207閉-参-農林水産委員会-001号 2021年12月22日

○西田実仁君 公明党の西田実仁でございます。
 私もこの委員会で質問をするのは初めてでございますが、機会をいただきまして本当にありがとうございます。
 先日、公明党の農林水産部会といたしまして、地元埼玉県の酪農家を視察させていただきました。御協力をいただきました関係者の皆様には心から感謝申し上げたいと思います。
 その酪農家の方は若い経営者でありまして、自給飼料生産に取り組み、人と牛と土地のバランスを大事にしているすばらしい経営をなさっておられました。こうした酪農家の皆様方が御苦労されて生産されている生乳ということを見るにつけ、我々消費する側にとりましても、やはり御苦労されて生産されたこの牛乳や乳製品をしっかりといただくことがとても大事なことであるということを改めて認識をいたしました。
 先ほど来からもう既にお話がございましたが、コロナ禍で業務需要が非常に減少している、生乳を保存の利くバターや脱脂粉乳等の乳製品に仕向け、その結果、乳製品の在庫が大幅に増えていると。こういうことから、生乳の増産抑制等々がなされているわけであります。
 酪農家にとりましては、畜産クラスター事業を活用して経営規模を拡大したり、省力化のために投資を行った結果、今、令和元年度以降は、北海道を中心に生乳生産は増加傾向にあった中であります。しかし、今回のこの在庫の大幅な増加に見舞われ、酪農経営に与える影響は甚大であるというふうに認識をしております。
 そこで、まず、改めてお聞きしますが、この過剰な生乳在庫への対策とともに、酪農家に対する万全の支援、これをどのようにしていくのか、また、やはりこの消費をどう拡大していくのかということに農水省としてどのように取り組んでいくのかもお聞きしたいと思います。

○政府参考人(森健君) お答え申し上げます。
 先生御指摘の、委員御指摘のとおり、コロナの影響によりまして乳製品の在庫が高水準となっているという状況がございます。現在、脱脂粉乳の在庫削減に向けまして、全国の生産者と乳業メーカーが一体となった取組について、農林水産省も参加しての議論が行われているところでございます。農水省といたしましても、こうした生産者、乳業メーカー、関係者の取組状況を踏まえ、コロナの状況下で必要な後押し、対策をまさに検討をしているというところでございます。
 また、酪農家に対する支援という観点で申し上げますと、様々な政策をフル活用しながら取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

○西田実仁君 私はこの分野の専門家ではないんですが、素人的に考えると、これだけ乳製品の在庫が増えている一方で、日本においてはこの乳製品等の輸入量というのは四割ぐらい占めているというふうに聞いております。したがって、今すぐには難しいにしても、国産品の比率を上げる何らかの方策を講じていくということがとてもこの乳製品について必要ではないかと思いますけれども、どのようなお考えでしょうか。

○政府参考人(森健君) 輸入乳製品につきましては、御指摘のとおり、我が国の牛乳・乳製品需要の約四割を占めているという状況でございまして、実はその七割がチーズということでございます。
 一方、国内におけますチーズの消費量は着実に増加をしているわけでございますが、国産チーズの生産量は横ばいの状況、つまり国内市場を輸入チーズに奪われている状況にあるということでございます。そうした点から、この国産チーズの競争力強化がこの国産品の需要を増やすための大きな課題だというふうに認識をしているところでございます。
 このため、輸入チーズに品質面で対抗できますように、原料生乳の高品質化、国産チーズのブランド化等に対しての支援を行っているところでございます。今回、令和三年度の補正予算におきましても昨年度と同額の六十億円を措置をしたという状況でございます。
 引き続き、この国産乳製品の競争力強化というものを図ってまいりたいというふうに思っております。

○西田実仁君 この国産乳製品の競争力強化を図るためということですが、目標みたいなものは置かれているんでしょうか。いつまでにこのぐらいにするという目標を置いて今のような戦略的な取組をされているんでしょうか。確認であります。

○政府参考人(森健君) 済みません。お答えいたします。
 乳製品、生乳につきましても、自給率、食料・農業・農村基本計画で自給率目標というものを掲げております。ちょっと今、手元に資料がございません。今少し後ろの方で調べておりますので、後ほどお答えさせていただければと思います。

○西田実仁君 では、国産飼料の増産についてお聞きしたいと思います。
 酪農にとって欠かせない餌については、昨年来の中国での需要増加、あるいは海上運賃の上昇などを背景に、配合飼料の価格は上昇しているということはもうよく言われていることです。この傾向は一過性ではなくて今後も続くことを念頭に置いた経営を考えざるを得ない状況であります。
 今回、私どもが視察をさせていただきました酪農家は自給飼料の確保に取り組んでおられまして、輸入原料に過度に依存しないことで安定的で持続可能な経営を実現されているということを実感をいたしました。
 自ら飼料を生産、確保していくことの重要性についてそういう意味で再確認をさせていただきましたが、農水省として国産飼料の増産に向けてどのように取り組もうとしているのかを改めてお聞きしたいと思います。

