180-参-法務委員会-008号 2012年06月19日

○委員長(西田実仁君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に法務省刑事局長稲田伸夫君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(西田実仁君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(西田実仁君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

○小川敏夫君 滝法務大臣の挨拶、先般いただきまして、一番最初にこの検察改革ということを述べられておられまして、その取組に大いに期待しておるところでございますが、当局の方にお尋ねしますが、検察に対する国民の信頼を取り戻すということが書かれておるわけです。信頼を取り戻すと言うんだから、今国民の信頼を失っているから取り戻すという表現になると思うんですが、そもそも何で今検察が国民の信頼を失っている状況にあるのか。その状況の把握を教えてください。

○政府参考人(稲田伸夫君) お答え申し上げます。
いろいろな原因があると思いますけれども、一番大きなきっかけになりましたのは、一昨年の秋に発覚いたしました大阪地検特捜部におきますいわゆる証拠改ざん事件、及びそれにかかわりまして当時の大阪地検特捜部長らによる犯人隠避事件というのが発覚いたしました。その中で、当時の大阪地検あるいは検察における捜査の在り方あるいは事象が発生したときにおける対応の仕方等につきまして、検察の在り方についていろいろと疑念あるいは国民の中から不信というようなことが生まれたということが大きなきっかけであったというふうに思っております。
もちろん、いろいろとそのほかにも反省すべきことは多々あろうかと思いますが、元々の大きなきっかけはそういうところにあったものというふうに思っております。

○小川敏夫君 今の御説明そのものは間違っておりませんが、いわゆる郵便不正事件のフロッピーディスクの改ざんということがもちろん一番大きなことだと思いますが、それだけじゃないという指摘もありました。
それで、いわゆる田代政弘検事が作成した捜査報告書、これが事実でない記載があるということが裁判所の証拠決定の中で指摘された。これも国民から検察に対する不信を抱く大きな原因の一つとなっていると思うんですが、その認識はいかがですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) ただいま御指摘がありました問題は、いわゆる陸山会事件に関係いたしまして、田代検事が作成した報告書の中に事実と異なる部分がある、あるいはそれに伴いまして田代検事が作成した供述調書等について証拠として採用されなかったということが昨年来ございました。そのことが検察の捜査あるいは特別捜査部における捜査の在り方についていろいろと問題があるという御指摘を受けるきっかけになったということについては十分認識しているところでございます。

○小川敏夫君 いろいろと問題があるという認識だそうですが、いろいろと問題があるというのはどういう問題だと法務省は認識しているんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 裁判書の中で、あるいは決定書の中で指摘を受けていることもございます。また現在、検察当局に対しまして田代検事らにつきまして告発がなされていることに伴いまして、それの捜査を行っているところでありますし、またこれに関連して必要な調査を行うなどしておるところでございまして、それらを待ちまして最終的にこの問題についてどういう問題があったかということを明らかにしていきたいというふうに考えております。

○小川敏夫君 例えば、判決書において、検察官が公判において証人となる可能性の高い重要な人物に対し任意性に疑いのある方法で取り調べた供述調書を作成しと、続けて、その取調べ状況について事実に反する内容の捜査報告書を作成した上でこれらを検察審査会に送付するなどということはあってはならないことであると、このように裁判所の判決において厳しい指摘をされている。
この指摘についてどのように受け止めていますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 東京地方裁判所から今御指摘のような指摘があったということについては重く受け止めているところでございます。

○小川敏夫君 いや、あったかどうかの事実を聞いているんじゃないので、裁判所からそういう指摘を受けて、法務省はどのように受け止めているかということを聞いているわけです。

○政府参考人(稲田伸夫君) 繰り返しになりますが、このような指摘を裁判所から受けたということは非常に重いものであるというふうに受け止めております。

○小川敏夫君 また、判決は、事実に反する内容の捜査報告書を作成し、これらを送付して検察審査会の判断を誤らせるようなことは決して許されないことであると、このような指摘もしておるわけです。
これについてもどのように思いますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども申し上げましたように、裁判所から判決書の中でこのような指摘を受けるということは非常に重く受け止めなければならないというふうに考えております。

○小川敏夫君 そして、裁判所は、言わばこの問題に対する結論的には、本件においては事実に反する内容の捜査報告書が作成された理由、経緯等の詳細や原因の究明等については、検察庁等において十分調査等の上で対応がなされることが相当であるというべきであると、こういう指摘をされておるわけですが、この指摘についてはどのように思いますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 御指摘は、今の、東京地方裁判所の四月二十六日の判決の中で述べられているところだと思いますが、これは非常に重いものだと受け止めるということは先ほども申し上げたとおりでありますが、これを受けまして、検察当局におきましては、先ほど申し上げました告発の受理して捜査のみならず、この原因の究明でありますとか理由等につきまして調査を行っているという段階でございます。

○小川敏夫君 この事実に反する云々に関して、この証拠決定においては、この内容についてこのように述べております。
石川が勾留段階において、選挙民は私が被告人の秘書だったという理由で投票したのではなく、私という個人に期待して国政に送り出したのに、やくざの手下が親分を守るためにうそをつくのと同じようなことをしたら選挙民を裏切ることになると田代検事から言われて、耐え切れなくなって被告人の関与を認める供述をした旨述べ、また、今更被告人が関係なかったと言っても信じてもらえるわけがないし、かえって口止めをしたに違いないとか、絶対的権力者なんだと思われる旨述べて、それまでの供述を維持することを決意したことなどを記載した捜査報告書を作成しているが、これらの記載は、取調べ録音によれば五月十七日の取調べの内容としては事実に反するものであると、このように具体的に指摘されておるわけです。
具体的に指摘されたこの事実、すなわち、事実に反する記載が捜査報告書においてなされていたということについては、これは法務省も認めるわけでございますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) お答え申し上げます。
まず、先ほど御指摘のありました決定書の中で御指摘のような指摘が裁判所からなされているということは、まさにそのとおりでございます。この点につきましては、法務省もそのような裁判所からの指摘を受けて、検察当局において事実関係について調査を行っているというところでございます。

○小川敏夫君 いや、私は裁判所からそういう指摘があったことが事実かどうかを聞いているんではないんで、裁判所から指摘されたように、この今述べた部分の記載が事実に反すると、その事実に反する記載があったというその事実を法務省は認めているのかということです。

○政府参考人(稲田伸夫君) お尋ねの、その事実に反するということがどの辺りのところまでの射程でお答えを申し上げればいいのかちょっと今分かりませんけれども、虚偽公文書作成罪に言う虚偽に当たるか否かという点であるならば、それはまさに現在捜査の過程の中にありまして、その中で判断をしていくということになるだろうというふうに思っております。

○小川敏夫君 私は、虚偽公文書作成罪に当たるかどうかという法律評価を聞いているんではないんです。
事実と違う記載があると、このように裁判所に指摘された。その事実と異なる記載があるというその事実は法務省は認めているのかどうか。それとも、裁判所が言っていることは間違いで、本当は事実に反する記載などなかったということなのか、その事実認識を聞いておるわけです。

○政府参考人(稲田伸夫君) お尋ねが逐語的に、つまり一問一答で報告書の中に記載された逐語のとおりあったのかということが事実であるのかということであるならば、そのような事実ではなかったというふうに認識しております。

○小川敏夫君 この判決書によれば、二つの例を取り上げて事実でなかったと厳しく指摘しておるわけでありますけれども、判決書は事実でない記載がその二つだけとは言っていないんで、したことなどを記載したといって事実に反する記載のうちの二つの例を挙げただけで、事実に反する記載がそれだけだとは言っていない。ほかにもあると、こういう指摘だと思うんですが、この捜査報告書の裁判所が指摘した部分以外の部分について事実に反する記載があったのかどうか、その点の認識はいかがですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 裁判所がどこまでを御指摘になっておられるかは私どもの方で明らかにすることはできませんけれども、いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、逐語的に申し上げれば、問答式で書かれている報告書と異なる内容の供述であったという点は事実であろうと思われますが、その範囲がどこまでかということは、現在、事実関係につきまして調査を行っておりますので、その過程の中で全てを明らかにしていきたいと思っております。

○小川敏夫君 その答弁の御趣旨は、まだ事実を調査中で事実を把握していないからと、事実が把握できていないからお答えできないという趣旨なのか、事実は把握しているけれども、まだ調査の結果を報告していない調査過程だから答弁できないというのか、どちらなんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 事実の把握というのはどの辺りまでを指して申し上げればいいのか、私、定かにできないところがございますので何と申し上げていいか分かりませんが、先ほど申し上げましたように、この捜査報告書が問答式で書かれているということは事実でございまして、そこの中で書かれていることが逐語的に取調べの状況と必ずしも全面的に合っていなかったという意味においては、事実と合っていないという部分があるということについての認識は持っているというふうに考えております。

○小川敏夫君 この捜査報告書と実際の取調べの状況というもの、これは録音が全て出ておるわけですから、この二つを対照すれば、その捜査報告書のどこの部分が事実であるか事実でないかということはすぐ分かると思うんですが、そうした作業は行っていないんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども申し上げましたように、この件に関しましては、田代検事らに対します虚偽公文書作成罪等の告発がなされており、併せて検察当局において調査を行っているところでございまして、その調査は捜査活動の中身にかかわるところでございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。

○小川敏夫君 これは、五月十七日の取調べの内容を捜査報告書としてまとめておるわけですから、そして五月十七日の取調べについては始めから終わりまでの録音があるわけですから、その録音の翻訳とこの捜査報告書の内容を対照すれば立ち所に明らかになるわけであります。
そして、私が聞いているのは捜査の中身を聞いているんではないんで、ただ、裁判所からも事実でない指摘があることは許されないという先ほど述べた厳しい指摘をいただいている。私は一つの事実関係を聞いているんです。事実関係として、この捜査報告書についてどこの部分が事実と違う記載があったのか、その事実関係を聞いておるんです。捜査の内容を聞いているわけではありません。

○政府参考人(稲田伸夫君) お答え申し上げます。
先ほども申し上げましたように、逐語的に見ていきますと、当日の取調べの中身と田代検事が作成した報告書の中身とでそごする部分があるということについては認識をしております。

○小川敏夫君 そのそごする部分がどこなのかと私は聞いているわけです。

○政府参考人(稲田伸夫君) 私どもといたしましては、その内容につきまして精査をしているところでございますが、先ほども申し上げました事件の処理あるいは調査の過程の中での状況でございますので、現時点ではお答えを差し控えさせていただきます。

○小川敏夫君 だから、捜査の中身を聞いているんじゃなくて、裁判所から指摘された事実と違う部分がどこにあるかという客観的な事実関係を聞いておるわけです。
では、私の方から指摘いたしましょう。
この捜査報告書には、裁判所が指摘した部分に該当すると思われるところからいきますと、石川さんの話として、「確か、逮捕された次の日でしたから、今年一月十六日土曜日の夜の取調べでは、収支報告書の不記載などにつき、小沢先生に報告をして了承を得たことや、小沢先生からの四億円を表に出さないために定期預金担保貸付を受けるという説明をして了承を得たことを大まかには話したと思いますが。私が、「収支報告書の記載や定期預金担保貸付については、私自身の判断と責任で行ったことで、小沢先生は一切関係ありません。」などと言い張っていたら、検事から、「貴方は十一万人以上の選挙民に支持されて国会議員になったんでしょ。そのほとんどは、貴方が小沢一郎の秘書だったという理由で投票したのではなく、石川知裕という候補者個人に期待して国政に送り出したはずですよ。それなのに、ヤクザの手下が親分を守るために嘘をつくのと同じようなことをしていたら、貴方を支持した選挙民を裏切ることになりますよ。」って言われちゃったんですよね。これは結構効いたんですよ。それで堪えきれなくなって、小沢先生に報告しました、了承も得ました、定期預金担保貸付もちゃんと説明して了承を得ましたって話したんですよね。」と。これが、捜査報告書の文章そのものです。
これを決定書は要約して記載したんだと思いますが、私がこの取調べの録音反訳書を詳細に読んで突き合わせた結果、この部分は取調べの中でやり取りがないんですよ。この点について、法務省はどのように事実を認識していますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほど御指摘のありました部分は告発事実にも絡むところでございますが、このような部分について逐語的に事実が報告書と合致していない部分があるということは認識しております。

○小川敏夫君 合致していない部分があると言うけど、全部ないんですけどね。じゃ、今述べた部分のどこが合致してどこが合致していないんですか。合致していない部分があると言うんだったら合致している部分があるということでしょう。そこをきちんと区別して説明してください。

○政府参考人(稲田伸夫君) ちょっと私、今手元にそういう資料を持ち合わせておりませんので、告発事実との関係で今御指摘の中にそういう部分があったということから、その部分についてはそごしている部分があるということが手元で判明するという意味で部分というふうに申し上げました。
以上でございます。

○小川敏夫君 一月十六日の取調べというくだりで今の捜査報告書のこのくだりがあるわけですが、そもそも一月十六日の取調べ云々なんという言葉が全く取調べの中に出てきていないわけですよ。
で、この部分の判決が指摘した部分なんですが、実は判決が指摘した部分、具体的に指摘した部分だけではなくて、更に延々と虚偽、架空の記載が続くんですよ。判決が指摘した部分は一月十六日と、取調べのことでありますが、更に続いて、今度は一月十七日のことになっていくわけで、「それで、翌日一月十七日の日曜日、更に具体的にその状況を確認した上で、供述調書を録取しようとしたら、貴方は「安田先生から、土日は絶対に供述調書に署名したら駄目だと言われているので勘弁してください。」と言って、供述調書を作成させませんでしたよね。」、これが検事の質問です。石川、「確かに、そう言いました。」と。
このように、一月十七日の取調べについてのこのやり取りをしたという記述があるんですが、これも全くないんですよ、取調べのその録音の中には、取調べの中には。全く架空のことがここに記載されている。この事実認識はどうですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 誠に申し訳ございませんが、ただいま御指摘がありました報告書自体が刑事事件の証拠そのものでございまして、これの中身につきまして、その当否でありますとかそれの意味とかいうことにつきましてこの場で御議論をいただくということは、やはり裁判所の司法の中身に立ち入るような場面もあろうかと思いますので、私どもの方としてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

○小川敏夫君 この捜査報告書は、裁判の中で田代検事が作成した石川知裕の供述調書、これの証拠能力を争う、その証拠能力を争う弾劾証拠として提出されたものですね。そして、その石川知裕の供述調書は、言わば大部分が証拠から排除された裁判所の決定が出て、その決定に対して異議が述べられていない、このことによってこの証拠の採否に対する判断は確定しておるわけです。すなわち、今裁判中という抽象的な言葉では、今述べられておりますけれども、この捜査報告書が提出されたその趣旨のこの供述調書の証拠能力を判断する決定は既に裁判としては確定している、終了しておるわけでありますから、この捜査報告書に関して裁判中であるからということは理由にはならないと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) まず、前提の事実でございますが、いわゆる小沢元代表にかかわる刑事事件は、指定弁護士さんが検察官役として公訴を提起し弁護人との間で訴訟が追行されているということでございまして、私どもは、検察当局も含めまして、その詳細について知り得る立場にございません。したがいまして、訴訟の段階がどうであるかということを、訴訟の段階というか、訴訟の中でどのようになっているかということを明確にした上でお答えを申し上げることはできないという状況にあることをまず御理解いただきたいと思います。
その上で、たとえ、その田代報告書につきましては、今御指摘のように弾劾証拠として用いられ、そしてその結果として供述調書が却下されたということであったとしても、当該報告書自身は訴訟における証拠であったことは間違いないというふうに思っているところでございます。
そういう意味で、訴訟、刑事事件、現に係属している刑事事件の証拠に関する問題であろうというふうに考えるところでございます。

○小川敏夫君 一月十六日、一月十七日の部分、裁判所が指摘した部分について、一月十七日には全く取調べの中に現れていないことが、全く架空の事実が報告書に記載されているということを私は指摘しました。
更に続いて、一月十八日の部分があるわけです。検事がね、「そして、一月十八日月曜日、土日は貴方の言うとおり供述調書は作らなかったが、今日はこれまでの供述内容を調書にしますよと言うと、貴方は、「実は、今日も接見で安田弁護士から、「どんな内容の調書であっても署名してはならない。例え供述したとおりのことが書いてあると思っても、どういう使われ方をするか分からないから、署名は拒否するように。」ときつく言われたんですよ。検事、本当に申し訳ないんですが、もう一日待ってもらえませんか。」などと言って泣き付いてきましたよね。」、石川はそれに対して、「そのとおりです。」と答え、そして検事が、「結局、一月十八日も供述調書は作成せず、一日待って十九日になっても、「今日の接見でも、安田先生から署名拒否を強く指示されたので署名できない。」などと言って、ごねていたじゃないですか。」、これに対して石川が、「そうでしたね。」と、こういうふうにやり取りしているという記載がある。
しかし、この録音反訳書を見ると、そのようなやり取りは全くない。すなわち、全く架空の事実経過をこの捜査報告書は更に続けて記載しておるわけです。この点の事実認識はどうですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども御答弁申し上げましたように、御指摘の田代検事作成の捜査報告書につきましては、現在係属中の刑事裁判において証拠として用いられたものでございまして、その中身につきまして、当局の方から詳細についてお答えを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。

○小川敏夫君 客観的に捜査報告書と取調べの内容のこの反訳書を比較対照すれば、即座に誰でもが分かる問題、すなわち明らかに架空のことを書いておるということについて、今法務省が答えられないという答弁しかできないというのは、それはそれなりにそういう対応しか法務省はできないというふうに受け止めておきますが。ただ、先ほど判決で指摘、あるいは決定で裁判所から指摘されたように、あってはならないこと、検察はこのことについてしっかり調査して対応しろという指摘されていることについて、法務・検察はそれに真摯に向き合う姿勢はないんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほどから私が捜査報告書の中身について御答弁できないと言っておることは、先ほど申し上げましたように、現に係属中である刑事裁判の証拠の中身等にかかわる、それの評価等にかかわるところでございますので御答弁は控えさせていただいておりますが、御指摘のような、逐語的に見て報告書の中身が録音されていた内容と違っているということにつきましては誠に遺憾な事態であるというふうに考えておりまして、これについては真摯に対応しなければいけないという認識は持っております。

