201-参-総務委員会-010号 2020年03月31日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
 今日は、まず資料を御覧いただきたいと思いますけれども、これ、財政安定のための繰越金の推移、見通しということでございます。
 NHKの繰越金、いわゆる財政安定のための繰越金は、毎年、見ていただくと分かるとおり、収支改善金が毎年ほぼ繰り入れられておりまして、結果として、この十年で平均して一千億円の繰越金というのが発生をしております。これはもう御案内のとおり、平成元年から衛星放送が始まりまして、衛星受信料収入、これが財源を確保したと言えると思いますし、様々な御努力があったと思います。受信料は、いろいろありますけれども、基本的には右肩上がりになってきているということであります。
 そこで、まず、私もこのコロナウイルス感染症の件でお伺いしたいと思うんですけれども、やはりこのNHKという公共放送を国民の、視聴者の皆様に感じていただくには、この業務はもちろんでありますけれども、経営ということでも国民の皆様、視聴者の皆様にNHKを感じていただくということが大変重要ではないかというふうに思っております。
 今、このコロナ感染症への対応で大変な困難に直面している方々に、これだけの繰越金が積み上がっている今だからこそ可能な思い切った支援をやはり検討していかなければならないのではないか。多額の繰越金、これひとえに受信料のおかげということであります。これにつきましては、午前中も議論が既にございました。
 改めて確認ですけれども、総務大臣も、今日ではありませんけれども、前に、NHKの受信料について、このコロナ感染症対応ということで、その不払でサービスが停止されることはありませんと、また、延滞料、延滞利息も、支払期限から四か月は発生しないことも周知してもらいたいという御発言もなさいました。NHKとしても、専用の相談窓口を設けて、支払が困難な方々の相談を受けて対応しているということも承知をしてございます。
 ただ、今、与党といたしましても、私自身も、今日午前中、そうした打合せ、意見交換しましたが、このコロナの影響により著しく業績が落ち込んでいる企業に対して、国税や地方税、あるいは社会保険料、これについて大胆な納税、納付の猶予ということを今検討してございますし、特に税に関しましては、いわゆる延滞税というものは課されるべきではなく、また、納付能力の要件についても大幅に緩和していくと、こういう方向で今検討を進めております。
 先ほど、大臣の要請を受けて減免も検討されるというお話がなされたと思いますけれども、改めてお聞きしたいと思います。
 新型コロナウイルス感染症により著しく影響を受けている個人、事業者に対して、例えば受信料の免除でありますとか、少なくともこの延滞利息が四か月というのは、今、税の方で一年ぐらいを延滞利息なしでやろうというふうにしていることからしても、もっと思い切った負担軽減ということが必要ではないかと、このように検討すべきではないかと思いますけれども、まず会長の御所見を伺います。

○参考人(前田晃伸君) お答え申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりまして、多くの世帯や事業所が影響を受けていることは承知いたしております。NHKでは、新型コロナウイルスにより影響を受けた皆様からの受信料のお支払に関する御相談の窓口を三月二十五日より開設し、支払期限の延伸などに関する御相談をお受けしています。また、事業所の契約につきましては、一年間支払がないと割引を受けられなくなりますが、この割引の解除期間の緩和などの措置を講じております。
 新型コロナウイルスの感染拡大が急速に進み、未曽有の状況となっていることも踏まえまして、高市総務大臣から要請がございました旅館やホテルなど中小企業者向けの受信料負担の軽減につきましては、前向きに検討をさせていただきます。
 また、政府の検討や取組なども参考にしながら、免除の条件、要件や範囲、規模の検討を急ぐとともに、協会の財政への影響も見極めた上で、NHKとしての対応をスピード感を持って積極的にお示しできるように取り組んでまいりたいと思います。

○西田実仁君 大臣にお聞きしたいと思いますけれども、今会長からお話がございましたが、租税というのは、言うまでもなく租税債権って非常に重いものですけれども、それについても猶予をし、さらには延滞利息も取らないというようなことを今与党としても考えているわけですね。当然、それは、NHK受信料は公共料金とは言い切れないけれども、しかし、租税に比べれば当然、優先というか、順位は低いわけですけれども、その一番重い租税ですらそのぐらい減免あるいは負担軽減を大胆にやろうとしていることからすれば、NHKの受信料についても、それよりも下回るということはあり得ないのではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(高市早苗君) 新型コロナウイルス感染症が拡大する中でございますので、とりわけ旅館、ホテルを始めとする中小企業、中小事業者の経営に対する影響が深刻化しております。
 そこで、昨日でございましたが、前田会長にお目にかかり、この受信料の負担軽減についてのお願いを正式にさせていただきました。今ほども前向きな、御検討いただけるという答弁がございました。
 この支払猶予期間の延長ですとか受信料の減免につきましては、放送法の規定によって、NHKが受信規約や免除基準を定めて総務大臣の認可を受けることとされておりますので、NHKからこれらの変更認可申請がなされましたら、迅速に対応したいと存じます。

