192-参-内閣委員会-004号 2016年11月08日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。当委員会は初めてでございまして、素人的でございますけれども、質問させていただきたいと思います。
 まず、先月の三十日でありますが、国際宇宙ステーション、ISSに約四か月滞在されました大西卓哉さんがその任務を終えられて帰還をされました。大西さんは、ISSにある日本の実験棟「きぼう」で、世界初のマウス飼育実験など多くの科学研究にも携わってこられました。宇宙を身近にする活動も非常に活発でございまして、アジア各国の学生や科学者から提案された実験を幾つも行っておられました。宇宙で紙飛行機がどう動くのかとか、あるいは毛細血管がどうなるのかなど、大変に興味を引く実験が数多くございました。
 日本はアジアで唯一ISSに参加する国だけに、今後もアジア各国に代わりまして宇宙で実験を重ねて、その成果を地上で生かせるようにしていくべきであるというふうに思います。
 このISSにつきましては、日米ロなどが二〇二四年まで運用することになっております。設計上は二八年まで使用が可能のようでありますが、これに代わります国際的な宇宙開発拠点をどうしていくのかが課題とされるわけであります。
 一方で、先ほど藤末委員からもお話がございました、中国におきましては既にロケットの打ち上げ回数では日本を凌駕し、独自の宇宙ステーションの計画を進めるなど、いわゆる宇宙強国に向けて邁進をしているという現状もございます。つい先日も有人宇宙船が打ち上げられました。
 まず、鶴保大臣にお聞きしますが、こうした中国の宇宙開発についてどのような御所見をお持ちでありましょうか。

○国務大臣(鶴保庸介君) 委員御指摘のように、大西飛行士がこの間帰ってこられまして、その大西さん御本人と交信イベントで同じ質問を私もさせていただきました。中国の開発に向けて感想をと申しましたら、飛行士は、しっかりこれらの国々と連携を取っていくべきだと力強く申されました。このことに私は尽きるというふうに思います。
 中国という国が宇宙強国を目指しているという指摘もありますけれども、技術の連携、そして、私たちがそれを見て焦ることなく、しっかりと私たちの技術革新のために参考にすべきものは参考にさせていただきながらやっていくというのが大切なのではないかというふうに私は感じております。また、西田先生の御高見を拝聴し、参考にさせていただければというふうにも思います。

○西田実仁君 来年には、第二回の国際宇宙探査フォーラムが東京で開催をされます。ここにおきましては、アメリカやロシアなどに加えまして、中国も閣僚級が集い合いまして今後の宇宙開発を話し合うと、こう聞いております。
 ISSによる国際協力の成果を将来に生かすためにも、開催国である日本がこの議論を主導していくべきであるというふうに考えますが、同フォーラムの課題、また議長国としての意気込みについて文科省にお聞きします。

○政府参考人(白間竜一郎君) お答え申し上げます。
 ただいま御指摘のございましたいわゆるISEF2というフォーラムでございますけれども、来年の後半に日本で開催をする、第二回目を開催するということにしておるところでございます。
 この課題ということでございますけれども、まず、その人類共通の知見、経験、利益、この獲得への大きな挑戦でございます宇宙探査、これを進めていくに当たって、国際的な協力、共同、これは重要かつ不可欠であるというふうに考えておりますけれども、これに当たりまして、各国それぞれ考え方もございまして、宇宙探査についての国際的な連携、これが必ずしも十分には取られていない状況であると、このように考えているところでございます。
 したがいまして、この第二回の国際宇宙探査フォーラムを通じまして、今御指摘のございました多数の国、これは宇宙先進国、途上国双方を含めて、多数の国などから閣僚級も含めたハイレベルな政府関係者が参加されますので、この皆様の対話を通じまして、この宇宙探査に関する意義、また協力、共同の重要性、こういったものを共有をする、そして国際宇宙探査の持続的な進展に向けて進めていく、こういうことに向けて、我が国として、主催国としてしっかりと貢献をしていきたいと、このように考えているところでございます。