○大臣政務官(下野六太君) お答えいたします。
 持続的な畜産物生産を実現するとともに、畜産経営の安定を図るためには、輸入飼料への過度な依存から脱却し、国内の飼料生産基盤に立脚した足腰の強い生産に転換することが重要だと考えております。
 このため、農林水産省としましては、飼料用トウモロコシ等国産飼料の生産、利用拡大、効率的な飼料生産を行うコントラクターの運営強化、基盤整備等による草地の生産性向上等を支援し、国産飼料増産に向けた取組を推進してまいります。

○西田実仁君 この視察先の経営者の方は、自給飼料生産を行って、自分の経営で生産される堆肥が自分の飼料畑に還元されているとのことでありました。このように自らの経営で堆肥循環ができればこれは理想的だと思いますけれども、特に都府県におきましては、生産された堆肥を耕種農家など他の経営で利用してもらうことも重要であると思います。
 こうした畜産農家で生産された堆肥を十分に利用することは循環型農業という点で大事なんですけれども、それには耕種農家が求める、に求められる品質の堆肥生産ということが必要になると考えますけれども、農水省としての御見解をお聞きします。

○政府参考人(森健君) お答え申し上げます。
 家畜排せつ物を適正に堆肥化して農地に還元していくということが大変持続的な農業生産を図る上でも重要であるということで、特に耕種農家のニーズに応じました高品質な堆肥の生産、流通を促進し、土づくりに有効利用していく必要があるというふうに考えているところでございます。
 今回、先般成立しました令和三年度補正予算におきましても、家畜排せつ物由来の高品質堆肥の生産、さらに広域流通の拡大促進に必要な堆肥舎、ペレット化施設等の整備等に必要な支援を措置をしたところでございます。やはり耕種農家に求められるような高品質な堆肥生産、利用の拡大を推進していくということが重要であるというふうに考えております。
 申し訳ありませんが、先ほどお答えできなかった部分も併せてお答えしてもよろしゅうございますでしょうか。先ほどお答えいたしました、いただきました牛乳・乳製品の目標ということでございますが、基本計画における目標といたしましては、全体の消費も伸びる中で、その消費の伸びをやはり乳製品の方で対応していこうというような目標になっております。
 そういった意味で、特に乳製品向けの生乳生産量を増やしていこうということで、自給率といたしましては現状の五九%を令和十二年に六〇%にしていこうという目標を掲げております。また、具体的なチーズにつきましては、令和元年産国産生乳のチーズ向け需要量四十・三万トンでございますけれども、これを令和十二年度までに四十九万トンから五十五万トンに増やしていこうというのが目標でございます。

○西田実仁君 この国産飼料の生産、利用を進めるためには、今おっしゃった耕種農家に求められるものが必要なのは間違いないんですが、その畜産農家とのマッチングということも大変重要になってまいります。
 飼料用米につきましては、地域農業再生協議会が畜産農家と耕種農家の間で聞き取りを行い情報提供などを行っておられますが、他の飼料につきましても同様にマッチング体制の整備を整える必要があるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(森健君) お答えいたします。
 国産飼料の生産利用を進めるためには、御指摘のとおり、耕種農家と畜産農家のマッチング活動というのが大変重要でございます。飼料用米のみならず、例えば稲のホールクロップサイレージですとか青刈りトウモロコシについても、都道府県や地域農業再生協議会とも連携してマッチングを図る取組を進めているところでございます。
 また、来年度の予算要求の中にも、このコントラクターを活用したマッチング体制の構築など、地域ぐるみで耕種側と畜産側の結び付きを図る取組の支援の方を図っていこうとしているところでございます。こうした取組を進めて、更なる国産飼料の生産利用を図ってまいりたいと考えております。

○西田実仁君 酪農ヘルパーについてお聞きしたいと思います。
 家族経営の農家におきましては、酪農の作業には休みがなく労働負担が大変大きいと。そのため、この酪農ヘルパーを利用してライフ・ワーク・バランスの確保につなげているところも少なくございません。こうした意味で大変重要な役割を果たしていると思いますけれども、特に都府県におけます酪農ヘルパーの課題をどのように捉え、またその解決に向けてどのような取組をなさっておられるのか、お聞きしたいと思います。