○西田実仁君 公益財団法人の新聞通信調査というところが毎年メディアに関する全国調査というのを行っております。第十二回が昨年の八月から九月にかけて行われたわけでありますけれども、これ、二〇〇八年に始まって以来、ずっとこの情報信頼度という点ではNHKテレビが第一位を占めてきました。昨年初めて、これが新聞に第一位の座を譲ったということがございました。
 これについてどう受け止めておられるのか、会長にお聞きしたいと思います。

○参考人(前田晃伸君) 報道された内容は承知いたしております。メディアにとりまして信頼は何よりも大切なものと考えておりまして、視聴者の声や様々な調査を真摯に受け止めながら、視聴者・国民の皆様の信頼を得られるよう、放送とサービスの不断の向上に努めてまいりたいと思います。

○西田実仁君 森下経営委員長は、NHKが公平公正、不偏不党、そして真実を伝える公共放送としての役割を果たすためには、編集権は会長にあるという認識を全役職員に徹底することはガバナンスの観点から極めて大切なことと、先ほども委員会の質疑でお話がございました。
 この編集権が会長にあるというのはもちろんですけれども、私もメディア出身で思うことは、番組制作の自由もないと、これは編集権が会長にあるのは当然なんですけど、現場で作る人の思いということも、両方ないと、もちろん放送の自主自律というのは維持されないんだろうというふうに思います。すなわち、このガバナンスという内部統制と番組制作の自由ということのこの調和をどう図っていくのかということが大変大事でありまして、それこそがまさに放送の自主自律ということにとっての要であろうというふうに思います。
 この放送業界におきましては、民放におきましても、例えば過去いろんな問題が起きたときに、その検証のために設置した外部調査委員会なるものが例えば倫理・行動憲章を制定したり、あるいは良心に反する業務から番組制作者を守るため、番組制作現場からの救済の申立てにも対応する放送活性化委員会というものを設置することを提言したりということがかつてございました。
 そこで、今日は、NHKの中にも放送現場活性化会議というのがあるやに聞いておりまして、私が考えるその放送の自主自律、これを堅持していくには番組制作の自由と内部統制の調和が大切という意味でも、この放送現場活性化会議ということは重要な役割を果たすべきものではないかというふうに思っておりますが、この会議がいつ何のために設置をされたのか、その構成員、また、これまでの開催数についてお聞きしたいと思います。

○参考人(木田幸紀君) お答えいたします。
 放送現場活性化会議は、現場で十分な議論を経た上でなお制作、取材に関する問題提起があった場合、問題の経緯や原因等を調査報告することで放送現場の活性化に資することを目的に一九八九年一月に設置したものです。会議は、放送総局長を座長に、考査室長、そして座長が指名する関係部局長などで構成します。
 なお、番組制作に当たり、放送現場では日常的に活発な議論が交わされており、結果的に会議の開催には至っておりません。

○西田実仁君 八九年一月に設置をされてもう三十年余りであります、三十年ぐらいですけれども、今のお話ですと、これまで三十年間、一回もこの放送現場活性化会議というものが開催されてこなかったというお話だと思います。
 三十年間、こういう放送現場活性化会議が開かれてこなかったのはなぜか、先ほどちょっと一行ぐらいお話があったと思いますが、もう少し詳しく教えてください。

○参考人(木田幸紀君) 番組制作に当たって、放送現場では、提案段階、企画の提案段階とか制作過程、あるいは放送後などに、様々な段階で日常的に活発な議論を行っております。
 放送現場活性化会議というものは、放送現場の活性化に資する補完措置として位置付けられたもので、開催すること自体を目的としているものではありません。各職場で様々な議論を真摯に積み上げてきたことで、放送現場活性化会議の開催には至っていないものというふうに承知しております。

○西田実仁君 だから、これは要らないじゃないですか、会議。なぜあるんですか。

○参考人(木田幸紀君) 繰り返しになりますけれども、これは補完措置として、様々な議論を積み重ねていった上での補完措置としての機能を位置付けて置いてあるものでございます。この開催に至っていないことは、日常的に活発な議論が行われていることの証左であろうというふうに考えております。

○西田実仁君 これ、でも、なぜ八九年一月にできたんですか。背景を教えてください。

○参考人(木田幸紀君) これは、一九八九年一月四日に、当時の組合からの要求を受けて設置した業務レベルの会議であります。
 当時、やはり取材、制作に関わったスタッフ及び職員との間でのいろいろな議論が必要であろうということが背景にあったというふうに考えております。