○小川敏夫君 検察が国民の不信を買っている、まさにそれをしっかり取り戻さなくてはいけないと、こういう大事な時期に、言わば事実関係をしっかり明らかにしてそれに前向きに取り組もうという姿勢が見られないということは大変に残念に思っております。
ところで、今の虚偽、架空の記載というものが延々と続いておるわけです。一月十六日の取調べから始まって十七日、十八日、十九日と、全く架空の取調べ経過というものが捜査報告書に記載されている。
この捜査報告書を、その構造を見てみますと、なぜ一月十六日から十七日、十八日、十九日の取調べの経過を出して、そして石川を説得させたかというと、その前段階で、捜査報告書においては石川が供述調書の作成を拒んだから、こういう前提でのこの捜査報告書の構成ができておるわけです。すなわち、石川が供述調書の作成について素直に応じない、だから検事が一月十六日からの過去の取調べ経過というものを順々に述べて説得したと、こういう構造になっておるわけです。
しかし、その説得経過が事実でなかったわけですけれども、そもそもその前提である石川が供述調書の作成を拒んだかどうか、この捜査報告書では石川が供述調書の作成に承知しないからという前提でこの捜査報告書が進んでおるわけですが、録音反訳書を見てみると事実はそうではない。今、その部分をちょっと、該当する部分を読み上げますけどね。
そこの部分、これは録音反訳書の十一ページなんですが、調書のことに関しては、石川が、今日、調書取るんですかと。で、検事が、今日は、そりゃ調書取れって言われてますよ、今、現在の石川さんのね、その、あれからしばらく時間がたって。で、石川が、はい、と合いの手をして、続けて、検事が、ええ、で、ま、外ではさ、ま、うちの幹部からすればさ、威勢のいいことを言ってると映っているわけよ、私はね、いやそれはね、あの、そりゃ、表面見ればそうだけどと。また石川が合いの手に、はい、と言っているわけで。続けて、検事が、実際はね、そりゃ、いろんな事情があって言ってることだし、それは、もう逮捕中から言ってたことで、想定内なんですよと、うん、あのう、ということを言ってんだけど、ま、なかなかそりゃね、あの、あれだけ見ればさ、結局、供述を翻しているとかね、ええ、威勢がいいことを言っているとかさ、いうふうに解釈もされるわけだけれど、だけど、そこのところを、今現在どうなのかというのを、ま、よく聞いてと。石川がまた合いの手で、はい、と。で、検事が、ううん、そこのところは、ま、調書にするということのが、一つの今日のミッションなんだけれどもと。それに対して石川が、なるほど、分かりましたと言っているわけで。
すなわち、実際の取調べのやり取りは、石川の方が、今日は供述調書取るんですかと聞いて、検事が、それが目的だからと言われて、石川は、はい、分かりましたと言って調書を取ることに応じているわけで、別に何も拒否してない。これが実際の取調べの経過です。
ところが、捜査報告書ではどういうふうに記載になっているか。捜査報告書の、まあ要点だけ言いますか、三ページ、石川が、「今日は話だけして、供述調書は作らないという選択はないんですか。」と。で、検事が、「本日の供述内容については供述調書を作成したいと考えているが、それに署名押印するかどうかは貴方自身の判断ですよ。」と。石川さんがそれに対して、「常識的に考えて、今更、署名拒否なんてできないでしょ。署名拒否でも良いですか。」と。検事が、「だから、それは貴方自身の判断ですよ。どうしますか、署名拒否にしますか。」、石川さんが、「そんな、突き放さないでくださいよ。」と。で、検事が、「既に署名指印した供述調書については、実際に貴方が貴方の記憶どおりに供述したことが録取されているということで間違いないですか。」、で、石川さんが、「それは否定できないですよね。」と。
すなわち、そもそも、一月十六日以降の取調べの経過を順次捜査報告書ということで述べていくその前提が、石川さんが供述調書の作成に素直に応じていないと、だから説得したんだというこの構造なんだけれども、先ほどの実際の取調べのやり取りを見ていると、供述調書の作成には石川さんは初めから承知している。
前提事実が全く異なった架空の上に立って、そして架空の説得というものが延々とこの捜査報告書ではなされている。これが捜査報告書のこの虚偽の実態なんですけれども、これについては、法務省はいかがですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 繰り返しになりまして恐縮でございますが、先ほどから引用されております田代検事作成の捜査報告書及び反訳書につきましても、これもいずれも先ほど申し上げました裁判の資料、証拠として提出され、証拠として採用されているものというふうに認識しております。そういう意味で、その内容の中身につきましてどうであるかということについて、現時点で私どもの方からコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○小川敏夫君 次に、捜査報告書のちょっと場所を変えた部分を質問しましょう。
捜査報告書のまさに冒頭なんですが、冒頭は取調べ日時、場所ですから、ここは事実どおりとして、それに続いて、取調べに入る冒頭として、こういう記載がある。少し長いですが、ゆっくり読みますよ。
「取調べの冒頭、本職が「貴方は、既に政治資金規正法違反の事実で公判請求されており、被告人の立場にあるので、取調べに応じる義務はないということは理解していますか。」と質問したところ、石川は、「その点については、弁護士からも説明を受け、良く理解しています。弁護人から、今回の事件については既に被告人となっているので、無理に取調べに応じる必要はないという説明を受けましたが、小沢先生に対する不起訴処分について、検察審査会が起訴相当の議決をしたのを受けての再捜査でしょうし、私自身も深く関与した事実についてのことですので、本日は、任意に取調べを受けることにして出頭しました。」旨述べ、取調べを受けることに同意した。」と、こういう記載がある。
しかし、録音反訳書を見ると、全く一言もない、こんなやり取りは。一言のかけらもない全くのこのやり取りがこのように延々十行にわたって記載されている、このことについて法務省はどのように認識していますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) ただいま御指摘のありました点も先ほどと同じ問題があろうかというふうに思っております。そういう意味で、お答えは基本的には差し控えさせていただきたいというふうに思います。
ただ、この文書自体が確かに逐語的に中身において正確に記載されていないということは御指摘のとおりだろうというふうに思いますが、ただ、全体の流れの中でどういう位置付けであったのかというようなことにつきましては、現在、捜査、調査の中で明らかにしなければならないというふうに考えております。

○小川敏夫君 逐語的に云々とか解釈とか、そういう問題じゃないですよ。
取調べの冒頭に、要するに、任意の取調べですよということを重々説明して、石川は納得したということが延々十行にわたって書いてある。しかし、実際の取調べはどうなのか。まあ読んでもしようがないからね。とにかくそんなことは一言もないまま、今日は録音機持っていないか、いや、持っていませんね、そんなやり取りからいきなりもう中身に入っている。全く逐語的に云々という解釈の問題じゃない。全く存在しない部分のやり取りがこの十行にわたって記載されている、これはもう一見して明らかですよ。
それでも、今検察の不信が国民の関心事となって大きく取り上げられているときに、この国会の場でこれを指摘されても、事実認識すら答えられないんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども申し上げましたように、御指摘の捜査報告書に事実と異なる記載があるということについては、検察当局として非常に重く受け止めて、現在、調査、捜査を進めているということでございまして、その意味で、真摯に受け止めて一生懸命努力をしているところであるということを御理解いただきたいと思います。

○小川敏夫君 捜査報告書は、今言ったように、冒頭の手続部分から始まって、そして捜査報告書の主要部分の中身のそのほとんどが架空、虚偽だという、およそひどい、一見して明らかにこれは意図的に虚偽の文書を作成する意図で作成されたものとしか考えようがないんだけれども、これについて田代検事は、裁判所では記憶違いだったというふうに、記憶が混同したと、こういうふうに証言している。しかし、それについて裁判所は、記憶違いなどあり得ないと、にわかに信用できないと、このように厳しく指摘されておるわけです。
検事の証言が裁判所からにわかに信用できないと、このように指摘されたことについて、法務省はどのように受け止めますか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 御指摘は、二月十七日の東京地方裁判所の証拠採否に関する決定のところで述べられているものであろうというふうに思います。
確かに、裁判所において、検事が公判廷で証言した内容につきましてにわかには信用することができないというふうに指摘を受けたということは検察として非常に問題であるというふうに考えております。

○小川敏夫君 裁判所はこういう表現も使っているんですよ。田代検事の公判供述の信用性には以上で検討したとおり深刻な疑問があると。
深刻な疑問があるというこの言葉の意味、これは法務省としては、深刻な疑問があるという裁判所のこの表現の中にどれだけの問題意識があるのか、どれだけ深い問題なのかということを感じるべきだと思いますが、法務省はいかがですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) ただいま御指摘のような記載が決定書の中で述べられ、その結果として石川氏の供述調書が却下されたわけでございまして、その意味では非常に大きな問題だというふうに考えております。

○小川敏夫君 私は、この捜査報告書の、先ほどした冒頭の十行、すなわち、任意だから応じなくてもいいんだけど任意に供述したというその十行の部分ですね。
私も元検事で、取調べの実情あるいは法務省の中のこの文書のやり取りなどはある程度知っている、経験があるわけですが、そうした経験を基にこの十行の記載、先ほど述べた、取調べに応じなくてもいいよ云々かんぬんの、任意に供述したという部分のこの十行の記載ですが、これ読んで私は感じました。これは内部の人間だけのやり取り、内部に報告するための文章じゃないなと感じました。すなわち、田代検事もプロ、この報告を受けた特捜部長も検察のプロ、あるいはその上司も全部検察のプロですよ。実務に精通している検察、検事あるいは法曹であれば、この部分の記載は、本職は供述人に対して取調べを拒否できる旨説明したが、供述人は以下のとおり供述したという一行、二行の記載で済んじゃうんです。
しかし、この文章を読むと、先ほど読んだとおり、プロ同士のやり取りなら何でこんなにくどくど分かり切ったことを延々と書くのかというような文章。別の言葉で言い換えれば、これはプロを相手に出しているんではなくて、実務を知らない素人を相手が読むことを想像して書いている文章じゃないかと私は推理しておるんですよ。検事が検事に対して説明するのにこんな、あなたは既に政治資金規正法違反の事実で公判請求されており、被告人の立場にあるので、取調べに応じる義務はないということを理解していますかと質問したところ、なんてことは書かないですよ。必要ない。
もちろん、捜査報告書が取調べの任意性というものに焦点を当てた報告書ならそこのところを延々と長く書くかもしれませんよ。だけれども、この捜査報告書は石川の供述が任意性かどうかということは全く報告の対象外。報告の中身は、どうして石川が供述調書、過去の供述を維持して、そして検事の説得に応じて署名したかというくだり、そのくだりは全部架空なんですがね、が報告書のポイントであって、石川が任意に供述したかどうかということは全く争点になっていない、言わばお飾りの形式的な枕言葉ですよ。そんな部分であれば、さっき言ったように一行、二行で済むものを、あたかも、実務を知らない素人の人によくかんで聞かせるように、分からせるように易しい文章を延々と十行書いているということは、まあ私の推理ですが、この捜査報告書は検事が上司にあてた文書として、そこの目的だけで作られているものではなくて、素人が読むことを前提にして作成された捜査報告書だと私は想像しています。素人というのは誰か、この事件でいえば検察審査会の審査員は素人ですから。
どうですか、私のこの推理について。

○政府参考人(稲田伸夫君) 私の方から今の委員のお考えについてどうであるかというふうに申し上げるのは適当ではないだろうというふうに思います。
ただ、この報告書全体においては、これは今後調査をしていかなければいけないことでありますので、どういう意味で作ったのか、あるいはその目的それから用途等についても調査、捜査の対象であること、これは当然のことでございます。また、その中で任意性というような問題が争点になったのかならないのかということも明らかにしていかなければならないというふうに考えております。

○小川敏夫君 そうそう、今局長の答弁で、この捜査報告書がそもそも何の目的で作ったのかということの言葉が出ました。で、質問します。そもそもこの捜査報告書は何のために作成されたんですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほども申し上げましたように、まさにその点は現在、検察当局において行っている捜査、調査の内容にかかわることであるというふうに思っております。

○小川敏夫君 私がこの捜査報告書を読んで、おやと思うような記載が、形があったんです。先ほど私が、延々と一月十六日以降何日かにわたる取調べの状況についてのやり取りの部分を指摘しました、全て架空のやり取りだったんだけれども。ここの部分は検事と石川の言わば問答形式で報告書が記載されている。非常に読む人、特に素人には分かりやすい、そういう記載方法になっておるわけです。それが三項なんですがね。
この捜査報告書、四項というのが更にあるわけですよ。ふと思ったら、ここの部分の記載は問答式になっていないんですよ、検事と石川氏のやり取り。おかしいなと思いましたね。一つの捜査報告書の中で、検事と石川のやり取り、一つのパートは問答式になっている、続く四項は同じく検事と石川のやり取りなのに問答式ではなくて文章式になっている。ちょっと私、違和感を感じたんですが。こういうことは、誰かが書いた文章に他人が手を入れるとこういうことがよく起きるんですよね、これは私の考えですけれども。
ところで、今日、朝日新聞にも報道がありました。副部長が特捜部長にあてた捜査報告書というもの、実はそれが特捜部長が書いたものだと、こういう記事が載っていましたが、この記事に書かれた記載の真実性はどうですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) その点につきましても、調査対象として現在調査を行っているところと承知しております。

○小川敏夫君 調査対象、調査といっても、今までは刑事事件の捜査だから、あるいは裁判中だからということで説明を拒んできたけれども、ただ単に事実関係についての法務省の内部調査であれば、この国会での質問に対してそれを拒否するというのは余り正当な理由がないように思うんですが、いかがですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 失礼いたしました。先ほど、私言葉がちょっと足りませんで、御指摘のありました特捜部長、当時の特捜部長に対しましては、検察審査会に対する資料の提出等に関しまして偽計業務妨害等で、資料の提出に関する偽計業務妨害等の罪により告発を受けておりまして、その点につきましても捜査を行っているところでございます。

○小川敏夫君 その捜査報告書は、言わば積極起訴ならしめたいということの積極的な意見を述べている部分なんですけれどもね。その特捜部長が書いたという、副部長が特捜部長あてに作成したその捜査報告書、その主要部分が、私が問題にしてきた田代検事のこの捜査報告書のこの虚偽部分、架空部分、これが主要部分に大幅に引用されておるんです。
私、また一つの、想像ですよ、推理をしました。特捜部長が、副部長が自分あてに書く文書、もう副部長に任せていられないから自分で書くといって自分で書いたんなら、そこに引用している文書も、これは平検事に書かせていられないから私が作ったと、何かそんな気もするんですがね。まあ、これは私の推理ですから、別に答弁は要らないです。
そうしてみますと、捜査報告書で、まさにこの虚偽である三項の部分だけ素人に分かりやすい問答形式で書いてあって、何かあたかもほかの人が手を入れたような、すなわち文書の記載方法が違うというのも何か引っかかるんですよね。まあ、でもこれは推理の部分ですから、余り答弁はいただかなくても結構ですけれども。
私は、検察というもの、これは国の柱、社会の柱だと思うんです。正しい社会を構成する骨格だと思うんです。だから、法務・検察は絶対に正しくなくてはいけないし、いやしくも証拠物を改ざんするとか、うその捜査報告書を作成して裁判所に提出する、あるいは検察審査会に提出するということがあっては絶対にならない。検察の信頼を取り戻すためには、私は事実を全て明らかにして、その責任の所在も明らかにして、原因も明らかにして、そして出直すことが最も必要だというふうに思っておりますが。
最後に、法務大臣にお尋ねします。
やはり、検察の不信を招いた、その一つである事実でない記載があるというこの捜査報告書の件について、やはり国民の信頼を取り戻すために、事実を徹底的に調べて明らかにして、その責任をしっかりと取らせて、さらにその原因も明らかにして、そして二度とこういうことが起こさない、そういう法務・検察にしていくことが国民の信頼を回復するために最も大切なことだと思いますが、これについて、法務大臣の所感を伺います。

○国務大臣(滝実君) ただいまの小川委員の詳細にわたる御質問をお聞きしておりまして、大臣としてどういう問題意識を持ってこの問題にかかわってきたか、そんなことが大変よく分かったように思います。
今、小川委員が御指摘のように、やはり捜査報告書をめぐる不祥事件ともいうべき話でございますから、当然、検察庁はそれなりの覚悟を持って捜査に当たっているというふうに私は理解をいたしておりますけれども、今の小川委員の思いを検察もそれなりに真摯に受け止めてやっているものということを申し上げて、私も今の考え方については同感の思いを申し上げたいと思います。

○小川敏夫君 また、これで本当の最後ですけれども、大臣のこの挨拶の中で検察改革がございました。そこの部分を読んだところ、種々の具体策を策定、実施しているところであるとの記載があります。これはしかし、既にこれまでにやってきた取組について触れておられるわけで、今後大臣が何をしていくかということについては、引き続き検察改革を推進してまいりますという、この言わば抽象的な言葉だけに終わっている。
ですから、私は、これを抽象的な言葉だけでなくて、更にまたこれを具体化する様々な方策を考えていただきたい。かつては検察の在り方会議などを開いて有識者の意見を聞いてこの問題を浮き彫りにする、対応を練るというようなこともありましたが、是非この検察改革を推進してまいりますというのを具体的な形で実行していただきたいということを最後に述べさせていただいて、私の質問を終わります。

○森まさこ君 自民党の森まさこでございます。
ただいま民主党の委員から大臣に対して質問がございましたけれども、私、大変な違和感を感じましたので、冒頭一言申し上げさせていただきます。
今日はたしか大臣が新しく就任なさった大臣所信に対する質問の日だったと思います。それに七十分間、そのうち大臣がお答えになったの一回だけですか。ストップウオッチで計ってみてください、インターネットを見ていらっしゃる方。一分にも満たないような大臣の答弁時間でございました。七十分間のほとんど全てが検察庁、法務省に対する質問で終わった。小沢一郎氏の捜査供述調書にかかわる詳しい内容を七十分間使っておられました。大事な問題意識を持っておられることは分かります。しかし、質問者は滝大臣の前任の小川大臣でおられます。この法務委員会がずっと質疑してきた法務行政にかかわる大事な問題が種々ある中で、それに関するほかの項目について全く質問もなされずに、大臣のお答えの声も聞けずに、七十分間が小沢一郎さんの捜査について、これ一つに費やされたということに大変違和感を感じます。
くしくも、小沢一郎さん、先日週刊誌に、被災地にも戻らずに、放射線の情報を、機密情報を入手していたということが奥様の離縁状で暴露されていると、週刊誌の記事がございました。本当にもしそれが事実であったならば大変な問題だと被災地の皆さんが思っているときに、このような質問状況であることを私は大変違和感を感じました。
さて、滝大臣、御就任おめでとうございます。私はこの言葉を一体何回言ったでしょうか。自民党の筆頭理事、そして野党の筆頭理事として、民主党政権の初代の千葉景子大臣のときから大臣は七人目の大臣でございます。七回大臣におめでとうございますと言い続けてきて、もう言うのむなしいです。
大臣は、この法務大臣の責任というものをどのようにお感じになっておられるのか、まず一言お述べいただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 今、森委員から大臣としての責任と、こういうような御意見を承りました。基本的には法務大臣というのは日本の言わば法治国家として法の支配がくまなく確立していくと、その責任を負う立場にある、こういうふうに理解をいたしているところでございます。

