなのかなというふうに思われるわけですけれども、その場合には、名目成長率とか、あるいはインフレ率といった数値目標の政府、日銀による共有ということを推進していくというお考えなのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。

○国務大臣(尾身幸次君) 経済の現状に対する認識あるいは金融政策等につきましては、一般論としては随時連絡、協調を図っていきたいというふうに考えております。

○西田まこと君 続きまして、プライマリーバランスのお話の続きで、プライマリーバランスの黒字化が求められているわけでありますけれども、基本的な安倍政権での考え方というのは、成長、つまり税の自然増収によるプライマリーバランスの黒字化ということが求められている方針だろうなというふうには思っているわけであります。
そうしましたときに、増税というのは基本的には禁句であると。歳出削減と成長率のかさ上げが絶対必要条件になるんだろうなというふうに思うわけであります。成長率をかさ上げするにはどうするかというと、企業の設備投資を優遇する必要があると、そのためには法人税率そのものを引き下げたり、あるいは設備投資の償却期間、減価償却の加速化をしていくというようなことが求められるということで、それによって法人税制が日本より有利な外国との国際競争に勝とうとするという、そういう方針ではないかというふうに理解しております。
初閣議後の大臣の記者会見におきましても、いろんな意味で経済を活性化することが企業活動を活発化して雇用を増やすと、そして税収増にもつながるんだというお話がございました。また、同じ会見では、減価償却についてもいろいろ検討して、税制面で、国際競争上、企業がハンディキャップを負うことがないよう手当てをやっていかなければならない、こんなような発言もございました。
私は今日、ここではその法人税減税と別に決まったわけじゃありませんので、議論として、考え方として大臣とちょっと意見を交換させていただければというふうに思っておるわけですけれども。
当たり前ですけど、法人税率を引き下げるということは、これは企業の税引き後利益を増やすわけですよね、当たり前ですけど。また、減価償却を加速化するということは、投資資金を早期回収するとともに、課税対象法人所得の減少をもたらすと、これは当たり前のことであります。
問題は、企業が増えた税引き後利益や資金を内部留保に回した場合、これは理論的には株主資本の増加ということになりまして、それは株価に反映されると。ということは、株式の投資家は値上がり益を享受することができると、理論的にはですね。また、企業が利益を増やせば、それは配当に回すと、増配すると。そうしますと、株主はより高い投資利回りを得ることができると、こういうことになるんだろうなと思うわけです。
そうした株価の値上がり益やあるいは増配で利益を享受する投資家につきましては、今既に優遇税制がしかれているということで、キャピタルゲイン課税あるいは配当にかかわる税金の優遇税制が行われている。一方、じゃ会社で働いている人はどうなのか。多分、企業が利益が増えますと、今の大方の企業は、ベアを上げるというよりもボーナスで調整をするというか、ボーナスに反映させるケースが多いんだろうと思うんですね。それによって勤労所得が増えるということは見込まれるものの、勤労所得が増えても累進課税で納税額は増える可能性あるし、もっと言えば、2003年に社会保険料も、これはボーナスも含めた年収に掛かるという形に変更がなっておりますので、当然社会保険料も増えてくるだろうと。
要するに、私が申し上げたいのは、企業のいろんな法人税を優遇して競争力を増すということは大事なわけですけど、民間主導の景気回復ということで大事です。大事ですけれども、これが、ちょっと公平ということから考えますと、成長の公平なる分配ということからすると、法人あるいは株主、投資家とか、そこにかなり厚くなっていて、正直言えば、投資家あるいは株主まで優遇税制を用意するということはちょっと偏りがあるんではないかと。
成長の果実の公平な分配ということで税制改革を行うんであれば、企業のあらゆるステークホルダーに対しまして公平に分配していく、成長の果実を分配していくという考え方を持たなければならないんではないかというふうに思うわけですけれども、ちょっと長くなりましたが、基本的な考え方でございますが、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(尾身幸次君) 成長なくして財政再建なしと申し上げておりますけれども、経済の活性化を図っていくことは極めて大事である、同時に現在の厳しい財政状況にも十分留意しなければならないと考えておりまして、私は経済の活性化と財政再建を両立させていきたいというふうに考えております。
経済の活性化という観点から申しますと、企業が国を選ぶ時代になってまいりましたので、例えば税制などにおきましてほかの国との関係でイコールフッティングの税制をつくり上げていかなければ、企業が日本という国を生産活動の拠点あるいは企業活動の拠点として選ばない、選んでくれないということになると考えておりまして、そういう意味で、例えば減価償却における残存価値の問題等につきましてもほかの国並みの内容にしていきたい、イコールフッティングの税制をつくり上げたいというふうに考えております。
もう一つは、これはもう数年前からやっていることでございますが、イノベーションあるいは企業の研究開発を促進するためのいわゆる投資減税という非常に大きなインセンティブをこの面で与えておりまして、そういうものについてもしっかりとこれから続けていきたいというふうに考えております。
そういう中で、いわゆるイコールフッティングの面におきます税制をどういうふうにするかということは、経済活性化という点からこれからも考えていかなければならない課題でございまして、しかし、目先の財政も厳しい折から、これをどういうふうに整理していくかという問題についても大きな検討課題になるというふうに考えているわけでございます。
いずれにいたしましても、企業活動の活性化、経済の活性化と財政の再建を両立させる形でどう進めていくかという課題に取り組んでいきたいというのが私どもの考えであります。