○大臣政務官(下野六太君) お答えいたします。
 酪農ヘルパーは酪農家の休日確保等に貢献するとともに、酪農就農者の育成の役割も担っております。酪農生産基盤の維持にとって極めて重要なものと認識しております。
 特に、都府県におきましては酪農家の減少により酪農ヘルパーの業務量の変動が大きいため、離職が早まったり、人材確保が困難な状況となりやすいと聞いており、ヘルパーの待遇改善が重要と考えます。これまでも人材確保の支援を行ってきたところですが、令和三年度から新たに酪農ヘルパーの給与の引上げに対応した奨励金の交付等の支援を追加したところであります。
 今後とも、ゆとりを持って酪農を営めるように、酪農ヘルパーの確保と利用拡大に取り組んでまいります。

○西田実仁君 是非積極的にお願いしたいと思います。
 次に、畜産物の輸出促進についてお聞きしたいと思います。
 牛肉を始めとする農林水産物・食品の輸出は順調に増加しておりますが、二〇三〇年に輸出額を五兆円とする目標達成のためには、やはり中国に対する牛肉の輸出というものは課題の一つであるというふうに認識しております。
 中国との間の牛肉輸出につきましては、二〇一九年十一月のG20外務大臣会合の機会に両国の政府間で日中動物衛生検疫協定に署名がなされ、十二月には中国側により輸入禁止措置の解除が公告をされました。
 そこで質問でありますけれども、実際に日本産牛肉が中国に向けて輸出されることに必要な、例えば中国側による我が国の食品安全システムの評価、あるいは牛肉に係る輸出条件の設定、あるいは輸出施設の認定、登録の進捗状況について、いつ頃をめどにできるのか、それを促すためにどのようなことをなさっておられるのか、お聞きしたいと思います。

○政府参考人(小川良介君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、二〇一九年十二月十九日に中国政府はBSEと口蹄疫に関する輸入禁止令を解除いたしました。これが家畜衛生に関する協議になります。
 現在でございますが、輸出再開に向けましてもう一つの条件、中国による日本の食品安全システムの評価を受けているところでございます。早期に評価が終了し、次のステップでございます輸出条件の設定、あるいは輸出施設の認定及び登録といった手続に移れるよう、外務省を始めとする関係省庁と連携を取りながら、あらゆる機会を捉えて中国側に要請をしているところでございます。

○西田実仁君 めどみたいなのはあるんですか。

○政府参考人(小川良介君) これはひとえに中国側がどのように動くかということでございますので、我々の方からはめどといったことを申し上げることができない状況にございます。

○西田実仁君 次に、家畜防疫の強化についてお聞きしたいと思います。
 野生イノシシの豚熱対策として、一、全都府県におけるサーベイランスの強化、二、豚熱陽性が確認されている県及びその隣接県等三十六都府県に捕獲重点エリアを設定して捕獲の強化を図る、三、経口ワクチンの散布を掲げておられます。
 しかし、野生イノシシの豚熱発生の状況把握に不可欠な一、すなわち全都府県におけるサーベイランスの強化については、三十都府県が、農林水産省が令和三年度以降に最低限必要と通知している検査水準、一県当たり年間二百九十九頭に達していないとされております。検査の抜本的な強化が必要と考えられますが、農水省の対策はいかがでしょうか。

○政府参考人(小川良介君) 委員御指摘のとおり、野生イノシシの検査頭数、これは感染状況を知るために非常に重要な指標でございますが、この検査頭数が少ない県もあることも事実でございます。
 このため、令和三年度の当初予算に加えまして、補正予算により検査促進費等の支援を行っております。また、新型コロナウイルスの緊急事態宣言解除後になりました際には、農林水産省の幹部職員が検査頭数の少ない県を直接訪問いたしましてサーベイランス強化を働きかけるとともに、検査を積極的に実施できております優良事例の横展開を図りまして、検査頭数の増加に取り組んでいるところでございます。

○西田実仁君 この豚熱あるいは鳥インフルエンザなど、家畜伝染病の発生について心配の声は尽きません。一方で、先ほどありました畜産物の輸出拡大の主力を担う重要な品目でもありまして、一層の生産基盤の強化も必要です。
 今後、畜産農家の方々が安心して生乳や食肉などの生産に取り組んでいけるよう、畜産、酪農振興に向けた大臣の決意を最後お聞きして、終わりたいと思います。

○国務大臣(金子原二郎君) 畜産物は、新型コロナによる一時的な変動を除けば、国内外の需要は堅調と見られておりまして、国産畜産物の生産、輸出の拡大に取り組むことが必要と考えております。
 このため、農林水産省といたしましては、農業生産基盤強化プログラム等に基づきまして、増頭、増産や施設、機械の導入支援、畜産環境対策や自給飼料生産の拡大、経営安定対策の充実等を推進しておりまして、引き続き、皆様に安心して生産に取り組んでいただけるよう、畜産生産基盤の強化に取り組んでまいります。

○西田実仁君 終わります。