○森まさこ君 大臣、大臣の所信表明、お聞きをいたしました。しかし、その大臣の所信表明は、これまでの歴代の大臣所信表明とほとんどというか、全く同じなんです。
大臣、大臣は、少なくとも前任の小川大臣の所信表明と自分の所信表明、読み比べなさいましたか。

○国務大臣(滝実君) 特に比較対照をしながら読み比べたことはございませんけれども、基本的には、小川大臣の下の副大臣を務めさせていただきましたので、その小川大臣の考え方を私もそれなりに受け継ぐと、こんな気持ちもございまして、それほど表現的には大きな表現は変わっていないと思います。
ただ、私は、あちらこちらで申し上げているのは、やはり日本の言わば法治国家としての治安の維持とかそういうことがまずは法務大臣としての責任である、そして今問題になっておるいろんな問題の中で、更に付け加えるならば、日本のこれからの成長戦略についても法務省は法務省なりにその役割を果たしていくという意味で、それなりの入国管理行政とかそういう面では新たな角度から取り組んでみたいと、こんなことも、具体的な表現としては書いておりませんけれども、そんなことも所信の中で考えたつもりでございます。

○森まさこ君 具体的に述べておりませんけれども考えていましたでは伝わらないんですよ。具体的に述べたらいかがですか。小川大臣の下で副大臣としてお務めになっておられたんですから、小川大臣の所信表明、御存じですよね。全く一言一句、同じ項目がたくさんあるんですよ。これだけ、私作りました、民主党歴代大臣の所信表明の比較表でございます。ほとんど全てが同じですし、滝大臣は前任者の小川大臣と一言一句同じ表現ばかりなんですよ。
滝大臣、私が小川大臣に対して所信表明で質問したこと、その後の審議で質問したこと、隣で聞いていらっしゃったでしょう。そこの問題点も何も答えてくれていないんですよ。その中で、被災地で盗難がたくさん出ている。今おっしゃいました、大臣、治安維持を第一に考えていく。だったら、何で御自分の施策としてこの所信表明の中に治安維持って書かないんですか。
千葉景子大臣のときからずっと私が指摘してきた問題点に対して歴代大臣は、真摯に受け止めます、そのように進めますと言いながら、何も変わっていないんですよ。私はそのことに対して大きな怒りを感じます。なめられているんじゃないか。この法務委員会、質問したことに対して何の答えもないじゃないですか。やらないならやらないと答弁なさってくださいよ。答弁するときは、真剣にやります、改善します。一体何が改善したんですか。
江田大臣のときに、盗難が多いと私が言った。今、増加の一途ですよ。全く減っていない。一時帰宅するたびに盗まれているんです。絶望して自殺するんです。そういったことを指摘しておきながら、何もない。
私は、平岡大臣のときに言いました。東日本大震災についての項目がないじゃないかと、一項目設けてくれと。平岡大臣、謝っていましたよ。だけれども、その後、小川大臣のときにも設けられていない。滝大臣のときにも、あなたのときにも設けられていませんよ。
震災後の法務大臣、何人替わったか答えてください。

○国務大臣(滝実君) 何人替わったかと申し上げるとなかなかすぐには出てきませんけれども、少なくとも六人、私は震災後から六人目の大臣かというふうには理解をいたしております。

○森まさこ君 震災後の法務大臣は四人目です。滝大臣、あなたで四人目です。
初代の大臣のときから、私、あの津波のところの、土地が流されたところの境界線、どうするのか。倒されてなくなった建物の滅失登記どうするのか、これ全部法務行政ですよ。震災関係でも法務行政全く進んでないんです。全体として復旧復興が進んでない、指摘されていますけれども、この法務行政でもやることたくさんあるんですよ。毎回毎回大臣に指摘しても変わっていない、大臣所信にも書いてもらえない。やる気がないとしか思えないです。
この大臣所信、全く震災前の大臣からほとんど同じコピー・アンド・ペーストの大臣所信を作るということ、役人に作らせてそのまま。御自分で読んで、事前にお読みになったんですか。

○国務大臣(滝実君) 少なくとも事前に一つ一つ点検はさせていただきました。
しかし、先ほども申しましたように、小川大臣の考え方を引き継ぐ、こういうこともございまして、その辺のところは表現としては特に新しいものを入れていないと、こういうことでございます。

○森まさこ君 小川大臣の考え方を引き継ぐということは、小川大臣が就任なさった大臣所信をそのまま引き継ぐということなんですか。その後のこの法務委員会の質疑は全く無視なんですか。その所信に対して私たちが質問しているんでしょう。その質問に対して大臣が答えて、あっ、それはそのとおりですね、取り入れていきますよ、頑張りますよ、そういう答えを国民の代表である私たちにしていただいて、それを取り入れてやるのが大臣じゃないんですか。
大臣は、官僚が全くコピー・アンド・ペーストの小川大臣の大臣所信と同じものを渡したとき、それに目を通したとおっしゃいました。目を通して書き直すように指示をしましたか。

○国務大臣(滝実君) 特に指示をしてはおりません。基本的には、森委員が御指摘のこの委員会におけるいろんな質疑、それを私は大臣のそばで確かにお聞きをいたしておりました。その一つ一つは大変大きな課題として、その所信表明の中でももちろん、表現はしておりませんけれども、委員会における議論の一つ一つは当然私も課題として引き継いでいく、そんなつもりを持っているところでございます。

○森まさこ君 やはり私の今の指摘と大臣の答弁を併せ考えると、民主党政権は法務大臣を軽く見ているとしか思えません。初代の大臣から全く変わらない大臣所信をそのまま書き連ねているだけです。しかも七人目です。一人一人の在任期間も半年に満たない。ころころころころ替えて、言うことの中身は同じ。国民に対する責務を果たしているとは言えないと思います。震災のことだけに限ってもこんなふうに指摘されています。遅い、足りない、心がない。そのことが法務行政の中の震災対策にもそのまま現れています。
それでは、滝大臣、御質問いたします。
小川大臣のそばで私の質問と大臣の答弁を聞いていたとおっしゃいました。小川大臣が就任したとき、私は質問いたしました。法テラスの出張所というのがございます。法テラスというのは国民の法律相談を受けるところです。大震災が起こって相談をしたい被災者が大勢いるので、政府は出張所をつくりました。幾つの出張所をつくって、福島県にはどこに幾つありますか。

○国務大臣(滝実君) 法テラスの出張所については、現在、福島県内でどこに新たにつくっていくか、こんなことを今検討している、詰めているというふうには理解をいたしております。

○森まさこ君 大臣、御存じないようですから、後ろに控えている官僚の方にお聞きになって、もう一度正確にお答えください。

○国務大臣(滝実君) この災害に関連いたしまして実は七つの法テラスの出張所をつくると、こういうことでございまして、現在四つほど決まっているわけでございますけれども、なお三つについてどこに設置するということについてはまだ決着いたしておりません。当然その中には福島県も入っているわけでございますけれども、今、鋭意詰めているというふうには私は聞いております。

○森まさこ君 私の質問は、福島県に何か所、どこにあるかという質問です。

○国務大臣(滝実君) それが幾つになるかということも含めてまだ具体的には決まっていないというふうには私は理解をいたしております。

○森まさこ君 大臣はお答えになっていただけませんけれども、福島県の中には出張所をつくっておりません。つくっていただいていないんです。
小川大臣が就任したときにもそのことを指摘もしました。小川大臣が就任したときに、もう被災から一年以上がたっていました。宮城県と岩手県には法テラスの出張所が四か所つくられて、もう満員御礼の相談者が来ていました。私、自民党でも、その担当の方に来ていただいて、どんな相談をしているか、いろいろなこともヒアリングしておりました。福島県につくってほしいと何回も政府にお願いしたんです。小川大臣にもお願いしました。この場でお願いしたんです。
滝大臣、小川大臣の隣に座っていて、そのことの記憶がないんですか。

○国務大臣(滝実君) 今申しましたように、あと残り三か所の問題があるわけでございますけれども、福島県の中の弁護士会とかあるいは法テラスとか、そういうところとの協議が、地元との間でどこに設置するかということが合意に達していないというのが現状でございまして、それは一日も早く何とかしたいとは思いますけれども、今までの交渉の経緯、調整の経緯は、いまだ成立していないと、こういうふうな状況でございます。

○森まさこ君 その答弁は小川大臣の答弁と全く同じです。三月二十二日の答弁です。それから、今六月十九日でしょう、三か月がたって何にも進んでいないということじゃないですか。だから、大臣がころころ替わって同じ大臣所信をしていて、私はそのことを指摘しているんですよ。形式だけを指摘しているんじゃないんです。その大臣所信に表れているのは、結果が出ないという、何も進まないというその状況を表しているからなんです。
ころころころころ替わって、ろくな引継ぎもしない、隣にいる副大臣も何も聞いていない。そんなことで、私たちのこの国の法務行政、司法行政がきちんと進んでいくんでしょうか、国民が守られていくんでしょうか。私は、滝大臣にこんなに強く質問するのは、そのことを強く訴えたいからなんです。七人目の大臣にもう質問するのも嫌ですけれども、言わざるを得ない。国民の代表としてこの怒りの声を伝えたいと思います。
さて、先ほど小沢一郎さんの話がありましたけれども、彼が放射線の機密情報を一生懸命入手しようとしていたという奥様の指摘が週刊誌で報道されておりました。今日も昨日も朝日新聞の一面には、この放射線の情報のことが書いてあります。
私は、国会でずっとSPEEDIのことについて質問をしてまいりました。この法務委員会でも取り上げたことがございます。最近出された国会事故調査委員会の中間報告では、SPEEDIの情報を政府が入手しながら避難民に知らせなかったということが指摘されております。しかし、昨日と今日の朝日新聞の一面に載っているのは、SPEEDIの問題ではございません。アメリカの情報が、汚染地域の情報が、アメリカのモニタリング、米軍機によるモニタリングを行った詳細な実際の汚染のマップが作られていたと。それを政府に送っていたのに、政府は避難民に知らせなかったということです。
それによると、福島県の浪江町や飯舘村を含む福島県の北西の、第一原発から見て北西の方向に三十キロを超える範囲にわたって一時間当たり百二十五マイクロシーベルトを超える地域が広がっています。この線量は、八時間で一般市民の年間被曝量の限度を超える数値です。八時間で年間被曝量の限度量を超えます。
浪江町の子供たちは六日間その汚染地域に滞留しました。政府から、どの方向に逃げたらいいか、どの範囲まで汚染されているか、そんな情報は全くないから、浪江町の中を津島支所に向かって逃げたんです。そして、そこでガソリンが尽きて、三月十六日までいたんです。安定沃素剤も、配付しろという班目委員長の指示のファクスを細野大臣が届けませんでした。パニックしているから届けなかったという答弁を私の質問に対してしております。だから、子供たちは安定沃素剤も服用していないんです。これは殺人罪だと浪江町長は言っております。
私が法務大臣に質問したいのは、政府がこのような国民の命に直結する情報を入手していながら国民に知らせないのは国民の知る権利を害していませんか、お答えください。

○国務大臣(滝実君) 森委員の御指摘のとおり、生活、命にとって重大な情報でございますから、当然もっと早く周知すべきだ、これが政府の見解であるはずでございます。
したがって、これについては、やはり初動の遅れというか、十分でなかったということは政府としても十分に反省をしなければいけない、こんな問題だろうと思っております。

○森まさこ君 私たち野党は、そこで、被曝をしたおそれがある子供たちを守るために子ども救済法というのを提案し、委員長提案で子ども被災者支援法として参議院を通りました。今日衆議院で審議が行われています。
それに対して、この浪江町長と双葉町村会から、この地域に限っては大人も物すごく濃い被曝をしたんじゃないか、今までSPEEDIは試算値ですから。ところが、昨日、今日の新聞では実測値なんですよ。これで八時間いたら限度量、年間の、それを超えている。そこに四日間いたんです。飯舘村に至っては一か月後の四月二十二日まで政府は逃げなさいと言えなかった。みんな水飲んでいたんですよ。雪かきだってしていました。そのことに対して、大人の医療に対してもこれは国が責任持つべきじゃないか、そういう意見が寄せられています。私たちは当然だと思っています。
ところが、やはり民主党政権との、民主党との協議の中で、そんな金は出せない、子供だけだと限定してきたんですよ。私は、国がやっぱりきちんと責任を認めて、医療費だって無料にしていくべきだと思います。被爆者援護法だって、広島、長崎の方には医療費を無料にしています。
法務大臣も閣僚の一人におなりになりました。野田政権の閣僚の一人です。野田政権は、福島の再生なくして日本の再生なしと言いましたが、今は全くそのことは忘れているみたいです。しかし、私は滝大臣に申し上げたいと思います。その言葉を野田総理にもう一度思い出していただいて、被災地の被曝したおそれのある者たちの心の痛みを全く顧みないような、ああいう原発の再稼働とか、そういったことばかり報道されておりますけれども、もっと被災地に寄り添っていただきたい。そして、この原発事故にかかわる国の責任は、法務大臣も国の責任であるというふうにお認めになっていただきたいと思います。国の責任であるとお認めになりますか、御答弁ください。

○国務大臣(滝実君) 野田首相が申しておりますように、福島の再生なしに日本の再生はない、まさに原発事故という大きな問題を抱えているだけに、私もそういうふうに認識をいたしております。
国の責任云々の話がございました。しかし、責任問題といってもいろんな幅がありますから、全てが国の責任で対処できるのかどうか、そういうような大きな問題でございますので、端的に責任があるとは申しませんけれども、とにかく国としてできる限りのことは果たしていく、これが今回の災害に関連する国の基本姿勢でなければいけないというのは私もそのとおりだと思います。

○森まさこ君 今、滝大臣は原発事故が国の責任であると端的にはお認めになりませんでした。大変残念です。やはり国が、政権が、閣僚の一人がきちっとその責任を認めていく、そのことから被災地の復旧復興は出発するのだと思っております。
先ほども小沢一郎さんの質問がずっと七十分間行われておりましたが、今思い返しますと、小川大臣の就任に対する質問のときも、たしかずっと民主党さんの質問は小沢一郎さんのことでございました。頭が幾つあるか分からないこのような政権与党でありますから、決められない政治が行われ、それが被災地に、決められない復旧、決められない復興、決められない法テラス出張所、決められない仮置場、住民の苦しみと直結してしまうのだと思います。
私、一昨日、南相馬市に行ってまいりました。ツイッターに書いたんです、南相馬市に行って、ホテルラフィーネに行きます。そうしたら、そこに会いに来てくれた人がいました。その方がおっしゃいました。森議員が震災直後に、南相馬市で餓死があると指摘してくれた。餓死がありました、そう言っていました。食料もなくて、水もなくて、取りに行くこともできなくて亡くなっていった人を何人も知っています。そんなふうに命の危険と背中合わせのそういう被災地で助けを求めていたという、その現実を滝大臣もしっかりと心に留めていただいて、その南相馬市に一年たっても法テラス出張所が設けられないということに対して深く反省をしていただきたいと思います。
それでは、次の質問に移りますけれども、滝大臣は衆議院の法務委員会で我が同僚の稲田朋美衆議院議員の質問に対して、今までの法務大臣のお名前を答えることができませんでした。今度は二回目ですからお答えになれると思います。初代から七人目の滝大臣まで、紙を渡さないでください、今後ろの官僚が紙を渡しました。何と恥ずかしいことなんでしょう。先ほども指摘したじゃないですか、大臣所信を官僚が作った文章のまま読むようなことをしないでくださいと言ったじゃないですか。大臣の名前ぐらい言ってくださいよ。お願いします。

○国務大臣(滝実君) 千葉大臣、柳田大臣、仙谷大臣、江田大臣、平岡大臣、小川大臣、それから私でございます。

○森まさこ君 紙を渡さなくても言えるじゃないですか。後ろの方、反省してくださいよ。子供じゃないんですから、子供扱いしてそうやって一言一句書いてあげるから仕事をしないんです。政治主導ってどういうことなんですか。書かれた大臣所信そのまま一言一句読んで、福島県に出張所がないことも知らない、しかも今まで副大臣だった、私には信じられませんが。
それでは、それぞれの大臣が何でお辞めになったか、稲田さんが聞いたときに答えられませんでした。千葉大臣は何でお辞めになったんですか。

○国務大臣(滝実君) 辞めた理由を私の口から申し上げるのはいかがかということもございまして、それなりに私の思っていることだけを申し上げたわけでございますけれども、千葉大臣は参議院選挙で当選できなかった、これがそもそもお辞めになった理由だろうと、私はそういうふうに思っております。

○森まさこ君 千葉景子大臣は、平成二十二年の参議院選で大臣でいらっしゃいましたけれども落選をされました。当選、落選の問題ではないと思います。その落選をした後、民間大臣と指摘されながら四十九日間在任をされましたけれども、次の内閣改造でお替わりになりました。
私が問題だと思っているのは、そのお替わりになるつい直前に死刑を執行なさったことです。今まで死刑を執行しないというようなことを表明されておられた千葉景子大臣が突然二名の死刑を執行し、死刑場を公開されました。しかし、そのときにもう国会が開かれておりませんで、私たちは、次の国会が開かれたとき、もう千葉景子法務大臣ではございませんでしたから、このことに対して質問ができませんでした。これは大変重要な問題だと思っております。
次の柳田大臣は何でお辞めになりましたか。

○国務大臣(滝実君) 私の口から申し上げるのは差し控えたいと思いますけれども、不適切な発言があったというようには理解をいたしております。

○森まさこ君 不適切な発言とは何ですか。

○国務大臣(滝実君) 法務大臣の国会における答弁の在り方というかパターンを自分の選挙区で発言をしたと、こういうようなことがあったというふうには理解をいたしております。

○森まさこ君 柳田大臣が何と言ったかというと、法務大臣とは二つだけ覚えておけばいいんです、個別の事案についてはお答えを差し控えます、分からなかったらこれを言う。あとは、法と証拠に基づいて適切にやっております、この二つなんですというふうにおっしゃったと。そのことを指摘されまして、これが余りにも法務大臣としてふさわしくないということで辞表を出されました。六十七日間の在任期間でございました。
次の仙谷大臣は何でお辞めになられましたか。

○国務大臣(滝実君) 私は、仙谷大臣は言わばショートリリーフとして大臣に就任したというような理解をいたしておるところでございます。

○森まさこ君 ショートリリーフにしては長いですね。五十四日間、二か月間いらっしゃいました。仙谷大臣は、あの尖閣諸島の問題で我が同僚の丸山和也議員との電話のやり取りも指摘をされました。自衛隊は暴力装置という御発言もございました。そこで、自民党、みんなの党とともに参議院で問責決議案が可決をされまして、その後の内閣改造で辞められたということになっています。
その次の平岡大臣は何でお辞めになられましたか。あっ、次は江田大臣です。江田大臣から指摘を受けました。江田大臣は何でお辞めになられましたか。