○西田実仁君 是非、議長国として積極的な議論の主導をしていただきたいというふうに思います。
 続きまして、「ひとみ」分解の原因と今後の改善策についてお聞きしたいと思います。
 今回の法律の、管理に、第二十条以下でありますけれども、係る許可制度についてお聞きをしたいと思います。
 このエックス線天文衛星「ひとみ」は打ち上げから二か月余りでその運用を断念をするという、分解に至ってしまいまして、大変残念でありますが、日本の宇宙科学あるいは探査への信頼を揺るがせました。その原因を調べているJAXAによりますと、単純な人為ミスあるいは設計の全体を見るアプローチが欠如していたなど指摘されていると聞いております。
 今年二月に打ち上げられました金星探査機「あかつき」におきましても、地上との通信が一時途絶えるという事故もございました。これもまた人為ミスではないかというふうにも言われているわけであります。
 こうした相次ぐ事故がなぜ起きるのか、また、その原因と対策について、特にヒューマンエラーについての原因、対策を文科省にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(白間竜一郎君) お答え申し上げます。
 まず、御指摘の二つございましたうちの金星探査機「あかつき」の通信トラブルにつきましては、これは、御指摘のように、パラメーター設定を誤るということから姿勢の乱れが生じ、そして通信が一時途絶える、このような事象が生じたところでございます。幸いにも、これはすぐに復旧いたしまして大きな事故には至りませんでしたけれども、こういったトラブルがあったのは御指摘のとおりでございます。
 また一方、エックス線天文衛星「ひとみ」につきましては、御指摘のように、衛星の異常回転の発生ということに加えまして、不適切なプログラム設定があった、このことによりまして姿勢制御用のエンジンが想定と異なる噴射を行うということが生じ、衛星がより速く回転をしてしまうという、こういった複合的な要因が重なって太陽電池パネルが分離をし、残念ながら運用の断念ということに至った次第でございます。
 この原因につきましては、大きく三つあるというふうに分析をしております。
 一つは、プロジェクトをマネジメントする者が、衛星の運用だけではなくサイエンス、科学的な成果の創出の役割も担う、兼ねていると、こういった体制であり、衛星の安全性への配慮が十分でなかったということが一つ。また、プロジェクト業務の文書化と品質管理が不徹底で、企業との役割、責任分担が不明確であったということ。さらに、システム規模が複雑かつ大きくなり、管理が行き届かなくなったという、この大きな三つであるというふうに考えております。
 このことに対します再発防止対策としまして、JAXAにおきましては四つの対策を徹底するということにしております。
 まず、プロジェクトに責任を持つ者とサイエンスの成果の創出に責任を持つ者、この二つのものの役割を別々の者が担う、こういったマネジメント体制にしていくと、こういった体制の見直しの点が一つ。また、企業と役割、責任分担の見直し、またそれをきちんと明確化をするということが二つ。また、プロジェクト業務の文書化、品質記録を徹底をするということ。そして、四つ目としまして、システムの安全性を重視した審査、管理、また第三者による独立の評価、検証を徹底するといったことなどの審査、独立評価の運用の見直し。こういった四点を徹底することとしておりまして、文部科学省としても、この対策をしっかりと取り組まれるようにフォローしてまいりたいと考えております。

○西田実仁君 今回の宇宙活動法案におきましては、打ち上げに係る許可制度は法第四条に、管理に係る許可制度については第二十条以下に定められております。
 この二十条におきましては、人工衛星の管理を行おうとする者は人工衛星ごとに内閣総理大臣の許可を受けなければならないとして、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に内閣府令で定める書類を添えて内閣に提出をすることになっております。その事項には、二十条二項の五号にあります人工衛星の構造はもちろんでありますが、加えまして、七号では人工衛星の管理の方法を定めた計画、そのほか内閣府令で定める事項が掲げられております。
 そこで、まず確認でございますけれども、この今お話がありました「ひとみ」、あるいは「あかつき」もそうでありましょうが、単純な人為ミスの積み重ねが事故をもたらしたとすれば、本法案で規定されます許可制度は、例えばこの「ひとみ」の事故の再発を防止する十分性をどう備えているのか、大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(鶴保庸介君) 本法案における人工衛星の管理に係る許可に際しては、人工衛星の位置や姿勢といった状態を把握し制御するための方法及び体制について定めた人工衛星の管理計画を提出させることといたしております。法の目的を果たすために一定の管理体制の整備を要求し、具体的には、各運用フェーズにおける運用手順や異常が発生した場合の対応手順の整備、責任の明確化等を求めることを想定しております。
 ヒューマンエラーについて、委員御指摘のとおり、一義的には人工衛星管理者自らの取組で防止するものではありますが、こうした手続により、御指摘の運用の適切性の確保についても一定の効果があるものと考えております。

○西田実仁君 国費を投じる様々な各省庁のプロジェクトについて、どう監督というか管理をしていく体制にしていくのか、見直す必要があるのかどうか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(佐伯浩治君) 貴重な国費を投じますプロジェクトについては、適切な管理が大事でございます。この国費により実施されるプロジェクトにつきましては、その目的に応じまして、それぞれの担当の官庁がそれぞれの大臣の責任の下で実施しているところでございます。このため、それぞれのプロジェクトにおいて事故などが発生した際には、担当の官庁において原因調査、対策等を行うことになります。
 また、事故が発生した場合につきましては、宇宙政策委員会においても、当該事故の調査結果などの報告を受けますとともに、必要に応じまして更なる調査審議などを実施することになると考えられます。
 このような事故に関する情報や取組を政府内で共有、活用し、関係官庁に注意喚起を行うことでプロジェクトの円滑な運営などに尽力してまいりたいと考えておるところでございます。