○西田まこと君 私もそれは同意するわけですけれども、そうした場合にどういう結果になるのかということを私は申し上げまして、企業と投資家あるいは株主には利益はもたらすことになると思います、それ自体別に悪いと言っているわけじゃありませんが。一方で、従業員の方の税引き後あるいは社会保険料天引き後の恩恵は相対的に小さくなるんではないかと。そこで、新しいまた格差みたいな話にならないのかなという心配を申し上げているわけで、そうした成長して税の自然増収によって財政再建するということはもうもっともなことでございますが、その成長の果実の公平な分配、特に企業のステークホルダー全体に行き渡らせることが大事ではないかというふうに私は申し上げているんですけれども、いかがでございましょうか。

○国務大臣(尾身幸次君) 活性化した経済の果実をどうするかということにつきましても、もちろんいろんな考え方があろうかと思いますが、公平な分配と言って一言で言えばそれで済むのかもしれませんが、その辺りについても十分考えながらやっていかなければならないと考えております。

○西田まこと君 是非十分に考えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
次に、為替の政策につきましてお伺いしたいと思います。
〔委員長退席、理事峰崎直樹君着席〕
今はもう既にユーロ参加国は言うに及ばず、韓国も円安・ウォン高ということでもう悲鳴を上げている記事がよく見受けられております。実際に、実質実効為替レートを見ると、もうプラザ合意のときぐらいの水準にまで、その円安、円高というのは何がもって円安かというのはありますけれども、少なくとも一九七三年を一〇〇としたときの数値がかなりプラザ合意のときぐらいまで下がっていることは間違いないわけでございます。一方で、先日、ロシアの中央銀行が円を外貨準備として組み入れるという方針を明らかにしたときに、大臣も歓迎する姿勢を表明されておりました。
ただ、国際通貨としての円の地位ということでいきますと、今や英ポンドまで抜かれて第四位に既に落ち込んでしまっているというところもございまして、円の国際化というのはアジア通貨構想の基本にあると思います。それには強い円というのが必要条件ではないかというふうにも思うわけでありますが、今後の為替あるいは通貨政策につきましての基本的な考え方をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(尾身幸次君) 円の国際化は、日本経済全体として為替相場の影響を受けにくくなるというメリットもありますし、またアジア地域の経済の一層の安定という観点からも好ましいと考えております。
円の国際化が進んでいくためには、円が強いか弱いかというよりも、むしろ円の価値が安定することで円に対する信認が向上する、円を貿易とか投資といった国際的取引で使っていただきやすい環境をつくるということが大事なのではないかというふうに考えております。