○国務大臣(滝実君) 江田大臣がお辞めになった理由は私も思い当たるところがございません。

○森まさこ君 江田大臣は辞める理由もなく、次の内閣発足に従って次の大臣に替わったということなんでしょうか。人材をころころころころ替えて、何かたくさんの人に大臣やらせてあげよう、そういうことなんでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 私はそういうふうには思いません。やはり江田大臣は、江田大臣としての大変貴重な経験を生かした法務大臣であったというふうに思っておりますから、特別お辞めになる理由はなかった。したがって、今仰せのように、できるだけたくさんの議員に大臣職を譲るというつもりは私には感じられないところでございます。

○森まさこ君 江田大臣がなられたときに震災がありまして、私、その盗難の問題を指摘させていただいたんですけれども、当初、そのようなことはございませんという答弁でありまして、その次の委員会があったときにお認めになったんですけれども、それほど問題にしたものを次の平岡大臣には引継ぎをされておりませんでした。平岡大臣に、私、所信のときに質問したら全く分かっていらっしゃいませんでした。
江田大臣については、国会の参議院議長までなされて行政をチェックする立場の方でいらっしゃったんですが、そこからまた天下りのような人事で行政機関の長になられたということが指摘をされていたということを申し上げたいと思います。
次の平岡大臣は何でお辞めになったんですか。

○国務大臣(滝実君) 私も平岡大臣の副大臣を務めまして大変残念に思ったわけでございますけれども、最初のときの言わば秘書官の任用とか、そんな問題があったように記憶をいたしております。

○森まさこ君 平岡大臣は、前科を有する人物を大臣秘書官に起用をしていたという問題が指摘されておりました。また、さらには少年法との関係でテレビ出演した際に、殺された被害者のお母さんに対して、加害者を死刑にして死の恐怖を味わわせて幸せですかというような発言をして、それが暴言だということが指摘をされておりました。
私たち、問題閣僚追及チームというのを構成しておりまして、やはり平岡大臣については大変問題があるだろうということで問題閣僚の一人にリストアップしていたわけでございますが、内閣改造でお替わりになられて、やはり問責逃れではないかと私たちは思っているわけでございます。
次に、小川大臣です。小川大臣はなぜ替わられたんですか。

○国務大臣(滝実君) 小川大臣におかれましても、私が副大臣としてお仕えを、支えさせていただきました。そういう立場から考えると、小川大臣がなぜお辞めになったかというのも私は心当たりがございません。

○森まさこ君 御本人を目の前にして心当たりがございませんと言うしかないのかもしれませんけれども、法務委員会の議事録を見ていただければ、インターネットで見ていただいている方もお分かりになると思いますけれども、競馬サイトを第一委員会室で見ておられたという問題が指摘されておりましたり、それから八千八百万円という法外な弁護士費用を公正証書に巻いて、正当に勝った原告からの強制執行に入っていくというようなことが指摘をされておりました。もちろん、御本人はそれが法的な問題になるということについては否定をしておりましたことを申し添えたいと思います。
私たちは、やはり問責を出そうということで不適格大臣追及チームの中にリストアップをしておいたわけですけれども、また内閣改造でお替わりになられたということです。
ここまでずっと見てこられて、傍聴をされている方もいかにもあきれてしまったと思うんですけれども、ころころころころと替わった法務大臣でございます。法務委員会として大変残念でございます。七人の在職期間を私も全部これで数えてみましたけれども、前任の小川大臣は百四十四日、約四か月でございます。その前の平岡大臣、百三十四日、やはり約四か月でございます。全員で平均して百六十六日、五・三か月ということで、私、小川大臣の大臣所信に対する質問のときに申し上げたんです。前の平岡大臣が四か月ですから、小川大臣も四か月だと思って質問しますけど、大臣に就任してから二か月たってから大臣所信に対する質問をして、それに対して答弁しても残り二か月では大したことできないんじゃないですかと。そうしたら、その予言どおりに四か月で終わってしまいました。
そのことが恥ずかしいとか恥ずかしくないとかいうことでなくて、法務行政、司法行政にとって大変不幸だということです。そこで質問していることが全く行政に生かされないまま次の人になってしまう。次の人は質問したこととその答弁も覚えていない。役人が書いてきた大臣所信を直すことさえしない。前からの課題について解決するように指示も出していない。そんなことで、ずっと被災地と国民はほうっておかれているわけです。
私は、毎回毎回このことを指摘するのは本当に疲れました。しかし、そんなに難しい問題ではないと思うんです。出張所をつくるのに地域の弁護士会がもめているとか何だとか、そんなことで一年何か月も掛かる問題じゃないじゃないですか。国がどうしてリーダーシップを発揮してつくらないんですか。相談をしたい、その中で苦しんで自殺していく人のことを考えたら、自分がちょっとぐらい文句言われたり批判されても無理無理つくってくださいよ。
滝大臣、この七回も替わった法務大臣の人事とそれに伴う法務行政の遅れ、これに対して滝大臣は御自身でどのように改革していかれるのか、お答えください。

○国務大臣(滝実君) ただいまの法テラスの出張所につきましては、六月四日にも地元で関係者が集まって協議をいたしたというふうに聞いております。
大変長く時間が掛かりましたけれども、とにかく今先生の御提案のように、まとまらなくても法務省のリーダーシップでどうだと、こういうようなこともございました。しかし、法テラスを実際に運用していただくのは、やはり地元の弁護士会の先生方に大きな力を貸していただかなければなかなかうまくいかないと、こういう事情もこれあり、円満に場所が決まるまで協議をしてきたというのが実態だろうと思います。
しかし、物事には限界がありますから、やはりなるべく速やかに、少なくとも立地場所、設置場所については、ここまで長く時間が掛かったのを取り返す、そんな努力をしていかなければいけない、私もそういうふうに感じております。

○森まさこ君 地元の意見をよく聞くというのは、そんなのは言い訳なんですよ。法テラスの出張所だけの問題じゃないんです。仮置場もそうです。中間処理施設もそうです。県内で自主避難している人たちに対する財政支援もそうです。全部政府は地元の意見を聞いているから進めませんと言う。地元の意見を聞くという美名の下に、地元に責任を押し付けているだけじゃないですか。何で被災者の苦しみに寄り添っていただけないのか、自分が悪者になってもそこにリーダーシップを発揮するという覚悟ができないのか、私には悔しくてなりません。
滝大臣、滝大臣は何か月ぐらい在任するおつもりですか。

○国務大臣(滝実君) 森先生の今御指摘になった過去のことに鑑みまして、そういうことにならないように精いっぱい頑張ってまいりたいと思います。

○森まさこ君 先ほど、民主党政権における法務大臣六名は、今までの六名は平均在任期間が百六十六日だと申し上げました。滝大臣、滝大臣は引退表明をなさっていますね。

○国務大臣(滝実君) そのとおりでございます。

○森まさこ君 それでは、次の国会議員としての任期が終わったら、もう議員はなさるつもりがない、そういうことですね。

○国務大臣(滝実君) そういうような表明をいたしております。

○森まさこ君 滝大臣は副大臣時代にもう引退表明をなさっておられました。こんなにも短期間で短命で、ころころ替わった法務大臣のこの職に、引退表明をなさっている方を任命した野田総理の気が知れません。今度こそは腰を据えてやっていただきたい。私が今一生懸命に質問をしてきたことも、解散総選挙があったら、もうまた水の泡になってしまうのでしょうか。私は、野田総理の任命責任に直結する問題だと思っております。
それでは、最後の残された時間で質問をいたしますけれども、先ほど法テラスの出張所のことを言いましたけれども、今度は法務局の出張所について質問をしたいと思います。
通告を出してある質問でございますけれども、法務局の出張所が全国にございます。この出張所を統廃合していくという方針で、これはずっと以前から、昭和の時代から統廃合が行われてまいりました。自民党政権時代にその統廃合の方針を出して、数まで目標も定めました。しかし、その目標は既にとっくに到達されております。しかし、民主党政権になってからもますますその統廃合を加速させております。一体どこまで地方の機関を少なくしていけば気が済むのか、私はそこのそもそもの趣旨を大臣に御確認したいと思うんですよ。
法務局の地方の出張所をまだまだどんどん統廃合していく、その方針に間違いないですね。そして、その理由は何ですか。

○国務大臣(滝実君) 基本的にはおよそ二つあると思いますね。
一つは、やはり昔と比べて道路交通事情が変わってきたと、それだけ少し遠方になってもそれだけの言わばアプローチができると、これが一つでございますし、それからもう一つは、事務をスピーディーに運ぶためにオンライン化を進めてきた。したがって、オンライン化を進めてくると同時に、そういうアプローチの時間、距離も考えずに行くことができるようになった、これが法務局を統廃合してきた大きな推進力であったと私は理解をいたしております。

○森まさこ君 福島県の中にも統廃合のターゲットになっている出張所がございます。この法務委員会でも私、質問しているんですよ、議事録読んでいらっしゃらないと思いますけれども。福島地方法務局の二本松出張所、須賀川出張所の統廃合の話です。これが大震災後もまだ統廃合すると言っています。それはなぜですか。

○国務大臣(滝実君) 大震災を経ても、今申しました統廃合の言わば推進原因になった理由というのはそれほど変わっているわけではないというのがあると思います。
ただし、聞きますと、二本松にいたしましても須賀川にいたしましても、オンラインの切替えがそれほど一〇〇%というようなところまでは行っていないということも聞いておりますけれども、基本的には、前々からずっと地元との間でこの出張所を統廃合していくと、こういうような基本的な問題点についてはそれほどの大きな変化はない、そんなことで進めているというふうに私は認識をいたしております。

○森まさこ君 震災後、住民や司法書士、土地家屋調査士等の意向を確認しましたか。

○国務大臣(滝実君) そういうことは、要するに悉皆調査ではやっていないと思いますけれども、そんなことも耳にしながら進めているはずでございます。

○森まさこ君 時間になりましたので終わりますけれども、先ほども指摘しましたけれども、被災地に寄り添っていただきたい。被災地は今、統廃合なんかする場合じゃありません。建物だって、中通り、いっぱい壊れているんですよ。滅失登記どうするんですか。その中で統廃合の話を平気で持ってくる政府の気が知れません。
大臣、よく調べていただいて、次もまたこの質問をしますので、しっかりと御答弁をいただきたいということをお願いしまして、質問を終わります。

○丸山和也君 丸山和也です。
新任の滝大臣にたくさん聞きたいこともないわけではないんですが、二つ三つに絞ってお聞きしたいと思います。
まず、最近も話題になりました指揮権発動という法務大臣の権限に絡む件ですけれども、これは今日、小川委員が質問されるということで、あるいはこれに関する質問があるかなと思って私は期待して十五分ぐらい前に来ていたんですけれども、それは別にしまして、この点に質問が余りなかったのでややがっかりしているんですけれども。いわゆる、時々、指揮権発動をするかしないか、あるいはその是非を含めて大きく取り上げられるんですね、法務行政に関しては。それで、この点についてお聞きしたいんですが、いわゆる大臣はこの指揮権発動ということについてどういうお考えを持っておられるか。
それで、それだけ言うと抽象的な答えになると思いますので、一つ、小川前大臣が退任後の記者会見でしたか、まさに今延々と質問されていました石川さんの取調べに関する捜査報告書の偽造というか虚偽の報告書に関して、これはやっぱりむしろ起訴する方向で考えたら、指揮権を発動したいんだというのか、したらどうか、しようと思っているんだという相談かどうか分かりませんけれども、それを野田総理に伺ったということをおっしゃっていたような気がします。それについて野田総理は、はっきり言えば聞いたことがないというような答弁でしたけれども、検察改革のような話はあったけれども、指揮権発動に関しては聞いた覚えはないというふうに言っておられましたけれども。
そのどちらが正しいかは、これ分かりません、全く正直言って、事実が。ただ、そのいわゆる指揮権問題が大きく取り上げられたことは事実でありますし、そういう意味で、この事件とは直接関連するしないは別にして、指揮権発動ということは大臣のやっぱり職責にかかわってくるわけですけれども、どうお考えになっているか。
それと、法的見解として、発動する場合に総理大臣の了承が必要なのかどうか、その点についてはどういうふうにお考えになっていますか。

○国務大臣(滝実君) 私は指揮権発動については前大臣とは意見を交換したことがありませんので、今の段階だけで判断をさせていただきたいと思うのでございますけれども、基本的には指揮権発動というのは、当然のことながら、発動する、発動すると言って発動するものではないと、これがもう当然の話だと私は理解をいたしております。
要するに、法文では法務大臣というのは、個別の事件じゃなくて、検事総長に対して指揮権を発動して検察の問題についての意見を言うことができる、こういうふうな理解をいたしておるわけでございますけれども、それも過去遡っても一件あっただけという具合に抑制的に物事は考えないといけない、これが第一点だと思います。
ただ、その反面で、日常茶飯事のいろんな刑事事件がございます。それについても、その反対解釈として言えば、誤解を招くようなことになりますから法務大臣としてはうっかり感想めいたこともできるだけ差し控えると、これが指揮権発動の言わば実質的、日常茶飯事としての機能かなと、こんな感じをいたしております。ただ、条文にございますから、それは、法務大臣の基本的な権限の一つということは肝に銘じて理解をしていかなければいけない、こんな受け止め方でございます。

○丸山和也君 もう一つ答えられていないんですけれども、私が最後に聞いた、あなたは法務大臣ですから、仮にここで検討するというときに、総理の了承というのは法的に必要なのかどうか、小川大臣が伺ったということがありますからお聞きしているんですけど、どういう御認識ですか。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、条文上、法務大臣に与えられた権限でございますから、そういう意味では、総理の指示を仰ぐと、こういうようなことは必要ないだろうと。ただ、内閣の一員として、やはりその事件に恐らくよるんだろうと思いますけれども、単独で決めてしまってというか、その後の問題はあるだろうと思います。

○丸山和也君 個々のことを聞いているわけじゃないんで、法的見解だけをお聞きしているわけですから、一般論的なことは時間の関係でできるだけ簡潔に、良識のある法務大臣だと思っていますから、それはもう分かっていますから、法的見解をお聞きしたわけで、一々総理大臣に尋ね、あるいは了承を得るということは必要ないと、こういう見解であるということで、私もそう思います。そういう意味で、小川前大臣はそこまで決意があったとしたらどうしてやめられたのかなという疑問も若干残っているわけであります。そういうことを言い残して、その点については終わりますけれども。
もう一つ、いわゆる指揮権発動というのは法的手続に乗った手続であります。しかし、いわゆる刑事事件あるいは刑事事件になるべきような事案に対して、その法的手続取らないで政治介入をするということは、これは当然法治国家としてあり得ないことなんですね。
そこで、やはりこれも近時の事件ですけれども、一昨年ですか、あの尖閣諸島事件がありましたときに、中国人船長が当然起訴、裁判になると思っていたら、突如として那覇地検が国際関係、日中関係を考慮して釈放してしまったというとんでもない事件があったんですけれども。これ私は、歴史だんだん解明されていますけれども、いわゆる政治介入していないと言っていますけれども、いわゆる隠れた指揮権発動なんですよね。あのときにやるならば、堂々と当時の法務大臣が指揮権を発動するなら、これは手続としてですよ、その是非は別にして、筋は通っていたと思うんですね。しかし、それをしないで、まあ官邸が中心になって圧力掛けたんでしょう。それで検事にそういう意向を伝え、検察庁がそれを釈放してしまった。
だから、これは、まあやみ指揮権発動と言われていますけど、二重の意味で非常に大変な問題を起こしたと私は思っているんですね。だから、これはどのように弁明してみても、当時の客観的状況、報道の在り方、それからその後、松本健一氏の証言、いろんなところからつまびらかになってきていると思うんですが。このようなことは断じてあってはいけないと思うんですけれども、隠れたやみ指揮権発動というようなことに対してはどういうふうにお考えになっていますか。

○国務大臣(滝実君) 基本的に指揮権発動というからには、それは法律の手続にのっとって堂々としてやらないと、これはこれでまた誤解を招くと、こういうふうに自戒をしなければいけないと思います。

○丸山和也君 それでは、時間の関係で次に移りますが、いわゆる法務大臣がころころ替わるということで、なかなか法務行政が進まないということはあるんですけれども、それは別にしまして、個々の問題について大臣が幾ら替わろうと、民主党政権あるいはマニフェストでうたっていることいろいろ含めて、やっぱりいい施策も、法案というのも幾つかあると思うんですね。そういうのがなかなか進まないということについて、ある意味では失望もしているんですけれども。
それで、一つは相続差別問題ですね。
相続での婚外子の相続分の差別、民法九百条四号ただし書というのがありますね。非嫡出子の相続分は嫡出子の二分の一だとかね。こういうことは、辛うじてまだ今裁判上合憲が保たれていますけれども、もうほとんど時間の問題で、違憲だという裁判官が多くなってきています。こういうのは、もう法律をきちっと出して、早く民法の改正をするとか、当然おっしゃっているとは思うんだけれども、なかなか進まない。
それから、もう一つは夫婦別姓ですね。
これは、別姓と言うかどうかは別にして、これも民主党政権ではやると言っておられたようだけれども、法案もなかなか出ないと。これは、なかなか議論がございます、夫婦別姓に関しては。しかし、これは前提として私の思想的理想を言うんですけれども、やっぱり強い国家というか国と自由な市民社会という、この一見矛盾するようなことをやっぱり達成するべきだと私は思っているんですね。
それで、婚姻したら夫婦が同一姓になるというのは明治になってからなんですよ、日本の歴史を見ても。恐らく、明治二十九年ですかね、民法が制定されて、三十一年施行、このときからなんですよね。姓がなかった人も明治以前はたくさんいたんですけれども、少なくとも夫婦結婚したら同一姓にするというのは、これは民法ができて初めてできているんですよ。そんなに日本的伝統でも何でもないんですよね、よく考えてみると。
それで、当時はやっぱり明治政府の富国強兵策の下に強い国家をつくるんだと、そのための家族というのは家制度の下で強くするんだと。それで強い家族、強い家制度、それが強い国家になっていくんだみたいな、一つのやっぱり国策なんですね、思想的に。それは、その時点になって初めて法的に整備されたということを見てもよく分かる。片や、アジアの諸国を見ても全然違う、中国、韓国にしてもですね。やっぱり生まれた自分の姓というのは結婚したぐらいでは変わらないんですよ。
こういうことも、だからどういう形で強い国をつくっていくかというのは時代によって変わっていくと僕は思うんですね。家制度によって強い国をつくっていくというような時代から、やっぱりそれぞれの個人のいろんな形態を、多様な形態を認めて、強い個人同士のきずなによって、自由なつながりによって強い社会をつくっていくんだという、やっぱり時代は変わっているんですよね。
そういう中で、やはり僕は、民主党さんがおっしゃっている中で、これはいろいろ賛否両論ありますけれども、少なくとも歴史的な、あるいは哲学的な観点に立ったこういう議論を堂々と進めていかないとやっぱり駄目だと思うんですね。それで、ちょっと世論がこう反対と言うとすぐやめてしまうとか、もう何というか、ポピュリズムというか、信念がない政治というのは一番駄目だと思うんですね。
特に、法務行政なんていうのは、そういう意味では非常にぶこつで質実剛健で、世論がどう言おうとかなり啓蒙していくような姿勢がないと法務行政というのはなかなか前に進まない。そうしないと、また法務行政も他の省庁の政治と比べても、さっき言葉ありましたけれども、なめられるというのは変ですけれども、軽く見られてしまう側面あると思うんですね。
そういう意味で、今、婚外子の相続分の問題、夫婦の姓の問題、こういう非常に市民社会の根幹にかかわる骨太のところを、単に世論の賛否あるいは声だけを気にしながら進めるんじゃなくて、堂々と検討してもらいたい。どういう結論になろうと堂々と議論をするということが大事だと思うんですけれども、大臣はどういうお考えですか。