○西田実仁君 民間が打ち上げた衛星で同様の事故が起きた場合でありますけれども、その際の対応はどのようになるのか、活動法との関係でお伺いします。

○政府参考人(佐伯浩治君) お答え申し上げます。
 本法案におきます民間の事故に関する規定といたしましては、第二十四条において管理計画の遵守を定めており、第三十三条第三項において、管理計画の遵守の規定に違反していると認められるときは、是正するために必要な措置をとるべきことを命令できる旨定めてございます。
 また、事故の発生によりまして人工衛星の管理ができなくなり、かつ回復する見込みがないときにつきましては、第二十五条におきまして、当該事故の状況や人工衛星の位置の特定に資するものなどを届出させることとしているとともに、人工衛星の管理の許可は効力を失う旨定めているところでございます。
 打ち上げ前の人工衛星の管理の許可に係る審査や管理計画を遵守させることなどによりまして、民間事業者が管理する人工衛星につきましても公共の安全の確保などに支障を及ぼすことがないよう努めてまいりたいと考えております。

○西田実仁君 続いて、第三者賠償制度についてお聞きしたいと思います。
 法三十五条、また三十六条におきましては、人工衛星の打ち上げに伴いロケット落下等の損害を与えたときには、その損害を賠償する責任として無過失責任と責任集中を採用しております。なぜこの無過失責任あるいは責任集中という考え方を採用することが重要であるのか、被害者、製造業者の保護という観点から説明をお願いしたいと思います。

○政府参考人(佐伯浩治君) お答え申し上げます。
 故意、過失がなくても打ち上げ事業者側に事故の一切の責任を負わせることとする無過失責任につきましては、まず、ロケット等の落下事故は、打ち上げ実施者が自ら危険をつくり出しコントロールしているという極めて特殊な行為であることから、その賠償責任につきましても自身で負担することが妥当であることがございます。また、被害者側に打ち上げ実施者側の過失の立証責任を負わせるということは、その特殊性から被害者にとって過酷であると考えられます。
 これらの点から、被害者保護の観点から、この無過失責任というものを採用しているところでございます。
 また、打ち上げ実施者以外の部品メーカーなど、こちらにつきまして一切の責任を負わないことといたします責任集中につきましては、まず、被害者保護の観点から、多岐にわたる部品メーカーなどの関係者の中から損害賠償をすべき相手方を特定する責任を負わせることは不当性が高く、その負担関係を明確化すべきであるということ、また、産業振興の観点からは、それぞれの部品メーカーなどが損害賠償責任を負うこととなるリスクを排除することが事業への参入を促進し、かつ打ち上げ実施者の競争力の向上につながると、このように考えておりまして採用しているものでございます。

○西田実仁君 もう一つ確認したいのは、三十六条の三項におきましては、原子力事業所への落下事故が発生した場合の対応が定められております。原子力事業所への落下事故の場合、原賠法との優先順位がいかようになるのか。また、この原賠法におきましては今議論が様々なされておるようでありますけれども、いずれにしても、被災された方への補償についてどのように考えていくのか、大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(鶴保庸介君) 御指摘のとおり、三十六条三項におきましては、ロケット等が原子力施設に落下をして第三者への原子力損害が発生した場合等を想定し、原子力損害の賠償に関する法律の適用を排除するものと解してはならない旨明記をさせていただいております。これは、当該落下が引き金となって第三者に放射線被曝などの原子力損害が発生した場合には、一義的には原子力事故の損害として原子力損害の賠償に関する法律等を適用することとし、二つの法律体系の関係を整理させていただいたものであります。
 具体的には、原子力損害賠償法等を適用した場合、第三者損害の補償上限額については最大千二百億円まで確保されておりますが、さらに賠償措置額を超え法目的を達成するために必要と認められる場合は、政府は原子力事業者に対し損害を賠償するために必要な援助をすることができることとなっております。
 こうしたことから、原子力損害賠償法等を適用したとしても、被害者保護の観点において問題はないと考えております。

