189-参-財政金融委員会-009号 2015年05月12日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
今回の政投銀法の改正につきまして、やや詳細なところも含めて改めて確認を幾つかさせていただきたいと思います。
特定投資業務に関しましての質問でありますが、これは今回法改正が必要になった一つの理由として政府出資ということが挙げられております。この特定投資業務に関して、なぜ政府出資が必要なのか、またこの完全民営化に向けた取組に対してどういう影響があるのかということをまずお聞きしたいと思います。
政投銀法の第一条は改正をされておりませんで、「株式会社日本政策投資銀行は、その完全民営化の実現に向けて経営の自主性を確保しつつ、」という文言は全く変わっていない。つまり、完全民営化の実現に向けてという目的規定は変わっていない。その中にあって、今回、産投会計から政投銀へ出資されることを法改正として挙げておるわけであります。そのことで、政府出資することが、この政投銀の完全民営化という目的規定は変えていないものの妨げになるのではないか、あるいは今回の政府出資が固定化をするようなことになれば完全民営化の実現は遠のくのではないかという、そういう声もあります。
そこで、大臣にまずお聞きしたいと思います。固定化懸念を払拭するために、この今回の法令上でどのような工夫がなされているのか、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) 今、西田先生からお尋ねのありました特定投資業務に対します政府出資の話でありますけれども、政投銀は、エクイティーとかいわゆるメザニンファイナンス、いわゆる劣後ローンとか優先株とかいろいろありますけれども、こういったリスクの高い投資というものを行う上で財務の健全性というのが維持されていないと、重要なこと、大事なことですので、必要な資本というものを確保するというのを目的にいたしております。
したがいまして、この政府出資は既存のいわゆる株式とは別に管理されて、特定投資業務というものの終了とともに全額国庫に返納されるということにいたしております。既存の株式の売却を進めていくという完全民営化への取組に影響を与えるというものではございません。
また、特定投資業務というものは、これは完全民営化への方針を維持した上でのいわゆる当面の取組ということでありまして、これが何というか漫然と継続されて固定化するということがないように、法律的には二〇二〇年度末を新規投資の期限といたしておりまして、二〇二五年度末までに業務を終了するよう努めるということにするなど、時限的な業務として位置付けを明確にしておりますので、今御懸念になるような話にはならないと、私どもはそのように考えております。

○西田実仁君 今大臣が最後のところでおっしゃったのは、この附則の第二条の二十のところに書かれている十年間の時限措置ということでございます。ここは条文上、努めなければならないという努力義務とされているわけでありまして、これによって固定化懸念が完全に払拭されるのかという疑問も湧きます。
また、ここで条文上、第二条の二十に、その他の事情を考慮しつつ云々かんぬん努めなければならないというふうになっている、このその他の事情ということにあらゆることが入ってくると、結局はこの努力義務すら空文化してしまうのではないかというふうにも思うわけでありますが、この点、財務省はいかがお考えでしょうか。

○政府参考人(迫田英典君) お答えをいたします。
まず最初の努力義務という規定になっていることでございますけれども、これを仮にあらかじめ特定の期日として定めた場合には、その時点の経済情勢や投資対象事業の状況等によっては一律に株式等の資産の処分を行うことが困難な状況があり得ること、あるいは、株式等の資産処分の期限が確実に予見可能となることで、市場における価格等の条件設定に影響が生じるおそれがあることなどを考慮したものでございます。
次に、その他の事情と法律上書いておりますのは、例えば、投資対象事業の共同投資家の状況、あるいは株式等の資産の譲渡先となる民間金融機関等の状況などを想定をしているということでございますが、いずれにいたしましても、このように法律上同業務の完了期限を努力義務といたしておりますのは、実務上の必要性から期限設定に一定の柔軟性を持たせるためということに尽きるのでございまして、こうした必要性の範囲を超えて同業務を継続するという趣旨ではないということを申し上げておきたいと思います。

○西田実仁君 今、実務上の要請ということでございますが、そもそも今回の法改正の目的は、附則第二条の十五にございますが、民間資金の成長分野への成長マネーの供給、提供ということの呼び水効果ということであろうかと思います。そして、それは、もっと言えば、民間による自立的な資金供給ということをいかにして達成していくのかということであろうかと思います。
その意味で、今申し上げた第二条の十五、「会社は、特定投資業務を行うに当たっては、一般の金融機関が行う金融及び民間の投資を補完し、又は奨励することを旨とする」と、このように定められているわけでございますが、この今申し上げた民間による成長資金の供給促進に寄与するという観点から補完又は奨励と、こう条文上定められていることは、具体的に政投銀としてどういう業務を想定をしておられるのか、御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(迫田英典君) 特定投資業務の趣旨につきましてはただいま西田委員から御指摘のとおりでございますが、この法律上、民業の補完あるいは奨励というふうに位置付けておりますのは、一つには、民間金融機関等による資金供給のみでは十分な実施が困難な事業を対象とすること、あるいは民間金融機関等と共同して成長資金を供給することといったようなものを基本的に想定をしているわけでございまして、いずれにしても、民業の補完、奨励を確保という観点からは、民間金融機関との定期的な意見交換であるとか、あるいは外部有識者が参加する機関を同行内に設置して検証を行うことであるとかというふうな幾つかの取組を改めて制度設計しているわけでございまして、いずれにいたしましても、政府としても、こうした取組で民業補完、奨励の役割に徹する、そして民間による成長資金の供給促進に着実に貢献できるというようなことをしっかりチェックしてまいりたいと考えているところでございます。