○国務大臣(滝実君) 二つの仰せになった点については、いずれも法制審で既に報告が出ている問題でございます。夫婦別氏の問題にいたしましても、婚外子の相続権の問題にいたしましても、いずれももう法制審の議論は終わっている、そんな問題でございますから、法務省としては何とかこれを法案化したいという姿勢については従来と変わらないというようなことを申し上げたいと思います。

○丸山和也君 おっしゃったとおり、法制審議会でもそういうもう答申が出ていますから、それをどうするかと。やっぱり国民的な議論を起こして、短兵急に決めることはないですけれども、やっぱり流れはやっていかないと、それで選択制ということもあるし、いや、時期早いならもう少し様子見ようというんでいいんですけれども、検討はやっぱりするという姿勢を示してもらいたいということを申し添えておきます。
それともう一つ、死刑の執行ですね、死刑問題についてお聞きします。
これはもう法務行政については常にトップイシューになってくると思うんですけれども、最近、オウム真理教の逃亡していた逃亡犯が出頭したり逮捕されたりして、これで全部指名手配は捕まったということになるので、詳しい有田先生もおられる前ですけれども、ある種の、オウム問題というのは何だったんだろうなということが今再びクローズアップされなければならない時期にも来ていると思うんですね。
それで、私はここでなぜ取り上げるかというと、死刑問題という、私のやや持論になりつつあるのは、今は制度的には無理なんですけれども、こういう一種の宗教犯、かつて政治犯という言葉がありましたけど、こういう彼らも元々の教義は基本的には原始仏教に帰依するというか、阿含宗なんかにも麻原さん行っていましたけれども、やっぱり原始仏教を基盤として、それから彼らなりにいろいろ発展というか展開をしているんですけれども、そういう中で多くの被告あるいは犯罪者、オウムの犯罪者というのは、要するに人のものを盗もうとか命を殺そうということを目的にしているんじゃなくて、世の中を救済しようと、まあ古い言葉で言えば衆生済度みたいな、そういうことを目的にして勉強したりあるいは修行したりしているうちに、気が付いたらこういう凶行事件を引き起こしていたということで、そのやった行動と彼らの当初抱いていた理念とのギャップに苦しんでいるというのが、大ざっぱな言い方ですけど、実態じゃないかと思うんですね。
もちろん被害者の方の、殺されたりいろんな被害者、今も苦しんでおられる方にとっては、どういう犯行であれ苦しみは同じですけれども、一方、そういう加害者側から見ると、普通の強盗犯とか殺人犯とはやや違った面があると。こういういわゆる受刑者に対しては、僕はいわゆる終身刑というような制度を設けて、むしろ終身刑の中で反省なり悔悟なりあるいは社会に対する償いというのをいろんな形でさせるべきだと、またそういう自覚を育てるべきじゃないかというふうに思うんですね。
そういう意味で、再びやっぱり終身刑制度というのをメリットがあるんじゃないかなというふうに思ってきているんですけれども、これは当然、法改正が必要なんですけれども、また仮釈放を認めるか認めないかということもございますけれども、こういう観点から滝法務大臣は何かお考えになるところがございますかどうか。あれば、今私の意見を聞いた上でも結構ですけれども、御所見をお伺いしたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 元々、世界各国、終身刑を採用している国はそれなりにあるわけでございますね。今、委員おっしゃったように、そういう世界観からの終身刑の話は今初めてお聞きしましたけれども、刑事制度としての終身刑の在り方というのはそれなりに既に実行に入っている刑の一つでございますから、そういう意味では検討をしていかなければいけない。民主党も終身刑を一つの検討材料にしてきたことは事実でございます。
しかし、終身刑は、まだ本格的な検討に入っておりませんけれども、それなりのやはり問題点もある、その辺のところをどういうふうに理解をしていくかというのは、まだ日本としては未経験の分野でございますので、これからの問題だというふうに理解をいたしております。

○丸山和也君 いわゆる終身刑の議論が出るときには、一方で死刑廃止論という、こういう主張もございまして、ややそういう流れの中で言われてきた趣もあるんですが、私は、個人的には、死刑は死刑として存置する、しかし犯罪の種類によってはやっぱり終身刑というのがよりふさわしいんじゃないかと。より過酷だと言う人もあるんですよ。終身牢獄に押しとどめられて人格を破壊されていって、しかも税金、いわゆる国費でやっていく、そんな必要があるのかと、さっさと死刑にしてしまえと、こういう議論もあると思いますけれども、それももちろん分かります、論理的にはね。しかし、やっぱり刑の本来の目的が、応報とか教育とかいろいろありますけれども、やはり犯罪によって刑のやり方にも多様性があっていいんじゃないかと思っていますので、こういう観点から、是非骨太のやっぱり政策あるいは考え方として、法務省としてはじっくり大臣が替わろうが替わるまいがやっぱり取り組んでいただきたいと、これは私何回も言っているんですけれども、是非お願いしておきたいと。
それともう一つ、死刑に関しては死刑の執行の問題です。
これ、私、法務委員会入って、もう何年か前、最初にも言ったんですけれども、やはり今の執行は、死刑囚が今百二十人ぐらいいるんですか、ちょっと分かりませんが、大体の数字は。それで、長い間、五年も六年も、もちろんあるいは十年以上の人いるでしょう、いてですね、突然、執行されるその日の朝、告知されるらしいんですよね。それで、二、三時間後に執行されると。これが今のやり方。
私はこれは大いに問題があると。死刑囚であれ、要するに家畜じゃないんですから、牛や馬を屠殺場に連れていって、はいってやるというんじゃないんですからね。要するに、国家が人間と認めて、人間と認めた相手に死刑を断行するわけですから、そこにやっぱり、いついつ告知する、あらかじめそういう告知期間を定めて告知し、それなりの心の準備等をきちっとして、その覚悟の上でそれを受け入れるということがいわゆる極刑を受ける者に対する最後の尊厳の在り方だと僕は思うんですね。だから、そこら辺をむしろ私は堂々とやるべきであって、それが法治国家の一つの究極の姿じゃないかと思うんですね。
ところが、ずうっと、それは早い人もおりますけど、何年もたなざらしのようになって、いつか分からないと、夜が明けたら今日やると、これはちょっといささか、かなり、まあ無礼と言ってはちょっとあれだけれども、やり方として、酔狂の問題じゃないですけど、やや趣が良くないというふうに私は思うんですね。
それで、その点について、たしか国連のアムネスティですとか、国連の方からも何度か勧告もあると思うんですね。そういう告知期間を設けて、その間に身辺の整理、それから世話になった人への挨拶とか、心の整理ですよね、そういうことをした上で執行をやるということを私は是非制度改革としてやってもらいたいと言っているんですけれども、一方、法務当局から、あらかじめ知らせると動揺すると、それから、かえって混乱を起こしてはいけないからいきなりやるんだと、結果的にはこういうことなんですね。
しかし、やっぱりもう裁判で死刑を宣告され、それが確定して長い間牢獄にいるわけですから、それはいよいよ来たかということはあると思いますよ。でも、それはやっぱりそれなりの覚悟というのも自然にできるものですよと私は思うんですね。やっぱり、あとはだからそこら辺の、僕はもう本当を言うと、その期間の中で本人に選択をさせて、いついつもうお願いしますというのは変ですけれども、してもらう日を自ら選択して、一定期間の中でやるぐらいがあってもいいんじゃないかと私は思うんですね。それは別にしても、告知期間ということを是非検討していただきたいと思うんですが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(滝実君) 今委員から、人間の尊厳の問題として、あらかじめ事前に期間を少し前から予告すべきだと、こういうようなお話でございました。
確かに、現在、死刑執行を実行している国においても、あらかじめ時間を取って予告するという例もあるように聞いています。ただ、日本の場合にもかつてそうしたことが経験としてあるんだそうでございまして、その際のことを考えて、やはり時間を余裕見て予告するとそれなりの弊害というのは今委員がおっしゃったとおりでございまして、実際にそういうような事例もあったということで、日本の場合にはその日の朝と、こういうようなことに切り替わったんだろうと思っております。
しかし、改めて人間の存在、尊厳という立場から物を考えるということも必要だというふうには思います。

○丸山和也君 簡単には比較できないんですが、例えば、もう治らないがんの告知とか、余命三か月とか六か月とかありますよね。それを昔はほとんど知らせなかった。医者も、本人が動揺するだろうと、かえって死期を早めるんじゃないかと。家族もそうです。家族にすら知らせないのもあったと聞いている、昔は。今は、家族には知らせるけど本人には知らせないとかあります。でも、やっぱり流れとしては告知をするというふうにいっていると思いますよ、ほとんど。それで、やっぱりそれを受け止めて、自分の最後の生をどういうふうに送ろうかということで充実があるんですよ。
死刑囚だってやっぱりそれはそれであると思いますよ、私は。いきなりがっというのと、やっぱり、じゃ来月十日だと、最後のあと二週間かという。これはやっぱり人間というのは皆死ぬわけですから、死なない人はいないんですから、いまだに。だから、これはもう、そういう覚悟を持たせてあげる、多少動揺しようが、それはそういうことをするというのが、動揺しないのであれば動物なんですよ、動揺するからこそ人間なんですよね。だから、それをむしろ尊厳と動揺ということを享受させてあげるということの方が僕は思いやりだと思う。こういうやや哲学的なあれになりましたけれども、そういう観点から是非、かつてこういうことがあったからとか、そういうささいな例を盾に取るんじゃなくて、是非検討していただきたいと。
それから、いよいよ時間になってまいりましたので、最後の一点になりますけれども、いわゆる人権救済法案、人権擁護法案とか言われていますけれども、これも随分前から、前の政権のときからあったのかも分かりませんけれども、民主党政権も国会に提出すると。法務大臣所信の中でも何回も何回も書かれていますけれども、これについては、時間の関係で私は結論言いますけれども、必要ないというか、やや早急であるというか、もう少しきちっとしたものにした上で考え直してやるべきだと思っているんですけれども、これの見通しなり大臣の、見通しというのは提案の見通しとか、あるいはこの法案そのものに対する大臣の見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 人権法に関しましては、既に自民党政権時代にも一度国会に法案が提出されたこともございます。それから、私が自民党の副大臣として法務副大臣やっている際にも、もう一遍人権法案を出直しをしようと、こういうことで案を作ったこともございます。
今、法務省としては、そういった今までの経緯を、少しでも欠陥を除去する、そんな努力をしてまいりまして、いろいろ考えた末、成案としては一応取りまとめる段階まで来ているわけでございます。これについてはいつ国会に出せるかと、こんなこともあって、今更に検討を続けているところでございます。
今の先生の御意見でございますけれども、そういういろんな意見も参照した上で、また法務省としても改めて考えていきたいと思っております。

○丸山和也君 強烈な反対論もいろいろあるんですけれども、それはそれとして、やっぱり表現の自由、言論の自由、とりわけ政治家なんかも含めて、そういうことに対して非常に縛られて悪影響があるんじゃないかと。
その人権擁護法案という名の下に人権弾圧が行われるんじゃないかという、まあ粗っぽく言うと、そういう危惧と反対論がかなり根強いと思うんですね。ですから、ここら辺に留意して、是非慎重にやっていただきたいと、こういうことを申し上げて、私の質問を終わります。

○委員長(西田実仁君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。
午後零時三十一分休憩
─────・─────
午後一時三十分開会

○委員長(西田実仁君) ただいまから法務委員会を再開いたします。
休憩前に引き続き、法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。

○魚住裕一郎君 公明党の魚住裕一郎でございます。
一か月半ぶりぐらいの法務委員会だと思いますが、また大臣所信からという本当に、私も西田委員長が就任されて、この法務委員会に戻ってきたんですが、三人目の大臣という形になるわけでございまして、その前の方は余り、まあ江田先生は著名ですからよく覚えておりますけれども。ただ、三人目とはいえ真面目な滝先生が大臣になられる、もちろんその前の方も真面目だと思いますが、殊のほか真面目な滝先生が大臣になられたこと、喜びたいというふうに思っているところでございます。
そこで、午前中の質問もございました。前大臣と余り事務引継がしっかりなされていなかったのかなというような、個別案件についてかなり突っ込んだ質疑応答がなされたというふうに認識をするわけでございますし、また、指揮権発動の内容も、話も出たところでございます。
先般の予算委員会でも若干取り上げさせていただいたわけでございますが、先ほど大臣は、この指揮権発動、抑制的に考えなきゃいけないと、こういうふうにお述べになったわけでございますが、抑制的にというその理由はどういうふうにお考えでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、検察権は法務省に機構的には所属するわけでございますけれども、やはり司法の大事な一翼を担う機能を持っている。したがって、司法の分野としても位置付けをされている以上、これについては司法の独立性という意味からも、検察行政については余り行政的、政治的な立場から個々の具体的な事件について介入するということは、あるいは関与するということは、これは避けるべきだ。
そういう意味では、法文上は規定されていますけれども、よほどのことがない限り、これは抑制的に受け止めていかなければいけない、そういう意味で申し上げました。

○魚住裕一郎君 そうですよね。
しかも、個別案件は、やっぱり三権分立の中で政治的にかかわるというよりも、よく使われますけれども、法と証拠に基づいて判断をしていろいろな紛争を裁いていく、あるいは国家の刑罰権の効果を発揮するというのが司法であって、それを公の公益を代表する検察官が判断の上、訴追をすると。だから、その行使については、司法の独立に準じてやっていかなきゃいけない。だから、個別案件については検事総長を通じて指揮権を発動するという、そういうふうな形になっているわけであって、過度に口出しをするというのはいかがなものかというふうに、これはもうある意味では定説ですよね、そんなふうに私は理解をしておりまして、是非そんな観点から法務行政をしっかりやっていただきたいと思っております。
それで、関連して、大臣就任のときに記者会見、五日の閣議後の記者会見で、検察審査会の在り方について言及をされました。二〇〇九年施行の改正検察審査会でこの強制起訴という制度が導入された。大臣のお話の中では、裁判員制度と絡んだ制度として当然見直しの対象になる、つまり、裁判員制度は三年経過して、そろそろよくレビューしなきゃいけないなというところであるわけでございますが、私の認識では検察審査会の制度はずっと前からあるわけであって、裁判員制度とはちょっと絡んでいないわけでございますが、その辺りの御認識はいかがなんでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 司法制度改革の目的とするところの一つには、プロの法律の専門家と一般の国民との間に意識のずれが出ているんじゃないだろうか。その意識のずれというものをやはり修正していく、それが司法制度改革の一つの目標であったと思います。その一つが裁判員制度であったというわけでございまして、したがって、当時、裁判員制度の導入についてはいろいろな角度から議論がされたわけでございますけれども、同じ時期に国会に提出され採決されたこの強制起訴の問題については、同じように意識のずれというものを修正するという意味で本来あったはずでございますけれども、いろいろな議事録を見ても、議論はされておりますけれども、それほど裁判員制度に比べると細かい議論はされていないように思います。
したがって、同じ意識のずれを修正する制度として同じ時期に導入されたものですから、法律には見直しの規定はありませんけれども、裁判員制度について見直しする際にこの強制起訴に関連する部分も併せてやっていったらどうだろうかというのが、記者会見において私が発言した趣旨でございます。

○魚住裕一郎君 だけれども、司法制度改革審議会のこの意見書、検察審査会について言及していなかったと思いますし、特にこれについて議論を深めて、いわゆる内閣の司法制度改革推進本部の中でも特には議論はしていないんですよ。たまたま起訴便宜主義の中で、やはりこれきちっと起訴すべきだという、民意を反映するという、そういう制度をつくるべきじゃないのということで全く別の系列から出てきたことなんですね。たまたま時期が似通ったような形になっておるわけでございますが、必ずしも裁判員制度の見直しとリンクさせて考える必要はないんではないのかなと私は思っているところでございます。
これは、刑事訴訟法の大原則でずっと来たわけでございますが、強制起訴を見直すべきだという大臣のお考えかもしれませんが、そもそも刑事訴訟法は起訴便宜主義ですよね、今申し上げたような。検察官がいろんな犯人の状況であるとか被害感情とか、最近は外交面まで配慮して起訴するかしないかみたいな、お決めになるようでございますけれども、それを本当に根本からもう一度考え直すというところまでお考えなんでしょうか。
要するに、送検されたものは全部起訴するというふうにやっていけば、こんな検察審査会なんて要らないわけですよね。当然ながら無罪率も上がる。当然ながら推定無罪というその言葉がそのまま通用するような形になるわけでございますけれども、そこの辺りまで根幹に遡ってお考えなのかどうか、お考えをお示しいただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 裁判員制度については、言わば実績というか件数もかなり上っております。そういう中で、既に平成二十一年から見直しの議論を開始しているわけでございますけれども、この強制起訴の方については件数も少ない、そういう意味ではまだまだ実際の議論をするには早いかもしれませんけれども、いずれこの事案というか実績をというか、現実の実態を少し調査をし、事情を収集しながら手を付けてもいいんじゃないだろうかな、こんなような気持ちもございました。

○魚住裕一郎君 起訴便宜主義についてはどうお考えですか。起訴便宜主義、検察官がこう判断するという考え方ですね。もちろん被害が軽微だ、起訴するまでも当たらないというような形でやってきたわけでございますが。
しかし、無罪だとおっしゃっていることも含めて全部起訴して裁判所で黒白はっきりさせるという考え方もあるわけですよね。ここら辺りはどうですか。

○国務大臣(滝実君) 元々、強制起訴の問題は起訴便宜主義とは相入れない部分があるわけですね。起訴便宜主義というのはやっぱり検察官から見てこれは起訴を猶予すべきだという問題が制度的にあるわけでございますけれども、この強制起訴の問題はそういうような次元の問題じゃないものですから、猶予すべきだという判断というのは別の問題としてこの便宜主義ではやるというか、強制起訴の場合には出てくる。そういう意味では少し次元が違うというふうな理解をしているんですけれども、実際問題として次元の違う問題ですけれども、強制起訴の対象にはなってくると。こういうところがこの制度の非常に複雑で、ある意味では奥深いところかもしれません。そんな感じを受け取っています。