○西田実仁君 原賠法が優先されるということでございます。
 この法三十九条、四十条につきましては、第三者賠償制度における政府補償について、どのような事態に政府補償が行われるのかを定めております。過去の例に照らしまして、あるいは今後の宇宙産業の拡大ということを見据えますと、民間保険で賄えないような巨額な賠償が発生する事態の可能性をどう見るのか。また、敵国、テロリストの攻撃等による落下の場合、この場合は民間保険で恐らく免責になろうと思いますけれども、政府補償が行われない可能性はあるのかないのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(佐伯浩治君) お答え申し上げます。
 過去の例に照らしてみますと、世界的にもこれまで民間保険で賄えないような巨額の賠償が発生した事実は確認されておりません。また、ロケットの打ち上げにつきましては、人口稠密地帯を可能な限り通らないような飛行経路を設定することが一般的でございまして、大規模な第三者損害が発生する確率は極めて低いと考えております。
 今後の宇宙産業の拡大を踏まえました場合につきましても、この法案の適切な運用により担保される安全性の確保を前提にいたしますと、これまでと同水準の信頼性が保たれるものと認識しております。
 したがって、民間保険で賄えないような巨額の賠償が発生する事態の可能性は、これまでも、また今後も、通常では考えられない低い確率、低く限定的であるというふうに考えております。
 また、いわゆる戦争又はテロリストの攻撃については、民間保険におきましては免責事由に該当しており、民間保険による損害賠償担保措置の補償範囲からは外れると考えております。このような被害に対しましては、この法案第二条第九号におきまして、「テロリズムの行為その他その発生を保険契約における財産上の給付の条件とした場合に適正な保険料を算出することが困難なものとして内閣府令で定める事由」と定義しており、こちらに対しては政府補償を行うことを法第四十条第一項で手当てしております。
 したがいまして、このような場合につきましては、被害者保護の観点から、政府補償契約において補償を行うものと考えております。

○西田実仁君 最後に、衛星リモセン法のリモセン記録の取扱いに関する規制についてお聞きしたいと思います。
 リモセン記録の提供の範囲及び期間の制限について、衛星リモセン法案十八条三項におきましては、公益上の必要により、又は人命の救助、災害の救援その他非常の事態への対応のため緊急の必要により行う場合を除き、当該衛星リモセン記録を提供してはならないとして、法三十三条においては罰則を設けてこれを禁止をしているわけであります。
 しかし、ここで問題は、この公益上の必要というのはどこまでなのか、あるいは災害等の緊急の必要ということについて、なかなか現実難しい面が生じないかという懸念がございます。違反すると罰則が設けられておりますものですから、こういうグレーゾーンにおきまして有益な記録が提供されない、あるいは提供が遅れるという懸念はないのか、また、その際の提供先については、省庁、役所、消防、警察など行政機関のみになるのか、確認をさせていただきたいと思います。

○副大臣(石原宏高君) 人命の救助及び災害の救援等、非常の事態への対応のため緊急に必要な場合は規制の対象外としております。提供先についても、省庁、役所、消防、警察などに限ることなく、制限はないというふうな解釈になります。したがって、お尋ねのような懸念はないというふうに考えているところであります。

○西田実仁君 最後、第十九条でありますけれども、この一項で、内閣総理大臣は、衛星リモセン記録の利用が国際社会の平和の確保等に支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる十分な理由があるときは、衛星リモセン記録の範囲及び期間を定めて、その提供の禁止を命ずることができるというふうにされております。
 ここで言う十分な理由の基準はどのようになるんでしょうか。その判断要素、また判断の部署、さらにその判断に係る情報公開がどのようになされるのか、最後に大臣にお聞きして、終わりたいと思います。

○国務大臣(鶴保庸介君) 先ほど藤末委員の御質問にもお答えをいたしましたが、リモセンデータの活用につきましては、規制とそして活用のバランスが非常に難しく、判断があるというふうにも思います。したがいまして、個別具体的な状況に応じて総合的に判断をする必要があり、具体的な状況を一概に申し上げることは困難であると考えております。
 その上であえて申し上げるとするならば、例えば衛星リモートセンシング記録が紛争の当事国やテロ組織等によって利用され、武力紛争やテロ行為等が助長されるおそれがある場合、あるいは政治的、軍事的な情報収集手段として利用され、我が国の安全保障に支障を及ぼすおそれがある場合で、そのように認識するのに十分な資料や客観的、合理的な理由がある場合などがこれに当たる可能性があると考えております。
 また、本命令については、本法案第十九条に規定するとおり、宇宙開発利用に関することを分担管理する内閣総理大臣が提供の禁止を命じることとなっております。その際、実際の意思決定に際しては、国家安全保障の見地から総合的に判断することが必要となることから、安全保障に関係する主要な府省とも密接に協議を行い、その見解を尊重した上で判断を行い、適切な対応を図ってまいりたいというふうに思っております。

○西田実仁君 終わります。