189-参-財政金融委員会-016号 2015年08月04日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
 今日は、東日本大震災事業者再生支援機構の取組につきましてお伺いしたいと思います。
 この機構につきましては、平成二十四年の三月に業務を開始をいたしました。私ども、野党時代にこの機構法を提出し、当時与党の民主党政権でも御理解いただいて取組が始まったわけでございますけれども、まず復興庁に、これまでの支援実績について、また今後の取組につきましてもお話をいただきたいと思います。

○政府参考人(吉田光市君) 東日本大震災事業者再生支援機構の支援実績についてでございます。
 平成二十四年二月の設立から本年六月末までに合計で六百二件の支援決定を行っているところでございます。具体的には、債権買取りが五百七十二件、債務免除が三百九十二件、新規融資への保証が百九十二件となってございます。このほか、支援決定に向けまして具体的な協議を行っているもの、また最終調整を行っているものが百五十六件となっているところでございます。
 今後とも、引き続き、各地域において事業の再生を図ろうとする事業者を積極的に支援してまいりたいと考えてございます。

○西田実仁君 今後の取組の課題ということについても併せてお聞きしたいと思います。
 この機構法では、施行後三年以内に必要な措置を講ずるというふうになっておりまして、様々な施行の状況について検討を加えていただいたと思います。
 その上で、今後の課題として、特に支援決定期限はあと二年ではないかと思いますけれども、どういう課題が業務運営に関してあるのか、それについてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(吉田光市君) 支援機構についてでございますけれども、法施行後三年のフォローアップということで、いろいろ金融機関からも課題等について御意見等を伺ってきているところでございます。
 機構の取組について全般的に前向きな評価をいただいているかなというふうに思っておりますけれども、具体的な課題と更なる課題といたしましては、地域金融機関ともう少し早い段階から支援対象先に関する情報を共有するですとか、また支援決定後のフォローアップに関しまして、これも地域金融機関と連携をより一層強化するですとか、また支援機構のネットワークを生かしたそれぞれの企業の本業の支援を行うといったような御指摘をいただいたところでございます。
 これらに対応いたしまして、地域金融機関との情報の共有の強化等を通じた新規支援案件の開拓、特に福島県におきましては、福島特設班といったようなものを設けまして、集中的な支援を行うことですとか、また産業振興等に関します復興庁の施策と連携をしながら本業支援を行っていく、こういった取組を更に今後強化していきたいと考えているところでございます。
 今後も、引き続き、地域金融機関との間で十分な協議、調整を行いながら、被災事業者の再生支援に取り組んでまいりたいと考えてございます。

○西田実仁君 こうした機構の取組全般につきまして麻生大臣にお聞きしたいと思いますが、今後の災害金融の一つのモデルとして今回の機構がどういう役割を果たしているのか。特に、地域完結型の事業再生ということについて、いろんなノウハウが地域金融機関にも習得されつつあるんだろうと思いますし、また小さな会社の事業再生についても、従来はなかなか難しいと言われておりましたけれども、こうした小さな会社での債権放棄による事業再生ということについても、それができるという確信も地域の金融機関に生まれつつあるのではないかというふうに思います。
 この機構の取組全般について、特に金融機関がどう評価し、今後の災害金融のモデルとしてどのように生かしていけるのか、これについて大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) この東日本大震災の事業者再生支援機構におきまして、これは、今復興庁から答弁があっておりましたけれども、被災をいたしております中小、特に零細小企業者に対しまして債権の買取り、また債務の免除等々の支援を行っておりまして、復興支援に重要な役割を果たしているというように私どもとしては認識をしております。また、機構においては、今後引き続いて、地域の金融機関と連携したいわゆる被災事業者への支援というものを期待をいたしております。
 また、金融庁として、金融機関に対して、これは二重債務というのを抱えて、ローンの返済中にいきなり家がなくなった等々、二重債務ということになりますので、二重債務を抱えます被災者の債務の整理の支援とか、それから、新たに創業するとか起業するとか、そういった事業の再開などをするに当たって、これ、被災地によりまして、非常に場所等々、状況等々によってえらい状況が違いますので、一律に被災者といってもなかなか状況が違いますので、そういったのを細かく把握して、これは、特に信用金庫等々地元の銀行できちっと長い、その状況のよく分かっているところという人たちと機構との間の活用を、両方ともよく連携をしながら、結構な時間をいただきましたので、この時間の間、それなりにノウハウというか、いろんなものが現場で分かっている人ほど結構積み上がってきているというように理解をしておりますので、解決策の提案とか実行支援を行えるように、私どもとしても金融機関に促してまいりたいと、そのように考えております。

