189-参-財政金融委員会-017号 2015年09月10日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
 今の若林先生の御質問と重なるんですけれども、今回のG20、財務大臣・中央銀行総裁会議を終えての議論をさせていただきたいと思います。
 今回のG20におきましては、今日の世界経済にとって最大の課題であります中国経済及び人民元切下げと米国の利上げということに絞られたと思います。議論の結果は声明文に明記されています。第一に通貨の競争的な切下げの回避、第二に金融政策の決定に当たり注意深く測定し明確なコミュニケーションを行う、第三に必要に応じ新たなリスクに対処する、そして第四に成長戦略を実施するという四点であろうかと思います。米国の利上げにはそれほど踏み込まずに、専ら人民元切下げと中国経済運営に対する議論、これに終始したんではないかというふうに見受けられます。
 会議の席上で、先ほど来お話ありました中国の楼財務大臣でありますが、人民元の修正は一度限りで、累積した元安の圧力は解消をされた、今後五年間は中国経済にとって構造調整の痛みの時期である、苦難の過程になるだろうと、こういう発言をされたと、こう伝えられております。
 仮にこの過剰設備、過剰債務等の構造問題の解決に五年を要するということであれば、常識的に考えて、今後五年間は不況色が強まるわけでありまして、景気の回復が予想されるアメリカや日本など先進国との比較から、人民元の一段の調整は避けられないのではないかというふうに私は見ているわけであります。
 中国経済の最大の構造問題は、もうこれまでも議論されてきたように、過剰な設備と過剰な融資ということであります。特に国有企業の再編が課題でありまして、既に、国有資産監督管理委員会という、大型国有企業を管理するところでありますけれども、ここが上場国有企業の再編加速に向けて様々な規制緩和も発表しているところでございます。
 過剰融資につきましては、やはりこれは地方政府に問題があると指摘されてございます。株式バブルの崩壊について、これは、上海はようやく正常な水準に戻っているのではないかと私は思っておりますが、深センはまだ割高ですが、全体的には収まってきている。住宅バブルも北京や上海では顕著でありますけれども、全国にそれが広がる、バブルの崩壊が広がるということにはなっていないのではないかと思います。当然、昨年の八月以降、アメリカの出口戦略による利上げを見込んでの人民元の対ドル実効レートの上昇によりまして輸出は減少しております。製造業の生産調整は広がり、一方で国際商品価格の下落効果が中国経済にも出ているというふうに思われます。
 製造業は確かに苦しいんですけれども、今や中国経済の約五割は第三次産業に既になってございまして、その第三次産業の成長率は八・四%あります。依然として八%台の成長が第三次産業では続いているということであります。賃金も上昇しておりまして、一人当たりの可処分所得は四—六で前年同期比八・一%増、消費も七・六%増と、消費は堅調であります。したがって、製造業は苦しいんですけれども、第三次産業の成長、またサービス業、消費は堅調と、こういう姿かなと私は見ているわけであります。
 そこで、まず中国経済についてどう見るかという御質問ですけれども、人民元高で製造業を中心に景気が失速し、過剰設備、過剰債務問題という構造問題が露出している。そして、その結果、成長率の低下は不可避であろうというふうに思います。経済を、しかし全体を見ると、今指摘させていただいたように、意外と粘り腰ではないかという印象もありますけれども、大臣としてはどのように見ておられますでしょうか。