○魚住裕一郎君 根幹にかかわることでございますので、いま一度よく御検討をいただきたいと思います。
それで、今もお話出ておりますけれども、先月の二十一日でちょうど裁判員が導入されて三年になるわけでございます。法務省でもこの問題につきまして検討会を設置して検討を重ねているというふうに思っておりますが、何点かお聞きをしたいと思っております。
先日、最高裁の裁判員に対するアンケート結果が発表をされました。審理の内容が理解しやすかったという声が六割と、これはめでたいことなのでございますが、ただ毎年だんだん減ってくると、逆に分かりづらかったというのが増えてくるという形になるわけでございますが、その中でも裁判官の説明が分かりやすい、その次は検察官、そして弁護士がその次になるという、弁護士が一番分かりづらいということでございますが、この検察官の説明に関して、この分かりやすさ、法務省としてどういうような取組をしているのか。
また、弁護士さんには頑張ってもらわなきゃいけませんけれども、三会といいますか、裁判所、検察庁、また弁護士会、地裁レベルでもいろんな連絡会とかあろうかと思っておりますが、そんな場を通してこの弁護士会へどういうような努力をしてもらいたいということを働きかけるか、法務省、また最高裁としての御答弁をいただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 現在の裁判員制度に踏み切るまでには相当何回も回数を重ねた言わば模擬裁判をやってきたと思います。そういう中で、できるだけ分かりやすい裁判を目指すんだということで、いろいろ工夫をしてきた結果がそのスタートで取り入れられてきた。
しかし、その後の状況を見ると、やっぱり難しい事件、重大問題を扱うだけに難しい事件がその中に混じってきたということもこれあり、そういう意味では分かりにくくなったということだと思いますけれども、要は、やはり平成二十一年の五月のあのスタートの時点までの模擬裁判のそういう初心に返って、もう一遍検察側も弁護側もその努力を忘れずにしてもらうということがやっぱりこの問題を従来のような格好で分かりやすいという判断をいただけるそもそもの前提条件じゃないかなと、こんな感じをしております。

○最高裁判所長官代理者(植村稔君) 委員御指摘のとおり、裁判員等に関するアンケートによりまして、審理内容の理解のしやすさ、このデータが年を追って低下しているということは、私どもとしても重く受け止めております。
平成二十一年は、事件数そのものが百四十件程度でございまして、期間も七か月程度で終わっている事件でございますので、しかも自白も多かったということがございまして、そこはある程度特異な事件の固まりだったような気がしますが、その後二十二年、二十三年も若干低下している点、これはやはり重く考えなきゃいけないとは思っております。
今大臣もお話しになりましたように、原因についてはいろいろ考えられるんだろうと思っております。そこで、裁判所として今どこに力を入れているかということでございますが、施行以来見ておりまして、現場の裁判官の御意見なども聞くと、やっぱりちょっと当事者の御主張も、冒頭陳述で示されることが多いんですが、かなりそれが細かくなっていないだろうかと。それから、証拠調べでも供述調書の利用がございまして、事件によってはそれが長い時間朗読されるようなこともあるように聞いております。こういった書面をたくさん使うようになりますと、やはり初めて刑事裁判に参加される裁判員の方にとっては分かりにくい、あるいは理解しにくいというようなこともあるのかなと、一つの原因ではないかと考えているところでございます。
そこで、裁判所といたしましては、もちろんこれ先生も御承知のとおり、公判前整理手続というのが入りましたので、そこで事実認定や量刑のポイント、これを法曹三者の方できちんと把握するということがまず大事でございますが、その上で、証拠調べにおきましても、刑事裁判に初めて参加する皆さんでございますので、実感を持って証拠あるいは事件そのものに接していただきたいと考えておりまして、検察官、弁護人の理解と御協力もいただきながら、自白事件の場合においても重要な事実については可能な限り証人から生の事実をお聞きすると、それで裁判員に心証を取りやすいような審理にするような工夫をしたらどうかということで、各庁の裁判所、弁護士会、あるいは検察庁ともいろいろお話をしていると承知しておりますが、今その方向で努めているところでございます。

○魚住裕一郎君 法曹三者は専門家でございますので、言葉遣い一つにしても、自分は分かっても裁判員は分からないということがあり得るわけでございまして、不断の分かりやすさという点について検証をし、かつ働きかけをしていただきたいというふうに思っております。
次に、裁判員裁判の対象事件につきましてお聞きしたいと思いますけれども、前任の小川大臣は、将来は高裁にも拡大したいというふうにもおっしゃっておいででした。滝大臣も同じ認識かどうかということ。
また、対象事件について、例えば日弁連も、被告が望めば対象外でも裁判員裁判で審理すべきではないのか、まあ被告側に選択権を認めるというやり方ですよね。また、場合によっては、裁判員の経験者の方によれば、薬害とか公害、そういう国民生活に直結するような案件も国民の感覚を取り入れるべきだというような意見もあるということでございますが、この対象事件拡大につきまして、大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 基本的にはこの見直しの検討会においていろんな議論をしていく課題だと思いますけれども、控訴審のようなことになってくるとかなり第一審とは違った経験というか判断が求められると、こういうことでもございますし、それから、書面主義の部分が相当多いものですから裁判員にそれこそ大きな負担が掛かってくるという問題もありますので、もう少し第一審の裁判で国民の間に広く経験を積んだ上でないと、なかなかそこまで足を伸ばす、手を伸ばすということは難しい問題があろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、検討会でもってこの問題も結局排除せずに議論をしてもらう必要があろうかと思っております。

○魚住裕一郎君 対象事件を拡大すべきだという意見の一方で、例えば性犯罪であるとかあるいは薬物、これをちょっと見直した方がいいんじゃないかという意見もあるわけですね。
例えば、性犯罪被害者がなかなかプライバシーの侵害を恐れて被害届を出さないという、そういうことも指摘されているわけでございますが、この辺の裁判員裁判の運用はどのように現在配慮されているのか。あるいは逆に、それを、被害者側で裁判員裁判か否かを選択するということも一理あるんではないかと、そういう意見についてどのように思っておいででしょうか。

○国務大臣(滝実君) 例えば、今御指摘のように、性犯罪なんかの場合には被害者側が拒否するというような気持ちというのはあると思うんですね。プロには率直に話せるけれども、やっぱり普通の、一般、隣組のような感じで接触する裁判員にはなかなか微妙なところまで知られるのは嫌だとか、そういうような問題が付きまとうという問題がございますから、確かに対象範囲の見直しの中では、性犯罪であるとか、あるいは日ごろ余りよくなじんでいない薬物の問題ですね、こんなのは普通の人はなじんでいないわけですから、そういうことまで対象にしておくのはどうだろうかという議論があることは事実だろうと思います。そういうことも含めて検討会で議論をしてもらうということも大事なことだろうと思っています。

○魚住裕一郎君 今大臣のお話もございましたけれども、先ほど最高裁の方からもありました、裁判員の実感という言い方、表現があったと思いますけれども、もちろん犯罪はそんなに身近にあるわけではありませんが、例えば薬物犯罪、まあ身近にあるかどうかは分からないけど、使用は比較的多いと思うんですが、例えば薬物の密輸事件なんてほとんどお目にかからないというか、それは市民である裁判員とプロである裁判官と判断が異なるというような指摘もなされているわけでございます。
新聞記事によれば、最高検ではこの覚醒剤密輸事件、捜査の方法あるいは立証方法を見直すための検討会を立ち上げたということでございますけれども、いつまでにどういったことを検討するのか、お示しをいただきたいと思います。

○国務大臣(滝実君) おっしゃるとおり、薬物の中でも密輸事件なんというのは、それこそ一般の国民からするとその実態なんというのは見たことも聞いたこともないと、こういうことでございますから、裁判員裁判でその全体像を理解すること自体が難しい、こういうことはあると思いますね。したがって、今までの事例でもこの種のものは割と無罪になっているケースが目に付く、件数としては総体は僅かですけれども、無罪になっているケースもある、目に付くわけでございます、その僅かな事件の中でですね。
そういうことを考えると、やはりそういう密輸事件、薬物の特に密輸に絡んだ問題については外した方がいいだろうかとか、そういうような議論というのはあるわけでございますから、検討会でも当然それは俎上に上ってくる問題だろうと思っています。

○魚住裕一郎君 じゃ、対象事件から外すという方向性なんですか。つまり、捜査あるいは立証方法をどういうふうに工夫するかということじゃないんですか。

○国務大臣(滝実君) 立証方法についても、それはどういうふうに立証するかということ自体が難しい事件だろうと思いますけれども、余り国民になじみのないものは、裁判員の言わば国民的な意識、要するにプロと一般国民との意識の乖離ということを言っても、その一般国民そのものが元々感覚のない事件というのはいかがだろうかという、そういう判断もあり得ると思いますので、そういう意味で検討対象かなと思っておるわけです。

○魚住裕一郎君 次に、裁判員の守秘義務についてちょっと御意見をいただきたいと思います。
裁判員の守秘義務、本当に法律を作るときから、マスコミの人たちを含めて守秘義務というのは大きな議論がありました。やはり範囲が不明確であるという指摘もありますし、例えば評議の感想を述べることはできるけど具体的な説明は守秘義務違反になると、こういう言い方をされているわけでございますが、だけれども、それを一生涯続くというふうになるとちょっと重いのではないのかなという気もします。
だから、日弁連の意見書でいえば、少し緩和したらどうだろうか、その罰則の適用は悪質な場合に限るというような日弁連は提言をしているわけでございますが、この守秘義務の緩和に関して大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

○国務大臣(滝実君) これは、当初議論をしているときから、守秘義務は本当にきちんと守れるか、あるいはそれに対してペナルティーを科すのがいいかどうかという議論は最初からあった議論でございますね。ですから、そういう意味では、いろんな議論の中で、まあ感想ぐらいはいいんだろうとか、一部そういう、途中から緩和した、条件緩和といいますか、そういうような空気になってきたことも今までの経緯としてあるわけでございます。
したがって、今委員の御指摘のように、一生涯守秘義務は重いとか、そんなことができるはずがないとか、そういういろんな問題もありますから、やはり今までの実績を踏まえて検討をしていかなければいけないと思うのでございますけれども、この二十一年に始まって以来、守秘義務違反で大きなトラブルというか問題が出てきたというようなものは余りないんじゃないか、ほとんどないんじゃないだろうかなという意味では、少しおおらかにしても、まだ許せる部分が残っているという意見は、それは検討に値するんだろうと思います。

○魚住裕一郎君 これは裁判員制度導入するに当たって、ある意味では民主主義の実験場といいますか、そういうような観点もあったわけであって、大事な意思決定を市民が参加をして行うという貴重な機会であるわけですね。だから、そういう人たちがそれを踏まえていろいろな意見が発表できるというか、そういう方向性をやっぱり考えていくべきではないのかなというふうに思う次第でございます。
続いて、先ほどもお話ございましたが、死刑ですね、これは裁判員の負担に関して、死刑を下すというのは大変な御苦労があると思うんですよね、これは。だから、この心のケアということも、なかなか決められない政治と言われていますけれども、裁判員は決めなきゃいけないという大変な重さの中で御判断をしているわけでございます。
いろんな意見がありますけれども、例えば、裁判官、裁判員の全員一致によるという、そうすべきだという意見もあるわけでございます。また、再審であるとか、あるいは冤罪になる可能性がないとは言えないと考えると、一般国民に死刑の是非を判断させるというのはやっぱり酷なんじゃないかなという側面もあります。
先ほどもお話ございましたけれども、そもそもこの死刑制度存廃あるいは執行方法に関して法務大臣はどのようにお考えなのか、いま一度大臣の死刑制度に関する基本的な姿勢をお伺いをしておきます。

○国務大臣(滝実君) 裁判員制度が始まるまでは、恐らく裁判員は死刑の判決にはよう踏み切らないんじゃないだろうか、こんなことも言われました。死刑を避けて通るというか、そういうようなことも言われていたのでございますけれども、スタートしてみたら、やはり裁判員は裁判員なりに、今御指摘のように死刑判決ということについても恐れずに避けずに決定をしていただいているということは、当初の想定よりはやっぱり違っていると、こういうような事柄でございます。
だからといって、今お尋ねの死刑制度を、裁判員が死刑制度を支持しているから死刑制度はそのまま存置していていいとか、そういうことには必ずしもつながらないと思いますけれども、少なくても裁判員制度を通じて、死刑判決についても国民は決して避けてはいない、こういうことも踏まえながら、今後の死刑制度そのものについても裁判員の結論には安住せずに、それはそれとして死刑制度そのものがどうだろうかということは今後とも検討していくべき課題だろうというふうに思っています。

○魚住裕一郎君 先ほどの丸山先生の質問の中でございましたが、終身刑ですね、これはインデックス二〇〇九の中にも法務行政の中でありましたね。で、政権交代になった。
これ、法務省の中でもきちっと、もう三年たとうとするわけですから、結論がそろそろ出ていいんではないのかなというふうに思うんですよ、政策集ですからね。最低年金とはちょっと違うわけでございまして、しっかり議論してもらわなきゃいけないなというふうに思いますが、死刑制度の存廃の問題と並行してもいいと思っておりますけれども、この見通しというか、終身刑の検討状況といいますか、どんなふうになっていますか。

○国務大臣(滝実君) 将来というか、政務三役の中で議論してきたことは存廃そのものにずっと掛かり切りになってきたわけでございます。
したがって、終身刑のところまで踏み込んだ議論というか、そういう領域にまで検討の幅を広げてきたわけではありませんので、やはり今仰せのとおり、終身刑についても、これは民主党として一つの旗を掲げているわけでございますから、そういうこともあり、そしてこの委員会においても終身刑についてももっと議論すべきだと、こういうような御意見でもございますので、やはり終身刑についてももっと本格的に取り組んでいく時期には来ているんだろうという感じはいたします。

○魚住裕一郎君 だけれども、もう三年たつんですからね、この旗が偽物だったみたいなことを言わないでいただきたいなというふうに、しっかりやっていただきたいと私は思っております。
また裁判員に戻りまして、最近、審理の長期化という問題が指摘されております。先ほどもありましたけれども、公判前の整理手続で争点を絞った審理あるいは公判廷におけるスムースな質問の在り方、そういう工夫がなされていると思いますけれども、それでも長期化する。逆に、争点絞り過ぎて裁判員が分からないという、そんなことも言われているところでございまして、何か裁判員OBの方で裁判員ネットというのがあるんですか、そういう団体からは訴訟進行に関しても裁判員の意見を反映させる必要があるというような提言がなされているわけでございますが、こういった提言に対して大臣はどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 裁判員制度の発足のときからできるだけ裁判員に負担の掛からないように、その第一が長期化することを避けると、こういうことでございました。現実には百日を超えるような裁判も現実に経験しているわけでございますけれども、そういう観点からいえば、争点を単純化するということも関連すると思いますけれども、できるだけ長期化を避けるようなことをどうするかということは、これ今最大の課題だろうと思います。恐らく、最高裁当局もそのことについては相当に研究をされていると思いますから、そういう研究も併せて必要な今段階だろうというふうに思っております。

○魚住裕一郎君 だんだん時間なくなってきましたけれども。
次に、この後、裁判所法の改正案が趣旨説明されますけれども、その前に、法曹養成に関連してお伺いをしたいと思いますが、総務省で意見書が出ましたけれども、先般。要は、その総務省の意見書というのは、司法試験合格者三千人目標で、まだ未達成ですねと。近い将来、目標達成というのは困難ではないかと。それで、一方で、弁護士に対する需要というのは顕在化していない。司法制度改革の議論のときはどんどん需要が多いだろうという大前提でやっていたわけでございますけれども、そういう意見が出ております。
政府の立場についてちょっと確認しておきたいんですが、鳩山さんが大臣のとき、まずは三千名まで目指すんだと、その後、それから考えるという話でございますが、その後、特に法務大臣としてこの合格者数について特段明確な方針が示された記憶ないわけでございますが、滝大臣のこの合格者数についての基本的なお立場について御確認をさせてください。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、三千人の目標を設定したときは、御案内のとおり、弁護士、裁判官、あるいは検察官といういわゆる法曹三者だけでなく、社会の隅々まで法律専門家がいることが大切だという発想方法で出発いたしたわけでございますけれども、残念ながら社会の隅々まで法曹が進出するような環境にないと、こういうことでございますから、三千人という当初の構想が、その基盤を今まだでき上がっていないということでもありますから、そういう中では三千人がなかなか手の届かないところにあるということは、これは意識していかなければいけない問題だろうと思います。
したがって、三千人にこだわっていてはなかなかこの法曹養成制度そのものが否認されることになりますので、そこのところは実態により合わせた運用というか、問題も必要だろうというような感じを持っております。

○魚住裕一郎君 先般、日本弁護士連合会が会長選挙で、私も三回ほど投票しましたけれども、ようやく、ギリシャ並みの選挙をやっているなという感じであったわけでございますけれども、だけれども、候補者はやっぱり合格者数千五百人ぐらいだと。新執行部もそうなんですね。そういう具体的な数字が出されております。
大臣として、いま一度この点についてどのようにお考えになっているのか。やはり私は、司法制度改革の当初の理念というのはやっぱりこれはきちっと踏まえておかなきゃいけないと思うんですね。方向性は正しいと思うんですよ。だけれども、先ほどの総務省の指摘があったこともまた現実の姿であるわけでございまして、その辺を踏まえて議論を展開をしていかなきゃいけないなと思っております。
そんな中、よく法曹の中で聞かれる話は、法曹の質の低下みたいなことを言われるわけですね。司法試験合格してくる方ですからみんな優秀だと思いますけれども、検察官にしても裁判官にしても優秀じゃない人は採用しないという形になって、残るは弁護士になるわけであって、弁護士の質の低下みたいな形言われるわけでございますが、この点について大臣はどういう認識を持っておいでになるのか、また、どういうような形でこの懸念といいますか、払拭をしていくのか、大臣の決意を併せて伺って、質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 最近の法曹は質が落ちると、こういうような言葉も新聞なんかでは躍っております。しかし、現実にはそんなことはあり得ないというふうに私は信じております。やはり後生恐るべし、若い人たちは若い人たちの我々が想定できないような能力が発揮できると、こういうものが法曹の現場じゃないかというふうには思います。

