参-本会議-8号 2010-03-10

○西田実仁君 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました地方税法等の一部を改正する法律案等について質問をいたします。
景気の低迷、急激な公共事業の削減による地方経済の停滞は、法人住民税のみならず、個人住民税をも大きく落ち込ませています。その結果、日本全国、地方税収はどこも大幅に減少しております。
地方経済の落ち込みは中小企業の不振と同義です。地元埼玉を歩いてみても、3、4年前の設備投資が重くのしかかり、廃業したくてもできないとうつむく経営者や、これまでにない売上減にうなだれる外食企業の社長、職人さんの手当をかつてないほどに抑えざるを得ないと嘆く建設会社の事業主と、その惨状は目を覆うばかりであります。
中小企業対策として、法人税の引下げや相続税の軽減も結構ですが、いずれも黒字で企業の永続性が保証されているのでなければ対象となりません。中小企業が今最も欲しているのは売上高、すなわち仕事であります。
新産業の育成や国内供給経路の開発、海外市場の開拓などもっと活発な中小企業育成策を用意するのでなければ、地方の時代も日本経済の復活もあり得ません。地方の税収回復策についてどのように考えているのですか。中小企業はいつまで我慢をすればよいのでしょうか。仙谷国家戦略担当大臣にお聞きします。
鳩山政権では、改革の一丁目一番地に地域主権を位置付けています。しかし、その具体的な未来図はいまだよく見えません。
鳩山政権の言う地域主権は、地方政府と中央政府との対立関係を前提としているのでしょうか。そうであれば、米国のような州政府こそ政府であるとする連邦国家を目指していくのでしょうか。それとも、国がのさばり過ぎているので地方の自主性が喪失されているという意味であれば、地方分権という言葉が当てはまります。どちらでしょうか。原口地域主権推進担当大臣にお聞きします。
地方が本来的に認められている税収入は、中央政府の容喙や介入を許すことなく自らの歳入として確保できなければなりません。
平成22年度の国と地方間における租税収入の実質的配分状況を見ると、国税収入39兆4600億円から地方交付税、地方譲与税や国庫支出金などを控除した国の純租税収入は9兆2100億円にすぎません。一方、地方政府は、地方税32兆9300億円に加えて国から地方への税収入や補助金等が加わり、その純計は63兆1900億円にも上ります。
租税純収入の9割近くを地方が占めています。しかし、これは地方が豊かというのではありません。本来的には地方が地方独自の財源として確保し、歳出に向けるところが、すべて国の台所を通して容喙、介入が行われた結果がこうした比率となっています。
片や、歳出について、国と地方の重複分を差し引いてそれぞれの純歳出を計算すると、国の純歳出は約58兆円、地方の純歳出は約89兆円、合計149兆円となります。4割弱が国、6割弱が地方となります。鳩山政権では、国と地方の純歳入と純歳出に関する配分について、今後どのようにしていくべきと考えているのですか。総務大臣、お聞かせください。
平成22年度地方交付税の概算要求において、総務大臣は、地方の財源不足の補てんは国による従来のような一般会計加算ではなく、法定率引上げによる対応を求めました。結果は従来どおりでしたが、総務大臣の主張は率直に評価したいと思います。今回の措置は単年度とされています。再来年度に向けて、地方の税財源の安定化にどう取り組みますか。原口総務大臣の決意をお聞きします。
国税三税など地方独自の財源であるべきものが、国の政策、方針によって大きく変動するのでは、地方政府は国の方針に従って補助金などを受け取るしかなくなります。景気落ち込み時の歳入欠陥補てん策や国の増減税などについて、地方政府が発言権や拒否権を持たないのはおかしな話です。国と地方の協議の場において、こうした地方の言い分は主張できるのですね。総務大臣に確認を求めます。
地方にとって安定財源として最も望ましいのは消費税であり、本来、地方政府の主要財源として育てるべきと考えます。その消費税は、予算総則で、全額を社会保障関係費に充当することになっています。その提唱者は当時の小沢自由党党首、平成10年11月の自民党との連立合意に盛り込まれました。政権の枠組みは変わっても、この予算総則は今日まで維持されております。
しかし、平成22年度当初予算を見ると、基礎年金、老人医療、介護という対象経費の合計額は16兆5561億円、これに対して消費税の国分は6兆7948億円にすぎず、実に9兆7613億円の不足となっています。不足額は年々大きくなっており、平成22年度のそれは10年前の約4倍、過去最大です。
しかし、鳩山政権は、今後四年間は消費税は引き上げないと明言しています。他に新規の財源があるわけでもなく、今後の財政運営はどのようにしていくのでしょうか。その展望について菅副総理にお聞きします。