○国務大臣(麻生太郎君) 急激に拡大してきた経済がその方向転換を迫られるときというのは、過去、我々は、いわゆる朝鮮事変の後からの高度経済成長、十六、十七年続けてオイルショックまで、オイルショックから構造改革をして猛烈な勢いで切り替えていった一回目。それでまた、一九八五年のプラザ合意以降二百四十円だった円が百二十円に暴騰したときに構造改革というのを迫られたとか、過去、これまで何回となくそういったような経験を持っている国ですけれども、あちらの場合はそういうことが、これは多分初めてのことですから、そういった意味では多分、どうやって調整していいか全然分かっていないと思いますよ。話聞いていても、全然言ってくることが、今はそんな段階じゃないという話を率直にしますから。そういう率直にしてくるまでにはなってきているとは思います。
   〔委員長退席、理事若林健太君着席〕
 ついこの間までは全くというのが、やおら寄ってきてはいろいろ話をするぐらいになってきていますから。特に通訳がいないときには二人きりになるとよく話をするようになったことは確かだと思いますが、きついんだと思いますね。
 そういった意味では、何をすればいいのかというところが一番肝腎なところだと思いますので、今言われましたように、やっぱり過剰設備というのが、やっぱり鉄の生産量が八億トンなんて言われると、それは本当かどうかは知りませんよ、八億トンなんて言われると、ちょっとさすがに驚くような数字でもありますし、また、人口がこれで、去年から人口減になって、一人っ子政策の結果人口減に今からはなっていくわけですから、これは高齢化が今から始まるということにもなるんだと思いますが、そういった意味では、社会保障制度の構築というのがまだでき上がる前にそれになってくるというのは、これはちょっと中国としては結構しんどいんじゃないかなと思いますので、そういったものを含めて、もう一個、よくうわさに出るシャドーバンキングの話とかPM二・五の話とか、これはいずれも社会的に解決せないかぬ大問題を抱えておるということが経済にどういう影響を与えるかというのは、これはちょっと十三億人というのは、こちらの十倍もある人口の下での話ですので、なかなか私どもとしては絵がよく見えてきていないところではありますけれども、ちょっと正直、彼らの立場に立ちますとえらいしんどい作業をやらざるを得ないだろうなというのは、私どもとして実感として分かります。

○西田実仁君 日本の対中輸出比率というのは一八%、中国輸出比率が一〇%以上の、世界の中で日本を除く国々への日本の輸出は三一・五%なんです。つまり、対中輸出の直接、間接の依存度という、日本経済にとっての依存度というのは実は五〇%なんですね、この一八と三一を足しますと。日本の輸出の半分は中国経済の影響を受けると言ってもよろしいかと思います。
 そういう意味で、こうした中国経済のリスク、日本経済にとってですね、それをどう見て、どう対策を打っていくのかということも考える必要があろうと思います。
 一つは、私が考えるには、やはりTPPの加速ということは市場、貿易自体を拡大していくという意味で大事でしょう。また同時に、内需という意味では、この成長戦略に対する支援というのは是非ともより加速していかなきゃいけないだろうと、こう思うわけですけれども、日本経済にとって中国リスクをどう見ておられるのか、お聞きしたいと思います。
   〔理事若林健太君退席、委員長着席〕

○国務大臣(麻生太郎君) これは、今私ども基本的には、先ほど大久保先生の御意見でしたが、四—六のところの話が出ていましたけれども、GDPがマイナス成長になっておるということになりますけれども、しかし、同じ時期に、これは企業の収益の方からいきますと史上最高の経常利益をたたき出しているということになりまして、二十兆でしたかの経常利益をたたき出しているということですから、雇用と所得環境の改善が続いておりますので、そういった意味では緩やかな景気回復基調が我々としては続いていることは間違いないと、そう思っておりますのですが。
 今言われましたように、貿易といいますと、貿易の相手国として一番ですから、かつてアメリカ、今中国ということになっておりますので、輸出相手国の第二位中国、輸入国の第一位が今中国と日本との関係なんですが、非常に密接なものがありますので、是非これは、中国の中の経済が投資によってわあわあ外に出していくというのから中に切り替えていく、いわゆる消費、中国人自身の消費。日本に来て爆買いするんだったら、中国で自分で買えと。同じものを売っておるんだから、そっちで買えばいいじゃないですか、日本に来て買うことないですよと。何で日本に来て買うのかといえば、そちらの方が税金が高いからでしょうがというような話をして、ええっという話をするから、いや、同じ商品をそちらの方で買わずに日本で買うというのはどういうことですかと。同じ資生堂のこの化粧品、同じものじゃないですかという話をすると、書きますものね。
 それはちょっと、かなりいろんな状況というものを見ますと、やっぱり構造改革というのが理解をしていくというのは、これ頭のいい、上の人にだけ分かっても、それを末端までずっと浸透させていくというのは、これは西田先生、かなり時間が掛かるものだとある程度思っておかないかぬとは思います。
 少なくとも急激にということではなくて、確実に消費財やら何やらの輸入が減ってくることは確かなんだとは思っておりますし、こちらに輸出という面においてもいろいろ影響が出てくるんだと思いますが、基本的に我々は末端消費財を輸出しているのではなくて資本財を輸出しておりますので、向こうから消費財、こっちが資本財ですから、形はかなり違うとは思っておりますけれども、いずれにしてもそういったのはお互いによくよく話し合っていってやっていかないかぬところかなと思っております。