○西田まこと君 それでは、残りの時間は金融担当大臣にお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
中心的には、これ議員立法で成立させていただきました偽造盗難キャッシュカードの被害補償につきまして、いわゆる預金者保護法のその後の運用状況について私もフォローをさせていただいております。これは2年後の見直しというのが法律になっておりまして、その中で一番大きいのはやはり過去被害の補償ということで、まだなかなか、法施行後一年たたないということもあるんだと思いますけれども、混乱が生じている。金融機関の方も、しかしながら、先日DVDを私も見ましたけれども、マギー司郎さんが演じるマジックで、金融犯罪の被害に遭わないようにどうしたらいいかというのを非常に分かりやすく出していたり、あるいはいろんなパンフレットも出したりしていろんな努力はされているとは思いますが、現場におきましてはまだまだ混乱が多うございまして、それをちょっと幾つか御紹介しながら、これを金融当局といたしましても、是非適切なる御指導、御助言をいただきたいということで申し上げたいと思います。
金融機関もいろんな金融機関ございますので、被害に遭われている方もばらばらなんですが、預金者保護法の7条をちょっと誤解しているようなことがございます、7条というのは適用除外でございますが。これは、通知、犯罪に遭った通知が被害から2年を経過する日は適用除外とするというふうになっているわけでありますけれども、これは2年前の過去被害しか駄目だということを言っているわけじゃないんですね。それは4年前でも5年前でも、被害に遭ったときから通知するまで2年以内のものというふうに言っているわけでありますけれども、これをもってしてなのか分かりませんが、4年前とかに起きたことなので返事ができないとか、こういうような対応を取る金融機関もいまだに結構多うございます。
また、全く同じ被害状況で、まあ大体同時に盗難をされたりする、いろんな金融機関のカードが同時に盗まれたりすることもあるわけですけれども、そういう場合でも、金融機関によって、同じ状況で盗まれ、また預金者過失ゼロというのもはっきり認めていながら、補償額が100%のところもあれば50%のところもあるしというような状況もあると。そもそも50%の数字はないんですけどね、法律には、ないんですが、そういうところもあると。
あるいは、捜査当局への届出が紛失届だったから扱わないというようなところもあります。これは紛失届でも、その後、盗難されて被害に遭っているというケースも多うございまして、その状況だけで、もうちょっと総合的な判断も必要ではないかと、捜査当局には感じるわけでございます。
こうした預金者保護法の立法の意思というのを踏まえて、過去の被害につきましても最大限配慮するということである以上、きめ細かく、また金融機関によってばらつきが起きないようにできる限りの御指導をいただきたいと思っているわけでございますけれども、大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(山本有二君) どこまでそういうような事例をこの預金者保護法が射程距離に置き、またフォローしているかという点でありますけれども、この趣旨からすれば、できるだけ金融機関において真摯かつ適切な対応をしろという意味は十分読み込めるわけでございます。
したがって、先生が先ほど御指摘になりました、金融機関において補償の割合も区々ばらばらというわけでございますが、今後はこうした金融機関の対応が更に充実していけば、納得がいただけるような私はこの預金者保護の制度運用ができるだろうというように思っておりますので、もう少し時間を掛けて見守る必要があろうかなというように思っております。

○西田まこと君 正にそういう積み重ねということが大事になってくるんだろうというふうには思うわけでありますが、実際にカード補償情報センターのようなものを設けて、いろんな被害についての情報収集をなさって、この法の趣旨である最大の配慮、最大限の配慮という、過去被害における最大の配慮ということにつきましても、少しずつ情報が集まって整いつつあるのかもしれません。
しかしながら、被害に遭った方からの、お金のことだけではなくて、非常に精神的なショックというのも多うございまして、私のところにも随分いろんな方が御相談に来られますけれども、かなり、盗まれたとき、そして引き出されてしまったということが分かったときには精神的にも大きな被害を受ける。そのときに、真っ先に行った金融機関の窓口でもう門前払いであったり、あるいはもう、中には大きなポスターを張って、2年以上は補償しないということが店頭に張ってあるような金融機関もあるようでありますけれども、それはちょっと法の趣旨からしておかしいと思いますが。
そんなような対応がより被害を心身ともに大きくしてしまうと、こんなようなこともございまして、やはり金融当局として情報の収集と併せて実態をしっかりと踏まえて御指導いただきたいと思いますが、再度御決意をお願いいたします。