○西田実仁君 この被災地の事業者の方々の再生を応援するということは、まさに仕事をつくって、暮らしとか生活を再建していくということに直結する話で、大変重要な役割を機構は果たしておられると思いますので、引き続き、御苦労も多いと思いますけれども、頑張っていただければと思います。
 次に、ちょっとやや細かいというか専門的な話ですけれども、民法の改正法案と中小企業金融について、金融実務の面からお聞きしたいと思います。
 国会に民法改正案が既に提出をされております。この民法改正案の前提である法制審議会において議論されましたけれども、今回の法改正には盛り込まれなかった将来債権の譲渡についてお聞きしたいと思います。
 具体的には、賃貸不動産に関しまして、賃料債権の譲渡をした後にその不動産を購入した者が出てきた場合に、賃料債権は賃料債権の譲渡を受けた者に帰属するのか、それとも不動産を購入した者に帰属するのかという問題、抜け殻不動産ということであると思います。
 なぜこうなるかと申しますと、不動産登記簿には賃料債権の譲渡についての記載はありません。賃料債権を譲渡した上で不動産を売却するという悪意を持った売主がいた場合、不動産を購入した者がだまされるという事態が発生する可能性があるという問題であります。
 賃料債権の譲渡がなされた物件について、銀行が抵当権の設定を受けた場合、銀行の抵当権が賃料債権の譲渡に負けてしまうとなれば、銀行としては思ったような物件価値の把握ができなくなるわけであります。登記簿に記載がありませんので、銀行がだまされるという可能性が出てきます。
 取引実務といたしましては、この賃料債権と不動産の所有権や抵当権を別々に処分するという事例はほとんどありませんけれども、しかし、今回、法制審でこうした議論が実際ありましたので、例えば実際に賃料債権を譲渡した後に抵当権を設定して詐欺的に金融を受けようとする者が出てきはしないか。抜け殻不動産のようなものですね。もしそういう者が出てきたとすれば、銀行としてはやはり保守的にならざるを得ませんので、賃貸不動産を担保とする案件について審査が厳格化されてしまう、あるいは借入人側の手間が増える。銀行から確認書を出せとか、あるいは賃借人から判こをもらってこいというようなことがありはしないか、そもそも信用度の低い者に与信ができなくなってしまうのではないかというようなことも懸念をされるわけであります。
 そこで、今日は法務省の方にお見えいただいておりますが、まず法制審でのこの議論の紹介と、実際の中小企業金融への影響についての問題意識をお聞きしたいと思います。

○政府参考人(金子修君) お答えいたします。
 今回提出させていただいております民法改正法案におきましては、将来債権を譲渡することが可能であると、この趣旨の規定は設けております。
 この規定の検討に当たりまして、法制審議会においては、どの範囲の債権について将来債権の譲渡の効力が及ぶのかということにつきまして詳細な規定を設けることも検討されました。そして、その際には、委員御指摘のように、将来発生する不動産の賃料債権の譲渡が一律に可能となると、不動産を譲り受けた新たな所有者が賃料債権を取得することができないということになりかねず、不動産を担保とする融資に支障が生ずるおそれがあるとして、不動産の賃料債権に関しては何らかの特別なルールを設けることが必要ではないかと、こういう御指摘が法制審議会の中でもございました。
 しかし、このような特別のルールの創設は、不動産の賃料債権の譲渡以外に賃料債権の差押えについても必要ではないかという問題、あるいは不動産の賃料債権以外の債権の譲渡についても同様の措置が必要となるのではないかというような問題がございます。また、賃料債権の譲渡を過剰に制約することによる弊害が懸念される上に、賃料債権の譲渡といいましても様々な事案があるということからしますと、その効力の範囲を制限するとしても要件を一律に設定することができるのかという問題もございました。さらに、現実的には、将来発生する不動産の賃料債権の譲渡は現在も許容されているわけでございますが、それにもかかわらずこれに伴うトラブルが生じているということはなく、抽象的な懸念にすぎないのではないかという御指摘もございました。
 このような議論を踏まえまして、民法改正法案におきましては、将来債権譲渡の効力の及ぶ範囲に関しては規定を設けず、将来債権の譲渡自体が可能であることを確認的に規定することにとどめ、仮にこの点が問題となる事案が生じた場合には、これまでと同様、個々の事情に基づきその効力の範囲を解釈論によって決するということとしたものでございます。
 したがって、民法改正法案が施行することによって中小企業金融の円滑が阻害されることにはならないというふうに認識しておりますけれども、民法のルールが取引実務に与える影響につきましては今後も引き続き注視してまいりたいと、このように考えているところでございます。

○西田実仁君 この賃貸不動産の抵当取引というのは中小企業金融の大きな柱の一つになっているわけでありますので、そうしたことに弊害が出ないよう注意深く金融当局としてもしっかりその議論の推移と、また実態を見ていく必要があるのではないかと思いますけれども、最後に大臣にコメントをいただきたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) そのとおりだと思っております。

○西田実仁君 終わります。