○西田実仁君 人民元の話ですが、中国はもう既に世界一の貿易大国であります。その元の動向が世界経済に大きな影響を与えることは言うまでもありません。先ほど来話しました基準値制度を、不透明であるのでこれ改めていくと。そして、資本取引の自由化と人民元のオフショア市場とオンショア市場の乖離を解消すると同時に人民元を市場実勢化する、いわゆる人民元の改革が必要であるということであります。
 金利の自由化は既に完全自由化に近づいておりますが、外資依存の中国にとって資本取引の自由化を一挙に進めることはリスクが高いと思います。一定の期間を定めて資本取引の自由化を進めながら、人民元の市場実勢化を実現する必要があります。それには、人民元の急激な変化を避け、経済の実態に合わせながら、均衡レートにソフトランディングさせていく国際協調が必要ではないかと思います。
 具体的には、中国は、貿易で米国に次ぎ第二位の日本と三位の韓国との間で、為替安定のための通貨協議の場を開設し、相互に情報交換を密にしながら均衡レートへの誘導を図るべきではないかと私は思っております。既に中央銀行総裁間では日中韓において定期協議が行われております。アジアの通貨の安定を目的とした通貨当局の協議も必要になってきているのではないかと思いますけれども、最後に大臣にお聞きして終わりたいと思います。

○国務大臣(麻生太郎君) 西田先生、これはアジア、元に限りませんけれども、人民元に関する話だけではございませんけれども、一九九七年のアジアの通貨危機のあのときの経験を踏まえて、ASEAN十か国と日中韓三か国の参加しておりますASEANプラス3の財務大臣・中央銀行総裁会議というのが、二年後ですから、九九年以来、定期的に開催をされております。
 それで、財務省としても、この会議の発足以来、主導的な役割を果たしてきているんですが、金融危機の地域的な連鎖と拡大というのを防ぐということを考えないと、短期のドル資金というのが各国から出たり入ったりするのを、これ融通、ぼっと引き上げられたときには、キャピタルフライト、それが起きたときには、きちんとそういったものに融通する、いわゆるチェンマイ・イニシアチブというものを整備させていただいたり、また、その地域で、よく分かっていない人もいっぱいおられますから、そういったところに関しては、その地域のあれを分析しているんですよという、AMROという、これは日本が今所長をしていますけれども、そういったところのAMRO、ASEANプラス3のマクロのリサーチオフィスというものをつくっております。
 また、域内の貯蓄を投資に結び付けるアジアの債券市場の育成というものもやらねばならぬということをいろいろ取組を行ってきたところなんですが、この日中韓の三か国におきましても、いろいろ新聞だと日中韓全然話ができていないような話ですが、こういったことはきちんとやっておりますので、そういった話で、アジア通貨安定のためのでも、最近でも二〇一五年の五月にこれをやらせていただいておりますので、いろんな会議を通して、お互いさま、こういったものは共通の利益に結び付きますので、きちんとした連絡を取り合って、いわゆる突発的に何か起きるということによって大きなショックが起きないようなという対応に努めてまいりたいと思っております。

○西田実仁君 終わります。