○国務大臣(山本有二君) 預金者保護というのは、極めて我が国経済の特に家計部門に対しては重要な位置を占めるだろうというように思います。
〔理事峰崎直樹君退席、委員長着席〕
その意味におきまして、今後、この保護政策の延長上でしっかりと金融機関が利用者のためにという姿勢にだんだんと転換していただけるというようなことを期待しつつ、見守りたいと思っております。

○西田まこと君 もう一つ、この預金者保護で、議員立法で私もかかわりましたので何か申し上げるのもなんなんですが、盗難通帳に関して補償の対象外になっておるわけなんですね。今までいろいろな法律、司法上の判断もございましたが、最近少しずつ変わってきているように見受けられまして、盗難通帳による損害を救済する判決も出てきていると思います。直近でも、昨年、平成17年に6月3日に判決されたものも、盗難通帳につきましても、特段の事情という、法律に書かれている特段の事情ということについて慎重に検討した結果、金融機関に支払を命じる裁判例も出てきていると、こんなようなこともございまして、盗難通帳ということにつきましても、これまではいろんな、日本の古来からのいろんな商習慣とかいろんな壁があって、この間の預金者保護法にはちょっと入れることができなかったわけでありますけれども、この盗難通帳への被害補償、これについてはどんなお考えで今おられますか。

○国務大臣(山本有二君) 確かに、御指摘のようにこの預金者保護法の対象の中には通帳が入っておりません。したがいまして、盗難通帳によって引き出しがされた場合、これは通帳から正規に引き出された同じような扱いになってしまうことの方が今までは多かったわけであります。その意味においては、キャッシュカードであればちゃんと補償してくれるのに通帳だったら違うと、何となく利用者からすれば判然としないという気持ちになるだろうというように思います。
そこで、先生御指摘のように画期的な判例がございました。この判例は銀行の過失をいつもいつも認めるわけじゃないけれども、しかし、払戻しが短期で相次ぐ場合とか、あるいは不自然な対応があったとかいう場合には、これは預金者を保護しようじゃないかという判例がございます。そんな意味におきましては、やがては通帳もそのような取扱いになっていくだろうという進化の過程というような意味で、これから各金融機関において真摯、適切な対応を取っていただくと同時に、我々もこうしたことにおいて十分な保護の制度が取れないかどうか、今後検討の余地があるだろうと思っております。

○西田まこと君 正に、利用者保護、利用者を保護していくという、そういう姿勢の金融行政のほどをよろしくお願いしたいと思います。
続きまして、中小企業金融につきまして若干触れさせていただきたいと思いますけれども、金融検査マニュアルの改訂ということが今正に議論をされておられるんだと思います。このうち、いわゆる別冊版で、中小企業金融につきましてはその金融庁の指導マニュアルをもうちょっと総合的に、画一的、機械的ではなくて総合的に判断をすべきであるということが趣旨だと思います。
今後、成長ということで財政再建を図っていこうという、この成長と財政再建の両立ということからしても、中小企業をいかに元気にしていくのかということが大事になってくるわけでありまして、そういう意味での金融検査マニュアルの改訂に臨む姿勢、特に中小企業金融ということにつきまして大臣の御所見をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(山本有二君) 中小企業融資編は金融検査マニュアルから引用される中小零細企業等の債務者区分の判定に当たってのより具体的な検証ポイントを記述したものであることから、金融検査マニュアルの改訂に伴い、形式面を含めた修正を行う必要が生じる可能性がございます。
一方、内容につきましては、現時点において実質的な変更が及ぶようなことは想定しておりませんけれども、いずれにせよ、今後、検討会で皆様の御意見を伺ってまいりたいと考えております。特に、今週、検討会を内部で設置いたしましたので、その点をまたるる検討し、年内には御発表できるだろうというように思っております。