○西田実仁君 結局、目的はそうでも開かれてこなかったということで、考えられるのは、今現場でいろいろ議論が活発になっているからこの会議にかけるまでもなかったという御説明だったと思いますけれども、考えられる理由としてはまずそれが一つですね。
 もう一つ考えられるのは、やっぱり会議体そのものが機能していないので、問題が、じゃ、八九年につくられた前にいろいろありました。その後もいろいろ社会問題になることもありました。途中で辞めちゃった職員の人とかもいるわけですし、全く、現場での積み上げがあって、何も会議にかける問題が一つもなかったからというのは、なかなかこの三十年間の歴史を見たときに考えにくいと正直、率直に思います。
 そういう意味で、この会議体そのものが本当に機能しているのかという問題提起をしたいというふうに思います。今いろいろ取り上げられている問題についても同様な面があると思いますけれども、こうした名前にあるとおり、現場の活性化ということに資する放送現場活性化会議というものであれば、そういう、まあ名前はともかくとしてでも、そういう機能というものは、NHKの業務、受信料、ガバナンスというこの三位一体改革にとって私は必要ではないかというふうに思います。
 しかし、これまで、正直言って、三十年間、どんなにすばらしい職場で積み上げてこられたのか、私もつぶさにはもちろん存じ上げませんけれども、何か問題あっても、結局、こういう会議体を設置しても、そこにかけてこられなかったということ自体は、この会議が本当に要らないのであればもう別にやめればいいと思いますけれども、こういうものが補完的にせよ必要であるとするならば、それがこれまで開かれてこなかった、もっと率直に言えば、機能してこなかったということを率直に見詰め直して、どういうふうにすれば経営陣と職場の皆さんとの対話がよくできて、より自主自律のNHKになるのかということを考えていくことこそ大事なんじゃないですか。会長にお聞きしたいと思います。

○参考人(前田晃伸君) 私も、委員御指摘のとおり、私は現場第一主義でこれまでやってきましたし、今後もやっていきたいと思っております。
 改革を進める上で、役員と職員が対話や意見交換を通じて意思疎通を図ることは極めて重要であると認識しております。
 現在、各部局で年一回以上、役員と職員との対話活動を行うことにしておりまして、昨年度は全国で八十六回、三千五百人余りの職員が参加いたしております。また、全職員を対象に、仕事や職場、上司、経営、処遇への意識を調査する職場環境評価をずっと毎年実施いたしておりまして、それぞれの職場でその結果を共有、分析して職場の改善に取り組んでおります。また、労働組合とも毎年、放送担当の役員が出席する会議を開催し、広く放送に関する問題について意見交換を行っております。
 引き続き、現場第一で、現場での自由闊達な意見を尊重し、様々な機会を捉えて役員と職員の間の距離を縮めてまいりたいと思います。

○西田実仁君 是非、その中でこの活性化会議なるものをどういうふうにして位置付けていくのかということも御検討をいただければというふうに思います。
 最後に、会長にお聞きしたいと思いますが、NHKという特殊法人の経営というのは大変難しいんだろうというふうに思います。労使の信頼による民間企業的な経営を目指すのか、それとも公務員的な制度による経営を目指していくのかと、そのどちらでもないからこそ、特殊法人であり、そこに難しさがあるんだろうというふうに思います。
 しかし、この頑張る努力目標を掲げるのも大事なんですけれども、もっと何をするかというのを明確にしていかないと、なかなかこの曖昧さの中で、居心地はいいかもしれませんけど、何でもかんでもやるわけにいきませんでしょうし、かといってこれだけやればいいということでもないと思いますが、そういう難しいこの特殊法人の経営をされていく中で、今後どういう明確な目標を掲げていくのか、そして、曖昧になりがちなNHKという特殊法人の経営を今後どうかじ取りをしていくのか、それを最後お聞きしたいと思います。

○参考人(前田晃伸君) お答えします。
 NHKは、公共放送、公共メディアとして、放送法の精神にのっとりまして、正確で迅速なニュースや質の高い多彩なコンテンツをお届けし、信頼される情報の社会的基盤としての役割を果たすことを目指しております。
 そのために、NHKの役割を表す公平公正や地域社会への貢献など十四の経営指標を設定し、世論調査で視聴者の皆様の期待度とそれに対する実現度を測ることによりまして、三か年経営計画とNHKが追求する六つの公共的価値の進捗を評価しております。
 六つの公共的価値というのは、正確、公平公正な情報で貢献すること、安全で安心な暮らしに貢献すること、質の高い文化の創造、地域社会への貢献、日本と国際社会への理解の促進、教育と福祉への貢献、この六つの公共的価値の追求でございます。
 経営資源が限られる中、今後も公共放送、公共メディアとしての役割を果たし続けるために、業務に優先順位を付け、効率的で効果的な業務運営を行うことによりまして、労働環境を守りながら、職員がモチベーション高く働き続けられるような組織運営に努めてまいりたいと思います。

○西田実仁君 終わります。