消費税収入が充てられる範囲は、基礎年金、老人医療、そして介護となっております。子育て支援は、今後、予算総則の消費税収が充てられる対象経費に入ってくるのでしょうか。消費税の使途と子育て支援の関係について菅副総理にお聞きします。
今回、個人住民税の扶養控除について、子ども手当の創設と相まって廃止とされました。しかし、地方分権の立場からは、子ども手当の財源は国の一般会計から拠出すべきであり、勝手に地方税も含めた特定の世帯構成、例えば専業主婦や手当対象の子供のいない世帯に対する増税などで賄うのはもってのほかです。本来、歳出の削減により子ども手当の財源を捻出すると言いながら、実質的には税負担の付け回しに走っているのではありませんか。総務大臣の見解を伺います。
子ども手当交付金1兆6000億円は年金特別会計から支払われます。なぜ子ども手当が年金からなのでしょうか。児童手当が消えるとされる再来年度の子ども手当は年金特別会計からは支払われないのでしょうか。年金特別会計から支払われると、歳出削減あるいは増税などの財源捻出措置がどれだけなされたのかの判明が困難になります。子ども手当に関する歳入と歳出の対応をより明確にしていただきたい。総務大臣にお聞きします。
本来、所得税も住民税も原則として税負担者の属性を問いません。所得水準に対して課税されるだけで、税金の使途は特定していません。しかし、子ども手当を支払うために、今後、子供のいない夫婦世帯や専業主婦世帯などから税金を徴収して子ども手当の財源にするのであれば、明らかに所得税、住民税の一部が目的税化されることになります。
控除から手当へという美名の下に、特定の歳出のための財源捻出に向けて所得税制の基本構造を変えるのは全くの本末転倒ではないでしょうか。最後に菅財務大臣にお聞きして、質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣原口一博君登壇、拍手〕

○国務大臣(原口一博君) 西田議員から6点お尋ねがございました。
まず、地域主権についてでございますが、政府が今国会に提出する地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案の中では、地域主権改革についてこのように書いています。日本国憲法の理念の下、住民に身近な行政は地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに、地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革、こう位置付けているところでございます。
地域への愛なくして国家への思いというのはなかなか遂げることができません。あるいは、地域をつくる参加なくして国家全体の国づくりということも考えられません。このように、地域主権改革とは連邦制を志向するものでも国家主権と対立する概念でもございません。日本国憲法の掲げる国民主権の理念の下、主権を持つ国民が自らの住む地域を自らの責任においてつくっていくという改革の取組でございます。これに対して地方分権というのは、中央にあった様々な権限を地方に移していくという、分け与えていくというパラダイムだと考えております。
地域主権改革を推進し、補完性の原理に基づいて、基本的に基礎自治体が中心となって自分たちの地域は自分たちの責任でつくっていくという方向に変えていきたいと考えています。
次に、国と地方の純歳入と純歳出の配分についてお尋ねがございました。
平成22年度の税制改正大綱において、地域主権を確立するために国の役割を限定して地方に大幅に事務事業の権限を移譲し、国と地方の役割分担を踏まえ、地方が自由に使える財源を拡充するという観点から、国と地方の間の税財源の配分の在り方を見直すこととしております。
今後、この方針に沿って、例えばサービス給付については住民に身近な地方が主に担うこととするなど、歳出構造及び歳入構造の改革を一体的に行ってまいりたい、そして地方が自由に使える財源の充実強化に取り組んでまいる所存でございます。
次に、再来年度に向けた地方税財源の安定化についてお尋ねがありました。
今、地方税が減っているのは、今の景気で減っているんじゃないんです。これは前の景気で減っておりまして、法定率の引上げについては、平成22年度における国税五税の税収が異常とも言える低い状況にあることも踏まえ見送ることとなりましたが、委員が御指摘のように、財源不足の補てんルールは平成22年度限りの措置としたところでございまして、地域の自主財源、これの拡充に努めてまいります。
また、地域の自給力と創富力を高める緑の分権改革を推進するとともに、これ、議員がおっしゃるとおりです。地方自治体が予見可能性がある、これがまた安定的であると、財源が安定的に見えると、これとても大事だと考えておりまして、地方交付税の安定性、そういう観点から消費税の議論についてもやっていきたいと思います。地方税財源の充実確保に向け、財源保障機能と財政調整機能を強化し、新たな制度の検討を含め、地方が自由に使える財源の充実強化に取り組んでまいります。