○西田まこと君 特に中小企業の皆さんとお話ししますと、地域の金融機関が、2年連続赤字があるともう新規の融資はできないんですというふうに金融庁から指導されているんだということが、それがどこまで本当なのか、その真意は分からないんですけれども、そういうことを口実というか理由にして新規融資がなされない。そのことに対して、地元の中小企業又は零細企業がもうちょっと成長資金を供給してほしいと、こういうような話があるわけですけれども、こういう実態はどのように今大臣、考えていらっしゃいますか。

○国務大臣(山本有二君) 実際、中小企業金融におきましては、保証枠を見直したり、あるいは担保制度を、流動性の担保を考えてみたり、いろんな工夫がございます。その工夫に応じた検査マニュアルというものが今後必要になってくるだろうと思っておりますので、その意味においては十分な検討がなされるというように期待しております。

○西田まこと君 中小企業庁の皆さんにも今日お越しいただきましたので御答弁いただければと思いますが、中小企業融資ということでいいますと、経営者の保証不要の融資制度とか、あるいは計算書類を担保とした融資制度というのが昔からずっと重要であるということを言われて久しいわけでありますけれども、これにつきまして、再チャレンジということも含めて、単に起業、会社を起こすという人だけではなくて、今、既存の中小企業、零細企業に対する融資ということも含めてお考えを承りたいと思います。

○政府参考人(近藤賢二君) お答えを申し上げます。
今先生の御指摘のとおりだと思います。我が国が、我が国経済の活力を高めるためには、勝ち組と負け組が固定せず、だれでも再チャレンジが可能な社会を構築するということが非常に重要なわけでございます。しかしながら、現実の問題といたしましては、本人保証、連帯保証が要求されるために再挑戦が難しいという現状、また、一度失敗すると再挑戦のために資金調達ができない現状、こういった現状があるわけでございます。
こういった現状を打破し、再チャレンジする企業家の資金調達を支援するために、個人保証に過度に依存しない融資を推進するとともに、政府系金融機関や信用保証協会による再挑戦支援のための融資、保証の枠組みの創設、拡充というものを検討しているところでございまして、その実現に全力を尽くしてまいりたいと考えておるところでございます。

○西田まこと君 政府系金融機関の再編ということが今あるわけでございますけれども、こうしたお立場で財務省としてもこの中小企業融資の今後につきましてどんな基本的なお考えなのか、お考えを承りたいと思います。

○委員長(家西悟君) どなたに。

○副大臣(富田茂之君) 今、政策金融機関の統合再編成をやろうとしているところですけれども、その中におきまして、特に中小零細企業融資につきましては国民生活金融公庫及び中小企業金融公庫が担ってきました中小零細企業の資金調達支援の機能を新政策金融機関が担うこととなっております。
利用者の利便性の維持向上に配慮しつつ、中小零細企業の資金調達を支援していくことは重要と考えておりますので、積極的に取り組んでいきたいと思います。

○西田まこと君 ありがとうございます。
では、最後に、先日、安倍総理が訪中されたときに日中間での戦略的な互恵協力ということについて様々な分野で今後詰めていこうと、こんなお話がありました。エネルギーとかあるいは金融とかいろいろあったわけですけれども、特にこの金融分野での互恵協力ということにつきましてお聞きしたいと思いますが、これに具体的にどう臨む、これからいろいろ検討されていくんだと思いますけれども、どんなようなことが考えられるのか、どんなようなことを課題にして中国に対して互恵協力を考えて今のところおられるのか。課題、テーマだけでももしお話しいただければと思います。

○国務大臣(山本有二君) 安倍総理訪中のときの日中共同プレス発表の七番に金融が盛り込まれてございます。これにつきましては、既に中国と金融庁との間で政策対話ということがなされておられます。2004年、2005年と2か年ずっとやってまいりましたし、今年の11月下旬にまた再度、3回目を開こうと思っております。
国際担当の審議官が参る予定でございますが、中身につきましては、日中両国の金融セクターの状況の相互情報交換、さらに金融機関の相互進出をめぐる問題についてそれを検討する次第でございます。さらには、監督体制強化への協力、向こうからの要請でございますが、これにつきましても、実務家を派遣しまして証券市場における中国のリクエストに応じたいというように考えております。

○西田まこと君 終わります。