○魚住裕一郎君 終わります。

○桜内文城君 みんなの党の桜内文城です。今日は二点について質問させていただきます。
一つ目が、被害者参加人制度に関するものです。
現在、被害者参加人が実際に刑事訴訟に、刑事手続に、裁判に参加した際、旅費等の支給がなされていないという現状があります。やはり被害者参加人の方も仕事を休んで裁判に参加するわけですので、そういった意味で、いろんな意味で負担が当然ある。この負担という意味でいえば、自ら望んでというわけじゃないという意味でいえば裁判員と似通った側面もあるかと思うんですけれども、その旅費等の支給について、まず大臣、どのようにお考えになるのか、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(滝実君) 元々、被害者基本法からスタートした問題でございますけれども、法務省としては二年以内に結論を出すと、こういうようなことでとらえておりますので、そろそろこの問題については結論を出さなければいけない時期かなと、こういうふうに思っております。
ただ、その出し方についてやっぱりいろんな意見がありますので、その辺のところの調整というのが恐らく最大の課題だろう、こういうふうに理解をいたしております。

○桜内文城君 実際、平成二十三年三月に出ております第二次犯罪被害者等基本計画、法務省の方でお出しになっているわけですけれども、そろそろ来年度からそういった支給の制度をつくるという意味でいえば、これから役所での予算編成の時期にも入っていきますし、結論を得ていただきたいと思います。
その出し方ですね、旅費等の支給の方法について現在いろいろ検討がなされていると聞くんですけれども、その出し方として、訴訟費用の一類型として位置付けるのか、あるいは、そうではなくて、被害者参加制度の利用に資するための配慮の一環と位置付けるのか、ここが大きな論点になっているとお聞きしております。
私自身は、是非、訴訟費用の一類型として位置付けていただいた上で制度設計を考えていただければなというふうに考えておるものですけれども、この辺について、大臣、今のところどのような、もちろん刑事局長でも結構ですが、お答えください。

○国務大臣(滝実君) 基本的には、旅費と申しても、極めて少額からそこそこまとまった金額まであり得ると思うんですね。したがって、一つ一つの旅費の支給そのものは大変細かい事務を要すると、こういうことでございますから、そこのところが、せっかく被害者に旅費を出すにしても、その辺のところの便宜がどうやって図れるかということから検討をしていくというのが基本姿勢だと思いますけれども、その辺のところの感覚がまだつかめないものですから、どうしたものだろうかというのが今の現状だろうと思っています。

○政府参考人(稲田伸夫君) 大臣のお答えに若干敷衍させていただきますが、具体的に先ほど委員の方から御指摘がございましたように、訴訟費用の一類型として位置付けるという考え方と被害者参加制度の利用に資するための被害者への配慮の一環と位置付けるという両方の考え方があろうかというふうに思います。
この点、訴訟費用の一類型と位置付ける考え方につきましては、訴訟費用が刑事訴訟遂行に要する費用でございまして義務履行に対する補償に要した費用をその内容としているという点からすると、被害者参加人の公判期日への出席は裁判所の許可によるものではございますが、義務ではなく被害者参加人の自由な意思に委ねられていることから、現行法上の訴訟費用とされているものとどういうふうに整合性を取るかという点も検討する必要があると思います。
また、先ほど大臣のお話にございましたように、この被害者参加人の旅費を原則として被告人の負担とすることの是非、あるいはその手続等についてもいろいろ考えなければいけないだろうというふうに考えています。

○桜内文城君 今、既存の訴訟費用は刑事訴訟遂行に要する費用として義務履行に対する補償と、それに対して、この参加人に対する旅費の支給というのは、参加するかどうかはその者の意思に、自由な意思によるのでというお答えあったんですが、その並びで言いますと、国選弁護人の費用についても訴訟費用とされているわけですけれども、これも刑事被告人がその自由な意思によって国選弁護人を選ぶかどうか、そういう自由な意思に委ねられているんですけれども、それとの整合性は、今の御説明、どう整合を取られるんでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) その点もいろいろ考え方はあろうかと思うんですけれども、国選弁護人は、裁判所がその被告人のために選任をするというようなところがございますので、やや性格を異にするのかなと思いますが、いずれにいたしましても、今後の検討課題というふうに考えております。

○桜内文城君 今の答えは全然答えになっていないと思うんですが、そういった意味でも、やはり訴訟費用の一類型として位置付けないというふうな御意見もおありだとお聞きしますけれども、余り理屈が立たないんじゃないかなと私は考えます。
そしてまた、その場合、今の類型の話、訴訟費用の一類型として位置付けるのか、あるいは配慮の一環と考えるかによって、どこが出すのかも変わってくるとお聞きしております。裁判所が支給するのか、具体的には法テラスが支給するのかと。また、別にこれもお金の話ですので、スピーディーに随時お金がきちんと支給されるんであれば、あと、またその手続が煩雑でなければどちらでもいいとは思うんですが、聞くところでは、法テラスの場合、やはり手続が、裁判手続のほかにやるわけですから二重になるですとか、法テラスに出向くですとか、また別途旅費が発生するとか、そんなややこしいこともお聞きするんですが、そういった意味では最初から裁判所でお支払いになる方がいいと、私はそういう意見を持っているんですけれども、その点についてどういった検討をなされているのか、お尋ねします。

○政府参考人(稲田伸夫君) お答え申し上げます。
ただいま御指摘がございました支給主体についての考え方でございますが、支給主体として裁判所が支給するという考え方と法テラスが支給するという考え方の二つで取りあえず検討をするといたしますと、裁判所が支給主体の場合は、やはり訴訟費用の一類型という考え方になじみやすいのではないかというふうに思います。ただ、その場合、先ほども訴訟費用として現行法上挙げられているものとどういうふうに整合性を取っていくかという問題があろうかと思います。他方で、被害者への配慮の一環というふうに考えた場合に、これは一種の行政事務ではないかと思われますので、司法機関である裁判所がこれを実施することが相当かという議論はあろうかと思います。
他方で、法テラスを支給の主体とする場合には、被害者への配慮の一環という考え方になじみやすいのではないかというふうに考えております。ただ、今御指摘のように、支給手続のために被害者参加人の負担が生ずるのではないか、あるいは法テラスにおいて被害者参加人の出廷事実の把握等に難があるのではないかといったような問題があるというふうに言われております。
したがいまして、支給主体をいずれにするかということもこれ問題ではありますけれども、いずれにしても、被害者参加人にできるだけ負担を掛けない方法を何とかうまくつくり上げていきたいなというふうに考えておるところでございます。

○桜内文城君 被害者参加人の負担ということを考えれば、おのずと答えは明らかだと思います。
そもそもこういったところが、法テラスにやらせるとか、あるいはそもそも被害者参加人の自由な意思によるのであるから訴訟費用にはなじまないとか、そういった議論が出ること自体、私は被害者参加人制度の趣旨にもとると考える次第です。この辺は私の意見として申し上げておきますが、できるだけ早急に制度の方向性をより良い方向にまとめていただいて、来年度からはしっかりと予算も付けて対応できるような体制を取っていただきたいと思います。
そういった意味で、法務大臣、来年度に向けてどういった姿勢で臨まれるか、姿勢をお尋ねいたします。

○国務大臣(滝実君) 今委員が総合的に勘案して被害者の負担が軽くなるようにと、こういうことでこの制度の仕組みをつくり上げなければいけない、仰せのとおりだと思います。

○桜内文城君 次の質問に移ります。
次は、非訟事件、特に家事事件につきまして、ちょっとやや抽象的な話になるんですけれども、家庭裁判所の裁判官においてどれほどの裁量権の幅というか、裁判官の独立というものが与えられるべきなのか、あるいはそうでないのか、一定の制約がなされなくちゃいけないのかという話であります。
少し抽象的になりますので一定の事例引く必要もあろうかと思うんですけれども、裁判官の独立、これはもう本当に憲法上の大原則でもありまして、御承知のとおり、憲法七十六条三項に「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」というふうにあります。これはもう、もちろん、その趣旨といいますか、司法権の執行に際して、まさに最後の正義の番人といいますか、よりどころとして裁判所が設置されている、そのこと。それからまた、判断が妙な政治的な、法に基づかない配慮とかそういったものがなされないようにと、それによって正しい、まさに正義を実現する判断を裁判官が行っていくと、そのために裁判官の独立というものが定められているかと思うんですけれども。
ただ、なかなか、やはり正義といいましても、特に家事事件の場合、家庭内の離婚ですとか子の監護権ですとか、そういうふうに法が、法といいますか国家権力が家庭の内部に介入していく話にもなるわけですよね。ですので、実際、判例でもありますけれども、例えば裁判の公開というのが憲法上、八十二条で大原則として定められておりますけれども、非訟事件についてはこれが当てはまらないと、非公開でも結構と。そしてまた、手続面においても、職権探知ということで、当事者が主張しないものであっても裁判官がこれを証拠調べすることができると。
こういった手続等が定められているわけですけれども、その際、やはり司法権の範囲というのが問題になってくるかと思います。よく言われるところでは、これは学説上の概念ですけれども、法の解釈、適用によって権利義務を確定して、それによって紛争を終局的に解決する。これはまさに正義に基づく判断がなされての話でありまして、こういった家事事件のように法の解釈、適用といったしゃくし定規なことでは解決できない紛争について裁判官が判断を行う。
ここが、そういった意味では、先ほど言いました裁判の公開についても、憲法上の例外として非訟事件というものが実際制度として存在しているわけですけれども、質問としては、要は家庭裁判所の裁判官の独立がどの程度の範囲なのか。他の裁判官と同じ程度にまで全く制限されないものなのか、あるいは、事の性質に応じて一定程度制約といいますか、通常の行政機関であれば当然上級庁の指示、指導に基づいて行政を行っていくわけですけれども、特にこういった後見的な、後見的というのは後ろで見るという方ですけれども、家庭に対して介入を行っていく家庭裁判所の裁判官の独立の範囲についてどのようなお考えなのか、確認させてください。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) お答えを申し上げます。
委員御指摘のとおり、権利関係を、実体的な権利義務の存否の確定を目的とする訴訟手続につきましては、憲法上、公開、対審の保障ということの規定がございます。それに対しまして、一定の後見的な立場から裁量的にその権利義務関係を形成していく、そういった作用を営む非訟の手続についてはそういった保障は及ばないと、こういうふうに確かに違いのあるところではございます。
しかしながら、委員御指摘のとおり、裁判官の職権行使の独立につきましては、その趣旨は裁判の公正を保つという観点で裁判官に対する干渉や圧力を排除すると、そういう趣旨の規定でありまして、家事事件につきましても、非訟の裁判とは申しましても、裁判官による裁判という形を取っております以上、職権行使の独立の保障は当然にそこにも及んでおる、及ぶものだというふうに考えております。この点については、司法内部からの干渉の排除も当然含まれております。そういうふうに考えているところです。

○桜内文城君 そのようにお答えいただくしかないと思うんですけれども。
何で私がこういうふうに問題提起しているかといいますと、やはり特に離婚に際して、協議離婚に際して子の監護権、恐らくこれからまた、江田大臣のころにも質問させていただきましたが、ハーグ条約ですとか、その関係も出てくると思うんですけれども、要は家庭裁判所の審判がどうにもやや不当ではないかというふうに言われるケースが相当報道されていたりします。
どういうことかというと、例えば、別に個別の事案についてここで言及するつもりはないんですけれども、例えばドメスティック・バイオレンスを理由として離婚訴訟が、まあ訴訟といいますか、家事審判の申立てがなされて、その中に事実認定として実際DVがありましたと、ですから母親の方に監護権をというような審判がなされた例もあると聞くんですが。
ただ、実際、じゃ、DVがあったのか否かというところで、私が聞いた、その報道もされておりますけれども、事例によれば、別途刑事事件として、暴行罪あるいは傷害罪でしょうけれども、告訴がなされて、実際に起訴もされて、裁判所に一旦行ったんだけれども、実際には多分事実がなかったということだと思うんですけれども、取り下げられたと。にもかかわらず、家事審判においてはDVの事実が認定されてしまって、子の監護権がその結果として認められなかったという事例もあるように聞きます。
これは一つの事例なので、それについてどうこう言うつもりはないんですけれども、やはり裁判官というのは法の解釈、適用の専門家であったとしても、実際、こういった家事事件といいますか、人情の機微といいますか、家庭内のいさかいに対して、やはりこれは各家庭あるいは各個人によって考え方も大分違うことだと思うんですね。また、司法試験の問題からいっても、家族法ですとかほとんど出たためしがありませんし、そういった人情の機微にまさに後見的に裁判所が裁量権を持って介入していく、こういった事例において、不当といいますか、事実認定も含めてやや不当と思われるような事例が生じているのではないかという指摘もなされているわけです。
そういったときに、例えば、昨年、この法務委員会でも審議しました民法の改正において、子の利益というものを最大限に尊重して監護権の在り方等について判断しましょうという民法の改正も行われているんですけれども、それを全く無視するかのような、いや、自分は裁判官なんだからそんなの全然関係ないよと、国会でどんな議論があったのか知らないよというふうに公言する家庭裁判所の裁判官もいたやにお聞きしております。
そういった意味で、これも憲法上の学説上の話なので水掛け論になるかもしれませんけれども、司法権の範囲というのを厳格に考えていくとすれば、こういった非訟事件というのが憲法八十二条の適用がないかのように、やはり家庭裁判所の裁判官の裁量権の範囲というのもおのずと制約される部分があるのではないか。
特に、法改正が行われた場合に、最高裁判所なりがしっかり指導をして、こうこうこういう法改正があったのであるから、今後、家事事件についてはこれまでの、継続性の原則というふうに通常言われるらしいんですけれども、まず子供を自分の手元に連れてきた親の方が監護権を得られる場合が多いと、実際、裁判例としては、まあ裁判、審判例としては。こういった原則は、今後は、子の利益からすればそうじゃないんですよと。
そうやってDVのうその申立てを、仮にですよ、したような親がむしろ得をするようなそういう審判がなされると、まさに裁判所に対する、司法に対する信頼が損なわれるのではないか。それを防ぐためにも、上級庁、例えば最高裁判所の事務局なりがしっかりと研修を行う、あるいは国会でのどういった議論でこういうふうな法改正がなされたということを伝えていく、こういったことも必要だと思うんですけれども、もちろん個々の裁判内容について介入していくというのはあってはならないと思いますけれども、一般的な意味で、しっかり法改正の趣旨ですとか、これまでの裁判準則、例えば継続性の原則というのは今後は当たり前と思わないでくださいというような指導は必要だと思うんですけれども、それも、今までのところ、裁判官の独立という名の下に何も、まあ何もとは言いませんけれども、ほとんど強く言えていない。それで、一方で、不逞のやからといいますか、裁判官は独立しているんだから文句言うなというふうに言っている裁判官もいるやに聞くんですけれども、これこそ本当に、裁判官の独立じゃなくて、裁判官の独善に陥っているんじゃないかと思うわけですけれども、この点、どのようにお考えになるのか、お尋ねいたします。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) 委員の御指摘のような報道等がなされているということは承知いたしております。
法改正等が行われた場合、新たな定められた法律の趣旨にのっとった法の解釈、適用あるいは実務の運用というのがなされるべきことは委員の御指摘のとおりでございます。
先ほどの裁判官の職権行使の独立との関係もありまして、上級庁であるからといって、個々の裁判に関して何らか命令とか指示とかそういうことはできないのは委員の御指摘のとおりでございます。
ただ、事務当局といたしましては、これまでも法改正等がありました場合には、その立法の経緯やその趣旨についても周知をするように努めてまいりました。
委員の御指摘の民法等の一部を改正する法律、この四月から施行になっておりますが、これに関しても、法律の内容のみならず、その趣旨についても、国会における審議の会議録の抜粋を書簡に添付する形で周知を図ったり、また研究会等の機会を利用して立法の経緯や趣旨について説明するなど周知を図ってきているところでございますし、今後もこういった取組を継続的に行って実務のサポートを行っていきたいというふうに考えているところでございます。

○桜内文城君 幾つか対処の仕方はあると思います。今おっしゃったように、きっちり一般的な意味で法改正なりについてしっかりと研修を施す、あるいはその周知を図るということを是非最高裁判所の事務総局にもやっていただきたいですし、また、それとともに、ここから先はやや立法論なので我々立法府の者が考えなくちゃいけないんですけれども、やはり例えば事実認定の在り方とか、今の制度が全然駄目だと言うつもりはないんですけれども、先ほど申し上げたような、ある種、他の刑事事件が取り下げられてなくなったにもかかわらず、そのことを全く反映しないような事実認定が家庭裁判所でなされたと。こういったことがないように手続をもうちょっとしっかりと定めていくですとか、それから、実際のこういった事例に際して、裁判官のやはり独立の範囲というものをしっかり限定していく必要があるんじゃないかと私は思っています。
なぜかというと、一般の民事事件ですね。もちろん地方裁判所は一人で、裁判長一人でやるわけですけれども、こういった家庭内に入っていくというと、やはり担当の裁判官個人の意向というか、家庭に対する思いとか、世間一般と懸け離れている場合があるので、今の一人制というのを家庭裁判所に関しては合議制にするとか、いろんなやり方はあろうかと思います。
もちろん、今申し上げたのは手続面あるいは裁判所の構成をどうするかというところなので、これは立法論になりますので我々自身が考えなくちゃいけないんですけれども、そういった工夫も凝らしていく必要があろうかなというふうに思っております。
特に家庭裁判所ですね。家事事件というのは、結構そういった意味で、非訟事件ということもあってかやや軽視、通常の民事事件に比べて軽視されている節もなくはないんですけれども、でも、各個人、人間一人一人で考えてみますと、民事事件というのは結局はお金で解決するものが多いと思うんです。でも、家事事件の場合は、まさに人生の大変大きなお金に代えられないものについて裁判官が判断していく。より重い判断がなされていくわけですよ、その当事者にとっては。
そういった意味で、今のような、ちょっと言い方は悪いんですけれども、裁判官の独立が独善に陥らないような仕組みづくりを今後やはり検討していく必要があると思うんですけれども、最後、大臣に、今後の検討の方向性等についてお尋ねいたします。

○国務大臣(滝実君) 大変難しい問題を承りました。基本的には、先般、非訟事件法の改正であるとか、そんなことで議論をしたわけでございますけれども、今の問題はそのときの議論ではないテーマであったかと思います。
いずれにいたしましても、御意見は承りましたので、その辺のところをよくよく意識した上で今後の課題とさせていただきたいと思います。

○桜内文城君 終わります。

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
今日は、全面的国選付添人制度の実現を求めて質問をいたします。
少年事件での少年審判は、刑事事件とは違いまして、家庭裁判所が少年に対して後見的な役割を果たすことが基本になっております。一方、少年法十条では、少年及び保護者による付添人の選任を認めておりますが、この理由はどういうことでしょうか。まず大臣、お願いします。

○国務大臣(滝実君) 基本的に少年の保護手続というのは、少年の健全な育成を目指すと、これには異論がないわけでございます。そのために、少年の言わば意思を尊重して適正な審判を行えるような付添人を付けると、これが少年法の基本的な物の考え方だろうと思っております。