次に、国と地方の協議の場における協議事項についてお尋ねがございました。
政府が今国会に提出する国と地方の協議の場に関する法律案では、協議の対象を地方行政、地方財政、地方税制その他の地方自治に関する事項など三項目のうち重要なものと規定しております。したがって、御指摘の点も含め幅広く協議の対象となるものでございますが、具体的な協議事項の設定については、法制化後、地方側の意見も踏まえ、政府内でも調整の上適切に対応してまいります。
また、協議の結果については、協議の参加者には協議が調った事項について、協議結果の尊重義務を課すこととしております。いずれにしても、国の政策については、国と地方の協議を踏まえ、内閣が責任を持って決めていくものでございます。
次に、子ども手当についてお尋ねがございました。
22年度予算においては、国の総予算の見直しによる大幅な歳出削減や税外収入の確保により、子ども手当を始めとする新規施策に充てることのできる財源を合計3.3兆円確保したものでございます。ただ、これは暫定的な措置でございまして、平成23年度以降については、四大臣合意にはございますように、地域主権戦略会議等の場において、地方が実施するサービス給付等に係る国と地方の役割分担、経費負担の在り方等について議論を行い、予算編成過程において検討してまいります。
最後に、子ども手当交付金についてお尋ねがございました。
現行の児童手当は、費用の一部が事業主からの拠出金により賄われていることから、年金特別会計に児童手当勘定を区分して経理していると承知をしております。平成22年度の子ども手当は、暫定的な措置として児童手当法を存続させ、児童手当分について事業主負担を求めることとしたことから、会計上の取扱いも現行と同様にされたものと承知しております。
いずれにせよ、平成23年度以降の子ども手当の制度設計を行う一環において、国の予算措置の在り方についても検討がなされるものと考えております。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣仙谷由人君登壇、拍手〕

○国務大臣(仙谷由人君) 西田議員の御質問は、地方税収の回復策についての質問でございました。
国家戦略室といたしましては、本年6月ごろに取りまとめます新成長戦略に向けまして、今後、中小企業の知財活用や中小企業の技術開発の促進に対する具体策の検討を行うということにしております。このような中小企業の活性化策を通じて地方経済の回復を図って、ひいては税収の回復に努めてまいりたいと思います。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣菅直人君登壇、拍手〕

○国務大臣(菅直人君) 西田実仁議員の御質問にお答えをいたします。
まず、今後の財政運営についての御質問でありますけれども、財政の運営には成長戦略、税制、あるいは今後の社会保障、特に年金、そういった議論が必要でありまして、今その議論の場を順次準備をいたしております。
その上で、23年度以降についても、今後策定する、これは戦略担当大臣のところで中心になっていただきますが、中期財政フレームや中長期の財政運営戦略を踏まえ、また行政刷新会議等と連携しつつ、歳出歳入両面にわたる徹底した予算の見直しを行うことにより必要な財源を確保し、また財政の規律も確保してまいりたいと思っております。
また、子育て支援について、消費税収が充てられる対象になるのかという御質問であります。
私は、広い意味ではこの子育て支援も社会保障の範囲に入るというふうに認識をいたしておりますけれども、現在のところは、御承知のように基礎年金や老人医療費、介護等で消費税収を超える費用が既に掛かっておりますので、今後、社会保障制度の抜本改革の検討などと併せて検討してまいりたいと、このように考えております。
また、控除から手当への考え方についてでありますけれども、何か目的税化というものを御心配をされているようにも受け止められるわけですが、決して今般の税制改正においての控除から手当へという考え方は目的税化ということを考えてのことではなくて、ある意味では所得再配分機能の回復や、あるいは高齢者の皆さんにもう少し大きな負担をしていただくと、そういうところで子ども手当の創設と相まって年少扶養控除を廃止することといたしましたし、その結果がやや高所得者に大きな負担をいただくことになってくると、このように理解をいたしております。
また、子ども手当の創設によって、一定額の手当の支給を行うことで低所得者の方についてはより手厚い支援が実現するものとなると考えております。
なお、配偶者控除については、昨年末に閣議決定した税制改正大綱において、考え方等について広く意見を聴取しつつ整理を行った上で、今後、その見直しに取り組むとされており、今後、それに沿って取り組んでまいりたい、このように考えております。
以上です。(拍手)