○西田実仁君 投資を実施した後なんですけれども、投資案件は民間に早期に譲渡するというふうに考えておられるのか、その法令上の位置付け等についてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(迫田英典君) 特定投資業務のエグジットの話でございますけれども、結局、この特定投資業務の大きな目的として、先ほど来申し上げておりますように、民間の成長資金の供給主体を育成をするという観点があるわけでございますので、政投銀がこの業務の完了を待たずに当該株式等を民間金融機関等に早期に譲渡するといったことも重要な方策であるというふうに考えているところでございます。
このため、同業務の投資対象事業の状況や事業特性等に留意しつつ、当該株式等の早期譲渡も積極的に行っていくように、本改正法案に基づきまして財務大臣が定めます特定投資指針におきましてその旨を定め、政投銀に促していくこととしたいと考えております。

○西田実仁君 特定投資指針にそれをきちんと位置付けるということでございます。
先ほど大臣からもお話がございましたが、この政府出資分というものをどうきちんと区分経理して固定化懸念を払拭するのかということでの工夫として、この出資分は、今回、附則の第二条の二十三に特定投資準備金というところに計上するというふうにされているわけでありますけれども、これは、政府の出資はされますけれども、政府は議決権を持たない、そういう株式だということでよろしいか、確認したいと思います。

○政府参考人(迫田英典君) 御指摘のとおりでございまして、特定投資業務のための政府出資は、同業務の実施のため必要な自己資本の確保等に目的を限ったものでございますので、議決権あるいは配当請求権等の株主権を伴わない条件で拠出をするということにいたしております。
したがいまして、この政府出資につきましては、現在政府が保有している既存の政投銀株式とは全く性質が異なるものでありまして、両者を明確に区別する必要があるということ、それから、今後、既存の政投銀株式の売却を進めていく場合には、特定投資業務のためのこの政府出資が民間株主への配当財源とならないように管理する必要があるということ、さらには、特定投資業務の的確な実施の観点から、必要がなくなった段階で、特定投資業務のための政府出資と、これを元手として生じた剰余金を国庫に納付させる必要があることなどから、御指摘のように特別な準備金を設けて管理をするということといたしております。

○西田実仁君 あわせて、第二条の二十三の第七項には特定投資剰余金を設けると、このように定められておりますけれども、この意味するところは何か、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(迫田英典君) 結局、今の御質問の流れと全く軌を一にするお答えになるわけでございますけれども、特定投資業務のための政府出資につきましては、相応のリターンを国庫に還元をするということを前提にしておるわけでございまして、その通常業務と区別をして収支を管理する必要があるということでございますので、通常業務による毎年度の損益が計上される剰余金とは別に管理をするということのために設けるということでございます。

○西田実仁君 附則の第十条には特定投資業務に関する検討という規定がございますが、ここにおきましては、政府は、この法律の施行後の適当な時期において云々かんぬんとあって、国の関与の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすると、このように第十条、検討項目に書かれているわけであります。
その趣旨についてお聞きしたいと思いますが、これはできるだけ速やかに民間による自立的な資金供給の実現を目指して、それが達成できたときには、特定投資業務は法律上定めた実施期限、先ほど十年間という時限措置だという説明がございましたけれども、それを待たずにこの業務を終えると、こういう意味合いでの検討なのかどうかを確認したいと思います。

○政府参考人(迫田英典君) 繰り返し申し上げているとおり、特定投資業務はまさに民間資金への呼び水というふうな効果を期待をしているわけでございまして、こういうことから、特定投資業務に関しては、その実施期間を御指摘ありましたとおり十年程度の時限措置とはしておりますけれども、同業務の実施状況、あるいは民間による成長資金の供給状況、さらには企業の資金需要も含めた社会経済情勢といったものを見極めまして、必要な場合には業務期間中であっても業務内容等を適時に見直すべきものというふうに考えているところでございます。

○西田実仁君 それは、特定投資業務が、時限措置でありますけれども、ありていに言えば、民間の成長資金供給が進んでいけばもうこの業務は十年を待たずに終えると、こういう意味も含んでいると理解してよろしいでしょうか。

○政府参考人(迫田英典君) 今後、民間からの資金供給が具体的にどういうふうになるかということをあらかじめ予見を持って考えることは難しいとは思いますけれども、この特定投資業務の趣旨があくまで民間資金への呼び水であるということから考えまして、こうした検討条項を法律上明確に設けているわけでございまして、趣旨としては、先ほど申し上げたとおり、同業務の実施状況、あるいは民間によるまさに成長資金の供給状況、それから企業の資金需要も含めた社会経済情勢などを見極めた上で、必要な場合には業務期間中であっても業務内容等を適時見直すというふうな趣旨を法律上明確にしているということでございます。