○井上哲士君 適正な審判のためということがありましたが、ですから大半は弁護士付添人ということになっております。
最高裁、来ていただいておりますが、この弁護士付添人の活動の内容や、その意義について、どのようにお考えでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) お答えを申し上げます。
少年審判は、職権主義的審問構造の下に、裁判官が非行事実を認定し、家庭裁判所調査官が非行の原因や少年の問題点等について行動科学の知見を生かして調査分析し、少年や保護者に対して、その結果明らかとなった問題点に応じた働きかけや環境調整を行い、その上で、最終的に裁判官がその少年にとって最もふさわしい処遇の選択を行うと、こういうことを目的とした手続でございます。
そのような手続の中で、弁護士付添人は審判手続の協力者として、まず非行事実の認定に関しまして、少年の言い分を法律的に整理して裁判官に伝える活動を行っておりますし、また、家庭裁判所調査官の調査分析によって明らかになった少年や保護者の問題点に応じた働きかけや環境調整のうち、反社会的組織からの離脱であるとか被害者の被害回復に向けた直接的な活動など、これらを家庭裁判所調査官と連携しつつ、その専門的知識や経験を生かして行っていただいているというものでございます。
このように、弁護士付添人は、少年審判におきまして裁判官や家庭裁判所調査官との役割分担の下、適正な手続の実現や少年の再非行の防止に向けまして、審判の協力者としての立場で活動を行っているものというふうに考えております。

○井上哲士君 今、この少年法についての意見交換会が行われておりますが、最高裁からの説明の中で、少年が自ら謝罪や被害弁償を行い、又は保護者が謝罪や被害弁償を行う姿を見ることによって、被害の実情を改めて認識して反省を深めることになるため、少年の更生、再非行防止にとっても大きな意義のある活動だというふうに言われております。ですから、少年にとっても、被害者にとっても、そして再非行防止という点で社会にとっても、非常に意義のある活動が私は弁護士付添人だと思うんですね。
あるシンポジウムに家裁の調査官が来られて、こういう発言をされておりました。現代の家庭裁判所においては、調査官は裁判官を補佐するという役割にならざるを得ない。裁判官に対して対等の形でチェックを掛けたり、異議を唱えたりする役割は弁護士付添人に期待するしかないと。その上で、調査官と付添人は、共に少年の立ち直りを考える上で異なる立場から調査し意見を述べることでより良い結論が導かれるのであり、役割分担が重要なんだと、こういうふうに言われておりました。
少年鑑別所に行って専門官の方から意見を聞いたことがあるんですが、自分たちは部分的にしかかかわることができないけれども、弁護士付添人というのは逮捕からそして処遇まで一貫してかかわることができると。そういう方がいることが非常に自分たちも有り難いし、重要だということを言われておりました。
ところが、少年は自ら資力が乏しいし、家庭環境とか家庭の事情から、保護者がこの弁護士付添人の費用を出すことができないという場合がほとんどであります。ですから、付添人の選任はごく僅かでしたけれども、この間、日弁連が援助制度をつくったり、また国選付添人制度が創設をされるという中で急速に拡充をしてきたわけですね。
こういう現行の国選付添人制度の導入と、その後の拡大の経緯についてまず御説明いただけるでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 私の方から御説明申し上げます。
少年法は、平成十二年以降、三度にわたりまして大きな改正がございました。最初が十二年の改正でございますが、その改正前には国選付添人の制度は設けられておりませんでしたが、この改正におきまして、家庭裁判所が検察官が関与する決定をした事件、これは一定の重大な事件でございまして、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、あるいはそれ以外で死刑又は無期若しくは短期二年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪に当たる場合に限られておりますが、これにつきまして、少年に弁護士である付添人がいない場合に、少年に必要的に国選付添人を選任するという制度が導入されたわけでございます。
その後、平成十九年の法改正におきまして、観護措置がとられた一定の重大事件、これも先ほど検察官関与で申し上げた罪とそれに相当する触法行為でございますが、このような一定の重い罪について裁判所の裁量で国選付添人を付することができるという制度が導入されました。
他方、その翌年の平成二十年の改正で、被害者等に少年審判の傍聴を許すか否かを決定するに当たりまして、少年に弁護士である付添人がいない場合、少年に必要的に国選付添人を選任するということで、被害者の傍聴を許す場合には国選付添人を付けるという制度が導入されたというふうに累次拡大されてきております。

○井上哲士君 累次拡大をされてきたわけでありますが、では、今どうなっているのかと。
最高裁にお聞きしますが、直近の年間の国選付添人の選任の数及び少年審判を受ける少年全体、それから鑑別所収容の少年に対するこの国選付添人の選任の比率はどのようになっているでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) 平成二十三年度の一般保護事件の終局総人員のうち、国選付添人が選任された人員は三百七十八人でございます。この一般保護事件の終局総人員に対する国選付添人の選任の率は、総人員の方が四万八千八百八十六人ということでございますので、パーセンテージとしては約〇・八%、そのうち観護措置がとられた少年、それに対する国選付添人の選任の率は約三・七%ということになっております。

○井上哲士君 観護措置をとられても三・七%ということでありまして、依然として範囲が狭過ぎるし、選任がごく僅かということになっているわけですね。
そして、二〇〇九年に被疑者国選弁護制度の対象事件が必要的な弁護事件に拡大をいたしました。ところが、国選付添人制度はそのままなわけですね。ですから、被疑者段階では国選弁護制度で弁護士の援助を受けられる少年の多くが、家裁に送致をされますとこの弁護士付添人を選任をできないと、いわゆる置き去りという状況になっております。弁護士会の援助制度を活用しても、鑑別所の収容少年の約四割には弁護士付添人が選任をされていないという事態なわけですね。成人の場合は刑事事件の被告人はほぼ一〇〇%弁護士が選任をされることになりますと、これは非常に大きな矛盾だというふうに各方面からの指摘をされております。
日弁連が会員の特別会費による基金によって少年保護事件付添援助事業を法テラスに委託して行っておりますし、また、各地の弁護士会が少年の要望に応じて少年鑑別所にいる少年に一回は無料で面談に行くという当番付添人制度を実施をしております。これが相まってこの弁護士付添人の数は非常に増えております。特に二〇〇九年の被疑者国選弁護制度の拡大後に援助の数は急増しておりまして、二〇一〇年度では日弁連の援助制度の活用は七千八百六十七件、総額八億円ということになっているわけですね。
それから、数が急増していること自体が非常にこの制度が重要だということを示していると思いますが、その意義、重要性を考えるならば、少年や保護者が資力がないことで選任できないという場合には、それを実質的に保障するという趣旨からも国費で選任できるようにするべきだと思います。そして、範囲は、やはり身柄を拘束されている少年というのは少年院送致等の重大な処分を受ける割合も高いわけですし、社会から隔絶されているわけですから、自ら学校とか職場に行って環境調整をすることもできないということを考えますと、身柄が拘束されている少年全てに国選付添人を選任するように拡充をするべきだと考えますけれども、この点、いかがでしょうか。大臣にお願いします。

○国務大臣(滝実君) 委員のお話を私も弁護士会を通じて承っているところでございます。
この問題についてはいろんな角度から意見を聞く会を法務省としても経験しているわけでございますけれども、結局、加害少年の立場からすると、今委員の仰せのような格好で国選弁護士、弁護人を付けるということはそれなりの意味があると思います。ただ、その反面、被害少年の立場からすると、どうもそこのところが、加害少年の弁護人の立場からの言わば意見というのがかなりインパクトを裁判所が受けるんじゃないだろうかなと、こんなような反対事情の意見もこれあり、なかなかそこのところが、本当のところはどうなのかというところにこの問題には国としてなかなか踏み出せない問題があるだろうと思います。
それからもう一つは、今委員がおっしゃったように、現在、弁護士会が合計八億円から十億円に近い経費負担をしていらっしゃる。だから、それを国が当然肩代わりというか引き取るべきだと、こういう御議論でございますけれども、国の財政事情もなかなかそこのところが難しいところがあります。ただ、この問題は、財政事情が課題だからこれはしばらく弁護士会でやってくださいというわけにはまいりませんけれども、いろんな事情があってここのところは一歩踏み出せないというのが正直な現状でございます。

○井上哲士君 弁護士の方が月間四千二百円拠出してやっていらっしゃるんですね。先ほど弁護士人口の話なんかもありましたが、なかなか皆さん厳しい中やっていらっしゃるわけですよ。国の財政が厳しいからそこに依拠をするというのは、私はこの問題の重要性から考えるといかがかと思うんですね。
この被害者のことのお話もあったんですが、現行の国選付添人制度の対象でない事件でも、家裁が弁護士付添人を必要と考えて弁護士会に対してこの援助制度を使って弁護士付添人を付けるというケースが増えているというふうに聞いておるんですが、こういうケースがあるのか、ある場合はどういう理由でそうなっているんでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) その点につきましては、正確な統計は把握しておりません。数値はありませんけれども、援助付添人制度によって弁護士付添人が選任された事件の中には、家庭裁判所から選任依頼を行った事件が一定数あるというふうに認識しております。
どういう場合であるかと申し上げますと、例えば、少年が非行事実を否認している事件であるとか、再非行防止のために反社会的な組織からの離脱が必要である事件などにおいて付添人が付いていないという場合には、先ほど述べたような観点から、弁護士付添人の活動に期待して依頼することがあるというふうに認識しております。

○井上哲士君 それ自体がこの制度の重要性を示していると思いますが、裁判所が付添人が必要だということで依頼をしているケースですら日弁連の援助制度に依拠しているというのは、私はいかがかと思うんですね。これなどはすぐにでも国の責任で付添人を付けるようにするべきだと考えますが、これはいかがでしょうか。

○国務大臣(滝実君) この問題については、これまでもやっぱりスピード感を持って対応しなきゃならぬということは本委員会でも答弁を何度かお聞き取りいただいたと思います。
したがって、今委員のおっしゃるように、家庭裁判所が弁護士会に依頼するというのもこれまた筋がやや不透明な感じもしますので、その辺のところも含めて検討を急がなければいけない、こういうふうには思います。

○井上哲士君 これはもう本当に、私は今おっしゃったように筋が通らないと思うんですね。
ただ、それだけでいいのかということではありませんで、少なくともこの家裁送致後に置き去りにならないように、国選弁護制度と同一の必要的弁護事件まで対象を拡大することが必要だと思うんですね。
さらに、それだけではやっぱり不十分だと思います。先ほど、裁判所が付添人を必要と認めて援助制度を活用するというケースについて、かなりの一定部分が虞犯だというふうに聞いているんですが、この虞犯の場合に家裁送致後に少年院送致とか児童自立支援施設送致等の施設送致処分になっているケースというのはどれぐらいの割合があるんでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) 平成二十三年の虞犯保護事件の終局総人員、これは三百七十八という数字が出ておりますが、そのうち児童自立支援施設や少年院への送致と、そういう施設収容処分となった人員の率は約三六%となっております。

○井上哲士君 私、手元にはこれ二〇一〇年の分しか持っていないんですが、恐喝や傷害よりもむしろ率が高いわけですね。ですから、つまり、事件の重大性ではなくて、やはり少年の状態によってこの付添人の必要性というのが出てくると思うんです。
先ほど紹介したシンポジウムでの家裁調査官の発言では、事件の重大性ではなくて、累犯の窃盗の子とか、粗暴行為が収まらない子供の再犯を防止するために付添人の援助が必要だというふうに強調をされております。ですから、国選弁護制度と同じところにまで拡大をしても、この虞犯という場合は落ちてくるわけですから、やはり事件の重大性にかかわらず付添人が必要になってくるということだと思うんですが、この指摘については、ちょっと法務省、どのようにお考えですか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 先ほどから大臣が申し上げておりますように、この少年法の付添人の関係につきましては、私どもでも弁護士会を始めとする各界の方から意見交換会で御意見をちょうだいしているところでございまして、その中で日弁連の出身の出席者の方からも今委員御指摘のような意見が示されたものというふうに認識しております。
この問題につきましては、虞犯事件というものにつきましてどのように審判の在り方を考えるのかというような問題もあろうかと思いますけれども、いずれにいたしましても、今申し上げました意見交換会などを通じましていろいろ多角的な御意見をちょうだいした上で検討していきたいというふうに考えております。

○井上哲士君 先ほど被害者のお話があったんですが、一部には国選付添人が拡大したらバランスが取れなくなって事実認定ができなくなるので検察官の関与も拡充すべきだというような意見もあるわけですが、しかし、元々検察関与が認められる対象事件を重大事件に限定したのは、たとえ非行事実が争われたとしても、社会的に見て一定の重大事件にのみ検察官が関与するのが適当だというふうに考えたからのはずなんですね。さらに、その後、検察官の関与事件以外でも一定の重大事件については裁量的に国選付添人が付くということになりました。つまり、検察官関与と弁護士付添人というのはそもそも一体のものではないはずなんですね。
最高裁に聞きますが、この検察官関与事件というのは今、年間何件あるんでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) 平成二十三年の一般保護事件の終局総人員のうち、検察官関与決定のあった人員は十九でございます。

○井上哲士君 昨年、先ほどの答弁でいいますと、同じ年の国選付添人の選任事件が三百七十八だったと思うんですね。つまり、国選付添人が付いていても、そのほとんどは検察官関与の決定はされていないということなんですね。
国選付添人の範囲を拡大したらバランスが崩れて事実認定に問題が生じるということになりますと、今も相当バランスが崩れているということになるかと思うんですが、検察官関与のない国選付添人選任事件が増えているということで、バランスが崩れて事実認定に問題が起きているというような事態があるんでしょうか。

○政府参考人(稲田伸夫君) 家庭裁判所の審判の在り方につきまして私どもからコメントするのはいかがかと存じますが、ただ、今御指摘のありました、その国選付添人を付した場合には検察官関与の範囲を拡大すべきではないかという御意見は、先ほど申し上げました改正少年法等に関する意見交換会におきまして被害者団体の方などから御意見が出ているというふうに承知しているところでございまして、この点につきましてもいろいろと御意見のあろうところだと思いますので、慎重に検討してまいりたいと考えております。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) 弁護士付添人が選任されている一方で検察官の関与がないという事件におきまして、これまでのところ、事件の関係者等から審理のバランスを欠いているといった批判があったというふうには承知いたしておりません。

○井上哲士君 日弁連の援助制度で弁護士付添人がもう年間七千件以上あるわけですが、こういう事件においても、同じようにそのバランスが崩れて問題が生じているということがないという認識でよろしいでしょうか。

○最高裁判所長官代理者(豊澤佳弘君) そこら辺りについての声は聞こえてきていないと、関係者からの声は聞こえてきていないというところでございます。

○井上哲士君 ですから、国選付添人を拡充するならば検察官関与を拡充すべきであるということについて、私は、そもそも少年法の構造上も、現実に今起こっている審判の状況からいっても、およそ立法事実はないんだろうと思うんですね。ただ、先ほど言われましたように、意見交換会で被害者の会の方から、少年によりたくさんの弁護士が付くようになると被害者が忘れられる存在になって不信感を持つ審判になる等々声が出ております。これは非常に私は十分に受け止める必要があると思うんですね。
同じ意見交換会でも、いわゆる被害者援助についてのこともありました。日弁連は、被害者法律援助制度についても、今、法テラスに依拠してやっているわけですけれども、これ自体もむしろ国の費用でやるように拡充をするべきだということを言われております。今の制度でいいますと、どうしても一回目については相談者の持ち出しになるということになっておりまして、私は被害者の皆さんのそういう意見を聞くとするならば、こういう被害者の援助制度を必要ならば拡充をしていくと、こういうことが大事だと思うんですけれども、この点、大臣のお考えはいかがでしょうか。

○国務大臣(滝実君) 今、委員と最高裁の意見の交換あるいは法務省の刑事局長との意見の交換を拝聴いたしておりますと、やはりこれは意見交換会においてもう少し実態をきちんと整理した上で判断をすべき問題かなと、こういう感じがいたします。現実に、家庭裁判所が日弁連に依頼をしている実態、どういうような中身かというのは当事者はもちろんよく承知の上だと思いますけれども、将来的には、まだまだそこのところはきちんと徹底をしていない感じがありますので、そんなことも踏まえながら検討をしてまいりたいと思います。

○井上哲士君 最初に最高裁からの御紹介ありましたように、弁護士付添人の活動というのは、少年自身にとっても、そして被害者にとっても、それから社会にとっても非常に有益な活動をしているわけでありまして、そういうことをよく関係者にも御理解を広げながら、国民的にも理解も広げながら、急いで是非この制度の実現をお願いしたいと思います。
以上、終わります。

○委員長(西田実仁君) 本日の調査はこの程度にとどめます。
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○委員長(西田実仁君) この際、委員の異動について御報告いたします。
本日、桜内文城君が委員を辞任され、その補欠として上野ひろし君が選任されました。
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○委員長(西田実仁君) 裁判所法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。滝法務大臣。

○国務大臣(滝実君) 裁判所法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
この法律案は、司法修習生がその修習に専念することを確保するための修習資金を国が貸与する制度について、修習資金を返還することが経済的に困難である場合における措置を講ずるものでありまして、その内容は、最高裁判所は、修習資金の貸与を受けた者について修習資金を返還することが経済的に困難である事由として最高裁判所の定める事由があるときは、その返還の期限を猶予することができるようにするものであります。
政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出した次第ですが、衆議院において、以上の内容を含む法律案の全部について修正が行われております。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いをいたします。

○委員長(西田実仁君) この際、本案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員辻惠君から説明を聴取いたします。辻惠君。

○衆議院議員(辻惠君) ただいま議題となりました裁判所法の一部を改正する法律案に対する衆議院における修正につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。
司法修習生に対する経済的支援については、昨年十月末までの給費制の延長措置が終了し、昨年十一月より、修習資金を貸与する制度が適用されているところでありまして、本修正は、この制度について、政府原案と同様に裁判所法の一部を改正し、修習資金を返還することが経済的に困難である場合における措置を講じております。
他方で、法曹の養成を取り巻く現在の状況を見ますと、司法修習を終えた者の社会の様々な分野への進出が進んでいないほか、法科大学院志願者数の減少、司法試験合格率の低迷等の状況が生じており、法曹の養成に関する制度全体について速やかに見直しを行うことが急務となっております。
本修正は、このような状況に鑑み、新たに、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律の一部を改正し、国民の信頼に足る法曹の養成に関する制度について、当初予定された平成二十五年四月以降を待たず、この法律の施行後一年以内に学識経験を有する者等により構成される合議制の組織の意見等を踏まえつつ検討を加えて一定の結論を得た上、速やかに必要な措置を講ずるものとしております。また、裁判所法の一部を改正し、修習資金を貸与する制度については、この検討において、司法修習生に対する適切な経済的支援を行う観点から、法曹の養成における司法修習生の修習の位置付けを踏まえつつ、検討が行われるべきものとしております。
以上が、衆議院における修正の趣旨及び概要であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(西田実仁君) 以上で趣旨説明及び衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後三時三分散会