○西田実仁君 重ねてお聞きしますけれども、それは十年を待たずに終えるということを意味しているのか、含んでいるのかということについてお答えいただきたいと思います。

○政府参考人(迫田英典君) あり得ると思っております。

○西田実仁君 その上で、この第二項のところには、しかし、政府は、今申し上げた第一項の検討を行うに当たっては、一般の金融機関を代表する者その他の関係者の意見を聴かなければならない、こういうふうにしているわけですね。
ここはなかなか難しい問題でありまして、民間による成長資金の提供、自立を促すという政策目的と、一方で、民間金融機関にその意見を聴かなければならないとなりますと、リスクを取りたくない、自立をしたくない、あるいはできない、依存をしたいというような意向が強くなればなるほど、意見を聴けば聴くほどもっとやってほしいという話になるわけでありまして、そうすると何のためにこの今回の法改正をするのか、つまり民間による成長資金の供給、自立的な資金供給ということが本当の狙いであれば、この第二項の意味というのがかえってそうした自立を妨げることになるのではないかという心配を持ちますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(迫田英典君) この附則第十条第二項の趣旨は、成長資金の需給状況等に関していろいろ検討していく場合に当たっては、まず現場の意見を十分に踏まえる必要があるであろうということ、そして検討する内容の客観性あるいは中立性を確保する必要があるだろうといったようなことから、民間金融機関の代表者等から意見を聴くということを法律上義務付けているということでございます。
実際、そういう場でどういうふうな意見が出てくるかということに関しましては、いろいろ社会経済情勢、金融情勢を取り巻く環境の中で民間の金融機関がそれぞれどういう経営判断をされていくかというふうなことにもよりますし、政策対応としてのいろんな環境整備といったようなことにもよるのだろうと思っておりますけれども、この法律の趣旨は、あくまでさっき申し上げたような、現場の意見を十分に踏まえること、あるいは検討内容の客観性や中立性を確保する必要があると考えること等からこういった仕組みを設けているということでございます。

○西田実仁君 最後に大臣にお聞きしたいと思いますが、今回の法改正の目的は、やはり、繰り返し今御答弁もいただきましたが、民間による自立的な成長資金の供給、これができるだけ速やかに達成されるということが大事なわけでありまして、そうでないと、いつまでたってもこの政投銀が出ていったら民間も出るという形での依存が終わらない、自立しないと、こうなってしまっては法改正の目的を達成できないと思っております。
そうさせない、逆に言えば法改正の目的を真に全うするというための大臣の決意、そして、その目的達成のために、今回の法改正だけではもちろんそれが達成できるとは思えませんので、併せてその他の施策についてもお答えを最後にいただきたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) 御指摘のありましたように、この政策投資業務というのは、政投銀のいわゆる成長資金の供給が民間資金への呼び水となって、民間の資金の供給自体というか供給主体の育成を図るということになるんだということを目的といたしておりますので、この目的に向けて実現をさせるためにしっかりと取り組んでまいりたいと思っておりますが、今それ以外にもということがございましたので。
御存じのように、豊富な家計資金、今一千六百九十兆円ぐらいの個人金融資産と、うち約八百九十兆円が現預金というのが今の現状でありますので、こういった巨大な個人金融資産というものが成長資金の方に、貯金から投資にという形に向かいやすくなる仕組みを確立しないと今言われたような雰囲気にもならぬという、これは銀行だけの話だとは思いませんので、そういった意味で、顧客のいわゆる要望に即した金融商品の多様化というのは進んでいるんだと思いますので、そういった意味での資本市場等の金融の育成、また競争力の強化を通じまして、やっぱり中小企業のいわゆる企業価値の向上というのに合わせて投資が行われるわけですので、そういったものを図っていく必要があろうと思っております。
そのために、例えば今NISAというのが始まっておりますけれども、これも思ったより口数が増えておりますし、その普及促進、拡充、また投資型のクラウドファンディングの利用促進に向けて、今法律等々をやらさせていただいておりますけれども、これの整備をやらせていただく。
また、コーポレートガバナンス・コードとかスチュワードシップ・コードとか、やたら片仮名が増えてきておりますが、経営者なども、これまで二十年間にわたってデフレに対応するためにじっと金を持っていれば金の価値が上がって物の価値が下がっていくという時代の経営から脱却してもらって、きちんと対応を変えていってもらうというためには、中にいる今までの人だけではなくて、外からの声、株主の声、また、中にいる新しく入ってきた社外重役等々の声といったものも入れて、発言を会社の中の経営の姿勢についてやっていただくといったようなこともいろいろやらさせていただきつつありますので、こういったものを着実に実施してまいりたいと今後とも考えております。

○西田実仁君 終わります。 わります。